皆さま今日も革製品に愛情注いでますか?
こんにちは、バックエンドエンジニアのKJです。今日は革製品の話をします。
さっそくですが、経年変化ってご存知ですか?
経年:時間が経つ
変化:変わる
簡単にいうと、「時間の経過とともに変化していく様」的な意味合いになりますね。
当たり前のこと言ってんじゃねーよと思う方もいらっしゃるかと。
なにはともあれこの動画を見てみてください。
ヌメ革の経年変化を1年間撮り続けた動画のようです。
これを見てお酒が飲める方。もしくは汚いと思う方。
人の感性はそれぞれなのでどちらも正解だと思います。
ただ、今回は前者の方に捧げる記事となります。けっこう真剣に話します。
目次
まずは基礎知識から。「鞣し(なめし)」について
そもそも鞣しって何ですか。
「皮」を「革」に変える手法です。
革(通称レザー)は、元々牛や馬、羊など、動物の皮膚なのです。純粋に皮だけ削ぎ取った状態は原皮(げんぴ)と呼ばれます。
原皮は、まだ表面に毛が残っていたり、内側には血や肉がついている状態です。本当に削ぎ落としただけの状態。もちろん、このまま放置すれば腐ってしまいます。臭いもきつめです。それを防ぐために塩漬けにされるんですね。そしてその状態で業者さん間で取引される。
取引後、今度はこれらを大きなドラム状の装置に入れて大量の水によって塩が洗い流されます。その後石灰水と一緒にぐるんぐるんと回され、原皮の繊維が柔らかくなり膨張。
ここでいよいよ薬剤を使って原皮を革へと変化させます。そう、これが「鞣(なめ)し」です。生々しい皮を、腐敗しにくく、硬くなりすぎず柔らかく。私たちがよく知る革製品のあの「革」の状態に。
そしてこの鞣し加工を行う業者さんのことを「タンナー」と呼ぶのです。
どうです? これがわかっただけでも革製品との距離が縮んだ気がしませんか?
タンニン鞣しとクロム鞣しについて
鞣し時には鞣し剤(なめしざい)と呼ばれる薬剤を使います。
鞣し剤には現在2種類あり、
- タンニン剤
- クロム剤
があります。どちらの薬剤を使ったかにより、鞣しの呼称が変わります。
もちろんそれぞれ違う薬剤になるため、経年変化の特徴が異なります。
タンニン鞣しと経年変化の特徴
迷子にならないように先にざっとまとめておきます。
- タンニンレザーの特徴
-
- 経年変化が激しい
- しっかりとしたメンテナンスが必要
- 重い(厚みがある)
- タンニンレザーの経年変化
-
- 変色・変形が好きな人
- 重量感のあるアイテムが好きな人
- 定期的なメンテナンスを楽しめる人
タンニン剤
植物にある水溶性の化合物です。タンパク質と強く結合する化学変化があるので、動物性タンパク質と結合させます。古くから使われてきた伝統の鞣し剤です。
各国のタンナーさんによって使う植物が違うようです。ミモザや樫の木などいろいろと。
タンニン鞣しされた革は、肌色の状態で仕上がります。これが一般的に「ヌメ革」と呼ばれているものです。
冒頭で紹介した動画の革はまさにこれですね! 動画後半で見た飴色の経年変化。あれがまさにヌメの持つ特有の楽しみ。
ただし、ここの過程で完了ではなく、この状態から染色やオイルを含ませてオイルドレザーにしたりと加工の幅も広いのですが、この辺りはタンナーさんの好みや製品の志向で変わってきます。
タンニン鞣しには、
- ピット製法
- ドラム製法
の2つの方法があります。
ピット製法
複数の異なる濃度のタンニン剤を溶かした液体で満たしたプール状の大きな槽を用意します。各槽の水溶液に順番に原皮を漬け込みます。時間をかけて原皮にタンニンを染み込ませていくイメージですね。
すごい古風なというか昔ながらの手法だと思いませんか? 手間暇かけて肉厚なレザーができる反面、比較的大きめなデメリットがあります。
1. 加工時間が長い
2. 製作量を増やせない(槽を増やさないといけないので場所が必要)
3. 手間暇がかかる
4. 設備の維持費が高い
うむ。そりゃそうですよね。
大きな槽がたくさん必要=人もたくさん必要。それだけ手間暇かけても量産できない。かつ、人が常に張り付くので人件費もかかる。
結果としてタンニンピット鞣しの革はお値段が……。
ドラム製法
大きなドラム洗濯機みたいなものを想像してください。その洗濯機でゴロンゴロンぶん回して鞣します。タンニン剤の水溶液と原皮をいれてぐるんぐるん回してタンニン剤を皮に浸透させる手法です。
約24時間で一度に100枚近く鞣すことができるので(ドラムのサイズによる)現在行われているタンニンレザーの大半はドラム製法によって鞣されています。
もちろん今もピットで丹念に鞣しているタンナーさんもいらっしゃいます。
クロム鞣しと経年変化の特徴
こちらも先にまとめておきますね。
- クロムレザーの特徴
-
- 経年変化が控えめ
- メンテナンスあまりしなくてもOK
- 薄くて軽い
- 耐熱性高い
- クロムレザーの経年変化
-
- 変色・変形が苦手な人
- 重たいのが苦手な人
- メンテナンスなんてめんどくさい人
クロム剤
塩基性硫酸クロムと呼ばれる化学薬品を使って鞣します。化学薬品は人工的に作れるので、手間暇でいうとタンニンよりも楽にお安く用意できます。
主にドラム製法でぐるんぐるんと。
- 短時間
- 安い
- 大量
比較的低コストで手軽に大量に鞣せます。
なので、やはりどうしてもタンニンよりも流行りますよね。ビジネスで利益多めに出そうと考えたらそうなります。この辺りはすごくセンシティブなところだし、あっちがこっちがと正論は水掛け論になりかねないのでこの辺で。
クロム鞣しを行った原皮は水色になります。この状態をウエットブルーと呼びます。これを染色したり加工していくんです。特徴だけ見ると、クロムの方が現代っぽいというか、万人の要求にマッチしている気がほんのり。
番外編 秘技コンビネーション鞣し
先ほど出たクロム鞣しのウエットブルー状態で再度タンニン鞣しを行うことを「コンビネーション鞣し」「混合鞣し」といいます。
タンニンとクロムの良いところを欲張りに取り入れちゃおうというやつです。
Red Wingなどのワークブーツはコンビネーション鞣しが多いです。
コンビネーションとはいえど、8割り以上がクロムの成分にはなります。なので、実際経年変化は出づらいです。だからこそ、ブーツの経年変化は長期間かかり、愛着がわくんですね。
まとめ
真面目に語ってきました。こういう過程を知れば知るほど革の魅力に取り憑かれてしまいます。
一般的な商品って、購入時がピークであとは経年と共に劣化していくものだと思っています。でも革って、違うんですね。
リアルマッコイズ東京の店員さんが言っていました。
「革は購入時がスタート。そこからお客さんが育てていくことでどんどん成長していきます」
すごい名言だと思うんです。まさにそのとおりだなと。
購入時がスタートって、なかなかないですよね。そして、革製品って表情が豊かなのでぜひ購入の際は店頭で手にとって、実際に自分との相性をたしかめてから購入することをおすすめします。
ちょっと傷があったり、シボが強めだったり、特徴的なシワがすでに入っていたり。これらの個性と長い時間かけて付き合っていくことで革って育つんですね。
僕は革ジャン、ブーツはもちろんですが、毎日触れる小物にも革製品を愛用しています。昔バンドでギターを弾いていたときは、Fenderのレザーストラップを10年使い続けていたこともありました。
手放せない相棒感が出てくると、もう心酔してしまうんですね。この辺りの話でお酒飲んでくれる人いたら気軽に声かけてください。
実は経年変化って革に限った事ではないと思っています。
LIGにはまだまだピッカピカだったり、熟成された渋みを醸し出していたり、はたまた癖が強かったり。
そんなエンジニアが揃っています。よくもまぁこんなに個性強いメンバー集まったな、と思うくらい。
なんなら、LIGで面談しませんか。こういった趣味の話を話してもむしろノリノリな人たちがいます。ぜひ。
KJでした。