【攻めの広報インタビュー】元プロ野球選手で現ソフトバンクホークス広報の江尻さんは、一生涯プロだったお話。

【攻めの広報インタビュー】元プロ野球選手で現ソフトバンクホークス広報の江尻さんは、一生涯プロだったお話。

Mako Saito

Mako Saito

こんにちは、マーケターのまこりーぬ(@makosaito214)です。突然ですがいま、わたしは福岡ヤフオク!ドームの天井裏にいます。

なぜかって?元プロ野球選手で現福岡ソフトバンクホークス広報の江尻さんに突撃取材にきたんですよ!!!!

人物紹介 : 江尻 慎太郎 氏宮城県仙台市出身。仙台第二高校、早稲田大学を経て日本ハムファイターズに入団。横浜ベイスターズ、福岡ソフトバンクホークスと3球団に在籍し、13年ものあいだ第一線でプレイした。現役引退後、ソフトバンクコマースアンドサービス株式会社(現SBC&S株式会社)に入社。デジタルマーケティングツールの営業として活躍した後、現在は福岡ソフトバンクホークスの広報を務めている。

「元プロ野球選手からビジネスマンへの転身なんて異色な経歴をお持ちの方はなかなかいないので、取材させていただけないでしょうか?」「いいですよ!」

「せっかくなので、きゅ、球場で撮影できたりしますか……?」「面白いですね!いいですよ!」

と、トントン拍子に話が進み、気づけばこんなところに。2019年3月にリニューアルしたばかりの福岡ヤフオク!ドームをぐるりとまわりながら、江尻さんご自身について、広報のお仕事について、たくさんお話を聞いてきました!!!

 


▲地上約68メートル、ヘルメット姿で取材スタートです!(かなりの高いところにいるため、2人とも笑顔がこわばってます!)

プロ野球選手から、プロのビジネスマンへ


▲黒を基調としたデザインに一新したコンコース。ずらりと並ぶモニターから流れるプロモーション映像が、球場の雰囲気を盛り上げます。

まこりーぬ:早速ですが江尻さん、みんなが一番気になっているであろうこの質問からさせてください。一体なにがどうなってプロ野球選手から球団広報へ転身されたのですか?

江尻:よく聞かれます(笑)。2014年、在籍していた福岡ソフトバンクホークスから戦力外通告を受けたあと、野球に携わる仕事をするか、ソフトバンクグループに就職してビジネスマンになるのか、目の前に2つの選択肢を提示されました。当時はたくさん悩みましたが……思い切って選んだ道は、「ビジネスマン江尻」になること。その後約3年間デジタルマーケティングツールの営業を経験し、現在に至ります。

まこりーぬ:江尻さんのこれまでの人生についてじっくりお話うかがうと、10記事ぐらい書けそうですね……。プロ野球選手とビジネスマン、どんなギャップがありましたか?

江尻:それはもうギャップだらけでしたね。いつ戦力外通告を受けるかわからない緊張感から解放されたこともあり、ビジネスマンになって半年が経つころには、実はめちゃめちゃモチベーションも下がってました。「得意でもない仕事をどうしたらがんばれるんだ」って。

ただ、いろんな人に会うなかで気づいたんです。私はいついかなるときも周りから「元プロ野球選手」として見られていて、その看板が一生外れないってことに。

だからこそ、自分は「一生涯プロ」なんだと思うようにしました。野球部門からビジネス部門に異動しただけで、どんな領域であってもプロとして活躍する、プロだったら当然活躍するだろう……と。そうして自分を奮い立たせています。


▲プロ野球選手時代の江尻さん(2014年3月12日撮影)

まこりーぬ:江尻さんの、外見だけでなく身体の芯から溢れ出るカッコよさは、ここからきていたんですね……!

江尻:ありがとうございます(笑)。

プロ野球選手ってね、引退するとき「僕は野球しかやってきてないから」なんてちょっと卑屈になるんですよ。

でも、偶然にも出会った野球に対してここまでストイックにやってこれたんだから、たとえ別の壁が目の前に立ちはだかったとしても、持ち前の追求力で必ず解決していけるはずだ!……って、自分の可能性を信じているし、他のプロ野球選手の可能性も信じてる。

そんな想いをもって、近い将来、セカンドキャリア支援に取り組みたいと思っています。

まこりーぬ:う〜ん、すてきな夢ですね! 江尻さんが後輩選手に熱く語っている姿がありありと目に浮かびます。

江尻流・攻めの広報スタイル


▲新設された「やまや明太子ボックス」席にてInsta映えを意識しながらパシャリ。タカガールデーなど、10〜20代女性を対象にした広報施策を積極的に展開されています。

まこりーぬ:江尻さん、そろそろ私……ヘルメット脱ぎますね(笑) 。ここからは、具体的に広報の業務についてご質問させてください!現在は福岡ソフトバンクホークスの広報として、どんなお仕事をされているんですか?

江尻:ミッションは、福岡ソフトバンクホークスのファンを地元福岡だけでなく全国に増やすこと。東京を活動拠点にメディアへ積極的にアプローチして、なにかしら企画をご一緒できないか、日々提案しています。

まこりーぬ:いわゆる、取材対応だけにとどまらない「攻めの広報」ってやつですね!

江尻:そうですね。ガンガン攻めてます。野球関連のマスメディアはもちろんのこと、一見スポーツと関係のないようなメディアにも企画を持ち込みますし、他球団や他種目とのタイアップなんかも目論んでいます。

まこりーぬ:……しかしぶっちゃけたところ、福岡ソフトバンクホークスがこれ以上全国にファンをつくる必要って、ありますか? 私は地元が福岡なんですが、福岡県民はみんなホークスの大ファンですよ!?(笑)

江尻:……まこりーぬさん、私は仙台で育ったんですが、元はジャイアンツファンだったんですよ。

まこりーぬ:え! あ、そうなんですね!(いきなり……?)

江尻:なぜかというと、テレビにも新聞にもよくジャイアンツが取り上げられていたから。私たちが普段目に触れている「メディア」って、球団のファンづくりにものすごく影響を与えるんですよね。

インターネットを中心にメディアが分散しているいま、マスメディアだけではなく、WEB媒体やSNSなど新たなメディアにもどんどん情報を出していく必要があります。従来の型にハマり過ぎず、メディアとのつき合い方やファンコミュニティのつくり方を再構築していくのが、私の仕事なんです。

まこりーぬ:なるほど……! 江尻さんほど頼もしい攻めの広報はいませんね!(フィジカル面でも!)

草野球YouTubeチャンネルにプロ野球が参戦


▲続いて、監督や選手が座っているベンチ(を再現した観客席)へやってきました。

まこりーぬ:広報として「これは成功した!」と思うエピソードをぜひ教えてください!

江尻:39万人のファンをかかえる草野球YouTubeチャンネル「トクサンTV【A&R】」とコラボしたことでしょうか。私も出演したんですが、小学校に通う娘の同級生たちからの反響がものすごかった。子どもから圧倒的に支持されているメディアなんです。

最初は社内会議で「YouTuberとプロ野球選手の共演なんて大丈夫?」と不安に思われたものですが、結果は大成功。他球団からこっそり「ホークス、あれどういう経緯で出演できたの?」なんて聞かれるほどです(笑)。

これは東京で幅広い情報をキャッチしながら広報活動をおこなっていたからこそ実現できた企画だと思っています。

▲プロ実働12年!オールスター投手・江尻慎太郎VSトクサンのガチ勝負!

まこりーぬ:動画の中で歌いながら登場する江尻さん、めちゃめちゃお茶目じゃないですか……。(笑)

広報活動へ選手を巻き込むことに悩みはつきない

まこりーぬ:では逆に「これは失敗したなぁ」と思うエピソードも教えていただけますか?

江尻:広報という仕事柄、メディアに寄り添って活動することが多いので、頑張っている選手に対して「広報活動の重要性を伝えられないまま協力をゴリ押ししてしまっているんじゃないか」と感じた瞬間があったんですよね。

選手たちは一本のヒットを打つためにいつも必死に努力しているというのに、そんな選手の立場になって考えられていなかった。すごく反省しました。

とはいえ、ミッションを達成するためには、多少嫌われてでも選手を巻き込むべきタイミングがあるとは思っています。気を遣ってばかりいると、やれない理由ばかりが膨らんでしまいますから。

ただし「OB江尻の頼みなんだから聞いてよ〜」というプレッシャーが現役選手にかからないようには気をつけてますね。広報活動へ参加することの価値をきちんと提示して、彼らの素晴らしい姿や熱い想いを社会に伝える広報マンになりたいと思っています。

まこりーぬ:「元プロ野球選手」という看板は社外には使うけど、組織内では使わないって、大事ですね。江尻さんの美学を感じます!

ホークスの”新たな一面”を世の中へ発信する

▲ファンクラブ会員専用ラウンジ。ニュース番組が撮影できそうな素敵なロケーションです。

まこりーぬ:広報の仕事において、江尻さんが最も大切にしていることはなんですか?

江尻:たくさんの人を巻き込んでイベントを企画したり、最先端のチャレンジをおこなったりすることで、球団のカラーを伝えることですね。

選手だけでなく球団運営に関わる人たちを、事業とともにどんどんメディアに露出させることで、「ホークスにはこんな一面もあるんだ」という気づきを与えていきたいと思っています。

自ら演者として積極的にメディアに出るのもそう。「ホークスには元選手であり今は球団広報として活動している江尻という人間がいるんだ」と興味を持ってもらうことができれば、それは新しい視点でホークスを見てくれる人が一人増えるってこと。

まこりーぬ:確かに、江尻さんと出会ってから私のホークスのイメージはガラっと変わりました! なんというか、大御所なのにチャレンジングというか、これからどんな施策で野球界を引っ張っていかれるのかな? と、ワクワクを感じます!

江尻:いや〜それは嬉しいです! この記事を読んでくださった方の中に、少しでもまこりーぬさんのように感じてくださる人がいれば幸いです。

まこりーぬ:……ちなみに、江尻さん以外のホークス社員はみなさんどんな方なんですか?

江尻:それはもう一言、チームへの「愛がすごい」ですね。ホークスが一勝するたびに大盛り上がり。「え、そんなに喜ぶの!?」って最初戸惑ったぐらい(笑)。

たった1勝であっても、一般社員がチームや選手とともに一喜一憂できる。社内にいると、球団がファンに喜びを提供できていることを実感しますよ。

まこりーぬ:なるほど。福岡ソフトバンクホークス株式会社に入社したい人ってもしや、ホークスファンですか?

江尻:間違いなく。福岡では人気の就職先の一つです!(笑)

江尻さんからの激励メッセージ

まこりーぬ:江尻さんとお話ししていると、すごーーーく背筋が伸びます。ぜひ最後に、読者のみなさま……というか、私に(笑)ビシッと激励のメッセージをいただけないでしょうか。

江尻:わかりました(笑)。そうですね……

私のセカンドキャリアは、最初の上司からよく言われていた「サラリーマンはいらない。ビジネスマンになりなさい」という言葉に強く影響を受けています。

ビジネスマンとは、ビジネスをつくる人。新しい市場をつくる、新しい商品をつくる、新しいチャネルをつくる。自分たちが提供する価値をスピーディにどんどんユーザーへ届ける。

だから広報とはいえ、「プロとして新しいビジネスをつくりまくるんだ」というマインドを常にもって動いています。まこりーぬさんも、ご自身が生み出されている価値を信じて、どんどん周りに届けていってください!!!

まこりーぬ:くう! 江尻さんのお言葉、しかと受けとめました! 本日は貴重なお時間を本当にありがとうございました!!!



まとめは表示面積世界最大のビジョンより失礼いたします。実際の顔の約2,500倍、気分は巨人です。※写真は合成なしです(笑)

22年間福岡で生まれ育ったにも関わらずドームに入るのは人生2回目、ヒールで取材に臨んでしまう程度には無知だった私でしたが、今回の取材を通じ、すっかり江尻さんの、ソフトバンクホークスのファンになりました!

次に帰省したときには父親と一緒にここに来て、野球観戦しながら、スクリーンを独り占めしたことを自慢してやろうと思います。

以上、まこりーぬがお届けしました!

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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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