地域の魅力を引き出す“人感”とは?『東京の24時間を旅する本』から学ぶ地域情報発信のコツ

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地域の魅力を引き出す“人感”とは?『東京の24時間を旅する本』から学ぶ地域情報発信のコツ

こんにちは、エディターのmisakiです。

近年、都心に限らず、地域に根ざしたメディアを運営、情報発信するところが増えてきました。とはいえ、「いかに多くの人に地域の魅力を伝えるか」に難しさを感じている方も少なくないはずです。

そんな地域の魅力発信の難しさを解決するヒントが、こちらのプロジェクト。

「TOKYO DAY OUT」
Web、広告、放送業界のクリエイターが集まり、さまざまな媒体を横断的に用いて東京の魅力を発信するプロジェクト。

2016年3月に発行したガイドブック『東京の24時間を旅する本』では、1日を1時間ごとに区切り、夏木マリさんら著名人から一般の方まで、東京の今を生きる人たちがそれぞれのお気に入りの場所を紹介。

めまぐるしく移り変わる東京という街を時間軸で切り取った斬新なアイディアは全国の書店を中心に反響を呼び、また常時更新しているWebマガジンや季刊のフリーペーパーも好調。3月に期間限定で東京メトロ構内にオープンしたポップアップストアなど、さまざまな展開を続けている。

日本の中心地である東京を取り上げている以外にも、『東京の24時間を旅する本』が話題になっている理由があるのではないかと思い、今回「TOKYO DAY OUT」編集長の島崎昭光さん、編集部であり放送作家の岡野ぴんこさんに、メディアに携わる姿勢や、地域の魅力を伝える上でのキーポイントをお伺いしました。

eyecatch_160623_01_6_m-1310x874 島崎昭光さん
螢光TOKYOで、企業の広告・ブランドコミュニケーションを手がけるクリエイティブディレクター。自身が主催する会社「螢光E.T.」でTOKYO DAY OUTのほか、さまざまなメディア・コンテンツをプロデュースしている。
eyecatch_160623_01_5_m-1310x874 岡野ぴんこさん
クリエーターズオフィス「N35inc.」所属、テレビ、ラジオの構成を手がける放送作家。担当番組は『ZIP!』、『another sky』『SENSORS』など。自らのスタイルを、文章・写真・映像などさまざまな表現で発信。

『東京の24時間を旅する本』は東京じゃないとできない企画だった

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ー 「24時間を旅する」というコピーに惹かれ、はじめて東京のガイドブックを買いました! 東京を時間軸で紹介するという切り口は、どのように思いつかれたんでしょう。

島崎:どうせ作るんだったら、従来のガイドブックとはちょっと違うものにしたかったんです。エリア分けで紹介するスタイルはよく見かけたので、じゃあ何で区切ったら目新しいかブレストしていくうちに「時間」が候補として上がりました。

岡野:他に、東京に生きる人の一瞬を追体験できるような要素も欲しいねっていうのも出て、「時間」と「その人がその時間でしたいお気に入りのもの」の2つをコンセプトにしましたね。

島崎:地方にも、独自のアクティビティや楽しみがありますが、深夜3時にやっているお店を探すとなると難しい。単純に、どの時間もおもしろいものがあるのが東京の魅力だよねというのもあり、『東京の24時間を旅する本』は東京じゃないとできない企画でした。
 

eyecatch_160623_01_3_m ▲『東京の24時間を旅する本』より
 
岡野:ちなみに、この本には露骨に「ここがおすすめです!」という主張がないんですよ。代々木公園を紹介するにしても、ただ紹介するのではなく誰かの過ごし方を通してみることで、いつもとちょっと違う代々木公園を体験できるように工夫してるんです。

 
ー とすると、『東京の24時間を旅する本』はどちらかというと在住者向けのガイドブックなんでしょうか。

島崎:東京に暮らす人にも新しい視点がありますが、もちろん、これから東京を訪れる人にとっても深い体験のきっかけになればと考えています。

訪れる先の土地で暮らしている人が、どういうものが好きで、どういう生き方をしているかを知っているほうが、より旅がおもしろくなると思うので。

「多くの人に届けるために」クリエイター界隈を巻き込んで、異種格闘技をしたかった

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ー 「TOKYO DAY OUT」はWeb・広告・テレビ業界の人などさまざまなクリエイターが参加されているプロジェクトですが、業界の垣根を越えてものづくりをされるようになったきっかけは?

島崎:新しいメディアを作るんだったら異種格闘技のようなことをして、ものづくりを加速させたかったんです。
 

ー 異種格闘技……ですか?

島崎:そう。例えば、僕は広告のクリエイティブディレクターとしてCMをつくっています。本来CMをつくるにはCMプランナーという専門の職種がありますが、そこに敢えて、ぴんこのような放送作家にも企画を出してもらい、いろんな角度からの発想をクロスしていくんです。

そういう感じで、普段の仕事の中でも、敢えて専門外の人を巻き込むことで新しい発想やアウトプットを生み出す取り組みをやってきて、その可能性をずっと感じていました。

 
ー 業界の垣根を越えるだけでなく、Web、本、フリーペーパーなど媒体の垣根も越えて東京を紹介していますよね。それぞれをどう使い分けているのか気になります。

島崎:僕らものづくりをしている人間としては、できるだけ多くの人に情報を届けたいというのがあるので、まずは多様なアプローチができるフィールドをつくりたかったんです。そう考えたときに、Webだけでは駄目だし、紙だけでも足りない。

岡野:それに、東京の魅力そのものは一緒ですが、コンテンツへの入り口が違うだけで、読者も感覚が変わってまた行動範囲が変わっていく。だからこそ、横断的にいろんなメディアを持つのはいいことだと思うんですよね。

プロジェクトの根底にあるのは、お出かけのワクワク感を伝えること。読者の行動を喚起するためにあの手この手で試行錯誤しているんです。
 

eyecatch_160623_01_4_m ▲『東京の24時間を旅する本』より

ー 媒体によって、反響の出方や数字は全然違いますか?

島崎:そうですね。とはいえ、やっぱり本やフリーペーパーが1万人に届いた価値と、Webで1万人UUがいたっていう価値が同じかどうかはよくわからない。制作側の目線から言えば、このプロジェクトを通してそのもやもやした疑問を解決したい思いもあるんです。

岡野:たとえば、Webだけをやっていると、この記事1万セッション、1万UUいったけど、本当に1万人に届いているのか、といった疑問が浮かぶときがあるんですよ。

 
ー たしかに、数字だけを見ていても本当に届いているのかな、と不安に感じます。

島崎:本なんて1万部も売れない時代ですが、1冊1,200円払って買った人が1,000人、2,000人いることのリアリティってすごいと思うんです。Webで0円のページを1万人がみたということと、どちらが上か下かではないですが、でもお金を出してまで読む読者の姿勢って違うんじゃないかな、と。

それに、他媒体に携わってみることで、はじめて俯瞰になれることもある。もし今メディアに関わっていて、数字を追求しながらものづくりをすることに違和感を覚えている人は、他の媒体やコミュニケーションと関わると、その違和感が緩和されていくんじゃないかと思います。

暮らす人の「人感」を描くことが地域の魅力を引き出す

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ー 『東京の24時間を旅する本』で東京を一地域として捉えたときに、その魅力を描いていく上で意識されたことはありますか?

岡野:お出かけスポットというよりは、「こんなときに行く」「こんな気持ちになるためにここに行く」といった、その人のライフスタイルが場所とどうリンクしているのかの表現を一番意識しましたね。

とにかく、東京にいる人たちを唸らせたいって気持ちは強かったです。「私、東京に住んでるから東京のガイドブックは必要ない」という人にこそ、「えっ、こんなのあるんだ。知らなかった!」と思わせたくて。

島崎:編集方針としては、訪問者の目線より、住む人のリアリティや、そこに暮らしている人の目線を大切にしました。あと、「人感(ひとかん)をみる」ことも重要視しましたね。
 

ー 「人感」といいますと?

島崎:たとえば僕らが大阪へ旅行するときに、たこ焼きのお店はガイドブックを見ればなんとなくわかるけども、地元の人の暮らしはわからない。大阪に暮らす、しかも魅力的な人が普段はこう過ごしているとわかれば、やってみたいな、行ってみたいなとなると思うんです。

だから地方の魅力は、そこに住んでいる人の人となりを、その人目線でどう伝えるかで決まるんじゃないかと。

 

ー 現地の人の暮らしを切り取るときに、意識すべきことはありますか?

岡野:その地域にいる “素敵な人” を探すってことが第一歩ですね。素敵の定義にもいろいろあって、『東京の24時間を旅する本』に登場する方も年齢層は幅広いし、職種はDJやダンサーから上野動物園の園長、お坊さんまで実にさまざま。

東京だけじゃなく、地方だからこそ、おもしろい人っていると思うんですよね。興味を抱かずにはいられないようなユニークな人や、その人が毎日のように通っている居酒屋のおでんがおいしいとか、そういうのを見つけていくことが、地域の魅力を発信する土台の7割を占めてるんじゃないかなと思います。

その地域にずっと生活している人たちは、内側の魅力に気づけていない部分があると思うので、それを外から切り取ってあげられたらと。
 

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ー つまり、その地に暮らすユニークな人を探して、掘り起こし、魅力的に見せることが、結果的に地域全体の魅力を伝えることに繋がるんですね。

島崎:編集は、切り口がすべて。だからこそ、24時間で区切るという切り口は東京だからこそできるものだと考えていて、ほかの地域、たとえば京都なら京都なりの切り口をみつけられるな、と。

どこに発信するかも大事。それこそ海外に向けての見せ方と、国内、東京へ向けての見せ方は違う。

「マイナーな地方の温泉がなぜか外国人旅行者に人気があって……」なんて話もよくありますけど、東京にウケなくても海外向けに出していくと成功する可能性も十分にある。東京向けなら、逆に東京にないものって切り口で発信していく。

「人感」などがベースにありつつ、誰に対してかという部分で切り口や見せ方は変わっていく気がします。

おわりに

「あそこにはこんな人がいたから、また行こう」
「あの人があのお店で食べているらしいから、行ってみよう」

読者にそう思ってもらえたら、地域の魅力を届けたに等しい、とおっしゃっていたお二人。

地域の魅力を伝える上で大事なのは、テンプレート化された基本情報だけではなく、そこで暮らす「人感」を伝え、いかに追体験させるか。

私もメディアに携わる立場として、切り口をどう見つけていくか、課題としています。地域の魅力を伝える切り口を見つける際は「TOKYO DAY OUT」のように業種を超える、媒体を横断するなど、これまでの固定観念を取り払って考えてみることが最初の一歩なのかもしれません。

地域の魅力発信に携わるすべての方に、少しでも参考になれば幸いです!

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