こんにちは、LIGブログ編集長の朽木(@amanojerk)です。さっきネットで見かけた“アソコの穴に「突っ込んだら最高だったもの」ランキング”という記事の第1位が“きゅうり in ちくわ”だったので「あっぱれだな」と思いました。
おかげさまでライター生活も5年目に入り、なんとか一生これで食って行けるかなと自分自身信じられるようになってきた今日この頃。Webでテキストを書くことのハードルが下がりに下がった現在の市場において、プロとして差別化を図るべきは文章のクオリティになるかと思います。
しかし、ひと口に文章のクオリティと言っても具体的に何を指し示すのか曖昧です。そこで、僕が思う“よい文章”を3つのパターンに分類してみました。
- わかりやすいか
- 熱量があるか
- コンバージョンするか
1.について、日記のように他人が読むことを前提にしない文章でない限り、ビジネスメールしかり誰かに何かを伝えたくて書くのでしょう。したがって、わかりやすい文章であることが大切です。正しい日本語を使うこと、誤字脱字をしないように、というアドバイスも、結局はわかりやすいかを図る指標であるように思います。
2.についてはそのまま、書き手が熱量を持って書いている文章です。熱量のある文章は人の心を動かすでしょう。どんな文章でも編集することはできるし、場合によってはリライト9割みたいなこともあり得はしますが、編集に直接できないのは書き手の熱量を記事に書き加えることです。
そして、3.が商業ライティングの指標です。1.と2.は努力次第で誰にでもできることではありますが、コンバージョン(CV)を意識できるかどうかが仕事としてライティングできるかの分かれ目になると思いますので、本稿ではWebライター・メディア運営者の方に向けて、CVライティングのポイントについてまとめてみたいと思います。
コンバージョン 【 conversion 】 CV
変換、転換、交換などの意味を持つ英単語。ネット広告の分野では、広告や企業サイトの閲覧者が、会員登録や資料請求、商品購入など企業の望む行動を起こすことを言う。「単なる訪問者から会員や(見込み)顧客への転換」という意味合いがある。
引用:e-Words
好きなことを好きに書けるのが一番だけれども
ライターが生活するにあたっては、当たり前に原稿料を頂戴しなければいけないわけです。では、そのお金はどこから出ているのかと言えば、編集部、または編集部を通してクライアント、あるいは直接クライアントから、です。
中世の貴族のパトロンのように、ただ芸術的な文章の完成度のためライター(作家ではない)にお金を支払う存在はこの現代日本には見当たりませんので、お金を支払う目的があるわけです。「製品を購入させたい」「サービスの登録者数を増やしたい」などの目的にできるだけ適う、つまりCVするような文章、これはひとつの“いい文章”でしょう。
好きなことを好きに書けるのが理想ですが、ライターは仕事で、ライティングはビジネスです。ほとんどのメディアは広告収益や広告予算で回っているかと思いますので、原稿料の向こう側にはクライアント(あるいはクライアントとしての編集部)がおり、その存在を無視した文章を書くことはできません。
コンバージョンとはつまり成果のことで、ライターが書いた記事にはクライアントが支払った原稿料に見合う、購買・登録数、PVの増加などが求められます。一方で、それがクリエイターとして納得のいく表現や、読者の利益と照らして相反するような場合もあるかもしれません。
では、どのようにしてその折り合いをつけるのか。僕自身もいつも頭を悩ませる部分ではありますが、思うところはたくさんありますので、Webライター・メディア運営者のみなさんの参考になれば幸いです。
コンバージョンする文章のポイント5つ
僕はもともと商業ライターだったので、さまざまな広告案件を経験してきました。駆け出しの頃は釣ったり煽ったりの案件も多かったのですが、それって誰も幸せにしないような気がして今に至ります。
現在は編集長として後輩の編集者・ライターを指導する立場なので、できるだけハピネスの総量が大きくなるように模索した結果、コンバージョン(CV)する文章のポイントを下記の5つにまとめてみました。
- ユーザの感情を想像する(1)
- ユーザと信頼関係を築く(2)
- ユーザにとってフェアでいる
- 選択はユーザに委ねる(3)
- 本当にいいモノをユーザに紹介する(4)
- ユーザの心を動かす(5)
順にご紹介させていただきます。
ユーザの感情を想像する
テクニカルなことからはじめますが、CVする文章においてはユーザの感情を想像することが必要です。感情設計と呼んだりもしますが、商品購入でも会員登録でもシェアでも、人が行動をするのは心が動いたときでしょう。
どのように心を動かすのかということに関しては、ライティングするに当たってある程度、事前に想像することができます。
わかりやすいところでは、実は釣ったり煽ったりというのが感情設計の一例です。
- 例
- こわい / ヤバイ / どうにかしたい
究極的な話をすると、“これを買わないと死ぬ”と言われたらその商品を買ってしまう人もいるでしょう。手段を問わずに短期的にCVを上げるという結果だけ見れば、一定の効果があるのかもしれません。
人を行動させるほど心を動かすというのは決して簡単なことではないので、上記のようなネガティブな感情設計により、安易に釣ったり煽ったりといった手法が選択され場合があるのだと思います。
一方で、プラスの感情設計によりCVすることも、もちろんできないわけではありません。それが下記のようなユーザのリアクションになります。
- 例
- うれしい / たのしい / だいすき
このように、もちろんポジティブなCVというのもあり得るのですが、経験上ネガティブな感情設計よりも時間がかかります。
ポジティブよりはネガティブが感情を支配しやすいのです。だからこそ、メディアを運営する立場には倫理や規範が求められるのではないでしょうか。
ユーザと信頼関係を築く
さて、時間がかかると言ったポジティブな感情設計ですが、これを実際に体現している存在がおりまして、例えば一部でプロブロガーと呼ばれる方々です。
日頃から宣伝以外の部分でユーザとコミュニケーションを継続して、ファンになってもらうことで、宣伝をするという行為へのハードルはぐっと下がるでしょう。
「○○さんがおすすめする本なら読みたい」
「××さんが入っているサービスなら使ってみたい」
このように、ポジティブな感情設計によるCVが実現しますが、前提としてユーザとの信頼関係が必要です。そしてその信頼関係とは、日頃から有益な情報を発信したり、パブリック・リレーションズに取り組むことで築かれるものです。
LIGブログというメディアもまた、広報機関としては同じ位置付けで活動していることになるでしょう。
ユーザと信頼関係を築くことで、ロングスパンでのCVが継続し、結果としてライター・メディアとユーザが共にメリットがある、理想に近い状態ができるのです。
ただし、少し前に芸能人のステマが問題になったことがありましたが、ユーザを裏切ればクリエイターとしての評価は失墜し、回復にはより長い時間がかかります。これもまた、メディア運営者は襟を正さないといけません。
ユーザにとってフェアでいる
「ユーザの感情を想像する」「ユーザと信頼関係を築く」上で、絶対的に必要なのはこの観点です。ただし、ひと口に言ってもフェアネスとはさまざまなものですので、実際に使えるメソッドを紹介しておきます。
- 選択はユーザに委ねる
- 本当にいいモノをユーザに紹介する
これは経験上の意見ですが、「絶対に〜しろ」と言われた人はほとんど〜しません。あまのじゃくな生き物にそれでも行動を促そうとすれば、必然的に脅迫度が増してネガティブな方向に加速しがちでしょう。
だからこそ、行動するかどうかの選択はユーザに委ねるべきだと僕は思います。
例えば、“多数のめんどくさいことをワンストップで可能にしてくれる便利なサービス”があったとして、それでもユーザには“多数のめんどくさいことを全部自分でやる”権利があるのです。
その権利を奪うように、意識的にか無意識的にかを問わず選択を押し付けることは、結局はCVの確度の低い行為なのではないかと思います。
広告であっても、公平な情報を記載しましょう。それはつまりユーザにとってフェアでいるということです。
もうひとつが、身も蓋もないのですが“本当にいいモノを紹介する”ことです。関係各位の「それを言っちゃあ」みたいな顔が思い浮かびますが一度目をつぶります。
本当にいいモノであれば、ユーザに選択を委ねたとしてもきっと選ばれるはずです。本当にいいモノでないから、ライターやメディアが試行錯誤をすることになるのです。
いいモノの基準はさまざまですが、ライターの専門性に合致する題材、メディアと親和性の高い題材を中心に案件を振り分けることで、ミスマッチを未然に防ぐことができるでしょう。
ユーザにとってフェアでいること、という観点からも、自信を持っておすすめできる題材を扱うことが、逆説的にCVするライティングの最大のポイントであると言えます。
ユーザの心を動かす
さて、最初に説明した“ユーザの心を動かす”ことには、小手先のテクニックではない大切なポイントがあります。それは“わかりやすいか”と“熱量があるか”です。
“よい文章”の基準として挙げた項目なので当たり前と言えば当たり前なのですが、CVばかりを追求するあまり、これを見落とした経験があるWebライター・メディア運営者もいらっしゃるのではないでしょうか。
わかりにくい文章では、題材の魅力が半減してCVしにくいでしょう。プロであれば容易いことのようでも、編集部、クライアント、読者などさまざまなステークホルダーがいる状態では、テキストをこねくり回したり、修正に次ぐ修正で、シンプルにする方向に発想がしにくくなることがあります。
自分の文章がわかりやすいかどうかは、いつでも立ち止まって考える必要がありそうです。
また、物理学上のエネルギーが運動に変換されるように、熱量を込めた文章はそれだけCVしやすいのです。好きなことを好きなように書けるわけではないと言いましたが、プロであればそれに近いモチベーションを維持するべきです。誰でもWebにテキストを書けるからこそ、僕たちの腕の見せ所はこのポイントではないでしょうか。
また、これは完全に書き手の意思次第のところがあり、上手に引き出すことが編集の度量でもあるわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はより直接的なコンバージョン(CV)を例にしましたが、そもそもCVの定義は案件によってさまざまなので、たくさんのPVを集めることや、ソーシャルシェアによる定性的な評価(「買ってみたい」「使ってみたい」というユーザの声)が広義のCVになることもあり得るかと思います。
どのような場合であれ参考になるようにまとめたつもりですので、必要なときが来たら、ぜひもう一度読み返していただければうれしいです。
広告案件を請け負うにあたって、僕がいつも思うのはテレビCMのことです。
印象に残るテレビCMというのは、きっと誰でもあるのではないでしょうか。Webのおかげで自由な表現が可能な記事広告も、マスメディアのコマーシャルのように、たくさんの人の記憶に長く残り、ユーザのインサイトをちょっとずつ塗り替えていくようなクリエイティブになり得るのではないかと思っています。
一方で、現在のWebのプロモーションは、より短期的に、直接的なCVがしやすいという構造の問題で、前述した“釣ったり煽ったり”が生まれがちである気がします。この記事をきっかけに、ライターやメディア運営者のみなさまが、コンバージョンさせるということを今一度考える機会になったら、それが僕にとってのコンバージョンだと思ったり思わなかったり。
Webライター・メディア運営者の末席に連なる者として、少しでもこの業界全体の価値を高めるようなコンテンツを目指して制作して参りますので、今後ともLIGおよび朽木をよろしくお願い申し上げます。
【編集長・朽木の主張】
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