みなさんこんにちは、メディアマネージャーのそめひこです。最近は友人の結婚式ラッシュで、弊社CTOである高遠和也が個人運営する高遠銀行、通称“づや銀”からの借入が止まりません。
そんなことはさておき、以前とある企業様のオウンドメディアについて、3日間×4hでコンサルティングを実施したことがありました。結果としては、実施前の月間PV数が「38,815」だったのに対して、コンサル開始から3ヶ月で、月間PV数は「502,037」になりました。
今回の記事では、そのときの実際の取り組みについて紹介していきたいと思います。「オウンドメディアを始めてみたものの、あまりPV数が伸びなくて…」とお悩みのメディア運用者の皆様にとって、少しでもお役に立てば幸いです。
コンサルティングしたオウンドメディアについて
まず最初に、コンサル実施前の運営状況について箇条書きにしてみます。
-
- 社内のメンバー3名が本業の片手間で運営を担当
- クラウドソーシングにて、ライティングを依頼するケースがある
- 社内のメンバーでもライティングをおこなう
- 毎日記事を3〜5本ずつ更新
- 1記事あたりの文字数は500〜1,500
- 担当者は全員メディア運営未経験
- 2014年4月からの運用開始
まとめると、以下のようになります。
-
- コストもリソースもあまり割くことができない
- コンテンツを毎日きちんと複数本出し続ける力と意志(根性)がある
- ドメインが成長していない
- Webメディアの運用知識と指標がほとんどない
以上を踏まえたうえで、下記の手順でコンサルティングを実施していきました。
なお、今回は具体的なコンテンツ内容や方向性ではなく、オウンドメディアを成長させるための“骨格作り”に注力した部分について解説していきます。
あるオウンドメディアを成長させるために実施した5つの手順
1. Webメディアを運営する考え方を変える(考え方)
まず最初に、Webメディアを運用するうえでの考え方をお伝えしました。
オウンドメディアの成功事例を見ていると、すぐにでも結果が出ると思ってしまいがちですが、それは非常に稀なケースです。
企業として運営する以上さまざまな制限がありますし、未経験者が片手間に担当するのであればPDCAを回す速度も遅くなります。苦戦は避けられないでしょう。
また、PVが一気に上がるということもなく、毎日リアルタイムPV数は0〜10ぐらいという状況が続くことになると思います。…どんどん気持ちが萎えていきますね。
だからこそ、最初の段階では以下の3点を考え方として持っておくべきでしょう。
- 結果が出はじめるのは半年から1年後、それまでは試行錯誤し続けるしかない
大前提として、半年から1年は結果が出ないと思っておきましょう。それまでは、どうすれば多くの読者に情報を届けられるようになのか、試行錯誤しながらがむしゃらに走りましょう。 - 成果が出ないから運営を止める、という意思決定は1年後に
なかなか成長が見えないメディアの運営に気持ちが萎えてしまい、「運営を止めたい」となることがあると思います。でも、その意思決定は運営開始から1年後で十分です。3ヶ月やっても半年やってもダメだったというのは当たり前のことなので、地に足をつけて運営を続けましょう。 - PV数が1日500増えたら、「なんで?」の声と一緒に祝杯をあげよう
短いスパンで記事をリリースし続けるからこそ、結果は毎日・毎記事ごとにわかります。だからこそ、ちょっとした数字の変化に注目することが大切です。毎日運営しているメディアで、1日ずつの成果を計測するっていうのは効率的ではないかもしれませんが、そんなもんどうでもいいです。1日PV数が500増えたら祝杯を! 最初はそういうレベル感で、その要因を分析しつつ、モチベーションを上げていくぐらいがちょうど良いのです。
大事なのは、まずは続けること
たとえば飲食店とWeb制作会社は全く違う事業形態です。得られる成果も事業のスケールの仕方も、当然ながら異なります。オウンドメディアでも、それと同じことが言えます。
また、営業であれば目先の結果が大切かもしれませんが、そもそもブランド力のない、未経験者が集まってスタートさせたオウンドメディアに対し、目先の結果を求めるのは酷なことです。
Webメディアはゆっくり頑張ればいいというわけではないですが、スタートが簡単な分、成果もすぐに出るものだと思われがちです。
しかし実際は、新しく事業をはじめるときと同じです。そこを理解しつつ、まずは続けることが重要という点についてお伝えさせていただきました。
2. 流入経路を知る(考え方)
1日に何本も記事を更新するWebメディアは、1本あたりの記事でいかに多くの人に読まれるか、ということばかり意識しがちです。
しかし、その単発の記事が集まって構築されるWebメディアだからこそ、今までリリースしてきた全ての記事を含めたメディア全体で結果を見るべきです。
知っておきたい5つの流入経路
上記画像は、とあるWebメディアのGoogleアナリティクスの「集客 < サマリー」のキャプチャです。これを見ると、ユーザーには5つの流入経路があることがわかります。(※正確には5つだけではないのですが)
- Organic Search:検索エンジンからの流入
- Direct:URL直打ちや、ブックマークからの流入
- Social:Facebook、TwitterなどのSNSからの流入
- Referral:他メディア・ブログ、アプリなどからの流入
- Other:その他
各項目については、おおむね上記のような意味合いと捉えておきましょう。
(例では(Other)の割合が高いですが、その理由は後述します。)
どうやってユーザーに訪問してもらうのかを考えるとき、まずはどういう入り口があるのかを理解していなければ、元も子もありません。この5つの流入経路があることを知るだけでも、戦略の選択肢は大きく広がります。
今回は外部配信先の獲得ができていたケースだったので、「Organic Search」と「Other(refferal)」に絞って骨格を作っていきました。
3. 基本的な記事の作り方を知る(下地作り)
記事の作り方を考えるときに重視したのは、
- コンテンツ内容をタイトルで説明できているか
- タイトルがクリックしたくなるモノになっているか
- 読みやすい記事フォーマットになっているか
- そもそも記事として成立しているか
- ターゲットが読みたい内容になっているか
です。これらを、実際に担当者の方たちとワークショップをしながら設定しました。
もちろん具体的な記事の書き方については、Webメディアによってさまざまな視点や切り口があるため一概に「こうだ!」とは言えません。
ただ、全てに共通して言えるのはユーザが見て得する、満足する、読みたくなる、読みやすいコンテンツなしにして、メディアの成長はないという点です。
今回のワークショップでも、そこに対する知識を付け、できる範囲で調整していくことを目標としました。
なお、過去にLIGブログに掲載されたコンテンツのライティングに関する情報についてはLIG LIBRARY(LIGの過去記事がまとまったクリエティブ図書館)にまとめられていますので、一通り読んでいただけると参考になるかと思います。
4. SEOを意識したコンテンツ・メディア設計をおこなう(下地作り)
既に運用を開始しているサイトに対し、大幅な改修やがっつりとSEO対策をおこなうことは難しいかもしれません。しかし、SEOを意識すること、できる範囲から対策を実施していくことは少しの努力でも実現できます。
特に「記事のSEO設計」については、明日にでもできることばかりです。
基本的な部分については、以下の記事に目を通してもらえれば大丈夫だと思います。
▼SEOライティングについて
あなたの記事の検索順位を上昇させるSEOライティングの基礎知識
▼HTMLタグについて
SEOの基本中の基本!「titleタグ」「meta description」「h1タグ」の書き方まとめ
▼キーワード設計について
ロングテールのコンテンツ設計を!キーワードをリストアップする4つのステップ
それでも、やることが多い、難しい…という場合、
- 作った記事がもし検索されるとしたら、どういう単語の組み合わせで検索されるかを考える
- 考えた単語の組み合わせを、タイトルと文中にしっかりと入れる
という2つだけでも取り組むようにしてください。少しずつ違いが出てくるかと思います。
ただし、キーワードとコンテンツ内容が合っていなければ意味がありません。結果としてユーザーを騙すことにもなりますので、それだけは注意してください。
なお、過去にLIGブログに掲載されたSEOに関する情報についても「LIG LIBRARY」にまとめられていますので、一通り読んでいただけると参考になるかと思います。
今回の場合は、読みたくなる&キーワードがきちんと組み込める記事の切口を考えるワークショップを実施しました。
とにかく大切なのは、記事を作ってからではなく、きちんと事前に設計してコンテンツを作ることです。
5. 外部配信先でトラフィックを集める(トリガー)
はい、今回の記事の目玉です。ここがトリガーになって今回成功を収めることができた部分です。
先ほどアナリティクスの画像をお見せしましたが、「(Other)」の割合が多かったのを覚えてらっしゃいますか。
実はOtherの数値が高いのは、外部配信先からの流入です。
外部配信先とは、例えばYahoo!ニュースやlivedoorニュースなどのポータルメディアや、AntennaやGunosyなどのキュレーションサービスなど、自社の記事を取り上げてもらえるWebサービスのことです。
外部配信先に記事を取り上げてもらった場合、文末などにリンクを記載してもらえるので、そこから流入を獲得することができます。
提携するためにはさまざまなポイントがありますが、外部配信先から見た場合、まずは以下の2つが大前提となります。
- そもそも信用できるメディアか
- (外部配信先にとって)ふさわしいコンテンツを配信できているか
ちなみにLIGブログは唯一somewrite様と提携しています。逆に言えば、somewrite様としか提携ができていません。理由は、コンテンツに以下の特徴があるからです。
- コーポレート色が強い(冒頭で自己紹介を必ずしているなど)
- 写真を多く使っている
- 顕在ニーズに対してのアプローチが多い
さまざまな外部配信先の方とお話をしてきた結果、実際のところ上記3つの理由で掲載不可となることが多かったわけです。少しチューニングすれば提携できるところもあったのですが、そこ以外を重視して運営しているブログですので、提携ができない状態のままになっています。
逆にsomewrite様は、コンセプトとマッチしてるところもあり、そのまま配信してもらえました。
※「えっ、全然掲載してもいいよー!」と言ってくださる配信先様、ございましたら是非お問合せより…嗚呼、神よ。
アタック&チューニングをする
さて、外部配信先にアタックしてすんなりOKがもらえるケースもあれば、アタックしてもOKがもらえないケース、チューニングをすればOKがもらえるケースなどがいろいろ出てきます。
外部配信先によってチューニングの条件は変わってきますが、オウンドメディアとして問題ないと判断できる範囲であれば、記事をチューニングして外部配信先に掲載してもらうようにしましょう。
外部配信先と提携するメリット
基本的に、以下のようなメリットがあります。
- トラフィックが増える
- オウンドメディアの認知が広がる
- ドメインが強くなる
もちろん外部配信先にもよりますので、一概に上記が当てはまるわけではないですし、強弱もあります。
ただし、検索したユーザーにとって満足度が高いコンテンツが掲載されていない限り、ドメインが強くなることはありません。
今回の件については、コンサル前の事前打合せの段階から外部配信先を獲得するべく動いてもらっていたため、コンサルに入ってから1週間後くらいで配信が開始しました。だからこそ、スケールまでが非常にスピーディーでした。
ここから、一気にスケールしました
今回のコンサルで目指したのは「可能な範囲で、検索流入者を安定して獲得できるメディアを作ること」でした。実際に成果を見比べてみましょう。
- コンサル実施の前月
Organic Searchが約12,000セッション、Otherが14セッションです。
- コンサル開始から3ヶ月後
Organic Searchが約220,000セッション、Otherが約56,000セッションになりました。
何が起きたのか
LIGブログでもよくあることなのですが、トラフィックが一気に集まった直後、検索流入がにょきっと増えることがたまにあります。トラフィックを集めたコンテンツに対してだけではなく、今まで作り上げてきたコンテンツに対してもです。
LIGブログでは、ソーシャル拡散がそのトリガーとなってそれが引き起こされます。これは単純に、トラフィック数が一気にあがることで、サイトの評価が一時的にあがり、検索上位に表示されることがある、ということだと思います。
今回のケースでは、外部配信先からの流入(Other)がトリガーとなって、検索ボリュームがにょきっと増える形になりました。
継続して伸びた理由
上記はあくまでも一時的な効果です。実際に他のメディアでは、すぐに検索流入が戻ってしまうケースもありました。
だからこそ大切なのは、一連の取り組みを“検索流入を増やすための施策”として捉えるのではなく、検索エンジンに「ここは良いコンテンツがあるんだよ」ということに気付いてもらうための施策として捉えることです。
実際、検索エンジンに評価されてもサイトに良いコンテンツがなければ、すぐに評価は下がってしまいます。逆に言えば、良いコンテンツがたくさんあれば、その評価はキープされるでしょう。
Googleによる「Google が掲げる 10 の事実」の中には、“Googleは、当初からユーザーの利便性を第一に考えています”という文言があります。
良いコンテンツとは、「ユーザが見て得する、満足する、読みたくなる、読みやすいコンテンツ」だと僕は思っています。
今回のケースでは、ユーザーにとって良いコンテンツであり、かつ検索エンジンに優しいコンテンツを可能な範囲で制作し、それを軸に運営を継続していくことでメディアとしての下地ができあがり、トリガーをきっかけに検索エンジンに評価される、というサイクルのおかげで順調にPVが上がっていったと考えられます。
(もちろん、単純に運営担当の皆様の努力によって記事がバズったり、検索ボリュームの多いコンテンツが検索上位に表示されたり、といった多くの要因もあります)
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回紹介した内容は、本当に初期の段階でのみ通用することだと思います。次の段階に行くには苦労するんだろうなーと思いつつ、継続してPDCAを回すことで、案外簡単に行けるのかなとも思ったりもします。
とにかく忘れてはいけないのが、今回の成功は運営担当の皆様の根性とセンスがあったから、ということです。コンサルとしてできることは設計とチューニングまでで、あとはもう運営担当の皆様の努力の成果です。
僕個人としても、コンサルとして本当に良い経験をさせていただき、感謝です!!
以上、今回の記事を読んでくれた皆さまの参考になれば幸いです。