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「了解しました」より「承知しました」が適切とされる理由と、その普及過程について

「了解しました」より「承知しました」が適切とされる理由と、その普及過程について

こんにちは、ライターの菊池(@kossetsu)です。

ico 人物紹介:菊池良
株式会社LIGに所属するライター。ブログ記事の企画・執筆を担当している。

あなたは「了解しました」と「承知しました」、どちらをよく使いますか?

ツイッターでアンケートしたところ、こんな感じでした。わずかに「承知しました」の方が多いですね。

この2つの言い回しですが、「了解しました」よりも「承知しました」を使う方が正しい、とよく言われています。

僕がこれを初めて知ったとき、強い違和感を覚えました。理由は

  • 「了解しました」をよく使っていた
  • 日常でもビジネスでも「承知しました」を使っている人を見たことがなかった
  • ある日、急に言われ始めた

からです。「承知」が日常的な言い回しではなかったので、気になったんですね。

そこで調べてみたところ、いつから言われ始めて、どういう経路で定着したのかがある程度わかりました。

「了解」よりも「承知」が正しいと言われ始めたのは2011年

まず、Web上でいつから言われ始めたのかを調べました。

すると、「Webメディアで取り上げられ始めたのは2011年ごろ」だということ、そして、「最初は“メールマナー”として言われ始めた」ことがわかりました。きっかけとなったのは以下の記事と思われます。

さらに以下の記事が、はてなブックマークもたくさん付いていて、多くの人に読まれたであろうことがわかります。

さて、2011年の記事は、個人ブログに書かれたものなのですが、元ネタがあります。「日経おとなのOFF」という雑誌の2011年4月号に掲載された“「美メール」の作法”という記事です。

ジャーナリスト、ライターの藤田英時さんが執筆しています。パソコンや英会話関係の本をメインに書いている方です。

藤田さんは2010年に『メール文章力の基本』という書籍を出版しており、それで声がかかったのだと思われます。

「了解」を不適切とした『メール文章力の基本』

この本はビジネスにおけるメールのマナーについて書かれていて、具体的なNG例とその言い換え例を載せたものです。

本の中で“目上の人に「了解」は不適切”というルールを解説しています(142頁)。

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これによると「了解」を不適切だとし、その理由を“「了解」には尊敬の意味が含まれていないから”とはっきり言い切っていますね。その言い換え表現で「承知しました」を推奨しています。

この本は25万部売れたベストセラー阿部紘久『文章力の基本』の続編で、この本も5万部売れたそうです。

さて、では他のメールマナー本にも、「了解よりも承知が正しい」と書かれているのでしょうか? 調べてみると、「あまり書かれていない」ということがわかりました。

「了解」をNGとしたメールマナー本は非常に少ない

これを確かめるため、国会図書館に行き、「ビジネスメール」とタイトルにある書籍をひたすら閲覧しました。すると、『メール文章力の基本』以外の書籍では、そのような記述はほぼ見られませんでした。

それどころか、「了解が適切」と書かれている本もいくつかあるんですね。

「了解しました」に特別な注釈なし

こちらは2004年に出た『ビジネスメールものの言い方辞典』という本。著者名は「シーズ」となっていて、Web系の本を何冊か出版しています。

ビジネスメールでよく使われる表現と、その類例をシチュエーション別に載せています。

本の中でそのものズバリ「了解しました」という表現が紹介されていますが、そこでは「不適切」というような注釈はありません(98頁)。

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“承りました”を類例としているだけで、了解が不適切とは書いていませんね。また、その次のページでは「了解」をこういう風に解説しています。

了解は、事情を理解すること・納得すること。単にわかるだけでなく、それを認める意味が強くなります。

2004年のこの本においては「了解」は使っていい表現として出てくるのですね。

「承知いたしました」の言い換えとして登場

向井京子さんが2006年に出版した本。こちらもビジネスメールで使える文例を紹介しています。言い回しだけではなく、メールの全文を例として書いているのが特徴ですね。向井さんは他に英会話関係の書籍をいくつも出しているライターです。

こちらの「注文変更に対する承諾」という項目で以下のように書かれています(120頁)。

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「承知いたしました」の言い換え例で「了解申し上げました」が使われています。フォーマルな表現ともされています。

ここにおいても「了解」は不適切なものとは扱われていません。

「了解」は「承諾」の上位概念

2007年に出版された本です。著者は「ビジネス文書マナー研究会」となっていて、他に『すぐに使えるビジネス文書実例集』という本を出していますね。

こちらもシチュエーション別に様々な表現を載せるというものです。その中の「理解・承諾の表現」という項目で、「承諾しました」の言い換え例として「了解いたしました」が出てきます。

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「内容を理解したうえで承諾したという意味合い」と書かれています。つまり、承諾よりも上位の表現として「了解」が紹介されています。

他にも「日常的に使われます」とあります。2007年の段階でこの表現はビジネスシーンで浸透していたということです。

「了解」を不適切としない本たち

その他、下記の書籍でも「了解」を間違いとはしていません(事務的な感じがする、という記述はあり)。

  • 『ビジネスメール文例&フレーズ辞典』(2006年)
  • 『頭がいい人、悪い人のビジネスメール』(2009年)
  • 『ビジネスメール 「こころ」の伝え方教えます』(2009年)
  • 『就活から役に立つ新社会人のためのビジネスメールの書き方』(2012年)
  • 『ビジネスメールの作法と新常識』(2013年)
  • 『ビジネスメール文章術』(2013年)
  • 『相手に伝わるビジネスメール「正しい」表現辞典』(2014年)

こうやって見ると、2010年以降の本もあります。間違いとするかどうかは、分かれるんですね。

その中ではっきりと「了解」をNGとしている本も見つけました。神垣あゆみさんという方が書いている『メールは1分で返しなさい』(2009年)という書籍です。この本に関しては、調べてみるとちょっと面白い事実がわかったので最後に書きます。

その前に“ビジネスマナー本では「了解」がどう扱われているか?”というところを見てみましょう。

ビジネスマナー本で「了解」をNGとしているものはない

メールマナーではない、ビジネスマナー全般に関しての書籍も1980年〜2010年ごろのものを40冊ほど目を通しました。すると、「了解」を不適切としているものは見当たりませんでした。

例えば、2004年に出版された田中千恵子『ビジネス敬語お決まりフレーズ』という本があります。田中さんは様々な企業のマナー研修の講師をされている方ですね。この本は場面ごとの適切な言葉づかいの例をまとめられています。

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「承知いたしました」の言い換え例で「了解いたしました」が挙げられています(64〜65頁)。「わかりました」は丁寧さに欠けるとされていますが、「了解」に関しては注釈はありません。

様々なビジネスマナー本を見てみたところ、よくある敬語の間違いとしてしょっちゅう取り上げられるのは、「ご苦労さまです」でした。ほかには「美化語の“お”と“ご”の過剰な多用に気をつけよう」というものですね。

そもそも「了解しました」という言葉が出てこないものが多かったです。「わかりました」ではなく「かしこまりました」にしよう、という記述は多数ありました。

はっきりと「了解」をNGとしている本を調べてみたら……

さて、神垣あゆみさんの『メールは1分で返しなさい』です。神垣さんはメールに関する本を何冊も書いているフリーランスのライターですね。挑発的なタイトルですが、お決まりのフレーズを覚えて、メールの返信にかける時間を減らそうという趣旨のものです。

この本は『メール文章力の基本』以前に「了解は不適切で、承知が適切」としている、ほとんど唯一のものでした。「承諾のフレーズ」をまとめたところにこうあります(103頁)。

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「尊敬の意味が含まれていないから」とはっきり言い切っています。『メール文章力の基本』と同じ理由ですね。

なるほど、『メール文章力の基本』が初出ではなかったのだな……と思いながら、神垣さんの他の本も一応見てみようと、初めての著書である『仕事で差がつくできるメール術』(2007年)を読んでみました。これはフレーズ集ではなく、書き方や作法をまとめたハウツー本ですね。

すると、こんなことが書いてあったんです(186頁)。

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はい。ここでは、「尊敬の意味が含まれていないから」とは言っていません。「抵抗がある」と言っています。その理由は次のページにこうあります。

客先や目上の人に対しては略式な言葉というイメージがあり、常に「これでいいのかしら」という疑問がありました。

イメージなんですね。「了解は不適切」というセオリーがあったのではなく、神垣さんの個人的な違和感だったと。

そして、「承知しました」を言い換えとして持ってきているのは、たまたま聞いて「感じがいいな」と思ったからだと。それが次の本では「尊敬の意味が含まれていないから、承知しましたの方が適切」となっていると。

『仕事で差がつくできるメール術』は、同じ章のコラムにも興味深いことが書かれています(187頁)。

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これは神垣さんが運営するメールマガジンに寄せられた意見です。50代の男性の方が「40年以上前、テレビドラマで新聞記者仲間が使って」いたから広まったのではないかと。

この方の実感としては、40年前から使われていたということですね。そして、今までの調べたことと照らし合わせ、ビジネスマナー本に取り上げられていない状況から考えると、それが不適切とはされていなかったということになります。

つまり、「了解は不適切」という意見が出てきたのは、ここ最近だということになります。そして、その出発点は、神垣さんの「これでいいのかしら」というイメージだったかもしれないと。「“承知しました”の方が適切」となったのは神垣さんがたまたま聞いて「感じがいい」と思ったからだと。

さて、神垣さんと『メール文章力の基本』には、何か繋がりがあるのでしょうか。再び『メール文章力の基本』を読んでみると、ありました。

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参考文献として神垣さんの書籍が挙げられています(197頁)。つまり、「了解」に関する部分は神垣さんの本を出典としているということですね。

点と点が線になりました。

まとめ:要因はWebメディアブームか

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時系列をまとめるとこうなります。「Webメディアブーム」について、少し説明しましょう。

ある時期から、「Webメディアを運営し、ファンを作ろう」「Webにコンテンツを配信して、新しい読者層を獲得しよう」というようなことが言われ始め、出版社を含めた様々な企業がWebメディアを作るのがブームになりました。

そして、それらWebメディアに記事を執筆する大量のWebライターが必要になったのです。圧倒的な書き手不足のため、プロのライターだけではなく、一部のブロガーや、文章を書くのが好きという未経験者も登用されました。

僕もその1人でした。ちょうど2012年ごろのことです。大学に通いながら、編集プロダクションなどを通じて仕事をもらい、別の名前でWebメディアに記事を提供していました。

しかし、「Webメディアを運用しよう」「Webに記事を配信しよう」となっても、予算がありません。原稿料は記事1本につき2000円が相場でした。

それでは取材ができません。では、どうやって記事を作るのか。書籍やWeb記事を参考にして、記事を書くんですね。特にビジネス系のハウツーはよく読まれるので、多く書かれました。

そして、当然WebではPV(記事のアクセス数)が求められます。記事のPV数に応じて追加支払いをするというメディアもありました。すると、PVを取れる記事を書くにはどうすればいいか、というノウハウが編集部内で共有されるようになっていきます。

そのうちのテクニックの一つとして、「逆説」というものがありました。

世間で常識とされていることの逆を言うと、注目を集めやすいと。当時僕が関わっていたWebメディアにはライター向けのマニュアルがあり、はっきりとそう書かれていました。

「了解しました」より「承知しました」が適切、という意見はこの状況にちょうど良かったんでしょうね。世間では「了解しました」が普通に使われている、でもそれは間違いらしい、本にもそう書かれている、と。そして、読者は「了解しました」を疑問なく使っているので、「えっ、そうなの?」と記事を見る。PVが集まる。PVが集まりやすいので、他のメディアもこれを取り上げる。マナーとして普及していく。

おそらくは、そういうことなんでしょう。

おわりに

長々と書いてきましたが、僕個人の意見としては、言葉の意味なんて時代によって変わりますし、言葉づかいに間違いがあるとすれば、「相手に意味が伝わらないこと」だと思っています。

だから、「了解しました」でも「承知しました」でも、どちらでも良いと思っています。内容を理解したということは伝わるので。

ただ、「何で急に言われ始めたのだろう?」という疑問はずっと持っていました。今回調べて1つの答えが見つかったのはとても楽しかったです。

「相手に合わせて、好きな方を使いましょう」というざっくりとした結論で終わります。ではでは。

 

 

この記事を書いた人

菊池良
菊池良 メディアクリエイター 2014年入社
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