スマートフォンに特化した広告マーケティング分野で、国内市場シェアNo.1を獲得している株式会社CyberZ。2012年12月に当時最年少でサイバーエージェントの取締役に就任した代表の山内氏は、創業2年目で迎えたフィーチャーフォン向け広告代理業からスマートフォン向け広告代理業への業態転換や、社運をかけたアメリカ支社の立ち上げを経て同社を成長させました。
CyberZがこれから新たに目指すのは、「日本で新たなゲームの一大産業を創ること」。世界で盛り上がりを見せつつあるe-Sports事業に参入し、2016年には同社主催のe-Sports大会「RAGE」を初めて開催します。同社が見据える日本のゲームビジネスとe-Sportsの未来についてお話を伺いました。
※e-Sports:操作に高度な技能が必要となる対戦型ビデオゲームを用いた競技のこと。スポーツ競技の一種としての電子ゲームである。
引用元:IT用語辞典 e-Words
人物紹介:山内 隆裕氏 大学卒業後、サイバーエージェントに入社。2008年、モバイルサイト制作会社CyberX取締役に就任。2009年、モバイルマーケティング会社CyberZ設立と同時に現職に就任。また2012年より、サイバーエージェントのスマートフォン広告事業管轄、取締役に当時最年少で就任。 |
人物紹介:中村 智武氏 2002年日本オラクルに入社、エンジニアとしてデータ分析を担当。2010年にフロンティアNEXT社のCTOに就任し、多数のアプリサービスをリリース。2012年にCyberZへ入社。スマホの広告効果測定ツール「F.O.X」の開発責任者を経て、現在は「OPENREC」の開発責任者を担当。 |
変わりつつある日本のゲームトレンドに新たなカルチャーを
スマホゲームに特化した、高画質プレイ動画専用SDK(ソフトウェア開発キット)の「OPENREC」は、ゲーム中にプレイ動画を録画し、簡単に編集・シェアできる機能を搭載。また、ゲームに特化した動画配信プラットフォーム「OPENREC.tv」と連動しています。
- 山内
- 「OPENREC」立ち上げのきっかけは、誰でも手軽にスマホゲームの実況動画を楽しめるようにするという構想です。日本でも既に動画配信サービスはいくつかありますが、実際に配信をおこなうには少しハードルが高い印象があります。例えば、機材などの配信環境を整え、かつおもしろく話せる人でないと動画配信はやりづいらい雰囲気があるかと思います。「OPENREC」の立ち上げ当初はそんな動画配信のハードルを下げたいという考えがありました。
さらにゲーム動画を観るユーザーのモチベーションも上げていくために開発したのが、「OPENREC.tv」です。
- 山内
- 「OPENREC.tv」は、ゲーム動画を観るユーザーのためにつくったプラットフォームです。このサービスはゲームに特化し、ユーザーの嗜好に合わせた動画を配信していくことを目指しています。ゲームをプレイする人も、観る人も、それを楽しむためのハードルを下げて、ゲーム市場を盛り上げていきたいと思っています。
これまでスマートフォンに特化した広告マーケティング事業を展開してきた同社ですが、数あるジャンルの中で、なぜゲーム市場に特化した新規事業を展開するのでしょうか。
- 山内
- 現在、日本ではコンソールゲームが主流ですが、海外ではオンラインゲームも流行っています。ぼくはもともとオンラインゲームも好きなので、日本でもいつかオンラインゲームをプレイする人が増え、盛り上がっていってほしいなと思っていました。そして、その市場でe-Sportsなど新たな日本のゲーム文化を創っていきたいと考えていました。
OPENREC.tvの操作画面
日本におけるオンラインゲームの現状はいかがでしょうか。
- 山内
- 最近はスマホのゲームも含めてMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)が増えてきて、日本のユーザーもオンラインゲーム慣れしてきました。ゲームのプレイ動画を観るのであれば一人で楽しむゲームではなくて、複数人で同時にプレイしているオンラインゲームのプレイ動画の方が、やっぱりエキサイティングですね。
2014年9月に「OPENREC」をリリースしてから約1年、ユーザーにサービスを受け入れてもらうためには、デザインの改善が必要不可欠だったそうです。
- 中村
- 2015年10月から山内が総合プロデューサーとして開発チームに入って、抜本的に「OPENREC.tv」を改善していきました。あらためて心地いいユーザー体験とはなんなのか、と。ゲーム動画を観ることに集中してもらうために、その一つひとつのユーザー体験を突き詰めて考え、極限まで機能をそぎ落としました。
- 山内
- スムーズに動画を読み込めなかったり、待たされたりするとユーザーはイライラしてしまう。機能は追加するよりも、減らすほうが大変です。ユーザーに受け入れられるための施策は、100人いれば100通りあります。サービス開発はユーザーに受け入れられる最大公約数をちゃんと理解した上で、運営をしていくことが重要だと考えています。
- 中村
- 目玉だった機能をはじめ、つくり込んだランキング機能や配信者に対する評価システムを外し、ユーザーが気に入ったものをフォローして、視聴することに集中できるようにしました。UIにおいても、画面のボタンは少なく配置してシンプルにしています。
- 山内
- ユーザーにとって最適な動画をレコメンデーションする機能や、検索結果の正確性にはこだわっています。裏側ではすごくつくりこんでいますが、表面はわかりやすくシンプルにしています。ユーザーのアクションを極力減らしていくための本質は変わっていないですよ。