「本当の責任なんて職務に存在しない」オンリーワンの独自性をつくるデジタル・エージェンシー|アイソバー・ジャパン

「本当の責任なんて職務に存在しない」オンリーワンの独自性をつくるデジタル・エージェンシー|アイソバー・ジャパン

タクロコマ

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デジタルソリューションをグローバルに展開するアイソバー・ジャパン株式会社。2007年に原宿の小さな一室で創業した同社は、2012年から3年連続で“デジタル・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー”において金賞を受賞するほどの企業にまで成長を遂げました。

そこで今回は、同社で代表取締役を務める内永氏の「本当の責任なんて職務に存在していない」という独自の経営理念、「オンリーワンの独自性を追求する」ための付加価値とデジタルソリューション市場の未来について、お話を伺いました。

730d0f6346a03f9ada647fa1eef5a2f9 人物紹介:内永 太洋氏
電通イージス・ネットワークへジョインし、Campaign Asia Pacific誌主催のエージェンシー・オブ・ザ・イヤー2012, 2013 & 2014年度金賞に導いた。クリエイティブとテクノロジーでデジタルマーケティング領域にイノベーションを日々起こし続けている。

「インターネットの理念に共感してデジタルビジネスをやっている」自分たちだけで世界へ進出するなんて無謀だ

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原宿のアパートの一室で、アイソバー・ジャパンの前身となる会社を創業したという内永氏。「今となっては、すごく感慨深い」と、当時を振り返ります。

内永
一緒に起業した3、4名でやっていて、最初は小さなWeb制作プロダクションだったんです。Webのコンサルテーションとか、システム開発なんかも一緒にやっていたので、ちょっと幅の広いエッジの効いたプロダクションという感じでした。

設立当初から考えていたのは、単純な制作プロダクションではなくて、コンサルから制作、開発までを一手に引き受けられるインターネットのフルサービスカンパニーをつくろうかなと。

当時の社名はファイル・フィックスでした。さまざまなファクター(要素)が存在するインターネット上のマーケティングにおいて、それらを整理し格納して、最終的なフィックス(固定・決定)までもっていくという想いを込めたんです。

アイソバー・ジャパンがはじめて受注した案件についてお聞きすると「創業したばかりのベンチャー企業に舞い込んだ、大型案件だった」と話す内永氏。

内永
大手チェーン居酒屋のWebシステムをフルリニューアルする案件で、コンペティターが大手のSIerだったのに、勝ったのです。当時は自社ホームページもない役員2、3名だけの会社でした。しかもプレゼン中に社名を間違えていたにも関わらず。

プレゼン後には始末書を書かされまして。でも、気に入ってもらえて。その案件は全部受注をし、システム開発まで納品させていただきました。

※SIer:システムインテグレーション(SI)を行う業者のことである。

引用元:SIer

このように内永氏が常に前向きな姿勢でいられる理由は、幼少期の原体験にありました。

内永
小さいころから身体があまり強くなくて、入退院を繰り返していました。そんなに学校も行ってないので「社会でこう生きなければならない」ってシステムに乗ってなかったのもあると思います。

そんな中で、かなり客観的に自分の人生や世界を観てきたので。座右の銘は「考えても、意味の無いことは考え過ぎない」ということ。

最初の案件受注後は、国内で日本航空やパナソニック、CASIOをはじめとした大手のクライアントと直接取引を開始します。2013年には、独立系のメディア・エージェンシーとして世界最大を誇るイージス・メディア社(現:電通イージス・ネットワーク社)との資本提携を実現しました。

※メディア・エージェンシー:広告制作などは行わず、メディアの企画や購入を行う広告会社。

引用元:メディア・エージェンシー

内永
日本に来た外資のクライアントは、皆一様に最先端のデジタルマーケティングアイデアを求めていました。ITを使ったマーケティング手法の流れは、やはり北米から来ていましたから。

しかし、そのころの外資のデジタルエージェンシーのスタッフたちは、デジタルの経験があまりなかった。テクノロジーの分野でリスク管理ができていなかったし、アイデアもつくれていなかった。なので、我々とリレーションを組んで一緒に営業に行っちゃおうと。

当初から自己資本だけで拡大をするのではなく「他社パートナーシップを組んで会社を大きくしたい」という気持ちがあったと語る内永氏。

内永
世界共通のインフラを無料で使える“インターネットの理念”に共感してデジタルビジネスをやっているので「世界を股にかける企業になりたい」という想いは、(創業したばかりの)原宿の一室のときから根底にあります。そして「日本のポテンシャルをもった会社が世界進出するときのパートナーになりたい」という考えがありました。

とはいっても、まだベンチャー企業の自分たちだけで進出するなんて無謀だし、負けちゃうなと。その後イージス・メディア社からオファーがあり、全て英文の契約書にあくせくしながら1年半ぐらいかけて契約しましたね。

「本当の責任なんて職務に存在しない」アイソバー・ジャパンという庭の中で成長し、花を咲かせていくのが我々の仕事

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「我々の仕事は形としての資産がありません」と語る内永氏。そして、アイソバー・ジャパンの事業範囲がデジタルだからこそ、会社の成長を飛躍させるのは“人”だと考えます。

内永
電通に買収される前のイージス・メディア社と資本提携に合意する前、ブランドのTOPであるイギリス人と話をしたとき、彼らは“ガーデン”という表現を使っていたんです。「木々が生長していくように、アイソバー・ジャパンという庭の中で、いろんな人たちが成長して花を咲かせていくことが、我々の仕事だ」と。

どれだけいい人間を集められるかが、デジタルカンパニーの成長にとって最も大きなファクターになります。だからこそ一緒に働く人に重きを置いているのです。

それはすなわち「会社自体が大きな生命体みたいなもの」と喩える内永氏。

内永
経済活動を通じて個人のステージが変化をしていく様を見るのが、僕は結構好きです。また社員の変化を通じて、自分自身の成長を感じるときもあります。会社はまさに実験場みたいなものだけど「そういういい変化を与えられるような環境をつくりたい」というのが働くことへの動機ですね。

アイソバー・ジャパンだけでしか生きていけない人材ではなくて、世界中で活躍する、付加価値のある人間を育てていきたいです。アスリートのような、プロフェッショナルが揃っていればいいなと。

プロフェッショナルを求めている内永氏は、社員に対してどのような姿勢で働くことを求めるのでしょうか。

内永
会社なんて何の意味もない。ただの箱です。それに対して価値を与えていくのは、社員です。うちは幅広く仕事ができる反面、責任範囲も大きいです。

でも実際、本当の意味で責任なんて職務に存在していないですよね。その人自身が個人で負債を負うわけじゃないし、もちろん死ぬわけではない。責任という言葉はあるし、責任感は必ずもってもらいたいけど、今の日本で働く上でそれは存在しないのだから、好きにやればいい。辞めたきゃ辞めりゃいいし、いたければいればいい。

でも、どうせいるんだったら楽しく成長して自分の付加価値をつくったほうがいいんじゃないのかな。

働くことに対して、このような価値観をもつ内永氏が示唆するのは「会社という舞台を、いかに利用して楽しく生きるか」ということでした。

内永
今こうして生きている時間は、すごく価値のある時間だと思う。毎日を僕らは積み上げ式で歩いているんじゃなくて、限りある一日一日を切り崩している感じなんですよね。最後はやっぱり、いつかなくなってしまう存在ですから。

そして折角貴重な時間を仕事に費やすのであれば、そこをハッピーにした方が人生はハッピーですし。でも一方で働くだけが人生の全てではないとも考えています。なので、ただお金のためだけに働く環境は、なるべくつくりたくないなと思っています。

「オンリーワンの独自性がないとガーナにはなれない」海外市場をどう取るかがキーになってくる

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企業の代表でありながら“会社なんて何の意味もない。ただの箱です”と語る内永氏。全社会議で幾度となく社員に伝えているそうですが、このように話す理由について、とある演説の一文を例にして説明します。

内永
昔、米国の元大統領ジョン・F・ケネディが国民の前で「国があなたのために何をしてくれるのかを問うのではなく、あなたが国のために、何を成すことができるのかを問うてほしい」と演説しましたよね?

それと同じです。一人ひとりの社員の活動が、会社という“箱”に対して付加価値を与えていくんですよ。単純に傍観者になったり、受け身になるんじゃダメ。僕らは自発的にオンリーワンの独自性をつくっていかないと、コスト競争に巻き込まれてしまう。

だからこそ業界でオンリーワンの存在になるべく、西アフリカに位置する共和制国家のガーナを手本にしていると内永氏。

内永
イギリスの植民地でありながら、カカオの原産国であるガーナは交渉に強いですよね。自分たちの過ごしやすい環境やブランドをもちたいなら、付加価値をもたないとガーナのような独立性は保てない。

そして、デジタルソリューションの領域で巨大なライバルたちと対等に渡り合うためには「リアルとデジタルの結びつきを理解することが重要」と内永氏は話します。

内永
両軸の関係性は強くなり、その境はもうほとんどなくなっていると思う。仕事の入り口はインターネットでしたけど、リアルな生活でも気付かないうちに、僕らは既にデジタルの中でどっぷりと生活していますよね。

スマートフォンをいじったりとか、お店のデータだって全部オンライン。ただ、デジタルとリアルの境なく横断的にサービス自体を提供するアプローチがあまりなかったので、そこら辺は意識しながらソリューションを提供していくことは、すごく大事かなと。

そのため、クライアントへの解決策を提案する際に「デジタルマーケティングと呼ぶのは、もう古い」と内永氏は指摘します。

内永
我々は、別にマーケティングだけを提案しているわけではない。

僕らはデジタルを通して、会社やブランドの新しいアプローチの提案をしています。ただ基本的には、会社のROIを上げるというのが使命です。よりクライアントのビジネスを理解して、実際のコンバージョン(購買)まで結び付けるような施策を打っていくということを、やらなければいけない。

現在の市場から求められていることを理解しつつ、これからの変化を敏感に察知し行動していく必要があるのです。

内永
最近は、マスメディアからデジタルメディアへ利用切り替えが行われています。でもその数字には、からくりがある。いわゆるWebソリューションの領域はマチュアなプレーヤーが揃っていて、市場に成長性は今あまりないんですよ。つまり今後の拡大のためには、海外展開をどう取るかがキーになってくる。

110カ国を超える電通イージス・ネットワークが強みである同社は、グローバルビジネスを急速に拡大しています。

内永
1週間に1社ぐらいのペースでM&Aして成長してますから、電通グループ自体も今後成長が加速していくでしょうね。僕らアイソバー・ジャパンも独自で、少なくともあと2、3年以内には4倍ぐらいの規模感にはならないと、市場へのインパクトを与えるような存在にはなり得ない。

僕らの親会社である電通とのシナジーを今後もっともっと発揮させていって、アイソバー・ジャパンというブランドを日本で浸透させていこうと、今考えていますね。

親会社である電通とのシナジーを今後もっと発揮させることで「アイソバーというブランドを日本でも浸透させていこう」と、同社は考えています。原宿の一室から描いてきた“世界を股にかける企業”として、活躍の場がさらに広がっていくことを期待します。


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