「競合はファンド」。運用型広告コンサル会社アナグラムが圧倒的な存在である理由とは。代表阿部氏インタビュー

「競合はファンド」。運用型広告コンサル会社アナグラムが圧倒的な存在である理由とは。代表阿部氏インタビュー

Mako Saito

Mako Saito

みなさんこんにちは、マーケターのまこりーぬ(@makosaito214)です。

またまたマーケターの大先輩のもとへ取材にやってきました! いつも本当にありがとうございます! 今回は、「いつか……いつか必ず取材にいきたい!」と思いを寄せてきた方No.1、sem_master(@semlabo)もといアナグラム株式会社・代表取締役の阿部さんです!!!

アナグラム株式会社 代表取締役 阿部 圭司 さんリスティング広告やFacebook広告を筆頭とする運用型広告の領域が得意なマーケティング支援会社、アナグラムの創業者。人生のテーマは「折り合いをつける」。大好物:経営、組織論、戦略論、登山、ゴールデンレトリバー。著書複数

アナグラムさんは「運用型広告コンサルティング会社」、つまり大きくは広告代理店のカテゴリに該当します。競合他社が多く、差別化の難しい業種であるにも関わらず、毎日平均5〜10件近くのお問い合わせを獲得。さらには業界内でも「運用型広告といったらアナグラムだよね」と絶大な支持を得られています。

「自分の尊敬している人が尊敬している方って、相当すごい人なんじゃないか」って、思うじゃないですか。私にとって阿部さんはまさにそんな存在で、過去取材にいったマーケターの大先輩方から阿部さんのお名前を何度も聞いていました。

「どうしたら人は動くのか」「組織とはどうあるべきなのか」という核心に迫る発言をふだんからされている阿部さんにこうして貴重なお時間をいただけたので、今回の取材は恐れ多くも、「マーケティング」だけでなく「組織づくり」まで一歩踏み込んでお話をうかがってきました!

マーケターはもちろんのこと、広告代理店に勤めるすべてのみなさま、採用や育成に携わる経営者・管理職のみなさまも、ぜひぜひご一読ください!

アナグラムのマーケティング戦略

困っているお客様が自ら訪ねてくる

まこりーぬ:阿部さん、本日はお時間いただきありがとうございます! 先日登壇されていたイベントにて「緊急事態宣言が明けたあとは毎日お問い合わせが10件近くきています」とお話しされていましたが、どのような課題をもった方が、どういったルートでアナグラムさんに問い合わせているのでしょうか?

阿部:お問い合わせいただく企業の9割が「いま別の代理店に広告運用をお願いしているんだけど、CPA(コンバージョン単価)をもう少し下げたい」「コミュニケーションがうまくいっていない」といった、なにかしらの不満があって代理店変更を検討されているケースですね。

アナグラムに声をかけていただく理由としては、「以前からブログやSNSでよく見かけていた」「アナグラムのことは知らなかったけど◯◯さんに教えてもらった」という2つが多いです。なのでオウンドメディア「アナグラムのブログ」を含むコーポレートサイト経由のお問い合わせがほとんどですね。

ありがたいことに多くのお問い合わせをいただいていますが、コロナ禍が落ち着きはじめていたゴールデンウィーク明け以降はさらに増加傾向にあります。

まこりーぬ:代理店変更の相談が9割とは、困ったときの駆け込み寺感がありますね……! そして現在さらに問い合わせが増えているとのこと、さすがです。

阿部:緊急事態宣言が出たころはさすがにお問い合わせ数は減りましたけどね。でも必ずまた増えるっていう確信はありました。

うちの場合、そもそも僕らから営業することはなくて、困っているお客様が自らお問い合わせしてくださるんですよ。会社として売上を伸ばさければならない、その課題解決策としてアナグラムに相談する。……この一連の流れって、コロナ禍前後でなにも変わらないんです。

むしろこの状況下では、経営方針が変わったりパートナー会社との関係を見直したりとさまざまな変化が起きているため、ご相談が増えているのかなと思います。

まこりーぬ:「アナグラムさんなら、この厳しい状況をなんとかしてくれるんじゃないか」という期待や信頼があってこそのお問い合わせですね……!

「ザイオンス効果」と「返報性の原理」

まこりーぬ:困ったときに一番に相談される会社、となるまでに実行されてきたマーケティング施策をぜひ教えてください!

阿部:世の中がこういった状況下ですのでお話ししますけど、自社のマーケティングを動かすうえで昔からずっと意識していたのは、ザイオンス効果(単純接触効果)ですね。自社ブログで情報発信するだけではなく、「Web担Forum」にも「MarkeZine」にも「ECzine」にも寄稿して、検索結果からどのサイトに飛んでもアナグラムの情報にたどり着いてしまうような状況を意図的に作ってきました。

※ ザイオンス効果(単純接触効果):ある対象に繰り返し接することで、肯定的な印象が強まる現象。

本を出したりセミナーで日本全国を回ったりしたのも同じ目的です。「オンラインもオフラインもどこを見てもアナグラムやないか!」ってなったら、もうアナグラムに相談するしかないじゃないですか(笑)。

まこりーぬ:取材前、阿部さん発の情報を調べてみるとそれはもう膨大な情報量で驚きました(汗)。ザイオンス効果を狙っての情報発信だったんですね……!

阿部:でも途中で気づいたんですよ。「うちにお問い合わせがくるのは、ザイオンス効果だけではなくて返報性の原理が働いているな」って。

※ 返報性の原理:他人から何らかの施しを受けた場合、なにかしらお返しをしなければならないという心理が働くこと。

たとえばホワイトペーパーって「獲得したリードをナーチャリングした結果、商談につながりました」と語る企業が多いですよね。でも実際ダウンロードした側って、購買意欲が育ったというよりも「いい情報もらっちゃったから、電話ぐらい出てあげるか……」っていう心理のもと営業を受けているんだと思うんですよ。

この「与えてもらったらなにか返したい」という人間の心理作用に気づいてからは、「これ有料じゃないですか!?」というレベルの情報もオープンにどんどん出し続けています。その結果がお問い合わせとなって返ってくると考えていますね。

まこりーぬ:たしかに! 有益な情報を提供してくれる会社や人には感謝しかないので、いざなにか案件が出てきたら相談しようと思っている自分がいます。

阿部:ですよね。アナグラムのTwitterアカウント(@Anagrams_inc)で「Peing-質問箱-」を使い質問に答えているのも返報性の原理があるからです。質問に回答してくれる企業を決して嫌いにはならないじゃないですか(笑)。お客様がどこに悩んでいるのか知るきっかけにもなるので、誰も損しない仕組みだなと思いますね。

まこりーぬ:質問箱、いいですね! 寄せられるお悩みから次なるコンテンツのテーマも見つかりそうです。アナグラムとして過去も現在も本当にたくさんの情報発信を続けられていますが、コンテンツを作るうえで気をつけている点はありますか?

阿部:クオリティですね。情報のクオリティは生命線なので、適当な記事は絶対に公開しません。いまは運用型広告歴約10年のベテラン社員が正しいとジャッジした情報しか出さないよう徹底してますね。

まこりーぬ:やはり、質……! とくに運用型広告に関する情報は各媒体の新機能リリースや仕様変更など更新性が高いので、「正しさ」はすごく重要ですね。

競合は「ファンド」

まこりーぬ:ちなみに……野暮な質問ですが、競合する広告代理店ってどのあたりなんでしょうか……?

阿部:よく聞かれるんですけど、競合する代理店っていうものはいないんですよね。僕らにとっての競合は「ファンド」です

まこりーぬ:ファ、ファンド……!!!

※ ここでは「機関投資家や富裕層から集めた資金を運用する投資のプロたち」という意味合いでファンドという言葉を使用しています。

阿部:お客様にとって大事なのはどこに投資すれば効果が最大化されるか? という一点ですよね。だから僕らにお金を預けてもらったら、ファンド以上にレバレッジをかける気持ちで運用します。じゃないと資産運用のプロに預けたほうがいいっていう話になりますからね。そういう意味においては広告業というか、金融業です。まぁ、広告代理店の本質的な価値の一つが金融業だという話に近いですね。

まこりーぬ:「競合はファンド」という言葉、お客様にどういうスタンスで向き合い価値を提供されているのかまで伝わってくる一言ですね。す、すごいです……!

アナグラム流・お客様への寄り添い方

「目標CPAをクリアすればOK」じゃない

阿部:「CPA(コンバージョン単価)が目標値をクリアしているからいいでしょう」という広告代理店……というか担当者が、僕は大嫌いで。「CPAは下がっているしコンバージョンは減ってない、でも売上が上がっていない」っていう状況よくあるじゃないですか。結局売上が伸びなかったらお客様にとって意味がないですし、僕らはいずれ契約を切られるわけですから、原因はきちんと分析しなきゃいけないですよね。

関西の中小企業の社長さんがよく言う「で、それやったらいくら儲かんの?」に答えられるかどうかって、商売の本質だと思うんですよ。結局はこの問いに帰結するから、売上を見ないで仕事をするのはよくない、投資対効果に誰よりもシビアになろう、と社内に言い続けています。

まこりーぬ:依頼主であるマーケティング担当者側が売上ではなくCPAを追いかけている場合も多いと思うのですが、そういった場合はどのように対応されているのでしょうか?

阿部:担当者さんがもっているKPIがCPAやコンバージョン数なのであれば、僕らを認めてもらうためにもまずはそのKPIを達成させますね。でも売上につながっていないと結局はその担当者さんがいつの日か経営陣に「ぜんぜん売上出てないじゃん」って怒られるだけなんですよ。

なのでKPIを達成する以上に、売上を伸ばす提案を僕らからおこないます。ここまでやれば、理解ある担当者さんならわかってくれるんですよね。あぁ、自社のKPIが間違っていたから変えようって。

まこりーぬ:それは頼もしいです。担当者の味方ですね(涙)。

簡単にLPのダメ出しをするな

まこりーぬ:お客様の売上を伸ばす提案となると広告運用以外のマーケティング施策も踏まえざるを得なくなりそうですが、アナグラムさんはどこまでカバーされているのでしょうか?

阿部:マーケティング全体を支援するプランもありますが、やはりアナグラムのメインは広告運用です。まずはそこで成果を出して信頼を得たうえで、マーケティング活動全体のアドバイスをしますね。ボトルネックが見つかれば改善策を提案するし、信頼できるパートナー会社を紹介することもあります。

ただし、必ずうまくいくというロジックのあることしか提案しない方針です。広告運用者ってすぐLPにダメ出しをしたがるんですが、口だけの無責任な提案は絶対にするなと社内には伝えています。担当者さんにとっては、なんなら自分でディレクションして作っているLPですからね。ダメ出しされたら悩むし凹みます。明確な根拠もなしに簡単に指摘するものではないし、担当者のIQを下げてしまうような行為は許されません。

お客様はいろいろな広告代理店・制作会社と付き合っていることがほとんどなので、担当者である彼ら彼女らにつねに寄り添い、思考を先回りして明確なアクションを提示し、結果を出し続けることで「まずはアナグラムの〇〇さんに聞いてみよう」と、真っ先にマーケティングの相談をされる参謀となるのが理想ですね。

まこりーぬ:自分でディレクションしたLPを簡単にダメ出しされて悲しい気持ちになった経験、私にもあります(涙)。アナグラムさんは、担当者の味方ですね(本日2回目)。

……ここまでのお話で、アナグラムさんがお客様にどう向き合い寄り添っているのかがわかりました。この属人性が高いともいえる価値提供を、阿部さんお一人ではなく約60名の会社組織としておこなっているって、すごいことですよね。そこで後半は、「アナグラムの価値提供を支えるクルーのみなさんをどう採用・育成しているのか」についてお話を聞いてまいります!

※ アナグラムさんは社員のことをクルーと呼んでいます。

アナグラムの採用と育成

ビジネス理解を深めるための社内勉強会

まこりーぬ:広告運用だけでなくマーケティング全体の理解、ビジネスそのものに対する理解がないとお客様の売上を伸ばすことが難しいなか、どのようにしてクルーのみなさんのビジネス理解を深めているのでしょうか?

阿部:ビジネス理解はいまも試行錯誤している課題ではありますね。キャッシュフローを扱ったことがない人に「キャッシュフローの臨場感を感じろ」なんて言っても無理なので、会社としてはとにかく経験の数を提供するしかないと思っています。

うちは基本的に1人あたりの担当社数を5社ぐらいにおさえています。ですが新人がたった5社しか見ないとなると圧倒的に経験値が足りない。でも10社担当させるわけにもいかないし……ということで、「グロースハック」という社内勉強会を毎週木曜の午後に開いています。

2〜3時間かけて、ある課題をもった1つの広告アカウントに対して運用者約50人全員で分析をするんですよ。「過去にこういう事例があったからこう改善できると思う」「こんなクリエイティブがいいんじゃないか」と、チームを組んで改善案を出し合っていくんですね。こうして毎週1社分のビジネス・マーケティング・広告運用手法を学べる場を設けています。

かれこれ5年以上は続けている勉強会で、もともとは営業時間外に有志でおこなっていました。途中から営業時間内に移し、現在は全員が半ば強制的に参加できるようにしています。僕らの仕事は数時間削ったからといってCPA(コンバージョン単価)が上がってしまう、費用対効果が悪化するといったものでもないですからね。知識労働というものはそういうものです。

まこりーぬ:1ヶ月で4社、年間で約50社! これは学べるポイントがたくさんありそうです。代理店だからこそ実現できる取り組みですね。

「採用」「育成」大切なのは?

まこりーぬ:ここで1つ、経営者の阿部さんだからこそお聞きしたい質問を……。「採用」と「育成」、どちらが大切でしょうか?

阿部:難しいですね……。いまだに明確な答えはもっていません。結局は「配置」だという見方もありますし、正解が出てたらみんなの組織がもっとうまくいってるわけで(笑)。ただ、いまのところは、「採用」のほうがウェイトは高いと感じています。

僕がやっているのは、“頭のいい人”を採用することと、適度に負荷のかかる環境を整えることだけなんですよ。そうすると彼らは勝手に育っていきます。

「人はその環境に適応しようとするなかで伸びる」「やらざるを得ないから行動してその結果成長する」とよく言われていますが、まさにそのとおりで。お客様から新しい依頼が飛び込んでくるとか、新しい人と一緒に働くことになるとか、そういった機会をいかに提供できるかどうかが大切だと思っています。組織自体が成長し続けなきゃいけない理由の一つもここにありますね。

社内では「ランダムネスを提供する」と表現しているんですが、まぁ簡単にいうと「無茶振り」です(笑)。いい会社でありたい反面、僕はみんなに常に無茶振りをしたい。もちろん無茶振りが過ぎると潰れてしまう人も出てきてしまうので、ちゃんと度合いを見極めるよう気をつけています。

まこりーぬ:無茶振り!(笑) 「育てる」というよりも、「育つ人を採用する」「育つ環境を整える」という感覚でいらっしゃるんですね。

採用基準は「頭のいい人」

まこりーぬ:「頭のいい人を採用する」とありましたが、阿部さんのおっしゃる「頭のいい人」とは、具体的にどんな人なのでしょうか……?

阿部:「倫理観があり自分で考えて自分で行動できる人」ですかね。偏差値70オーバーでも社会と折り合いがつけられず仕事で能力が発揮できていない、みたいなタイプもいますし、もちろん単純に偏差値の話ではないです。

あとは、「相手に合わせた抽象度で物事を語ることができる人」「自分の世界に引き込む人」も頭がいいなって思います。前者はメタ認知できる、相手の気持ちがわかる、それに応じてアウトプットの抽象度をコントロールできる人。

広告やマーケティングって、企業主体のメッセージを消費者に伝わるよう翻訳してあげる仕事ともいえるじゃないですか。目の前の相手に合わせてメッセージを届けることができない人は、マーケティングで最大公約数をとりにはいけないと思いますね。

後者は独自の深い世界観を持っていたり、作ったりすることができて、その世界にオーディエンスを引き込んでいくんですよね。僕はそういうタイプを「トランスが深い人」と言っています。

まこりーぬ:なるほど。「マーケターはユーザーを理解しろ」とよく言われますが、目の前の相手の気持ちを汲み取れるかどうかは大切な素質ですよね。

阿部:あと、相手の気持ちがわかるか人かどうか見極めるうえで「仕事とは別のコミュニティに属しているかどうか」も見ますね。強烈な趣味があって積極的に社外活動をしている人はなおよいです。実際うちのクルーはディープなオタクが多いんですよ。

仮に仕事で成功して天狗になっていたとしても、別のコミュニティに入るとヒエラルキーの下にいる人の気持ちがわかるじゃないですか。そういう人って「教えてください」って言う側の気持ちがわかるので、仕事でも優しくなれるんですよね。

まこりーぬ:別コミュニティに属することが結果人の気持ちを理解することにつながっているとは……! 言われてみればたしかにです!

個人の成長のため、分業はしない

まこりーぬ:採用で重視するポイントはお伺いできましたが、育成面で阿部さんが大切にしているポイントはなんでしょうか?

阿部:分業しないこと、でしょうか。一気通貫でお客様を担当してもらうので、学ぶことは多いし成長に時間はかかるけど、分業はしないと決めています

正直なところ、分業しまくれば組織は単純に大きくなるんですよね。「属人性を排除せよ」ってドラッカーも先輩経営者もみんな言っているセオリーだし。でも分業を突き詰めたとして、それは楽しいのか? っていう疑問が僕の中にはずっとあります。

広告入札のプロとか請求書発行のプロとか、それはそれですばらしいことかもしれないですが、それはアナグラムという組織で僕がやるべき仕事ではないですね。だって僕がやらなくても他の誰かがやってくれているわけですから。

さらに言えば、組織の在り方・教育の在り方を「10年後に1対1でご飯いけるかどうか」で決めています。これはつまり、10年後も双方がマーケターとして圧倒的に成長し続けている前提で、お互いがリスペクトをもっていられるか? を基準に考えている……ということなんですね。そうなると部分最適だけでは不十分で、より広く、より深く、さまざまなことを誰よりも早く学び、よりすばらしい成果を上げ続けることができるような人材になってほしい、という思いが根底にあります。

資本主義社会である以上、当然会社の売上は立て続けなきゃいけないし、親が安心して子どもを任せられるような会社となるために看板も大きくしなきゃいけないんだけど、だからといって、個人や個性を殺してはいけないと思っています。

まこりーぬ:会社よりも個人の成長を優先してくださるとは……。い、いい会社ですね(涙)。

クルーは自分を律してくれる存在

まこりーぬ:「10年後に1対1でご飯にいけるかどうか」という視点が独特で、とても温かみを感じたのですが、阿部さんにとってクルーのみなさんはどんな存在ですか?

阿部:「自分を律してくれる存在」ですかね。もっと安易な選択をしたほうが楽だなって思うことはたくさんあるわけですよ。でも、人生かけてアナグラムに入社してくれた彼らを決して裏切らない、彼らが失望しないような選択肢をとり続けたい

僕はすごく怠惰な人間なので、彼らがいなかったら見事に悪いほうへ流れていく自信があります。10年以上前のことで時効でしょうから言いますが、個人事業主のときなんて仕事してるふりしてツイートして金曜昼からロードショー観にいってましたから(笑)。

いまの時代、一社に一生勤め上げることなんてほぼないじゃないですか。もちろん個人の成長に追い越されないように組織自体を高めていく、働きやすい環境にしていく、すばらしいチャンスの溢れた環境にするのは経営者の仕事ですが、方向性や成長スピードにズレが生まれてクルーがアナグラムを離れるときはいつかくる。……でも数年後にお互いパワーアップして「そんな仕事できるようになったの!?」なんて言いながらまたどこかで合流できたら、最高ですよね。

まこりーぬ:阿部さんの優しさや愛情が感じられて、すっかりほっこりしました。ありがとうございます!

アナグラムのこれから

「アナグラムマフィア」を増やしたい

まこりーぬ:大変名残惜しいですが、本日いよいよ最後の質問です。阿部さんがこれからチャレンジしたいことを教えてください!

阿部:数年以内に時価総額数千億円! みたいな壮大な目標って実はもっていないんですよ。将来いつ何が起こるかわからないので、毎日を必死に生きながら、着実に影響力を広げていきたいと考えています。

いまこの瞬間を切り取ると社員60人が担当しているお客様にしか価値を提供できていないですからね。100人、200人と輪を大きくしていきたい。そしてその結果「アナグラムマフィア」を増やしたいですね。「ペイパル・マフィア」みたいな(笑)。数字的な結果はそのあとに自然についてくるものだと思います。

あとは、100人200人規模になってもみんなから「あの選択、クールだよね」って思ってもらえるような選択肢をとり続けられるかどうかは、僕自身に課されたチャレンジだと思っています。当然僕がもっと先に進んでいないと、10年後、きっと彼らはご飯に誘ってくれませんからね(笑)。

まこりーぬ:アナグラムマフィア、阿部さんのもとであればどんどん輩出されそうだなぁ……と心から思います。本日はマーケティングだけでなく採用・育成に関わるお話まで、貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました!

さいごに

数ある広告代理店のなかでアナグラムさんが圧倒的な存在である理由は、「で、それやっていくら儲かんの?」という商売の本質に真摯に向き合っていること、そしてそれに向き合える人たちが阿部さんのもとに集っていることだと感じました。

Twitterやイベントで拝見する限り、阿部さんは鋭くクールな方だと思っていたのですが……実際にお話ししてみると、もちろん一つひとつの言葉に鋭さや重みがあるものの、表情豊かで、クルーのみなさんに対する優しさや興味・愛情が溢れ出ている方でした。

阿部さんのもとならよいビジネスパーソンになれそう、阿部さんになら無茶振りされたい……って、素直に思いましたよね。(あ、もちろん私はまずLIGのマーケターとして、自社の商売・お客様の商売に真摯に向き合いますよ!(笑))

以上、まこりーぬがお届けしました!

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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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