WACUL垣内氏に聞く!3万サイトを分析したプロが教える・知られざるLPの必勝法とは?

WACUL垣内氏に聞く!3万サイトを分析したプロが教える・知られざるLPの必勝法とは?

Mako Saito

Mako Saito

こんにちは、まこりーぬ(@makosaito214)です。ホットリンク飯髙さんに続き、またまたマーケティング界の大先輩へ取材することに成功しました!!!

今回は……今回も……Twitterで追いかけてきた……

株式会社WACUL・取締役CIOの垣内勇威さん(@yuikakiuchi)です!

垣内 勇威 さん東京大学経済学部卒業後、株式会社ビービット入社。大手クライアントのWeb改善コンサルティングに携わる。2013年株式会社WACUL入社。AIでWebコンサルをSaaS化したWebマーケティング改善ツール「AIアナリスト」を生み出し、現在は取締役CIO(Chief Incubation Officer)兼WACULテクノロジー&マーケティングラボ所長として、さらなる新規プロダクトの創出を担当。

垣内さんといえば……

これらデータに基づく鋭い指摘でマーケティング界隈を驚かせていますが、今回は貴重なナレッジをまとめてドドンと聞いてきました!

まずはLPの期待値を正しく理解しよう

まこりーぬ:現在社内でLPを作ってABテストをおこなっているのですが、果たしてどこまで成果を改善できるのか、不安があります……。本日は、ズバリLPの正しい改善方法を教えてください! 

垣内:LPって、よくABテストされてますけど「どこまで効果を改善できるのか」「どうやったら効果を改善できるのか」があまり正しく知られていないんですよね。

だから広告主は「LPのデザインを変えることでコンバージョンを2倍にしたい」なんてやたら高い成果を期待するし、代理店や制作会社はそんな成果保証できないからLP制作って正直あまり受けたくない……なんて状況に陥っています。

本日は僕がお答えできることはすべて出しきって、謎に高すぎる期待値や無駄なABテストをこの世から少しでも減らしていければと思います(笑)

まこりーぬ:ありがとうございます! た、頼もしすぎます……(涙)。 ではさっそくですが、高すぎる期待値を正しく捉えるところからスタートさせてください。もちろん商材によるとは思うのですが、コンバージョン率の目安ってどのくらいなのでしょうか?

垣内:ざっくりですが、BtoB商材のコンバージョン率の目安は2%ですね。競合が多い商材で3%超えていたらすごいし、0.5%しかなければ見直そう、という感覚です。弊社「AIアナリスト」のコンバージョン率は6%ありますが、MAX値に近いと思います。

まこりーぬ:ろろろ6%!? めちゃめちゃ高いですね。さすがです……!

垣内:AIを活用したキャッチーな商材だからこその数字なので、コンバージョン率がすでに2%程度ある会社であれば、なんとか6%を目指すよりもLP改善以外の施策に注力したほうが伸びしろありますよ(笑)。

コンバージョン率は無限には上がり続けませんし、細かなABテストで成果が劇的に変わることもありません

細かなABテストでは、成果は変わらない

まこりーぬ:え、ABテスト……(今まさに取り組んでいます……)!

垣内:問い合わせボタンの色を変えたり、5つある特徴の順序を並び替えたりするぐらいで成果が大きく変わることは、まずないです。

考えたらわかるんですけど、Webサイト上で気になる商品を購入するかどうか検討しているときに、その商品の説明文の順序が入れ替わったところで購入可否が覆ることって……ないですよね?

まこりーぬ:……ないです! 垣内さんにそこまできっぱり言っていただけるならもうABテストに未練はありません!

垣内:やってもいいんですけどね、いいんですけど、成果は改善したとしても10〜20%程度、っていう伸びしろをきちんと理解すべきです。2倍ぐらい改善したいのであれば、抜本的に変える必要があります

LPの成果を決める「コンバージョン」「ユーザー」「説得パターン」

まこりーぬ:大きく変えるとなると、いったいどこから手をつけたらよいでしょうか?

垣内:「ユーザー」に対して適切な「コンバージョン」を設定し、その2つをつなげるための「説得パターン」を考える、という順番で見直していきます。

「ユーザー」においておさえるべきは、商材への興味関心度合い。リスティング広告経由であればある程度サービスの導入を検討しているニーズ顕在層、SNS経由であればニーズ潜在層……と、流入元に紐付きます。

まこりーぬ:なるほど、ユーザーは流入元別に分類するんですね。

垣内:そうです。ユーザーが定まれば、次にそのユーザーのレベルにあった「コンバージョン」を考えます。

たとえば、ディスプレイ広告から流入してきたようなニーズ潜在層に「見積もり依頼」を求めても当然リアクションはありませんが、ナレッジの詰まった「ホワイトペーパーダウンロード」であれば、リードを獲得できる可能性がグンと上がりますよね。

こうした「ユーザー」と「コンバージョン」の掛け合わせがなにより肝で、成果にもっとも影響します

垣内:まずはリスティング広告から流入してくるようなニーズが顕在化しているユーザーに対するコンバージョンと説得パターンの見直しからはじまることが多いですね。

まこりーぬ:LPの成果を決める3つの要素、ばっちり覚えました!(立ち上がりホワイトボードに書き出してくださる垣内さんの優しさ……)

コンバージョンにクリエイティビティあり

まこりーぬ:ここからは各要素をもう少し具体的に掘り下げさせてください。まず肝となるコンバージョン設定ですが、勝ちパターンって存在するのでしょうか……?

垣内:コンバージョン率を上げるポイントは、ずばり文脈に合わせたコンバージョンボタンにすることです。

たとえば、料金目安が書いてあるページに「お問い合わせ」というコンバージョンボタンがあるのはナンセンス。料金が知りたい人なんだから、「見積もり依頼」か「料金表ダウンロード」のほうがアクションは起きますよね。

仮に同じ資料を送るとしても、「料金表」なのか「事例集」なのか「資料請求」なのかによってコンバージョン率は変わるので、コンバージョン設定はテキストの一つひとつを洗練させる必要があります。一番時間をかけて設計する部分ですね。

まこりーぬ:デザインはそのままでも、コンバージョンボタンの文言次第で成果は改善できるということですね……! 見直すべき箇所が自社サイト上にいくつも思い当たります(涙)。

垣内:結局コンバージョンって、「もっと知りたい」という気持ちの高まりによって起きるものなので、そのタイミングを逃さずユーザーへ適切な情報を差し出すことが大切です。だからただ同じお問い合わせボタンをセクションごとにバンバン挟めばいいという話ではなく、文脈に合わせることを意識しましょう

まこりーぬ:はいっ! さっそく見直していきます!!! ……いまはリスティング広告にもSNS広告にも同じLPを出してしまっているので、作り分けも進めなきゃですね……。

垣内:9割をリスティング広告に費やしているなら残り1割のためにLPを別で作るのは工数が見合わないかもしれないですが、費用対効果の合う見込みがあれば作り分けないともったいないですよ。

SNSやディスプレイ広告から流入するようなニーズ潜在層には、こちらから火を起こしにいかなければなりません。コンテンツには企画性やニュース性が必要。「うちのサービスに問い合わせしてください」なんて妥協したバナーやLPだと、うまくいくわけありません。

まこりーぬ:ズバズバッと明言される垣内さん、カッコよすぎます!

説得パターンは2〜3種類しかない

まこりーぬ:次は「説得パターン」についてですが、LPでいう構成のようなものでしょうか? ストーリーを組み立てるポイントを、ぜひ教えてください!

垣内:「説得パターン」って、ユーザーとコンバージョンさえ決まっていれば、実は2〜3種類しかないんですよ。「導入実績No.1の理由は◯◯です」「うちの差別化ポイントは◯◯です」とか。

まこりーぬ:はっ! 小難しく考えてましたが、とてもシンプル……(汗)!

垣内:練りに練ったストーリーを展開したとしても、ユーザーの頭はそこまでついていきません。

たとえば、LIGの記事広告に興味があって料金を知りたいと思っているユーザーがいたとします。LP上で料金が見つからなかったらすぐにLPから離れて、Googleで「LIG 記事広告 料金」って検索しますよね? Webにおけるユーザー行動はとてもせっかちで、すぐに離脱してします。

よって当然、説得のストーリーは短ければ短いほどコンバージョン率が上がります

まこりーぬ:たっぷり語って相手の気持ちを盛り上げるというよりは、キラートークで最初からガンガン攻める感じですね……!

デザインは運用して飽きさせない工夫を

まこりーぬ:改善方法が具体的にイメージできたところで、1つご質問です。LPの「デザイン」については、どのようにお考えでしょうか? 今までのお話しでいくと、あまり重要ではないってことですよね……?

垣内:そうですね、デザインを変えることで成果を大きく改善することは難しいです。メインビジュアルやキャッチコピーを変えてみて、ちょっと改善できたらよかったね、ぐらい。

ただし、ずっと同じものを出稿していると飽きられてコンバージョン率は落ちるので、定期的に見た目を変えてあげる必要はあります。改善というよりも運用に近いですね。バリエーションとして漫画にしてみると成果が上がることもありますよ。

まこりーぬ:「運用」と捉えるとやるべきことがハッキリしますね。ありがとうございます!

獲得した大量のリードはポテンシャルを見極める

まこりーぬ:垣内さんの教えに沿ってマーケティング施策を進めていくと、いずれリード情報がたくさん手に入ると思うのですが、薄いリードっていつも捌ききれず有効活用できていない感がすごくあるんですよね……。インサイドセールスが整っていない会社でも、うまく顧客化できる方法はありますか?

垣内:良質なリードを選別するための情報をきちんと取得すればいいと思いますよ。企業規模、導入の意向、予算って取得しようと思えば取得できるじゃないですか。フォームで聞いてもいいし、あとからアンケートをとってもいい。

その会社が顧客となり得るポテンシャルって、リードを獲得した時点からほぼ決まっていて、あとから変わるものではないので、最初にそこさえ見極めればOKです。あとは絞られたリードだけを定期的にフォローすればいいだけですから。

数の最大化ではなくて、質の高い見込み客を獲得するために間口を広げようという発想ですね。

まこりーぬ:なるほど……! リード獲得時に取得する情報を工夫することで、その後のオペレーションが効率化できるんですね。フォームの入力項目を見直してみます!

LP制作におけるパートナー会社の選び方

まこりーぬ:制作・改善をともにするパートナー会社の選び方について、気をつけるべきポイントはありますか?

垣内:前提として、コンバージョンが上がることを意識して提案してくれる制作会社さんは正直数が少ないので、丸投げにせず広告主側がきちんと設計しようという気持ちをもつことが大切ですね。

まこりーぬ:……はいっ! がんばります(広告主としても制作会社としても)!!!

垣内:その上で重視することは、対応がスピーディかどうかでしょうか。LPって1〜2年使うものではないんですよね。飽きられないように運用するのももちろんだし、集客チャネルを広げるときやキャンペーンを打つときもLPに修正が入ります。

いざここを修正したい! というときに「対応に時間はかかるしトンマナ揃わないし面倒だな……」という気持ちがあると、マーケティング施策のスピードが落ちてしまうので避けたいところです。

あとは本当に細かい部分ですが、ページの表示速度が遅いとコンバージョン率が落ちるので、それを回避できるだけのコーディングスキルがあるかどうかをおさえておきましょう。

まこりーぬ:具体的な選定基準、ありがとうございます!

LP分析時におさえておくべき指標とは

まこりーぬ:せっかくプロにお会いできたのでぜひうかがいたいのですが、LPの分析はどの指標をどのぐらいの頻度でチェックされていますか?

垣内:LPだと訪問数が限られデータが少ないので、流入別にどのLPが強いかを見るぐらいしかやることないですね。あとは直帰率と、フォームに直行した人、別のページへ回遊した人の割合みるぐらいでしょうか。ヒートマップは無料のツールもあるので、あれば見てみてください。思いを込めて作った長いページが案外見られていない……という現実を知れると思います(笑)。

頻度でいうと、LPデータが溜まるのに時間かかりますし、リリース当初は波があるので、週一から月一程度で十分だと思います。

まこりーぬ:分析するポイントって意外とシンプルなんですね! もっと専門的なスキルがいるものだと思ってました。分析に長けた担当者なんかもいるのかと……。

垣内:よほど大規模なサイトではない限り、分析の専任者なんてつける必要ないと思います。結局改善していく人が目的をもってデータを見にいかないと、ほぼ意味がありませんから。

そのときにハードルになるのが、面倒っていうことなんですよね。だから見る指標を絞るのはとても大事です。GoogleAnalyticsって108のメニューがあるんですけど、見るのは5つでいい。これだったらどんなに忙しい人でも30分あれば見れるので、月に一度ぐらいはチェックできるはずです。

手順は昔Twitterに投稿したので見ていただければ……(笑)。

まこりーぬ:ばっちりファボ&リツイートしました!!!

サボらず1コンテンツごとに勝負をかける

まこりーぬ:本題から少しそれますが、せっかくなので、コンテンツマーケティングの勝ちパターンについても、ぜひ教えていただけないでしょうかっ……!

垣内:当社もコンテンツマーケティングとして「AIアナリストブログ」というオウンドメディアを運営していますが、KPIは明確にコンバージョンで、毎月1,000件ぐらいのリードが取れています。

「コンテンツマーケティングでサイト訪問者は増えたのにコンバージョンが増えません」と相談される場合、たいていすべての記事が「お問い合わせ」へ誘導されていることが多いです。「ナレッジを検索している人がいきなり問い合わせするわけないじゃないですか。そもそも記事の中で貴社サービスに一言も触れてないですよね!?」って、よく突っ込んでます(笑)。

コンテンツマーケティングにおいてコンバージョンを増やしたいのであれば、コンバージョンのハードルを下げてホワイトペーパーへ誘導するか、サービスに言及する文脈を作るしかありません

まこりーぬ:なるほど……! 「コンバージョン」と「ユーザー」の組み合わせが重要なのは、コンテンツマーケティングにおいても同じなんですね。

垣内:コンテンツマーケティングでよく「アトリビューション(間接効果)」という言葉が出てくると思うんですか、アトリビューションなんてないです。サイト上で貴社の名前や商品を認識することなかった人が、いつの間にかサイトに戻ってくるなんてないですから。毎回のチャンスで勝負しないことには、いつまでたってもユーザーは覚えてくれません。いかに商材を認知してもらえるか、コンバージョンしてもらえるか。1記事1記事サボらず勝負しましょう。

まこりーぬ:1記事1記事で勝負! します!!!

垣内さんのこれからについて

まこりーぬ:最後に、垣内さんご自身がこれからもっと挑戦していきたいことについてお話を聞かせてください!

垣内:会社のビジョンそのままですが、「デジタルマーケティングをもっと一般化していきたい」と思っています。

デジタルマーケティングって「車輪の再発明」が本当に多いんですよ。勝ちパターンがあるのに、それを知らず0から勝ちパターンを作ろうとする人が多い。異動が多く知見を貯められる環境にいる人が少なくて、全体的に初心者が多い。

加えてそこに、夢のツールを売り込むベンダーがいるんですよ。新人は夢のツールベンダーに騙され夢を買い、失敗して知見が貯まらず、また異動で新人が入り……みたいな。これが車輪の再発明を起こしている諸悪の根源です。

まこりーぬ:ゆ、夢のツールベンダー……(震)!

垣内:BtoBのサイト改善でやることなんて僕に1時間聞いてくれたら答えられるのに、なぜよくわからないツールを入れるんだ……! やらなくていいよそれ! って思っちゃうんですよね。

みなさんの仕事は魔法のツールをいれることじゃない、プロダクトを磨いたりコンテンツを作ることに命かけてくださいよ! って、声を大にして言いたい(笑)。

車輪の再発明や魔法のツールによってコストが上がってしまい「デジタルマーケティングって難しいしコストも高い……」と思っている人たちに、みなさんがクリエイティブに命をかけるのを手助けする「AIアナリスト」という安価なSaaSがあるよ!と伝えていきたいです。

もちろんそのためにプロダクトをよりよくしていきますし、研究データにもとづく勝ちパターンをより強固に世に発信していきます。……ちょっと壮大なんですけどね。

まこりーぬ:この記事も、そんな垣内さん発の情報を届けるひとつの媒体となれれば幸いです。本日は本当にありがとうございました!!!

さいごに

「もっと早く聞いておけばよかった……!」という情報盛りだくさんの1時間でした。

膨大なデータを分析し、かつお客様先へ直接足を運んでコンサルティングもされている垣内さんのお話はどれも明快で、納得度の高いものばかり。

「インプットした情報はきちんとアクションに起こすことが大事だよ」とはよく言われたものですが、インプットする情報をきちんと正しく選び取ることの重要性を痛感した取材でした。垣内さまから教えていただいたこと、これからしっかり仕事に活かしていきます!(垣内さまのTwitterはこれからも要チェックです!笑)

以上、まこりーぬがお届けしました!

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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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