こんにちは。エディターのさえりです。
みなさん「ロックバランシング」ってご存知ですか? ロックバランシングとは、古くから世界各国で親しまれているバランスアートのこと。
まずはこちらの画像をごらんください。
なんだこれ、もはや宇宙……。
調べてみると、作っているのは石花ちとくさんという方。これは、実際にお話を聞くしかありません!
取材をしてみた

ということで、やってきたのは真冬の多摩川。大きめの石がゴロゴロと転がっています。

こちらが石花ちとくさん。
日本のロックバランシングの第一人者であり、日テレの「嵐にしやがれ」や、フジテレビ「アウト×デラックス」などに出演されるなど、メディアにも注目されている人物です。

「まずは見せますね」と、石を積みはじめました。
石選びをする手に迷いはなく、ひとつまたひとつと手に取り、積み上げていきます。

手の動きに迷いはないものの、石はグラグラと揺れていて、「これが本当に立つの?」という不安が頭によぎります。
そしてわずか7分後……


はい。こんなかんじです。
す、すごい!!!

先ほどまでグラついていた石たちが急にぴたりと止まり、完全に自立しています。
……か、かっこいい。
そもそも「ロックバランシングアート」って?

危ういのに力強くて、凛とした佇まい。ロックバランシング、めっちゃロックですね……!
……ありがとうございます。僕らはこのロックバランシングを「石花」と呼んでいて、「生け花」みたいなものだなと思っているんですよね。美しくて、儚くて。
たしかに、すぐにでも壊れてしまいそうですよね……。
しっかり立てば少しの風では壊れませんが、やはり接着剤とかはないので、少しの衝撃で崩れてしまいますね。
儚い……。
石を積みはじめてどれくらいなんですか……?
6-7年くらいですね。
外国の人がやっているのを写真で見たことがあって。それでいつかやってみたいなって頭の片隅で思っていたんですけど、子供を公園に連れて行ったときにたまたま足元に石が転がっていて。積んでみたら、積めたんですよ。
積んでみて積めるもんなんですか?
積めましたね。それでハマっちゃって、河原とかにもいくようになりました。大きな作品も作りますし、時には畳の上で小さな鉢を置いて小石で作ることもあります。
こういった展示とかもしているんですか?
いえ、写真を撮るだけですね。展示が難しいアートなんです。ずいぶん前に展示会をやったことはあるんですけど、道路に面した小さいアトリエだったんでダンプカーとか通るとすぐ壊れちゃうんですよね。
つらいですね!?
そうなんですよね。だから平日は写真を飾って、土日にまた作りに行ったりして……大変でしたね。
ストレートに聞きますが、それってお金にならないのでは……。
そう、だから普段はIT会社で働いています。
(こんなにすごいアートなのに、世知辛いな……)
休日にはワークショップを開くこともあります。ロックバランシングの楽しさを感じて欲しくて、実際に積んでもらっているんです。
積んでみますか?
えっ! できるんですか! ぜひ!
LESSON1:ひとつの石を積んでみる
どんな積み方も間違いではないのですが、僕らが推奨しているのは、上に開いていくような積み方です。

こういう形ができればできるほど、「よくできたなぁ」と思います。
難しそう……。
そんなことないですよ。まず「この石のためなら頑張れるぞ」っていうお気に入りの石を見つけてください。それで「この石がかっこよくみえるように積むぞ!」と、やる気になるところからはじめましょう。
はい!

わたしはこの石に決めました。このつるっとした品のいい石(個人的見解)のために、頑張ります。

次に、石の上をすべすべとなでながら、目には見えないような小さなくぼみを見つけてください。

あとはそのくぼみに石を当て、指先でゆっくりと石の当たり具合を確認していきます。どこかピタッとはまる場所があるはずなんです。
バランスを取るというよりは、ぴたりとハマる感覚のほうが近いんですね。
そう。少しずつ、少しずつ当たる部分をズラして……。
んんんん……。これほんと難し……・
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立った!!!!!!!!!
うっひょー! 立ちましたよ立ちましたよ! なにこれ、ちょーうれしいですね!?
そうなんですよ。ちょーうれしいんですよね……。LESSON2: 2つの石を積んでみる
せっかくなら2つ立てたいです!!!
がんばればできるはずですよ! まずは、さっきと同じように、この石のためにガンバルゾっていうお気に入りの石を見つけ……
(この方、本当に石が好きなんだな)
さっきよりもしっかりとした台座石をみつけます。かならずグラつかない石を探してください。

その後、小さな石を大きな石の下に敷きます。石同士の接地面が少ないほうが美しいので、「くびれ」を作るような感覚で石を探します。
ぼくはこれを「かませ石」と呼んでいます。
かませ犬みたいな言い方するんですね。
かませ石を台座石の上に置き、今度は「くぼみ」ではなくかませ石をズレずに置ける場所を探っていきます。

さっきみたいにくぼみを見つけるのではなく、今度は上から指で重みをかけてみてグラグラしないところを探すんです。この指の重みに耐えられるようであれば、上に大きな石を置けるはずなので。
なるほど……!

場所をみつけたらあとはひたすら指先に感覚を集中させていきます。

……。
石の接地面って目に見えないので、全体をぼ〜んやり見る程度にしてください。
目で見るんじゃない、指で見るんだ。なんてね。
目で見るんじゃない、指で見……・
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・
……!!!

立っ……

立ったぁあぁあああああああ!!!
あぁ、いいじゃないですか。この石の色も綺麗だし、縞模様もいいですね。この接地面が斜めなのも素晴らしいじゃないですか。かっこいい。
(やさしい……)ロックバランシングの「良さ」とは
すごく感動しました。自分でも立てられるんですね。
ロックバランシングの一番の魅力ってどこですか?
うーん、積むのは単純に楽しいですね……。あとは、石っていう素材そのものが、本当にピュアだと思っていて。
だからこのアートって本当に「自分自身だなぁ」って思うんです。
自分自身?
これだけの石があって自分で石を選んでいるところから、もうすでに個性がでているんです。積み方も人によって本当にちがいますし……。
つまり、「自分を出そう」としなくても自然に自分自身が出ちゃうアートなのかなと思っていて。最近ではできあがったものを「これが今の自分なんだ」と受け入れるようになりました。そういうところも魅力のひとつかなと…。
深い……。
ハマらない人にはハマらないんですが……、もし気になったらぜひやってみてほしいですね。
……だいぶ寒くなってきましたし、そろそろ壊して帰りましょう。
えっ、壊しちゃうんですか?
そうです。子供とかが面白がって近づくと危ないので。
離れたところから積み上げた石にむかって石を投げるという遊びをして、ロックバランシングは終了です。
こんなすげー石積んだぜ! って残したくもなりそうですけど……。
その場を楽しめた、そのことだけで十分なんです。
(最後まで謙虚だなぁ)さいごに

「石」という素朴な存在を使い、人知れず表現しつづける石花ちとくさんの謙虚な姿勢に感激してしまった今回の取材。
「個性を出さなければいけない」「自分を表現しなければ」と身構えなくても、自分が出てしまうというロックバランシング。立てている間は無になれますし、「絶対無理そう」と思った石たちがぴたりと自立する瞬間は鳥肌が立つほどうれしいですよ。
このアートに魅了されるひとたちが少しでも増えますように! それでは〜!
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……石花さん。
はい?
ロックバランシングを極めれば、なんでもバランスが取れるようになりますか? 恋愛と仕事とか。
……はい?
なんでもないです。ありがとうございました。>ぜひワークショップなど参加してみてくださいね<
公式サイト:http://www.ishi-hana.net/
個人サイト:http://chitoku.balancing.jp