「みんなが言うリスクは、人の目」500円相談の先にある市場開拓を狙う| ココナラ


「みんなが言うリスクは、人の目」500円相談の先にある市場開拓を狙う| ココナラ

こんにちは。ペロンパワークスの久松知博です。普段は放送作家&ライター業をやっています。

先日、出品数は約6万点、会員数は23万人以上を誇るオンラインマーケット「ココナラ」を運営する、株式会社ココナラに取材をしてきました。

ココナラとはロゴ作成から恋愛相談まで、ユーザーの「得意(経験・知識・スキル)」をワンコインの500円で売買することができるサービスです。“一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中を作る”というコンセプトで、会社を退職した主婦や趣味を仕事に繋げたい人など、自分の“得意”を活用できる場として注目を集めるサービス。今回は同社の代表取締役CEOである南章行氏に、ココナラが生まれたきっかけや今後の展望、そして会社が求める人材についてお話を伺いました。

Poole:アイコン_ココナラ様 人物紹介:南 章行氏
慶應義塾大学経済学部卒業後に住友銀行(現:三井住友銀行)入社。2004年にプライベートエクイティ投資ファンドのアドバンテッジパートナーズLLP入社。2009年に英国オックスフォード大学経営大学院(MBA)修了。帰国後は音楽を使った若者向け社会起業プログラム、NPO法人ブラストビートの日本展開、NPO法人二枚目の名刺の設立などを手がける。2011年に退社。翌年にウェルセルフ設立。2014年6月に株式会社ココナラに社名を変更。

「300円と3000円の恋愛相談、どっちを選ぶか?」“ワンコイン定額制”にこだわる理由

ココナラ様_記事01

ココナラの発案者は創業メンバーだったそうです。一方でココナラのように経験・知識・スキルを売買するサービスは以前からネット上に多数ありました。そのため南氏はこのサービスのアイデアを聞かされたとき「正直、ピンとこなかった」と話します。

このアイデアは創業メンバーが提案してくれました。「人のスキルやアイデアを切り取って、オンラインで発売すれば売れるんじゃない?」と言われたのですが、最初はマーケットが小さいと思って却下したんです。

小遣い稼ぎのためにスキルを売ることや、そういう人に相談をすることに「そこまでメリットがあるのかな?」と疑問がありました。それに金額は相談者から出品者の間で動く手数料くらいですから。

当時はヘルスケアの領域で起業準備中だったそうで、栄養士と話すことが多かったという南氏。栄養士に起業準備のためのヒアリングをしていたときに栄養士が話したことが、最初は懐疑的だったココナラを起ち上げるきっかけとなりました。

栄養士さんと話をしているときに「病院の中で患者さんの相談にのっているけど、じつは外でも話ができる機会があればやってみたい」という話を聞きました。

そのとき「みんな仕事以外でも人の役に立ちたい」「仕事以外の、何か手応えをほしがっているのかもしれない」と気づいたんです。そして、ココナラのコンセプトである”人の役に立ちたいと思っている人たちの熱意を顕在化する場所”というアイデアが生まれました。

ココナラは金銭の対価として相談者のリクエストに応えるだけではなく、出品者が自分の“得意とした能力”で“誰かの役に立つ”ことを実感できるサービスです。これは同社のコンセプトである“一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中を作る”というものに合致します。さらに、ココナラがこだわった点が定額制でした。

料金が一律500円であることは、とても大切です。というのも、このサービスはモノと違って、買う前にクオリティが分からないですよね。

例えば、300円と3000円の恋愛相談だったら、どっちを選ぶのか? 3000円はちょっと高い気もするし、300円は頼りにならない感じもする。結局、判断材料がないから100%納得して決められないのです。コストとパフォーマンスのバランスが分かりづらいので、ユーザーは混乱する。そこで、500円の均一にすることでシンプルに良いほうを選びやすいシステムにしました。

値段がつけにくいスキルも定額制なら安心して出品することができるため、500円の定額制は出品者側にもメリットがあります。ココナラが活性化した背景には、こうした買い手も売り手も安心できる仕組みが機能しているようです。

前職時代には、ボランティアワークとしてNPO法人の立ち上げに携わっていました。「社会の役に立ちたい」と思う気持ちは、当時もすごく感じていたんです。そういったことも含めて、相談者目線ではなく、出品者目線でサービスを考えたとき、このマーケットの大きさをめちゃくちゃ感じましたね。

ユーザーが気軽に「これをやってほしい」「私のこんな得意で解決できますよ」と、相談できる場を作ることで“相談するならココナラ”と純粋想起する人が増えていく。何かを始める人にとって、このサービスは心強いものへとなっていきました。

「みんなが言うリスクって、“人の目”」覚悟ができて、恥じずに会う人全員に自分の夢を話した

ココナラ様_記事03

南氏は前職のとき週末の時間を使って、「ブラストビート」「二枚目の名刺」という2つのNPO法人立ち上げに参加したそうです。そして2011年に株式会社ウェルセルフ(現:株式会社ココナラ)を立ち上げるべく独立を志しますが、妻と2人の子供がいる中、一流企業の安定した生活を捨ててまで独立を選んだ理由とは、一体何だったのでしょうか。

リスクですね。医療の進化もあり、今は100歳まで生きる可能性がある世の中です。つまり、60〜70歳ころに仕事を引退したら、30年以上は無給になる。そう考えると今は年金も破綻しているし、独立することのリスクより、老後に無職でいることのリスクのほうが大きいと感じました。仮に80歳まで活躍できるとしても、それは創業者かそれに準ずる人ばかり。

そういうことを考えていた頃は、リーマンショックで買収業界が苦しい時期だったんです。2011年は東日本大震災もあって「自分が考えている“リスク”って何だろう?」と考え直す機会も増えましたね。転職とか起業はリスクがゼロではないけど、最悪死ぬことはないだろうと。

定年まで会社で働き続けるという考えとは逆に「定年退職以降にこそ深刻なリスクがある」と考える南氏。そこにはリスクの本当の姿を考え抜いてたどり着いた答えがありました。

みんな転職とか独立しないのを「リスクが高いから」って言うんですよ。でも、そのリスクって突き詰めて考えると“人の目”なんじゃないかと。

「独立してちゃんと食べていけるのか?」「事業に失敗するんじゃないか?」とかですね。要するに妻とか、そのご両親、同級生とかに「この人、大丈夫かな?」って思われる、心配されるのが恥ずかしいと感じてしまうからだと思っています。そこだけなんですよ。

そこを自覚することができて、覚悟した瞬間に、ほとんどリスクは感じなくなりました。まあ、僕も100%吹っ切れていたわけではなくて、会社を辞めた1年目の前職の同僚とのクリスマスパーティーは所在なくて、しっかり働いている周りの人たちと自分を比べちゃってつらかったですけどね。

このように話す南氏ですが、独立当初はPowerPointの資料しかなく、資金集めは困難を極めたそうです。

最初はヘルスケアで起業準備をしてうまくいかず、途中から今のココナラのアイデアに切り替えて準備をしていました。時間が経つにつれ、気持ちの焦りに加えて資金面での焦りも出てきて。そろそろ貯金がヤバいというときに創業メンバーに「正直、あと何ヶ月無給でいける?」って尋ねたんです。すると、メンバー全員が「あと2ヶ月が限界だ」と。

もう必死でいろんな投資家たちにココナラの営業をしましたね。

出資者を集めるために奔走する日が続きましたが、なかなか結果はうまくいきません。そんな中、ある投資家から言われたひと言が南氏の考えを変えたそうです。

お金をたくさん持っている人のもとには、「投資しませんか」という話がいっぱい集まる。何人も会ううちに彼らの目は当然肥えるし、かえって判断が鈍ることもある。だから「“投資家だけにココナラの話をする” 今の営業の仕方では、前に進まないよ」と言われたんです。

「本当にお金が必要なら、こんなサービスを考えていて、投資をしてくれる人を探している、と。“会う人すべて”に言わなきゃダメ」と言われて、目が覚めましたね。

そのアドバイスを受けて、南氏は愚直に会う人全員にココナラについて話したそうです。

コワーキングスペースで、とあるお兄さんに出会ったんですよ。一見しただけでは、お金持ちではない感じの本当に普通な人で。

それで投資の話を世間話のようにしたんです。するとそのお兄さんが、じつは上場企業の経営企画担当者であることがわかって、社長を紹介してくれるという話になりました。半信半疑の気持ちはあったんですが、さっそく会いにいったんです。

プレゼンをしに行った先で現れたのは、60歳を超える年配の方だったそうです。いくら社長とはいえ、「IT事業のこと分かるのかな?」と不安になりつつも、南氏は必死にプレゼンをしました。

プレゼンが終わったら、その社長から「いくらいるの? いつでも用立てるから言ってね」と即投資を決めてくれました。驚きましたよ。“会う人すべて”に言わなきゃダメっていうのは、こういうことだったんだと思いました。

単に優秀な人よりも「ビールでも一杯どう?」と、気軽に誘える人と一緒に働きたい

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現在、同社は社員数21名という少数精鋭の企業です。南氏が求めている理想の人材とは、どのようなものなのでしょうか。

ココナラの目標やビジョンに共感できて、自走できる人です。これを実現したいと合意できたら、「あとはよろしく」ってできる人が好き。だからといって、ただ僕に言われたことをこなすだけの人というわけではありません。

目標や価値観を共有できたうえで、自ら仮説検証しながら、コミュニケーションもとれる、チームをマネジメントできるのが本当の“自走”ですね。

「今いる社員は全員が自走できるメンバーです」と南氏は自信を持って語ります。しかし、それだけ優秀な人物ばかり集まるとチーム内で意見がぶつかり合い、対立することはないのでしょうか。

確かにぶつかることはありますよ。でも、「なぜぶつかるのか?」というところですね。場合によっては、とことんぶつかったらいいと思います。ただウチの会社は社員全員、価値観が共有できているので、戦略上ロジカルにぶつかったとしても最終的にはうまくまとまります。逆に価値観が共有できない人は、どれだけ優秀な方でも採用しません。

価値観の共有をスムーズに行うため「面接では“企業との相性を探る”ことに、徹底的にこだわる」と話す南氏。まずは現場のトップが面接でスキルを判断し、合格すれば南氏との面接へ。南氏との面接は短くとも1時間半、長いときは3時間にも及ぶそうです。さらにその面接を終えた後、最終オファーを出す前に必ず行われることがあります。

最終のオファーを出す前に飲みに行くんです。経営メンバーと僕との飲み会に参加して、フランクな場で仕事の話やプライベートの話をします。そこでは面談とは違ってディープな話しからくだらない話までするので、面接者の素が見えてくるんですよ。

その飲み会で南氏が最も重要視していることは、“一緒に飲んでいて楽しいかどうか”だそうです。

もちろん、お酒が飲めない人に「飲みましょう!」とは言いません。これが100人以上とかの大企業なら違うかもしれませんが、ウチはまだ少数精鋭なので一緒にいて楽しいかを重視したい。それに休日たまたま会ったとき「何してるの? ビールでも一杯どう?」って、気兼ねなく声をかけられる人じゃないと採用しないことにしています。

後日採用した後に話を聞くと、「あまりにもフランクで、面接された気がしなかった」と、みんなビックリしていましたが(笑)

相談で終わり、ではない。“ココ”だけでなく、相談のその先にある広大な市場にアクセスする

“相談するならココナラ”というブランディングを確立していく中、「それをステップに、次のフェーズへ進みたい」と語る南氏。今後の展望について伺いました。

これからは“相談の先”をとりにいこうと思っています。相談って、その先に大きな意思決定があるんですよ。例えば、家を買う、車を買う、旅行をするっていう入り口は誰でも相談せずにすぐには決められないですよね。結婚、離婚、転職もそうです。つまり、何か重要性、個別性、緊急性が高いときに人は相談するんです。

僕らは今のところその相談だけを切り取って扱ってきましたが、じゃあそれをクリアした後はどうなるのか。じつは相談をした後のほうが、マーケットが大きいんです。ココナラに多数ある個々の相談ジャンルでは業界の大手に広告予算で勝てないけど、相談という純粋想起でココナラに来るようになれば、ぜんぜん違う戦い方ができるんじゃないかと。

この構想は今まで公表していなかったそうですが、最近は積極的に面接者も含めて社外の人たちにも話しているそうです。

これからは弁護士や建築士、結婚相談所などの方々とのマッチングをしていこうと思っています。相談のその先にある広大な市場にアクセスしていき、何かに悩んだらココナラで解決できるという場にする。それが今後の理想です。まあ、時間はかかりますけどね。

この話を聞いた面接者は「外で見ていたココナラと、実際に社内の人に会って話を聞いてみるのとでは全く違いますね、とワクワクした表情を見せてくれる」と南氏はうれしそうに話していました。“相談の先”にある巨大な市場は、どのような体験を我々ユーザーに届けてくれるのでしょうか。ココナラの今後の発展に注目が集まります。


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この記事を書いた人

久松 知博
久松 知博 2015年入社
1981年9月12日生まれ。出身は大阪。マスコミの専門学校を卒業後、大阪でADの仕事を経験。25歳で上京、株式会社スリーカーズに就職して雑誌の編集に携わりながら、放送作家への道を歩む。現在は放送作家兼ライターとして株式会社ペロンパワークスに所属。ライター、アニメのシナリオ「ゾンビ猫」、テレビの構成「とくダネ!」、舞台の脚本など幅広く活動。