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グッドパッチ土屋氏に訊く“本当のUI”とは?「良いUIは、コンテンツの力を引き出す」

グッドパッチ土屋氏に訊く“本当のUI”とは?「良いUIは、コンテンツの力を引き出す」

こんにちは、広報担当のヨシキです。

最近、会議や提案などの場で、“UIにこだわりを” や “これまでにないUIで” などのフレーズをよく耳にするようになったと思います。

しかし「UIとは何なのか」と聞かれると、詳しく答えることはできない、という人も多いのではないでしょうか。実際、僕もその中の一人です。

ユーザーインターフェースの略であること、ユーザーの使いやすさに関わること、というぐらいはなんとなくわかります。しかし、そもそもなぜ今UIなのか、UIデザインと通常のデザインは何が違うのか、など具体的なことはよくわかりません。

そこで本日は、UIの設計・デザインに特化し、あの『Gunosy』の最初のデザインを手掛けたことでも有名な「株式会社グッドパッチ」さんを訪問し、話を聞いてみることにしました。

答えが見えないことは、やはり一番わかってるっぽいところに聞くのが一番簡単な解決方法だと思ったからです。

人物紹介:土屋尚史
株式会社グッドパッチのCEO。今をときめくUI企業を一代で築いたすごい人。
人物紹介:小林幸弘
グッドパッチのUIデザイナー。デザインは全くの未経験ながらも、土屋社長に見初められ新卒でグッドパッチへ入社。

・・・わりと軽い気持ちで訪問したら、CEOとUIデザイナーの両名が答えてくれることになりました。しっかりお話を伺ってみたいと思います。

UIとは、機械と人間をつないでくれる存在

— 本日はよろしくお願いします。早速ですが、そもそもUIとは何なのでしょうか。

土屋:デジタルの領域に限定すれば、“機械の言葉を人間に伝えるための技術”といえます。0と1が並んでいるだけのパソコンの情報を、人間がわかるようにするためのものですね。1984年に登場したMacintoshが、商用利用としてのGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)としては、はじめてのものではないでしょうか。今では信じられないことかもしれませんが、昔はカーソルとかも全部文字列で動かしていたんです。それがこのときマウスが登場したことで、グラフィカルに操作することが可能になったんですよ。

たとえば、画面上でファイルを掴んでゴミ箱に捨てる、といったようなね。つまり、機械と、それを使っている人間とをつなぐHUBとなる存在が、UIなんです。グッドパッチでも、デジタル領域全般を取り扱っています。カーナビとかも含め、ディスプレイに映し出されるものは全部ですね。

普通の人がUIと言われてもピンとこないのは、それだけUIが当たり前になっている証拠なんですよ。

iPhoneの登場で、UIの価値に誰もが気付いた

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— UIは、なぜこれほど注目されるようになったのでしょうか。

土屋:ここ最近の盛り上がり方というのは、過去30年の歴史の中でも最大のものです。そのキッカケは、間違いなくiPhoneの登場ですね。それまでは人がコンピューターとつながることができたのは、パソコン上だけでした。つまり、体験は机の上にしか存在しなかったのです。

それがiPhoneの登場により、どこでもつながるようになり、体験を持ち運ぶことができるようになったのです。そして“画面をスライドしながら展開していく”という操作方法。それはかつて誰も経験したことがないものでしたが、誰もが直感的に理解できました。

今では2〜3歳の子供が自分でYouTubeのアイコンを押し、音声検索でアンパンマンの動画を出して歌を聞くような時代です。この例に代表されるように、世の中にある商品は、今後はUIの差によって大きくその存在価値が変化することでしょう。だからこそ今、UIへの注目が大きく高まっているのではないでしょうか。

“ずっと使い続ける”からこそ、UIが重要になる

— それでは、UIデザイナーとはどういうお仕事なのでしょうか。また、仕事上どんなことを意識しなければならないのでしょうか。

土屋:グラフィカルに見た人を驚かせたり感動させたりするのではなく、使い方などを人に寄り添ってプロダクトに落とし込むよう設計をするのがUIデザイナーの仕事です。これまで“デザイン”と呼ばれるもので目にする機会が多かったのは、「広告のデザイン」だと思います。広告の場合、テレビや看板などの媒体を問わず第一印象で全てが決まり、その後もイメージが変わることは基本ありません。だからこそ、パッと見での綺麗さやインパクトでの勝負になります。Webも最初は広告的な役割がほとんどでした。ただ、その後SNSなどでいろいろなことができるようになり、使いやすさや体験といったものが重視されるようになりました。UIデザイナーが意識しなければならないのも、まさにこの点です。

今は何でも「まずは無料で」という時代です。つまりユーザーは“試せる”ようになりました。その結果、ユーザーは第一印象ではなく“ずっと使いつづけるもの”として、デザインや使いやすさを考えるようになったのです。

UIデザインとは、そのサービスが続く限り、ユーザーと寄り添うものです。最初は使いづらいものだったとしても、ユーザーの意見を取り入れ、ローンチ後に改良ができるという、全く新しいデザインの形なんです。

目に見えない価値にこそ、評価は与えられるべき

— 良いUI、悪いUIはどう判断されるのでしょうか。

小林:ユーザーが触ったとき、直感的にいいと思えるかどうか、というのがとても重要です。それを確認するためには、誰かが実際に触っているところを見るのが一番です。僕の場合は、グッドパッチの社員全員に触ってみてもらいますね。特に初期のほうのメンバーは、ウチが手掛けたGunosyの最初のデザインをいいと思って集まったような人たちだから、みんな感覚が近いんです。その人たちのハートに響くデザインになっているかどうか、というのは大事なポイントですね。

土屋:もともとデザインというものは定量的に評価するのは難しく、良い・悪いは定性的なところで判断するしかありません。ただ、日本の会社の多くは定性的なものにGOを出しづらい体質になっています。数字として目に見えるものにはお金を出すのに、デザインという目に見えないものにはなかなかお金を出しません。

そのように、デザインではなくスペックを評価し続けた結果が、現在のAppleやサムスンと日本企業との差になってしまったのではないでしょうか。

UIは主役ではない。だからこそ、意識したい

— プロダクトにおけるUIの役割は大きいというわけですね。

土屋:だからこそ、見栄えの良さと使いやすさは両立していないといけません。見栄えだけ、というのはまずありえないし、ダサいのはグッドパッチとしてダメ。結局のところ、ユーザーが増えている、ユーザーが使って喜んでいる、というのが良いUIの証明になるんです。ただし、UIは主役ではなく、あくまでも縁の下の力持ちという存在。いくら世間で「これからはUIだ」って騒がれても、主役はやっぱりコンテンツなんですよ。コンテンツが良ければ、UIが悪くてもユーザーは使ってくれます。『2ちゃんねる』なんかそうじゃないですか。だからこそ「より使いやすく」というのがUIの使命になるんです。

UIは、その商品やサービスの「体験」に関わるものです。だからこそ機能が同じものであっても、UIによってレビューの内容が変わり、それに応じて売上なんかも変わっていくんです。そういう意味では、良いUIというのは、コンテンツの力を引き出してあげるもの、といえるかもしれません。悪いUIは、コンテンツの評価自体を下げてしまいますからね。

情報やデザインは、仕事ではなく“呼吸をする感覚”で取り入れる

— UIデザイナーにはどんな人が向いているのでしょうか。また、どんな勉強をすればいいのでしょうか。

小林:UIデザイナーは、とにかく人のことが好きで、すごく人のことを観察しているような人が向いていると思います。テレビに出ている人はどういうものが好きで、今は何が世間で流行していて、などの情報を自分の中でストックしているような人ですね。学ぶという点では、他のビジネス系のように知識を暗記していく必要はありません。ひたすらいいUIデザインを見て「なんでこうなってるんだろう」と思いながら、自分で作り続ければいいのです。ただし、これを習得すれば終わり、というものはありません。ユーザーも変われば、デバイスも変わります。だからこそ、UIデザイナーも変わり続けなければなりません。答えがないことなので悩んで辛くなることもありますが、それが面白さでもあります。

だからアプリやインターネットのことも好きじゃないと厳しいでしょうね。仕事でやってます、という人はまず伸びません。呼吸をする感覚で情報やデザインをみていないと、いいUIデザイナーには絶対なれないと思います。逆にいえば、見てさえいれば、なれる可能性は高いんです。見ていれば成長できるんですから。

自身のUI体験の積み重ね、それがUIを知るための最低条件

— 最後の質問です。企業のWeb担当者がUIを改善したいと思ったとき、どんなところから勉強すればいいのでしょうか。

土屋:改善のためのプロセスなどを考えることは大切ですが、まずは類似サービスや世間で流行中のアプリなど、さまざまな“使いやすいUI”を体験することです。使いやすいかどうかは自分で使えばすぐわかるんですから、世間で使われているものをとにかく触りまくってみてください。そうすれば、なぜ「戻るボタン」がここにあるかなど、優れたUIに共通するお作法のようなものがあることに気付くはずです。

担当者の方の中には、それらに関するインプット量が圧倒的に足りないという方が多いのではないでしょうか。UIの存在を意識しながら触るだけでも、考え方は相当変わると思います。

まずは担当者自身が1人のユーザーになりきること。ユーザーの行動を想像できるようになる、というのが一番重要なんですよ。

おまけ:UIがイケてるアプリ3選

とにかく多くのUIに触れることが大事、と語っていただいたように、2人のスマホの中には50〜60個のアプリがダウンロードされていました。
そこで、インタビューをした2014年12月現在で、“UIがイケてる”と注目しているアプリを3つほど教えていただきました。

issuu

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「紙をめくっている感覚で読めるのがいい感じのUI」と土屋さんがオススメしてくれたマガジンアプリ。

Keezy

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「誰でも簡単に音楽が作れ、とにかく使っててわくわくするUI」と小林さんがオススメしてくれたドラムアプリ。

Storehouse

Storehouse

「スクロールしたくなるような動きと、直感的な操作性。レイヤー構造をきちんと活かしたUIデザイン」と2人ともオススメしてくれたビジュアルストーリーテリングアプリ。

まとめ

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今回のインタビューを通して感じられたのは、より良いUIを提供し続けることへの強いこだわりでした。
「ビジュアルだけのデザイナーは置かず、全員がUIデザイナー」「採用にあたっては、自分たちと同じマインドを持ったメンバーを集める」というグッドパッチの人材採用方針にも、それがよく表れています。

また、公式サイトによると社名の由来は

弊社代表の土屋がサンフランシスコに住んでいる時に大きな衝撃を受けた場所、あのInstagramの創業の地でもある「Dogpatch Labs」から由来しています。Patchというのは日本語で「繋ぐや継ぎ合わせる」という意味もあり、日本と世界をGoodに繋ぐ(patch)という意味も込められています。

とあり、それが冒頭で土屋さんが語ってくれた“機械と人間とをつなぐHUB”としてのUIの捉え方にもつながるのではないかな、と思いました。

最後に本日の御礼として、土屋さんのために僕が選んだ一冊の本をプレゼントすることにしました。

土屋さんに贈る一冊

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しらみつぶしの時計』です。

『生首に聞いてみろ』『都市伝説パズル』などで有名な新本格派を代表する推理小説家・法月倫太郎さんの名作短編です。

主人公が朝起きると、部屋が時計まみれになっています。「1分ずつ異なる時を刻む1440個の時計から、正しい時を指す時計をロジックで見つけ出すこと。正解だったら部屋から出れるけど、間違ってたら死ぬから」という最悪のUIな設計の部屋から、果たして脱出できるのか、というお話です。

良いUIはもちろん悪いUIからも学ぶべき点は多いはずと考え、これが次の革新的なUIにつながればと思い紹介させていただきました。

そんなわけで、これからも引き続きいろいろな人の話を聞きながら、Web業界のことについて学んでいきたいと思いました。

それでは、また。

 

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この記事を書いた人

ヨシキ
ヨシキ メディアディレクター 2014年入社
ヨシキです。かつてLIGの3代目広報を担当しておりました。
イノベーティブな存在を目指し、大きさ以上に大きく進化しながら、LIGを再発明したいと思います。