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第65話

名ゼリフに見る『ワールドトリガー』の冷静と情熱 風間さん篇その2


名ゼリフに見る『ワールドトリガー』の冷静と情熱 風間さん篇その2

どうも、外部ライターのほあし(@hoasissimo)です。

前回ご紹介した、風間さんから修へ投げかけられた痛烈な「名ゼリフ」。今回は、その真意についてお話しします。

(以下、一部ネタバレを含みます)

「隊長として」の先輩・風間さん

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ワールドトリガー 13(ジャンプコミックス)

風間さんは、ランク戦で無得点で敗れ去った修の戦いぶりに対し、以下のような総評をおこないました。

「新しいことをやろうとする姿勢は見えたし、鍛錬による成長も感じられた」
「だが当然、三雲以外の人間も日々鍛錬を積んでいる」
「当たり前のことをやっていては先を行く人間には追いつけない」
「本当に部隊を勝たせたいなら、「自分の成長」という不確かな要素だけじゃなく、もっと具体性のある手立てを用意する必要があった」

しかし、単に修の無力さを指摘したいがためにこんなことを言ったわけではないんです。というのも、風間さんはこれらのセリフのあとに

「隊長としての務めを果たせ」

とも言っているんですね。

つまり、修が部隊の隊長として最優先にやるべきことは、「自己鍛錬」ではなく「具体的で確かな勝ち筋を部隊にもたらすこと」のはずだと、思い出させようとしてくれているのです(もちろん自己鍛錬も必要ではありますが)。

「個人の力ではなく、集団の力で勝つ」というのがボーダーの、そしてなにより修個人の戦い方です。自分自身の強さではなく、チームとしての強さをまず意識しろと風間さんは言っているんですね。そしてこの言葉は、風間さんが言うからこそ大きな説得力があるんです。

風間さんの過去

風間さんは「強化聴覚」という特殊能力を持つ「菊地原」という隊員を自分の隊にスカウトしたことで、ランク戦を一気に駆け上がり、ボーダー屈指の部隊にまでのぼりつめたという経験があります。風間隊のチーム戦術は「菊地原」の力がなければ成り立たないものであり、それはボーダー内部でも有名です。

つまり隊長に求められるものは、自分一人の力ではなくチーム全体としての戦力を向上させる能力だと、風間さんは誰よりも知っているわけですね。そして風間さんは、修ならこの困難を乗り越えられるだろうと期待しているわけです。そうでなければこんなに真摯で丁寧なアドバイスはしないでしょう。

一見非常に厳しく感じられる風間さんの言葉ですが、じつは後輩への期待がこもった激励だったんですね。

修が考えた「具体性のある手立て」

風間さんの言葉を聞いた修は、部隊の戦力を根本から確実に高めるために、ある決断をします。それは、「未来が見える」特殊能力を持つ先輩隊員・迅悠一(じん ゆういち)を自分の部隊に勧誘することです。

迅さんは修や遊真と同じボーダー玉狛支部所属で、直接の先輩に当たる人です。良き先輩として修たちを導いてくれる存在で、作者の葦原先生が「本作における主人公の一人」と公言しているキャラです。この勧誘が成功するかどうかについてはひとまず伏せますが、私としては、修がこの決断に至ったこと自体に感動してしまったんですよね。

だって修は、まだ中学三年生の少年なんです。自分の力で戦えるようになりたい、足手まといではいたくないという焦りが先走ってしまっても仕方がない年頃ですし、実際ランク戦第4戦で修が結果を残せなかったのも、その焦りが原因でした。

そんな中、その事実を真正面から指摘された修。それでいて反発するどころか、素直に反省してそれを聞き入れ、「迅さんを勧誘して戦力を強化する」という恐らく現時点で考えられる最適な行動をとります。

年齢のわりに、あまりにも聞きわけが良すぎるというか健気すぎるというか、もっと修自身のプライドが傷ついていても不思議ではないと思うんです。もっと迸る若さに任せた反発とか自尊心の発露とかしてくれてもええんやで……? オッサン怒ったりせえへんで……? という心配すら感じてしまいます。ほとんど親心みたいな心境です。

もちろん、そういうとびきり健気で良いヤツだからこそ、読者は修を応援したくなるわけです。厳しくも温かいアドバイスをしてやる風間さんの優しさと、それをきちんと受け止めることができる修の賢明さ、誠実さがよく表れたエピソードじゃないかなと思います。

まとめ

これは『ワートリ』のキャラ全般に言えることなんですが、みんなして精神年齢が高すぎるんですよね。設定上の年齢に5~10歳くらいプラスしてやっとちょうど良くなるくらい、人格や知性が成熟しているんです。

知性あふれるキャラがたくさんいるからこそクレバーな集団戦術バトルが光りますし、キャラの人格がよく成熟しているからこそ、読者の心を打つような交流もまたたくさん描かれるのかなと思います。

以上、今回もお読みくださり、ありがとうございました。


この記事を書いた人

ほあし
関西に住む、少年マンガをこよなく愛する男。とりわけ『BLEACH』については尋常ではない思い入れがある。

ブログ:Black and White(http://hoasissimo.hatenablog.com/)