こんにちは、きょうへいです!
僕は普段マーケティング担当として、LIGブログのPVなどはもちろん、Google AdWordsやFacebook広告の運用など、たくさんの数値データを追いかけています。
そして多くのマーケティング担当者にとって課題となっているのが、「たくさんのデータを追いかけること」そして「それを社内で共有すること」ではないでしょうか。
だからこそ、「Tableau」のような“ビッグデータを簡単にグラフなどにビジュアライズするBIツール”を活用し、素早く簡単に必要なデータを共有できるようになればと考えています。
ただし、新しいシステムの導入は、当然ながら社内の体制整備や教育フローの確立といったさまざまな課題を伴うものです。
そこで本日は、2015年よりTableauを実際に導入・活用されている株式会社ドワンゴの開発本部のお二人に、いろいろお話を伺いたいと思います。
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人物紹介:志村 誠 株式会社ドワンゴ 開発本部 共通基盤開発部 数値基盤セクション セクションマネージャー 2011年ドワンゴ入社.ログ解析基盤の開発業務,ログデータの分析業務に従事し,現在はマネージャーとして社内のデータ活用推進を行っている。 |
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人物紹介:古幡 征史(Ph.D.) 株式会社ドワンゴ 数値基盤セクション ドワンゴ入社前はUniversity of Southern CaliforniaでPostdoctoral Research Associate。 |
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なお、マーケティング担当者が施策の全体を理解し、データに基づいてすばやく決断するための手法や考え方についてはぜひ以下の記事をご参照ください。

マーケティング活動に必須の「ダッシュボード」を作成・展開する6つの手法
思考錯誤の連続と効率化・ドワンゴで「Tableau」を実際に導入してみて感じたこと
ー 本日は宜しくお願い致します。まず最初に、サービス全体での1日あたりのPV数は1億以上、月間UU数は800万以上(2015年6月30日時点)というniconicoのデータ分析に、Tableauを用いることになった背景を教えていただけますか。
志村:我々の部署では、各部門の数値を集め、社内の企画担当やエンジニアが扱いやすいように加工・整備し、最終的には分析・可視化するまでの一連のプロセスを担当しています。
つまり、エンドユーザである社内の皆さんに必要な数値データを用意し、Hadoopを中心とした分析基盤に蓄積し、取り出しやすいようにしていたのですが、この最後の分析・可視化の部分には大きな問題がありました。
ー 問題というと?
志村:数値データの分析やレポートに関しては、やっぱり社員の皆さん、頑張ってエクセルでゴリゴリやろうとするんですね。Hadoop、R+Shiny、SQL、Apache Pig、エクセル、そして自社開発のツールなど、さまざまなデータソースやツールを組み合わせて準備をしても、データ取得後は結局エクセルでさらに再加工して資料化する、という流れになってしまうんです。
これでは資料化までに非常に手間がかかってしまいますし、別の数字が欲しいとなったときも大変です。そこで「それらを効率化できるBIツールはないか」と検討をしていた状況で、選ばれたのがTableauでした。
ー 導入の決め手となったのは何だったのでしょうか。
志村:理由はいろいろありますが、決め手となったのは“使いやすいUI”でした。試用版を我々の部署で実際に使ってみて、他のツールとも比較比較したところ、「このUIはいいね」という声が圧倒的だったんです。
エクセルで対応できなかったレベルの大量のデータを簡単に分析できるようになるだけでなく、グラフィカルで操作性も直感的でわかりやすかったので、すごく魅力を感じました。
「何の反応もない」導入以上に大変だった“まず使ってもらう”こと
ー 導入直後、社内ではどんな反応がありましたか?
古幡:いや、特に何の声も出なかったですね……。それがとにかく辛かった(笑)
導入を推進していた我々としては「機能ベースでこういうものができます」というサンプルをつくり、社内ユーザにみせて使ってもらおうというところからはじめたのですが、それがまず上手くいかなかった。
「グラフィカルでいいね」「直感的でわかりやすいね」と説明の場では言われても、それ止まり。誰も使ってくれませんでした。
ー え、好意的な反応に見えますが、使ってくれないんですね?
古幡:ユーザは機能を知りたいのではなく、ソリューションにつなげたいのです。だから、彼らの持っているデータで「こういうことができそう」というのを実際に見せてあげないと、使う気にはなってくれません。
そのことに気づけず、導入開始から2ヶ月ぐらいは上手くいかない時期が続きましたね……。
社内で浸透させるためにとった具体的なアプローチ
ー その大変な状況から、どうやって立て直したのですか?
古幡:2015年の7月に社内で「Tableau ベストプラクティスコンテスト」というものを開催したんです。実際に活用できそうなデータセットを担当者に渡し、どういうソリューションを提供できるかみんなで共有する会です。それを毎週のように定期的に報告しあうことで、だんだん“Tableauって使えそうだね”という機運が高まってきました。
そして参加者たちは自ら共有のワークブックをつくり、いままで複数名が個別に並列的におこなっていた集計業務をTableauで共通化し、手作業でおこなっていた業務を自動的に更新させるようになりました。
そこでようやく「いいね!」という声が聞こえました。クリティカル・マスを超えると他のユーザへ口コミで広がりはじめたんです。それが10月ごろですね。
ー やはり導入初期は大変ですね。他にはどのようなアプローチをとられたのですか?
志村:「これを使うとこんなに良いことがある」という具体的な導入メリットを、こちらから訴えないといけないというのは基本です。
そしてそれは現場担当者だけでなく、数字を見る立場であるマネジメント層に訴えかけていくことも重要となります。たとえば「集約されたものを深堀りできるし、定期レポートもこんなに簡単ですよ」「これらのおかげで、組織としてもこんなにパフォーマンス上がりますよ」と説明し、「だから部署の人にも声かけて!」とトップダウンを促すような呼びかけをおこなうことですね。
ただし、上から現場に活用指示が下りてきただけでは、当然上手くいきません。やはり現場からのボトムアップ的な声のほうが、長期的には大事となります。
目に見えて効果のあったデータの深堀りと作業時間短縮
ー Tableauを導入後、業務面での効果はどうですか?
古幡:まず、データの深掘りをするようになったことが一番大きいですね。これまでは集計された数値を見るだけだったところが、属性情報や行動特性などの細かいデータまでを見ることができるようになりました。その結果、より詳細な分析ができるようになったんです。
次に、作業時間が大幅に短縮されたこと。たとえば「こういうデータがほしい」という依頼が上層部からきたとき、集計や抽出に2週間ぐらいかかっていた内容のレポートが、2日で出せるようになった事例もあります。
さらに、毎月手作業で作成していた定期レポートにかかっていた時間がゼロになりました。それまで分析作業といえば、8割ぐらいの時間はデータを抽出する・表をつくるということに費やされていましたが、それが自動でできるようになったんです。
特に弊社はユーザに対しての月次課金モデルのため、集計作業などは月初日に集中してしまいます。丸一日集計業務に費やされる社員も複数いたわけですが、自動化のおかげでかなり解消されました。
導入により見えてきた企業課題
ー Tableauを導入したことで見えてきた“気づき”などがあれば教えてください
古幡:組織全体として、あるサービスのある特定機能の数値を統括的に見ている人がいない、ということがわかりました。
現在はそれを統括する担当者を決定したので、それに対してどういうアクションをとるかを検討している段階です。
志村:基本的にTableauの導入は、「社内の数値情報を一箇所に集約しましょう」という思想に基づくものでした。
大きな会社では特にそうですが、機能ごとの縦割り構造の中では、横串を刺してみるという機会は失われがちです。ディレクターも担当サービス以外の数字をみることはありませんし、閲覧する権限自体がないことも多いです。
でも企画やディレクションは、本来は複数のデータを見たうえで、総合的に判断して進められるべきものです。だから我々としては、横断的なデータが閲覧できる形を社内に提供し、広めていくことがミッションでした。「実はその辺を統括している人がいない」というのは、その過程で見えてきた事実でした。
ー なるほど。ドワンゴさん以外でも多くの会社に共通する課題と言えそうですね
古幡:ドワンゴの企業文化的なところでいえば、「こういうデータがみたい」となったとき、もともと優秀なプログラマーたちが集まっていることもあり、個別ですぐに集計ツールを自作していました。スピード感あるサービス提供のためにすぐやろう、という文化ですね。
ただ経営陣的にみれば、全体の数字を把握することが難しくなってしまうとういう弊害がありました。そこでTableauを使い、サービス横断の全社的なKPIを、一覧で見えるようにしたのです。
社内への浸透と教育フローの確立
ー 先ほど、“使ってもらうこと”の難しさについてお話いただきましたが、社内活用の浸透についてもう少し詳しく教えてください
古幡:機能説明ではなく、なるべく具体的なデモをみせるようなアプローチをとりました。ソリューションに近いものを見せることによって理解を促し、使えるようになってもらうという、パッケージソフトの導入に近い流れですね。
そして一度操作方法を理解してもらったら、今度はその人に講師役になってもらい、自分の部署の人に教えてもらうようにします。そうすると「この部署の人、もうこんなことができるようになったんだ!?」と他部署の人が焦り出し、「自分の部署もやりたい!」という声があがるようになります。
ー 危機感を煽り自主性を促す、というのは面白いですね。講師役になるにはどれぐらいの育成期間がかかるのでしょうか
古幡:まず最初に我々の部署で、1人の講師を一ヶ月かけて育てました。「ここまでの内容は最低覚えてほしい」というリストに従い、その期間はほぼTableauの勉強ばかりをやってもらいました。そして勉強会などで講師として教えてもらうことで、その参加者の中からまた次の講師が……といった流れが生まれるわけですね。
ただ、講師役になった人がずっと講師をやり続けるというのも大変ですし、純粋に「自分たちにも教えてほしい」という声も多くなったので、現在は動画で学んでもらう仕組みとなっています。
ー 動画にすることのメリットは他にありますか?
古幡:とにかく復習が容易になりましたね。いままでは勉強会でメモをとりつつ、操作画面も見て……と大変でしたが、動画なら画面を見ていれば大丈夫なので。
Tableau導入の効果が高い企業とは
ー では最後に、自社での導入経験を踏まえ、Tableauはどういう企業におすすめか教えてください
志村:この業界や業種で、という指定は特にありません。主要なデータをエクセル管理しているあらゆる会社におすすめです。
ー いわゆるIT系ではない会社にも向いていますか?
志村:むしろ、そちらのほうが向いているかもしれませんね。
たとえば少人数の情報システム部門があり、そこが全て統括しているような会社。そういうところは大体データベースなども外注しており、他部署がデータ集計で使おうとすると抽出依頼が必要となりますよね。そうなると、結局データが出揃うまで2週間とかかかってしまいます。
でもデータベースにTableauをつないでおけば、あとは情報システム部門が権限管理するだけで、簡単に社内の人がデータを抽出できるようになる。だからIT系の会社はもちろん、そういう面が弱い会社にこそ向いているかもしれませんね。
古幡:逆に、データベースを準備するのに苦しむ会社は向いてないでしょうね。データ自体はいろいろあっても「データベースをうまく構築するための手間が割けない」「どういうデータが必要かわからない」という会社では、活用は難しいでしょう。
たしかにデータがあれば分析はしやすくなりますが、そもそもデータで何を分析したいかという目的がないと、せっかく導入しても有効活用できないと思います。
ー なるほど。本日はありがとうございました。
まとめ・インタビューを終えて
いかがでしたでしょうか。
今回インタビューさせていただいた株式会社ドワンゴでも、試行錯誤を重ねることでやっと社内に浸透したように、新しいツールやシステムを導入・活性化させるというのはとても大変なことです。しかし、どんなに便利で優れたものであっても、みんなが使いこなせなければ意味がありません。
Tableauをみんなが使えるようになれば、分析業務が効率化し、深堀りできるようになり、データ共有が容易になります。その結果、企画やディレクションの向上にもつながり、企業の成長を促すのではないでしょうか。
そのためには、僕のようなマーケティングや数値管理担当者は、しっかりとツールの価値を見極めるだけでなく、ユーザへの浸透・理解促進までを見据えたスキームを設計しなければならないと改めて感じました。
Tableauに興味を持たれた方は、ぜひ「Tableau無料トライアル版」をダウンロードしてお確かめください。
それでは!