こんにちは、エディターのエリーです。
近頃は制作会社がクラウドソーシングを活用して仕事を外注する、ということも増えているそうですが、顔の見えない相手とする仕事には不安もありますよね。
じつはわたしもクラウドソーシングを活用して、プロジェクトを進行したことがあります。信頼関係ができあがっている社内での依頼とは違い、クラウドソーシングの場合はアウトプットのクオリティが未知数。楽しみでもあり、不安でもあります。
その上、万が一進行に遅れが出れば、クライアントが指定した期日までには間に合わない。今でこそ慣れたものの、はじめてやるプロジェクトの進行中は気が気ではありませんでした。
そこで今回、クラウドソーシングを使用する機会が増えるであろうディレクターやエンジニア、デザイナーのために、クオリティの高いプロダクトを期日通りに納品するプロジェクト管理と制作フローをランサーズ株式会社さんからお聞きしました。
クラウドソーシングの制作フローとは
クラウドソーシングには制作フローに関していくつかのルールがあります。
これを知っておかないと意思疎通に齟齬が生まれたり、常識がないような印象を与えてしまったりする可能性があるので、必ず押さえておきましょう。
コンペ方式
コンペとはコンペディション(compeditition)の略で、競争のことです。
依頼した仕事に対して、各クリエイターからのプロダクトの提案がされます。クライアント側は複数ある中からクオリティの高いプロダクトを選ぶことができる方式で、提案物に対して細かい修正や要望を加えることもできます。ロゴ制作やキャッチコピーなどの単発の募集が多い傾向があります。
コンペ方式の制作フロー
- 依頼内容の決定
- 仕事の依頼を掲載する
- クリエイターからの提案を待つ(実際のデザインなど)
- 提案に対しての修正があれば依頼する
- 提案を選ぶ
- 納品物に問題がないか確認する
- 納品
- お互いを評価する
プロジェクト方式
プロジェクト方式は、Webサイトの制作や、スマホアプリ開発、記事のライティング、イラスト制作などのコンテンツ作成が中長期にわたるプロジェクトの依頼に適した方式です。
プロジェクト内容に対して、クリエイターが業務スケジュールや報酬などの提案をするので、業務内容やプロフィールを確認した上で、希望に合致したクリエイターに仕事を発注します。
プロジェクト開始後、時間報酬であれば特定の期間ごとに、固定報酬であれば1つの計画ごとに報酬を支払います。
プロジェクト方式の制作フロー
- 依頼内容の決定
- 仕事の依頼を掲載する
- クリエイターからの提案を待つ(見積・納期・計画など)
- 提案を選ぶ(依頼するクリエイターの決定)
- プロジェクトの開始
- 提案で決まった計画をもとに進行する
- 計画の完了(納品)
- お互いを評価する
タスク方式
タスク方式とは、高度なスキルを必要としない仕事の大量作業を依頼する際に適した方式です。
例えば「トイプードルの飼い主に、犬の性格について尋ねるアンケート」「400字程度のブログ記事執筆」「ダイエットの体験談募集」などの、アンケートやレビューが多い印象です。一つの依頼に対し、複数人に同時に作業を進めてもらうことができるため、大量のタスクをスピーディーに多くこなしてもらいたいときに、おすすめの依頼方法です。
タスク方式の制作フロー
- 依頼内容の決定
- 仕事の依頼を掲載する
- 複数の作業者が同時に作業を行い、複数の納品物が集まる
- 作業を個別に承認する
- 納品
直接指名方式
気になるクリエイターに対して、直接仕事を依頼する方式です。
方式自体はプロジェクト方式なのですが、広く公開して依頼するタイプとは異なり、指名したクリエイター以外には依頼が見えない完全非公開制となります。
クオリティが求められる高度な仕事を、実績のある方にお願いしたい場合におすすめの依頼方法です。
直接指名方式の制作フロー
- 依頼内容の決定
- 依頼するクリエイターを探す
- 依頼するクリエイターへメッセージを送り相談
- 仕事の依頼を作成する
- クリエイターからの提案を待つ(見積・納期・計画など)
- プロジェクトの開始
- 提案で決まった計画をもとに進行する
- 計画の完了(納品)
- お互いを評価する
制作時に確認すべきポイント
クラウドソーシングの活用を決めたら、以下のポイントを意識しましょう。
1. 依頼内容を詳細に記載しているか?
クラウドソーシングを利用してクリエイターに仕事を依頼をするときには、まず下記の項目を決めましょう。
上述した制作フローにもあるように、はじめに依頼する内容をクリエイターたちに相談します。ここでクリエイターから良い返事(=提案)をもらうためにも、依頼の目的やゴール、〆切や報酬などの詳細をできるかぎり明確にしておくことがポイントだそうです。
目的
そもそもなぜこの依頼をするのか、企画意図やクライアントの意向を説明します。
ゴール
アウトプットによって得られるものをクリエイターに伝えておくのも重要です。
ウェブサイトであれば、サイトの訪問数や問い合わせ率などのKPIを伝えられるのが理想です。
ターゲット
ターゲットは、必ず仕事を依頼するクリエイターに伝えておきましょう。
誰のためにクリエイターは仕事をするのか、この部分で発注者と受注者の認識がずれていると、後々、大幅な修正が入る可能性があります。
概要
ウェブ制作であればサイト設計の概要、色のトーンなどデザインの方針を伝えます。
ライティングの場合は、記事の内容や構成について。イラストの場合はイラストのラフを作成するのがいいですね。できるかぎり具体的に説明しておくことで、クリエイターと発注者側の認識における齟齬を防げます。
その他重要事項
その他にも、納品してほしいプロダクトのイメージに関して参考になるサイトや記事、イラストのURLを共有しておくだけでも、受注されたクリエイターは完成形をイメージできるようになります。
メディア運営であれば、記事の中で必ず使用したいキーワードや、避けたい内容をあらかじめ伝えておきましょう。後々の修正を避けることができます。
〆切とスケジュール
プロダクト完成までのマイルストーンを共有することで、依頼者だけではなく受注者側も作業にかかる全体の工程を把握できます。
プロジェクトを管理する上でも、仕事の依頼時にはスケジュールを明確にしておきましょう。また、後からやっぱりこのスケジュールでは間に合わなかった……という基本的なミスを防げます。
予算
当然のことになりますが、予算はクラウドソーシングで依頼する段階で明確にしましょう。その依頼を請け負ってもらえるか否かの大きな判断材料になります。
2. そのクリエイターは依頼先として適切か?
「誰に依頼するのか」は、プロジェクトのクオリティを高める重要なポイントです。
仕事を依頼するクリエイターを探す・決める上で、以下の項目をチェックしておきましょう。
- テイストは合致しているか
- 依頼内容の類似作品を作っているか
- 提案された金額が高すぎないか
- レスポンスが早いか
依頼内容の類似作品を作っているか
まず「探す」段階での重要なポイントは、今回の依頼内容と類似した作品を作っているかどうかを確認することです。
例えばマンガテイストの男性イラストを外注したい場合、クラウドソーシングサイトのポートフォリオ検索から「マンガ」「男性」のキーワードで検索します。こちらがイメージしているテイストに近い作品を作っているクリエイターを候補にしましょう。
当然ですが、候補のクリエイターのプロフィールや評価にも目を通しておきましょう。それで問題がなければ、仕事依頼のコンタクトを取ります。
レスポンスが早いか
候補に上がったクリエイターに仕事を依頼した後、仕事内容や作業時間、報酬などの条件を加味してクリエイターから提案がされます。提案とは、仕事条件の提案や、辞退または承諾のことです。
この提案のレスポンスが早い人がおすすめだそうです。なぜなら、レスポンスが早い人はリソースに空きのある可能性が高いので、結果的にスケジュールよりも早く納品してくれたり、トラブル時の修正を迅速に対応してくれたりする人が多いからです。
したがって納期を厳守できることはもちろん、高いクオリティのプロダクトを納品してくれると考えられます。
クリエイターが決まり次第、スケジュール通り作業の進行を依頼しましょう。
3. 著作権の所在は確認済み?
依頼主が著作権を保有するのは、選んだプロダクトのみ
クリエイターから納品されるプロダクトの著作権に関しては、無用なトラブルを避けるためにも認識を正しく持っておきましょう。
とりわけコンペ方式の場合、複数ある中からクオリティの高いプロダクトを選ぶことができます。ここで注意したいのが、クライアントが著作権を保有するのは、選んだプロダクトのみです。提案はされたとしても、納品物として選ばなかったプロダクトはクリエイターに著作権が残ります。
商用可能のフリー素材かどうか
予算が少ないWeb制作の現場などでは、インターネットのフリー素材集を使用する機会が多いかと思います。
納品されたプロダクトは写真やイラスト、ロゴ、音声などのフリー素材を使用していないかどうか、使用許諾の確認をするようにしましょう。なぜなら、インターネットにはフリー素材が数多く存在するわけですが、「営利目的以外なら利用可」などフリー素材と明記されていてもビジネスで使用できない場合があるためです。
その代表例として、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)があります。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスでは「作品のクレジットを表示すること」「営利目的では使用しないこと」「作品を改変しないこと」などの一定の条件の下での、作品の流通を認めています。
納品されたプロダクトにフリー素材が使用されている場合には、必ず使用許諾の確認をするよう徹底しましょう。
4. クリエイターの個性を活かせているか?
クラウドソーシングを使って外注するなら、はじめのうちはさまざまなクリエイターに仕事を依頼しましょう。これが納品されるプロダクトのクオリティを高めていく秘策になります。
理由は2つありまして、1つ目にプロダクトのクオリティが信頼できるクリエイターを探すため。2つ目に、クリエイターそれぞれの個性を知るためです。
例えばLIGブログのように企業のオウンドメディアの記事をライターに依頼して作成したり、イラストを作ったりするなら、真面目な記事やフフッと笑える記事など、各々の内容やライターによって記事のテイストは異なっていきます。そのため、記事のテイストに合致する作品を生みだすクリエイターと仕事をするほうが、プロダクトの完成度は高くなります。
優秀なクリエイターのそれぞれの個性を知り、クリエイターの納品物と特徴をエクセルやスプレッドシートで管理していくことで、この記事はあの人にお願いしたい……!という個性を活かしたキャスティングができるようになっていきます。
クリエイターメモ例
名前 | 〇〇さん |
---|---|
納品物 | http://sample.XXX/XXXXXXXXXX |
レスポンス | 早い |
納期 | 期日よりも1〜2日前 |
特徴 | 女性っぽいテイストのイラストが得意 |
プロジェクト管理で注意すべきポイント
クラウドソーシングを活用したプロジェクトをマネジメントするにあたり、以下のことに注意しましょう。
- 全体の工程を共有しよう
- プロジェクトの一員であることを伝えよう
- 遊びを効かせられる余白をつくろう
- コミュニケーションの取りやすい時間を聞いておこう
- データや決定事項はまとめておこう
- 事前にチェック項目を共有しておこう
- 充分な修正期間を設けておく
1. 全体の工程を共有しよう
プロジェクト管理をする上で、制作や開発に必要なタスクを全て洗いだし、表にして全体の工程を見える化することが多いかと思います。
プロジェクトを管理する手法として、作業を細かく分割して図に起こすWBS(Work Breakdown Structure)が有名ですね。これにより、「誰が」「何を」「いつ」担当しているかを明確にできます。
クラウドソーシングを利用するにあたっても、全体の工程を共有して、外注しているクリエイターや社内の上司、クライアントにプロジェクトの全体的な見通しを把握してもらいましょう。
2. プロジェクトの一員であることを伝えよう
外注しているクリエイターに、プロジェクトの一員であることを伝えておくのも大切なポイントです。
特にクラウドソーシングの場合、〆切を伝えておくだけでは、受注者であるクリエイターは期日までに納品できなかったときの影響がわかりません。「○月○日までに納品をお願いいたします」というよりも、「納品後に社内及びクライアントに確認をしたいので、○月○日○時までに納品をお願いいたします」と伝えるほうが、プロジェクトの全体像を把握しやすいですよね。
全体のスケジュールを共有し、かつプロジェクトの一員であるような伝え方の工夫をすることによって、単に納品をするだけではなく、受注者のプロジェクトへの一体感や責任感がより強まるのだそうです。
3. 遊びを効かせられる余白をつくろう
詳細に要件定義をして、クリエイターに依頼するのが後々のトラブルを防ぐいちばん良い方法です。だからといって、いつでも細かく指示ばかりしていると、クリエイターは依頼者側の発想を重視した成果物に寄せていきます。
そのため、細かい注文をしつつも、ある程度クリエイターが遊びを効かせられる余白を持たせることが重要です。
クラウドソーシングについて書いた前回の記事でもオープンイノベーションという言葉に触れましたが、社内にはない、新しい発想を気軽に取り入れられるのがクラウドソーシングの魅力です。
4. コミュニケーションの取りやすい時間を聞いておこう
仕事の発注が確定した段階で、クリエイターに「連絡の取りやすい時間帯はありますか?」と一言ラフな感じで聞いてみてください。
お互いのレスポンスが早ければ早いほど、必然的にクリエイターの作業スピードが早くなるからです。ちなみにリアルタイムのチャットだと一層盛り上がるLINEのコミュニケーションのように、クラウドソーシングでのやりとりもチャット形式になっています。
こちらから連絡するときは、クリエイターが返信しやすい時間帯にしておくのがコツです。また、クリエイターからの連絡はできるかぎり早めに返事をしましょう。
例えば、あらかじめ決めておいたスケジュールでは「途中段階のイラストラフの確認は○日まで」と設定していたとしても、すぐに返信することによって、確認と返事のために取っておいたスケジュールを詰めていくことができます。
こちらから当初の予定を前倒しにしていくのも、期日に余裕をもたせるためのポイントです。
5. データや決定事項はまとめておこう
クラウドソーシングでのクリエイターとのコミュニケーションはチャット形式だと言いました。そのため、重要事項やデータのやりとりがあっても、クリエイターは忘れていたり見落としていたりすることがあります。
逆に自分自身も、クリエイターからの途中の納品物や質問について見落とすことがしばしばあります。
そのため以下のような、ささいなコミュニケーションロスは避けましょう。
- チャットツール内の重要事項
- メールでのデータのやり取りの中での重要事項やデータ
- DropboxやGoogleDriveで共有されたファイル……など
チャット内で伝えた重要事項や決定事項があれば、あらためてドキュメントやスプレッドシートにまとめて共有しておきます。
そうすることで、クリエイターだけでなく、プロジェクトに関わるディレクターや上司、クライアントへの共有資料になります。
6. 事前にチェック項目を共有しておこう
クリエイターから納品される前に、事前にどのような点を確認するかをチェックシートを作成して共有しておきましょう。
これにより、クリエイター自身で納品前に成果物の良し悪しをチェックできます。納品後の修正期間では、ディレクターなどのプロジェクト管理担当者に加えて、上司やクライアントにも確認を依頼するはずです。
チェック項目の基準を設けておくことは、確認する際の関係者の負担を軽くし、ゆえにプロジェクトの進行を円滑にさせ、プロダクトのクオリティを高めるのだそうです。
7. 充分な修正期間を設けておく
至極当たり前ですが、はじめてクラウドソーシングのプロジェクト進行をする際には、いつも社内でやるよりも充分な修正期間を設けておきましょう。
ご存知のとおり、制作物にはクリエイターや社内の人間、そしてクライアントなど多くの人が関わります。だからこそ、制作過程で修正が入ることはよくありますよね。
早くプロジェクトを進行することだけを考えてスケジュールを見積もっていると、納品ギリギリで修正が入ったときに、100点とは言えないプロダクトになるはずです。逆に、修正期間を充分に取っておけば、関係者の声をしっかり取り入れた満足度の高いプロダクトを期日内に納品できるでしょう。
まとめ
今回の記事では、ディレクターやエンジニア、デザイナーなどの制作に携わる人に向けて、クラウドソーシングを活用して納品物のクオリティを上げるプロジェクト管理と制作フローのポイントをお話してきました。
「そんなの当たり前」ということしかお伝えできていないかもしれませんが、さいごにひとつだけ。
制作に携わる人の多くが、クラウドソーシングを活用していく時代に突入してきています。それによって、社内と社外の力を活用しながらプロジェクトごとに高いクオリティでアウトプットする力が求められると考えられます。
もしまだクラウドソーシングでの発注、受注をした経験がないのであれば、この機会に試してみてはいかがでしょうか?
日本最大級のクラウドソーシング「ランサーズ」
今回お話をうかがった「ランサーズ」さんでは、以下のような特徴があります。
- 登録・依頼・見積もりすべてが無料
- 全141種類の仕事を依頼できる
- ローコストかつハイスピードで仕事をすることができる
- 登録者数・利用社数がともに日本最大
※日本最大の根拠はこちらの調査によるものです。
さらにランサーズが認定したハイスキルなクリエイターを認定ランサーとして見える化しているそうです。
新しいことをはじめるのは、スキルアップにつながるはず!
それでは、また!
【Web制作のフローについて】
※ Web制作のクライアントにヒアリングしたい項目と意識すべき重要なこと
※ ディレクターがWeb制作のプロジェクト進行でトラブルを防ぐための5つのコツ