ギルド開発
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2015.08.18
LIG PR
#6
働き方インタビュー(経営者編)

「制約の中でクオリティを上げるのがプロの仕事」ソーシャル×モバイル時代の生存戦略 | 株式会社ニジボックス

小田直美
(編集部注*2015年4月14日に公開されたインタビュー記事を再編集したものです。)

“コンテンツ大量消費時代”と言われる現代で、有名タイトルのソーシャルゲーム開発や、店頭購買促進を強みとするデジタルマーケティング事業を手掛ける株式会社ニジボックス。リクルートグループの中でも、成長分野である“モバイル”と“ソーシャル”に特化したモノづくりにこだわり続けています。

ニジボックスで代表取締役社長兼CEOを務める麻生要一氏は、倒産が現実味を帯びるまで赤字額が拡大したソーシャルゲーム事業を見事に再生させた敏腕経営者。そこで今回は経営不振、人事編成などいくつもの失敗を乗り越えた麻生氏の“モノづくり”に対する揺るぎない核心について伺いました。

3dd6fa0cd0d7ed0ba839e7aa2b80c869 人物紹介:麻生要一
株式会社ニジボックス代表取締役社長兼CEO。2006年、株式会社リクルートへ新卒入社。社内新規事業コンテストNewRINGで受賞し、社内起業家として2010年に株式会社ニジボックスを創業。2013年にCEOに指名され、現職。2014年からはリクルートグループのR&D戦略の立案を担当し、2015年8月現在はMedia Technology Lab. 室長を兼任する。

9ヶ月しか寿命がない会社のために、自分の仲間13人に「辞めてくれ」とリストラした

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30歳で経営者になることを志していた麻生氏は、新卒でリクルートに入社します。広告営業として働いていた社会人2年目、社内でのビジネスコンテスト優勝をきっかけに新規事業の立ち上げを任されることになりました。リクルートから分社化する形で、モバイルキャリア向けのコンテンツ制作会社を創業しましたが、時代はガラケーからスマートフォンへ移行の真っ只中にあったそうです。そのため「創業事業が死に始めるときに会社を興した」と麻生氏は表現します。

麻生:会社を興した2011年は潮目の年でした。まだガラケーがメインだから行けるだろうという論調と、いずれ減っていくのは目に見えてるよねという論調が混在していた時代。スマホ向けにピボットするべきか迷っていたタイミングで、モバゲーやグリーといったプラットフォームのバブルがきたんです。
「これはヒットを生み出す魔法じゃないか!」と思って、ソーシャルゲームを大量生産する事業にピボットしました。ソーシャルゲーム大量生産事業という名のとおり、とにかくタイトル数を増やしまくったら、それがうまくいったんですよね。10倍のスピードで売り上げが跳ねあがって、創業1、2期目は爆発的に事業が成長しました。

「モバゲーとグリーのゲーム開発会社の中で、当時一番多くタイトル数を生産したのがニジボックス。2年間で50タイトルぐらい創りました」と話す麻生氏。しかし、大量生産のビジネスモデルには運用コストが積み重なってしまう盲点がありました。

麻生:今になって考えてみると、大量生産するよりも、1つのゲームを作り込んでヒットさせた方が、ビジネスとしては正解だったんですよね。一番の落とし穴は、フリーミアムだったことにある。
フリーミアムのゲームでは、いかに有償部分の売り上げを増やすかが重要。だから、ゲームの運用本数が増えるほど、運用にパワーが分散しちゃって、売り上げが毎クオーター下がっていった。

※フリーミアム;フリー(無料)ビジネスの一つ。無料のサービスを多数のユーザーに提供し、高機能または追加された特別な有償サービスによって収益を得るビジネスモデル。

引用元:フリーミアム

ガラケー向けのコンテンツ制作から、ソーシャルゲーム開発へのピボットを成功させたものの、創業3期目にして経営危機に陥ったニジボックス。クオーターの赤字は1億まで膨れあがり、何もしなければあと9ヶ月で倒産してしまう会社全体が満身創痍の状態で「社長として事業を立て直せ」との人事が麻生氏に下ります。

麻生:大量生産していた1、2期目と全く同じ戦略を取っていたら、3期目になって赤字幅がどんどん拡大していきました。深刻な経営危機に陥ったんです。
それまで僕はソーシャルゲームの事業部長をやっていたんですが、人事命令で、社長になることが決まって。社内では物すごい罵声を浴びましたね。当時の2chには、悪口しか書かれていなくて、めちゃくちゃでしたよ。
でも、会社はこのまま行けば9ヶ月が寿命だった。それで、全費用項目の見直しをすることになって、その中には人件費も含まれていました。これ本当に辛かったんですが、自分で採用した13人の仲間に「辞めてくれ」と言ったんです。

「マネージャーの立場で自ら採用したのに、辞めてくれと言わなくちゃいけないのは、本当に悲しい体験だった」と、当時を振り返る麻生氏。事業のピボットや人事編成を経て、麻生氏が見出した再生への条件は“モノづくりが好き”という信念でした。

麻生:いやー、この失敗から学べたことなんて、多分なかったです。それよりも「この失敗を二度と起こさないための、正しい経営をしよう」と、強く心に誓いました。
業績を回復させるためには、一から経営戦略を見直さなければならなかったので、とにかく良いモノづくりをすることに専念しようと。“魂を込めたモノづくりが世界を変える”という言葉は、ここ2年ぐらいずっと言っていますね。

「なんで私が好きなの?」って彼女に聞かれて「わかんないけど好き」って感覚と同じように、モノづくりが好き

必死に会社を立て直した麻生氏が、ただ一つこだわり続けたのが「モノづくり」でした。麻生氏は「モノづくりが好きなのに、理由はない。好きな人がいて、好きな理由がないけど好きなのと同じ」だと言います。

麻生:ニジボックスが一番大切にしているものは何かと聞かれると“モノづくりの会社である”というコンセプトです。ただ、趣味ではなくビジネスでモノづくりをしているので、自分たちが作ったものに対しても、プロフェッショナリズムがあるかどうか見るようにしています。“神が細部に宿るまで作りこむ”って重要だと思うので。
僕自身、モノづくりが好きなので、モノづくりの会社をやっているのは楽しい。モノづくりが好きな理由とか、モノづくりのどこが好きなのって聞かれると、多分だれも説明できないと思うんですよね。
「なんで私のことが好きなの?」って彼女に聞かれたとき「わかんないけど、好きなんだ」って答える感覚と同じだと思います。理由を挙げることができているうちは、本当に好きとは言えないから(笑)

「僕も昔はよく、開発合宿とか行って、アプリとか創ってました」と言うほど、モノづくりに対するストレートな愛情を語る麻生氏。その愛情は、ニジボックス全体に浸透しているようです。

麻生:我々はモノづくりの会社なので、企画とかプロモーションとかマーケティングとかよりも、絵だったら「どうやってここのドラゴンの図面をもっとカッコよくする?」とか、プログラマーだったら「どうやって美しいコードを書く?」とか。
そういうスキルアップとか細かいところにこだわって、創るみたいなことに命をかけている人とか、そういう生き方をしたいという人がやっぱり多いですよ。

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