ギルド開発
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2015.06.26
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#2
働き方インタビュー(経営者編)

社運を賭けたプロジェクトで大コケ。敗戦処理係が生み出したクラウド型チャットツール|ChatWork

タクロコマ
(編集部注*2015年5月12日に公開されたインタビュー記事を再編集したものです。)

2015年4月現在、6万7000社もの会社が利用しているクラウド型チャットツール『ChatWork』は、今やビジネス用途のコミュニケーションツールとして多くの会社が利用しています。

しかし、同サービスはChatWork株式会社の前身となる株式会社EC studioで、社運を賭けたプロジェクトが失敗に終わり、そこから大きな事業転換をした結果に生まれたサービスであるそうです。そこで今回は専務取締役CTOの山本正喜氏に、躍進のきっかけとなるコミュニケーションサービスが生まれるストーリーや、会社の思想、価値観についてお話をお伺いしました。

7b32afbfe53818239359439ffa0b39bf 人物紹介:山本正喜
1980年生まれ。電気通信大学情報工学科卒業。大学在学中より代表の山本敏行とともに、代表弟で株式会社EC studioを2000年に創業。以来、製品開発担当として多数のサービス開発に携わり、2011年3月にクラウド型ビジネスチャットツール「ChatWork」を開発。2012年には社名をChatWorkへと変更し、ChatWorkをビジネスコミュニケーションにおける世界のスタンダードにすべく、全社を挙げて取り組んでいる。

ウチの代表って『Microsoft Office』が使えないんです。だから徹底的に自動化・効率化をする文化がある

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ChatWork株式会社の代表取締役であり、山本氏の兄でもある山本敏行氏は、大学生時代にロサンゼルスに留学をしていたそうです。そこで「代表(兄)は世の中が変わるぞっていうのを目の当たりにした」と話す山本氏。

山本:当時2000年ぐらいなので、ドットコムバブルの真っ只中だったんですよ。だから代表としては、何かしたいみたいな想いがあって日本向けにホームページを作ってビジネスをしようと。
で、僕は日本で情報系の大学に通っていたので、代表から「お前、プログラム勉強しているんだったら、何か作れないのか」って。そこから始まったのが、僕らのビジネスの一番最初ですね。

※ドットコムバブル:1999~2000年頃にアメリカを中心に起こった、IT・インターネット関連の新興企業をめぐる経済的熱狂。

引用元:ドットコムバブル

学生の副業から始まったビジネスは数々の成功を収め、数年後の2004年に法人化し、ChatWorkの前身である株式会社EC studioが設立されます。しかし、その直後に「EC studioの創業1年目にして、代表がほとんど会社にいない」状況に陥ったと語る山本氏。

山本:ウチの代表って副業ビジネスから会社を立ち上げたので、社会人経験がほぼないんです。だから「そんな自分が会社を経営するのは不安だ」「勉強させてくれ」って言うので、社員を残して1年間にわたる起業家の育成講座に通って、経営について勉強してもらいました。
代表が通ってた育成講座って、本当に目茶苦茶ハードで。毎日朝から晩まで研修を受けて、帰ってきた後も課題図書やレポートが出て、それを毎日やる。本当に寝る暇もないんです(笑)

代表が1年の月日を経て会社に帰ってきたとき「やっと帰ってきてくれた! とウチの社員は泣いてましたね」と振り返りながらも「Microsoft Officeって仕事で使った経験がないと難しいじゃないですか。実はウチの代表は、未だに使えないんです(笑)」と続ける山本氏。

山本:そんな代表の思想が影響しているせいか、弊社はITツールの使い方がかなり変わってるんです。例えばウチの社員はPCにMicrosoft Officeのソフトが入っていないんですよ。
その代わりに、いろんなクラウドのITツールを組み合わせたり、社内のシステムを作りこんだりして、徹底的に自動化・効率化をする文化がある。ITに詳しくないウチの代表でも使えるようなワークスタイルにしていて(笑)
その思想は提供するサービスにも活かされています。「餅は餅屋」という代表が大好きな言葉があって、何事においても「得意な人にやってもらうのが一番いい」という意味です。だからウチでは、ITでやれることはITで徹底的に自動化する。そして人は、人にしかできないことをやろうと。それが弊社を定義する根底の考え方なんです。

Googleにも勝てるだろうという勘違いをしていて。エースメンバーを総集して、社運を賭けたプロジェクトが大コケ

学生時代から多数の事業を展開し、成功を収めた山本氏ですが、当時の経験から「SEOや検索エンジンの仕様とか、流行に振り回されるのは嫌だ」と考えたそうです。

山本:Google Analyticsって便利なんですけど、使いこなすの難しいじゃないですか。それを初心者でも簡単に、アクセス解析のおいしいところを利用できるツールを作ればウケるんじゃないかと企画しました。社運を賭けるプロジェクトとして当時のエースメンバーを集めて『ウェブアナリスト』というツールを公開したんですけど、それが大コケしまして。
無料プランでは多数のユーザーさんが利用してくれて評判もよかったんですが、全然有料版に移行してくれなかったんです。アクセス解析にお金を払うような人っていうのは、詳しく見たいんですよ。ウェブアナリストで狙っていたようなカジュアルなユーザーはGoogle Analyticsでいいと。

3年間ウェブアナリストの運営に尽力しますが、最後は閉鎖という形で幕を閉じることとなりました。そして当時2、30人の社員を抱えている会社で数億円にも及ぶ赤字を出してしまったこの失敗は、山本氏にとっても、会社にとっても“はじめての大きな挫折”となります。

山本:学生でプログラムもたいしてできないころの自分が作ったサービスが、めちゃくちゃうまくいってビジネスとして稼げるようになったと。それが5、6年経ってプログラムも書ける、システムも組める、経験も積んだ。今の、このメンバーで本気を出せば、Googleにも勝てるだろうという勘違いをしていて。

この失敗は社内全体で大きな問題となり「ウチっていい会社だと思っていたけど、こんなにボロボロだったんだ」と山本氏が痛感するほど、組織は大きく揺れます。

山本:会社の成長が止まると、魔法が解けるんです。ダイエー創業者の中内功さんという人が「売上は全てを癒す」と言っています。会社が成長をしていると、小さな社内の問題って気にならなくなる。というか、隠されちゃうんですね。
でも成長が止まるとその魔法が解けて、今まで気にならなかった不満とかがバーッと出てくるんです。それがすごくショックでしたね。それまでトップダウンの体制でやってきたので、社員の自主性をすごく潰していた部分があって。だから「どうせ幹部が決めるんでしょ」みたい不満が多かったことに気づきました。それを変えようと思って、大規模な組織転換をすることにしました。
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