こんにちは、メディア事業部のハマです。突然ですが、皆さまは「テレワーク」というものをご存知でしょうか。
テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと
出典:一般社団法人日本テレワーク協会
もし「なんだ、在宅勤務のことか」と思われたとしたら、それは違います。なぜなら在宅勤務は、テレワークの形態の中の1つだからです。
- テレワークの3つのスタイル
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1)在宅勤務
自宅にて、各種通信手法を使用して働く2)モバイルワーク
顧客先や移動中にて、各種通信手法を使用して働く3)サテライトオフィス勤務
勤務先以外のオフィススペースにて、各種通信手法を使用して働く
テレワークや在宅勤務というと、どこか自分とは無関係なことのように思えるかもしれません。ただ、自分ではどうにもできない家庭の事情などによって、在宅勤務せざるを得ない状況になってしまう可能性は、誰にでもあるのではないでしょうか。
そこで今回は、「テレワーク」とは何なのか、関連する情報をまとめながら整理していきたいと思います。
テレワークの現状
まずは、テレワークの現状がどのようになっているのかを見ていきましょう。
テレワーカーの数と割合
国土交通省が2014年3月に発表した「平成25年度テレワーク人口実態調査 – 調査結果の概要 – 」によれば、以下の結果が報告されています。
- 平成25年度テレワーク人口実態調査
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- 全労働者数に占める週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数の割合は4.5%(260万人)
テレワーク導入企業の割合と効果
また、総務省が2014年6月に発表した「平成25年度通信利用動向調査の結果」では、以下の結果が報告されています。
- 平成25年度通信利用動向調査の結果
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- テレワークを導入している企業の割合は9.3%
- 資本金規模別では、資本金50億円以上の企業では38.0%の導入率
- 導入企業におけるテレワークへの評価としては、「非常に効果があった」「ある程度効果があった」が8割以上(83.9%)
テレワーク推進の展望
さらには閣議でも、2014年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」において、以下の方針が改めて確認されています。
- 世界最先端IT国家創造宣言
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- 2020年までに、全労働者数に占める週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー数の割合を10%以上にする
- 2020年までにテレワーク導入企業数を3倍にする(2012年度比)
テレワークの導入事例
テレワークの導入事例として、実際にどのようなものが国内および国外には存在しているのかについては、以下のページを参考にしてください。
- テレワーク実践事例|テレワークの導入・活用 – 一般社団法人日本テレワーク協会
http://www.japan-telework.or.jp/intro/example/index.html
- 世界のテレワーク事情 2012年4月 – 一般社団法人日本テレワーク協会
http://www.japan-telework.or.jp/abroad/pdf/telework_world.pdf
テレワークの傾向について
政府の方針を単純に考えると、2020年までには全社員のうち10人に1人がテレワーカーということになります。今後、「テレワーク」という言葉がますます世の中に認知されていくものと思われます。
ちなみにテレワーク発祥の地であるアメリカでは、2010年時点で2,620万人ものテレワーカーが存在しており、そのうち45%がテレワークを「ほぼ毎日実施している」との統計データもあります。
テレワークのメリット
では、テレワークには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下、「国家」「企業」「社員」というそれぞれの立場で整理してみます。
国家にとってのテレワークのメリット
国家にとっての主なメリットは「育児・少子高齢化対策」「地域活性化推進」「環境負荷軽減」という3つになります。
育児・少子高齢化対策
- 在宅時間が増えることにより、子育てや介護の時間が増加
- 女性、高齢者、障がい者などの就業機会が拡大
- 労働力人口の減少解消に貢献
- サテライトオフィスの活用
- 通勤がなくなることにより、地方居住者が増加
- 通勤がなくなることにより、交通量が減少
- オフィスの省電力化により、CO2の削減に寄与
- 柔軟な働き方の実現により、有能かつ多様な人材の確保と流出の防止
- 育児期や介護期などにおける社員の離職防止
- 顧客訪問回数や顧客滞在時間の増加
- オフィスコストの削減
- 通勤などに要する交通費の削減
- 震災や新型インフルエンザなどへの対応
- 家族と過ごす時間が増加
- 家事や育児への積極的な参加が実現
- 自己啓発などの時間が増加
- 一定の場所に縛られずにどこでも仕事が可能に
- 集中的な作業における効率性の向上
- 通勤時間の削減
- テレワークの導入をさらに推進できる対策が不可欠に
- テレワーク導入を推進する助成金制度を開始(2014年4月より新設)
- 労働時間の不可視化
- 新たな人事評価制度が必要に
- 労務管理の不可視化に対応すべく、労働者に一定の裁量権を与える
- 達成すべきノルマを策定し、これにより成果を評価する(※ただし、事務職などでは、ノルマによる評価方法が導入しにくいという別の課題もある)
- 社員同士のコミュニケーションや、社内外における情報共有が希薄化
- 会社への忠誠心の低下
- ロールモデルの消失
- 遠隔会議システム構築
- クラウド勤怠管理システム構築
- 各自が使用するスマートフォンの内線化・音声通話システムのクラウド化(※社員同士の通話が無料に。また、社外からでも会社の電話番号で発信できるようになるため、自宅でも電話による顧客対応が可能に)
- 情報漏洩などへの対策が新たに必要
- セキュリティ管理体制およびシステムの構築
- 労働時間が長期化しやすい傾向:「どこでも仕事ができる」が「どこでも仕事をしなければならない」に
- 企業およびテレワーカーの双方が納得できる妥当なノルマの策定
- 仕事モードへの切り替えが困難
- 集中できる自宅作業場の構築
- 「テレワーク – Wikipedia」
- 「一般社団法人日本テレワーク協会」
- 「総務省 – ICT利活用の促進 – テレワークの推進」
- 「職場意識改善助成金(テレワークコース) – 厚生労働省」
- 「ITの進化が追い風 「在宅勤務」に本気で取り組む時代が来た – IT&ビジネス 業界ウォッチ – ダイヤモンド・オンライン」
- 「ブラック企業を作りたければ「在宅勤務」を認めればいい – 在宅ワークの4つのメリットと、1つの注意点 – まだ東京で消耗してるの?」
- 「在宅勤務を3ヶ月やってみた感想 – NCデザイン&コンサルティング株式会社」
- 「世界最先端IT国家創造宣言(閣議)」
- 「平成25年度 テレワーク人口実態調査 – 調査結果の概要(国土交通省)」
- 「働き方改革を支えるテレワークに関する調査 – アイリサーチ独自調査レポート」
地域活性化推進
環境負荷軽減
企業にとってのテレワークのメリット
企業にとっての主なメリットは「有能かつ多様な人材の確保と生産性の向上」「営業効率および顧客満足度の向上」「コスト削減」「非常災害時の事業継続」の4つになります。
有能かつ多様な人材の確保と生産性の向上
営業効率および顧客満足度の向上
コスト削減
非常災害時の事業継続
社員にとってのテレワークのメリット
社員にとっての主なメリットは「ワークライフバランスの実現」「作業効率性の改善」の2つになります。
ワークライフバランスの実現
作業効率性の改善
テレワークがもたらすメリットについて
通勤時間は、会社員にとっては働き方を選択する上での大きな問題となります。しかしテレワークが本格的に導入されれば、通勤という行動自体がなくなるため、さまざまな働き方が実現できるようになるかもしれません。
たとえば、首都圏に集中していた人材が地方へスムーズに移住することができるようになったり、逆に地方や海外に残らざるを得なかった人材が首都圏の会社へスムーズに在籍することができるようになったりするなど、日本の労働市場全体が、新しい形での盛り上がりをみせるようになるでしょう。
テレワークの課題と対策
次に、テレワークには、具体的にどのような課題と対策があるのでしょうか。先ほどと同様に「国家」「企業」「社員」というそれぞれの立場で整理してみます。
国家にとっての課題と対策
国家にとっての課題は「テレワークの普及と推進」になります。
「テレワークの普及と推進」の課題
「テレワークの普及と推進」の対策
参考:職場意識改善助成金(テレワークコース) – 厚生労働省
企業にとっての課題と対策
企業にとっての主な課題は「労務管理」「社内(社外)コミュニケーション」「セキュリティ管理」の3つになります。
「労務管理」の課題
「労務管理」の対策
「社内(社外)コミュニケーション」の課題
「社内(社外)コミュニケーション」の対策
「セキュリティ管理」の課題
「セキュリティ管理」の対策
社員にとっての課題と対策
社員にとっての主な課題は「労働時間の管理」「労働姿勢の管理」の2つになります。
「労働時間の管理」の課題
テレワーカーに裁量権があるといってもそれは限定的なもので、テレワーカーにはノルマ(仕事量)を決める権限はなく、ノルマは勤め先など外部が決定している。(中略)労働時間が見えないため外部が決定する仕事量と労働時間とのバランスが難しく、「このくらいできるよね」と外部がノルマを課せばテレワーカーはこなさなければならない。
そして裁量労働制という名前の元に、テレワーカーは「自分が仕事をコントロールしており、ノルマをこなせないのは自分のせいだ」として、ノルマをこなすためについつい労働時間を延ばしていく。しかもこの延びた時間をテレワーカーは「労働時間として認識しない」傾向にあるという。
出典:Wikipedia
「労働時間の管理」の対策
「労働姿勢の管理」の課題
「労働姿勢の管理」の対策
テレワークの課題と対策について
何かを変えようとすれば、当然ながらメリットだけではなくデメリットも伴います。ただ、たとえば上記で「労働時間の不可視化」というデメリットをあげていますが、そもそも「労働時間」とはどのように定義されるものなのでしょうか。
もしかするとテレワークの導入によって生まれた時間や地域でのつながりによって、社員が自社に新たな利益をもたらす活動を始めるようになるかもしれません。これは、従来の「労働時間」に含まれるのでしょうか。あるいは、含まれないのでしょうか。その判断はとても難しく、「労働時間」に関する新たな定義が求められることになります。そして、新たな定義による「労働時間」をもとに考えたとき、「そもそも、労働時間を可視化する必要なんてない」との結論に至り、デメリットではなくなってしまうかもしれません。
このように、今現在で課題と認識されているものについては、その定義から改めて見直していく必要もあるのではないかと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「社内勤務とテレワークのどちらのほうがより優れているか」といった議論もあるようですが、個人的にはどちらにも良いところがあれば、悪いところもあると思っています。
そういった優劣についての論争はひとまず置いておき、通常の勤務形態が不可能な境遇に立たれている方(会社)、もしくはこれから立つことになる方(会社)が、「テレワーク」という1つの選択肢を知るうえで、この記事が少しでも役に立ってくれれば幸いです。
お世話になった主な参考情報
今回の記事を作成する上で、お世話になった主な参考情報は以下の通りです。ありがとうございます。大変勉強になりました。
記事・サイト(ページ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF
http://www.japan-telework.or.jp/
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/
http://diamond.jp/articles/-/48998
http://www.ikedahayato.com/20140813/10041362.html
資料・調査結果
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20130614/siryou1.pdf
http://www.mlit.go.jp/crd/daisei/telework/docs/25telework_jinko_jittai_gaiyo_syuusei.pdf