こんにちは! ライターの鈴木しのです。
突然ですが、みなさん。もしも「あなたの住んでいる街が135年後になくなるんだって」と言われたらどう感じますか?
いろいろな感想があると思いますが、正直なところ私はあんまりピンときません……。だって、135年後といったらたぶん私たちのひ孫や玄孫(やしゃご)くらいが働いている世代。そりゃあ日本だって変わっているでしょうね。
でも、もしもあなたの街の人口減少スピードが全国平均の4倍と言われたら、結構焦りませんか……? そして、実際にそんな人口減少に悩んでいる街が滋賀県にあるんです。
それが滋賀県長浜市。急速な人口減少という課題解決のために、首都圏と長浜市とをつないで盛り上げるグループ「東京ー長浜リレーションズ」が立ち上がりました。
長浜市にゆかりのある方や東京に住む長浜市出身の方を招いて、首都圏と長浜市のつながり方について考えた本イベント。今回は、「東京ー長浜リレーションズ」キックオフイベントの様子をレポートしていきます!
東京で長浜市とつながる場をつくる
「東京ー長浜リレーションズ」は、長浜市と首都圏をつなぐこと、首都圏の方にも長浜市を知ってもらうことを目的に立ち上がりました。長浜市出身の方や長浜市にゆかりのある方をメンバーに迎えて、東京を中心とする首都圏と長浜市とのつなぎ方を考えていきます。
イベント開会の際には、長浜市長である藤井勇治さんから以下のようなコメントが。
「長浜市は、10年前から人口の減少が著しく、これまでには二度の合併を行なってきました。地方創生と謳ってこれまでにもさまざまな取り組みを行ってきましたが、人口減少を食い止めるまでには至っていません。長浜市と東京をつなぐことで、多くの方に市のことを知ってもらう機会を作っていきたいです」
長浜市の現在の人口は、11万8,699人。2013年の人口は12万3,085人だったので、たった5年間で4,386人減少していることがわかります。
月に換算すると、なんと毎月73人もの人が長浜市を離れているという現状です。全国平均と比較しても約4倍のスピードで減少しているのだそう。今のままだと、単純計算で135年後に長浜市は存在すらしなくなってしまうことに。これはまずい……。
今回のキックオフイベントでは、そんな長浜市の現状を理解して魅力を再確認することを最初のゴールに設定しています。
そして、キックオフイベントを通してより長浜市との関係性を深めてくれる方を増やすことで、市全体を今よりも盛り上げて移住者を増やしたいのです。
地域おこし協力隊の目線から見る長浜の魅力
今回のイベントは、大きく2つのプログラムで構成されています。前半は、実際に長浜市で活動している地域おこし協力隊のメンバー3名を呼んで、活動内容や長浜市の魅力について話していただきました。
人と人との距離感がちょうどいい場所
最初に登壇したのは、長浜市のなかでも木之本町をメインに活動する植田淳平さん。2015年12月に東京から長浜市に移住して以来、イベントやクラウドファンディングなどを立ち上げて、長浜市に人が訪れるための動線設計を行っています。
![]() |
人物紹介:植田淳平さん2015年12月より東京から滋賀県長浜市に移住し、現在は長浜市地域おこし協力隊として活動。昔ながらの町並みが残る木之本の北国街道や江北図書館をとても気に入り、長浜市の魅力を伝えるために奮闘している。 |
---|
「これまでに僕が関わったプロジェクトのなかで特に印象的だったのは、使われていなかった古民家を改装してオープンした『Bookcafe 住暮楽(すくらむ)』です。食・人・本がつながる場所として、クラウドファンディングで資金調達を行いました」
古本市の開催や長浜市の魅力を紹介する小冊子「長浜くらしノート」の制作にも関わったといいます。そんな植田さんは、地域おこし協力隊として活動する任期の3年間が過ぎた後、長浜市への移住を決断したのだそう。
「長浜市には、生きていけるだけの仕事もあるし、市全体がすごくおもしろいエリアなんです。さらに、市と市民との距離感もちょうどいいから、意見も反映されやすい。暮らす上で、すごく魅力が多いと感じました」
▲グラフィックレコーディングにした植田淳平さんの講演含む前半の内容
日本に誇る観音様の街でできることを発信する
次に登壇したのは「観音ガール」と呼ばれるほどの観音様好きである對馬佳菜子さんです。2017年9月に東京からIターンで長浜市に移住して、長浜市に根付く観音文化を届けています。
![]() |
人物紹介:對馬佳菜子さん仏像をもっと身近な存在として感じてもらうことを目標に、現在は長浜市の観音堂で観音様や風土について教えてもらいながら、観音様とその地域について情報発信を行っている。 |
---|
「長浜市は、京都・奈良に次いで観音像の数が多いエリアです。1,200年前に作られた観音像が、今もなお残り続けている稀有な地域なんです。博物館や資料館などではなく、寺院に保管されている観音像が多いため、市民の間にも観音文化が古くから根付いています。親しみを込めて観音様のことを観音さんと呼んでいるんです」
仏像や仏様は、これまで歴史や地域文化に興味のある人でないと触れる機会すらありませんでした。今後は、長浜市を中心に、さらに観音文化をさまざまな切り口から届けたいと對馬さんは語ります。
「観音文化は、ファッション的な側面や哲学的な側面から見ても興味深いものです。今ではアーティストが観音さんの服装に注目している例もあるくらいですから。これからは観音さんの魅力をコンテンツとしてたくさんの人に届けたいですね」
長浜市の職人と併走できる存在になりたい
最後の登壇者は、長浜市の職人の姿を追いかけるユニット「仕立屋と職人」のメンバーであるワタナベユカリさん。長浜市のシルク産業の魅力について話してくれました。
![]() |
人物紹介:ワタナベユカリさん長浜市が誇る伝統工芸の数々や職人の姿を追いかける。職人の生き様を可視化して、職人のファンを増やすことが目標。 |
---|
「長浜市の地場産業は、絹産業です。歴史は古く、空海が伊香具神社で水を掘り当てたことから養蚕がはじまったと言われています。養蚕から製品化までの一連の工程の全てを滋賀県内でまかなえる絹産業は、長浜市が誇るべき伝統です」
後継者問題や販売ルートの確保など、伝統工芸が抱える問題点はさまざま。それらを解決するために、「仕立屋と職人」は、職人への弟子入りまでをも行い、コンテンツとして産業を広めています。
「職人や家流によって、抱いている思いや大切にしていることはそれぞれ異なります。それらを一つひとつ理解して、お互いに併走しあえるような関係値を築いていきたいと思っています」
▲グラフィックレコーディングにした對馬佳菜子さん、ワタナベユカリさんの講演内容
これからの長浜市について考える
少しの休憩を挟み、後半はワークショップを通して登壇者や参加者全員で長浜市の魅力と課題について考えます。
今回は「ワールドカフェセッション」と呼ばれる方法を用いて、カフェで話すようにざっくばらんに意見を交換してもらいました。
ワークショップ内で話し合ってもらった内容は以下の3つです。
- 東京から見た長浜市の魅力
- 東京にいながら、長浜市とどんな関わりが持てるだろうか?
- 東京-長浜リレーションズでできること
40名ほどの参加者を4、5人ずつに分けて、テーマごとにディスカッションをしていきます。ひとつのテーマが終わるごとに代表者ひとりを残してみんなはローテーション。
ディスカッションの場面では、大きな模造紙・ペン・ふせんが用意されていて、それぞれが思うようにメモしたり図式化したりする様子が見られました。
初対面だから緊張しているのかと思いきや、みんな「それでは始めましょう!」の声を合図にどんどん話しはじめます。すごい盛り上がり……。
ワークショップの最後には、各チームごとに取り上げられた意見や長浜市と東京をつなぐために、これから挑戦できそうなことなどを話してもらいました。
「台東区にある不忍池や寛永寺は、滋賀県の琵琶湖や延暦寺に影響を受けてつくられたとされている。そこで、東京の人でも興味があるような歴史を知ることができるイベントを開催してみてはどうだろうか」
「長浜市で暮らすように旅する機会を設けて、東京の人を長期の旅行に連れて行きたい。旅行とは異なる、暮らすことでわかる文化がきっとあるはず」
「そもそも長浜市の認知度がとても低いので、日本中世界中にも届けられるコンテンツを何か生み出したい」
「地方創生といっても、これまでは市が伝えたいことだけを発信する情報の押し売りが当たり前だったから、欲しい情報を知って届けるための工夫が必要。例えば、ふるさと納税の返礼品をもっと受け取る人の目線で考えたい」
「長浜市には空き家が多いから、東京にいる長浜市の人が利用できるセカンドハウスのような場所をつくってみたい。また、東京で長浜の人同士が集まれる場所も欲しい」
などなど、アイデアがどんどんと湧き出ています。こういったたくさんのアイデアが出合うことで、今後の活動をさらに盛り上げていくきっかけのひとつになります。
▲グラフィックレコーディングにしたワークショップの内容
イベントの最後は、懇親会へ。これまで東京で長浜市に関連するイベントはほとんど開催されてこなかったとのことで、現在東京で暮らす長浜市出身者のみなさんが、すごくうれしそうに交流を深めていたことが印象的です。
オードブルや長浜市のご当地グルメ「サラダパン」を片手に、長浜話に花が咲いています。
また、参加者の方からは「アイデアをもとに、自分も長浜市に関わってみたい」「長浜市に戻って暮らそうかなと思いました」など、うれしいコメントが……!
こうしたイベントをきっかけに、改めて長浜市の魅力を発見したり、移住したいと感じる方が少しでも増えたらすごく素敵ですよね。
長浜市についつい行ってみたくなる
イベントに参加してみると、どの方と話しても朗らかで物腰が柔らかい方ばかりだったことが不思議で、参加者の方にお話を聞いてみちゃいました。
すると、「毎日たくさんの自然のなかで育った元長浜市民なので、みんなせかせかしたり焦ったりしないんです」とのこと。毎日せわしなく過ぎていく東京での暮らしを抜け出して遊びに行こうと感じてしまいました。
今回のキックオフイベントは、あくまできっかけのひとつに過ぎません。これから「東京ー長浜リレーションズ」として、たくさんの人に長浜市の魅力を届ける活動を行っていくことでしょう。個人的にも、とても関わりを持ちたいと感じるイベントでした。
滋賀県長浜市の魅力を、もっともっとたくさんの人に広めていきましょう! 最後までご覧いただきありがとうございました!
「長浜」を盛り上げたい方募集
東京-長浜リレーションズでは、長浜出身、在住・在勤経験、とにかく長浜が好き!で共に活動してくれる仲間を大募集しています。
首都圏と長浜をつなぎ、「ふるさと長浜」を一緒に盛り上げましょう!
参加いただける方は、下記のボタンからFacebookグループにアクセスしていただき、参加リクエストをお願いします。