6ヶ月でwebデザイナーになれる|デジタルハリウッド
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2018.04.20

漫画は「自分が知らない世界を知る」ためのひとつのツールになっている(DMM.comラボ赤坂幸雄 × LIGづやの漫画対談・後編)

もりた

こんにちは。デザイナーのもりたです。

「漫画」から様々な影響を受け、「漫画」とともに人生を歩んできた男たちの対談、今回は後編です。

主人公はこの2人。

ico 株式会社DMM.comラボ デザイン本部 本部長/取締役
赤坂幸雄
2000年に株式会社DMM.com入社。入社当初から「デザイナー」という枠を超え、部署の立ち上げから事業サービスの設計、制作、運用、改善に携わる。現在は、デザイン本部のマネジメントを通してDMM全体のサービス監修やデザイン、そして会社全てのデザイナーの価値を高めることを目標にしてクリエイティブ向上を目指している。
ico 株式会社LIG 取締役
づや
大学卒業後、JAVAプログラマとしてシステム開発に従事。2007年、株式会社アストロデオを創業。システム開発全般を統括。2012年1月、アストロデオが株式会社LIGと合併し、現職に。取締役CTOとして社内の技術全般を統括。現在は、取締役として経営に携わりながら、エンジニアとしてシステム開発も行っている。

前編では、赤坂さんとづやが「漫画にハマったきっかけ」「特に影響を受けたバイブル的な作品」「漫画の装丁デザインから学んだこと」について語ってもらいました。

今回お届けする後編では「期待を裏切られた装丁デザイン」、そして「二人の人生観に影響を与えた漫画」について語ります。

目にとまる工夫がされた装丁デザインの魅力

――ここまでは「感銘を受けた漫画の装丁デザイン」について語ってもらいましたが、逆に「このデザインはあんまり良くないな」という作品ってありますか?


MASTERキートン』(作:浦沢直樹、勝鹿北星、長崎尚志/「ビッグコミックオリジナル」1988-94年)は、内容はもちろん素晴らしいんですけど、装丁のデザインはいいとは思わなかったですね。『黄昏流星群』(作:弘兼憲史/「ビッグコミックオリジナル」1995年〜連載中)とかもそうですが、この時代の漫画の表紙ってタイトルを英語でそれっぽく見せているだけのものがけっこうある。デザイン性に寄せすぎた結果、漫画の内容とリンクできていないんです。僕の感覚では、英語でそれっぽく見せるよりもカタカナで工夫したりとか、内容との親和性をしっかり考えていて、しかもパッと見たときに可読性の高いデザインになっているほうが感心してしまいます。

その意味では、最近でいうと川谷康久さんのデザインは素晴らしいと思います。『アオハライド』(作:咲坂伊緒/「別冊マーガレット」2011〜15年)が代表的ですが、色々な作品でタイトルロゴを含めた装丁デザインを手がけられていて。

――「月刊MdN」で特集も組まれていましたね。


『アオハライド』のロゴができるまでに、手書きで何パターンも書いたり、他にもいろんなフォントを使って作ったものもあれば、ちょっとフォントを崩して作ったものもある。その中で一番その作品らしいものを出しているんですね。この前、改めて川谷さんの作品を並べてみたんですが、色の使い方はもちろん、スペースのなかでの組み込み方だったりとか、見せ方が非常に工夫されていて、いろんなデザインの参考にできると思います。

――漫画好きなら「ジャケ買い」は一度は通る道だと思います。お二人もよくされると聞きましたが、最近ジャケ買いしたものだとどんなものがありますか?


最近だと『賭ケグルイ』(作:河本ほむら 画:尚村透/「月刊ガンガンJOKER」2014年〜連載中)はジャケ買いして好きになりました。青年誌のコーナーで光ってたんですよ、狂気が。「マンガUP!」っていうアプリで連載されている生志摩妄(いきしまみだり)が主人公のスピンオフ(『賭ケグルイ妄(ミダリ)』)も好きですね。
じゃあ『嘘喰い』(作:迫稔雄/「ヤングジャンプ」2006〜18年)とかも好きなんですか?

『嘘喰い』もジャケ買いした作品なんですけど、めちゃくちゃ好き。そのあとは「ヤングジャンプ」で毎週楽しみに読んでました。ギャンブル漫画でオリジナルのルールでやるやつが好きなんですよね。

表紙デザインから裏切られた漫画とは?


昔って雑誌で読んでハマるパターンも多かったじゃないですか。だけど今は漫画誌の数も多いし、さらにはWeb漫画も数が多すぎて、判断できないんですよね。本屋さんに行って平積みされている漫画をパッと見ると、10作品ぐらいが目に入ってくる。長年の勘でそこから選べるんですよ。だけどWeb漫画だとそうはいかなくて、「このジャケットなら中身も面白いんじゃないか?」って思って読んでみても、期待を裏切られることがけっこう多い。まあ、一番騙されがちなのは成人向け漫画だったりすんですけどね。表紙と内容の違いがすごいじゃないですか(笑)。

成人向けって表紙を描いている人は中の作品を描いていなかったりしますよね。表紙に惹かれて買ってみると、中身の絵が違ったり……やっぱりみんなそう思ってるんですね(笑)。

――絵の上手さと漫画の上手さって全然違うんですよ……。


そこでいうと、やっぱり『皇国の守護者』(原作:佐藤大輔 漫画:伊藤悠/「ウルトラジャンプ」2004-07年)は偉大ですよ! 伊藤悠さんの絵がすごく上手いので、パッと見たときに内容や世界観が伝わるし、佐藤大輔さんの原作小説も読んでみようという気になる。ただ、伊藤悠さんは、『皇国の守護者』以降の作品、たとえば『シュトヘル』(「ビッグコミックスピリッツ」→「月刊!スピリッツ」/2009-17年)はテンポ感があまり良くなかった。伊藤悠さんは原作があると絵の巧さが生きてくるんだと思いました。

――いい意味で「表紙から裏切られた」漫画、だとどうですか?


がっこうぐらし!』(作:海法紀光/「まんがタイムきららフォワード」2012年〜)とかは騙されましたね。萌え系の漫画かと思いきや、ゾンビ系のお話なんですよ。主人公が世界がゾンビで溢れていることをすっかり忘れている状態で始まって、読み進んでいくと、「なんでみんな学校で暮らしてるの?」っていう疑問が湧いてくるんですよ。まあ、学校の周りがゾンビで溢れちゃっているからなんですけど(笑)。

僕はいい意味で裏切られるというよりは、「悪い意味で裏切られたこと」なら多いですね。1回買って読まなくなった本がいっぱいありますもん。

それ、すごいわかるなぁ(笑)。

でも1回しか読んでないからタイトルは覚えてない(笑)。

表紙以外だと、吉本蜂矢さんの『デビューマン』(作:吉本蜂矢/「ヤングキング」1998年〜2005年)って作品があるんですけど、見た目はおしゃれなイラストでテンポのいい単発コメディという感じなんですが、中身はすごいギャグ漫画で過呼吸になるくらい爆笑しました(笑)。個人的には『行け!稲中卓球部』を越えましたね。ただ、2巻まで出て打ち切りになってしまった。
 
その他だと、『SURF SIDE HIGH-SCHOOL』(作:澤井健/「週刊ヤングサンデー」)って漫画も中身は面白いんですが、5、6巻ぐらいで「編集部が作者の行方を掴めなくなりました」ってアナウンスがあったり……せっかくいい作品を描いているのに逃げてしまう作者さんっていて、そういった意味では「裏切られた」という思いです(笑)。


期待を裏切られるって辛いですよね……。単行本には絶対にならないんですけど、「近代麻雀」でやっている『3年B組一八(インパチ)先生』って漫画は、表紙だけ見たらどう見ても金八先生なんだけど、「これトレースだろ!」というレベルで有名漫画のパロディをやっている。面白くないのかと思いきやめちゃくちゃ面白かったので良い意味で裏切られましたね。しかも、打ち切りだと思ったのにいまだに続いている。さすがの竹書房もあの作品はコミックス化できないでしょうね……。

たしかに『3年B組一八先生』はヤバい(笑)。

まあヤバいんですけど、めちゃくちゃ面白いので広まってほしい(笑)。
 
他にも「近代麻雀」で『覇王』っていう本物の麻雀プロとか漫画のキャラクターとかが入り混じって真の王者を決めるって漫画があって、『麻雀飛翔伝 哭きの竜』(作:能條純一/「別冊近代麻雀」1985〜90年)の主人公・竜と桜井章一さんや小島武夫さんが戦っていたりして、めちゃくちゃ面白かった。好きすぎてLIGブログで記事を書いた(麻雀プロも玄人も漫画キャラも含め最強雀士は誰かを決める漫画『覇王』 http://liginc.co.jp/217226)くらいです(笑)。ただ、1巻が出て以降一切音沙汰がなくなり、発表もなく終わったんですよ。竹書房さんにハガキも送ったんですけど。続きがめちゃくちゃ読みたいので竹書房さんにはぜひ頑張ってほしい……!

『MASTERキートン』から学んだ「石畳の上に洗剤をまくと、戦車は追ってこれない」ということ


漫画を読んでいると、たまに人生に役立つことってありますよね。僕、三国志が好きで、小学校の図書室にあった横山光輝の『三国志』全60巻を読んでいたんですよ。で、工業系の高校に通ってたんですが、「電子」っていう科目を担当してた先生が三国志が好きで、歴史の授業じゃないのにテストで100点中20点が三国志だったことがあった。で、そのときはすごいいい点数が取れた(笑)。

中沢啓治の『はだしのゲン』と横山光輝の『三国志』は、高確率で小学校に置いてありますよね。

やっぱり現実を元にしているからストーリーが強いですよね。実際、『三国志』から得るものって多かったと思うんです。劉備がどれだけ君主として高潔で、孔明がどれだけ優秀でも、結局曹操には勝てない。59巻の「秋風五丈原」で孔明が「あの空のきわみはいずこであろうな」って涙するんですよね。その「人生の儚さ」がすごいいいなーって思って。あと「働きすぎると早死にする」ってことも学びました(笑)。

――中国の古典ってスケールが大きいですよね。人生観が拡張されるというか。軍記ものでいうと『水滸伝』とかも、「人を動かす」「組織をまとめる」といったことのイメージが作れる気がします。


僕も歴史ものは好きで、『三国志』はもちろん、『封神演義』とか『キングダム』も好きです。やっぱり、「小賢しいやつが姑息な手段で大軍を倒す」みたいな作品が好きで、すごいと思うし快感ですね。少なからず人生観に影響を与えられていると思う。
 
あと、すでに装丁デザインについて批判的にコメントしちゃいましたけど、『MASTERキートン』は内容に関してはすごい好きなんです。「学校から学ぶもの、親から伝えられるもの以外の知識ってこんなにあるんだ」ってことを教えてもらいました。「砂漠ではスーツを着る」とか「石畳に洗剤をまくと戦車は追ってこれない」とか。

――キャタピラが滑っちゃう、ってやつですよね(笑)。


『MASTERキートン』って、だいたい登場人物が失敗してどん底に落ちて、でも主人公キートンに出会って、自分の失敗を受け入れて次の一歩を踏み出していくというストーリーが多いんです。人のどん底に落ちていくさまと、進んでいくさまが必ずワンセットになっている。「前を向いて一歩踏み出さないと、溺れて沈んでいってしまう……」ってことを学びました。「辛い!」「もうヤダ!」「逃げたい!」と思っても、とりあえず前を見て一歩踏み込んで、「環境変えよう!」「自分の状況を変えよう」と考えるようにはなりました。そうしないと物事って動いていかないんですよね。
 
あと、僕は「簡単な手術だったらできるのでは?」と思うくらいには医療漫画を読んでると思います(笑)。『ブラックジャック』も読んだし、『スーパードクターK』も読んだし、『ゴッドハンド輝』も読んだし、もし今誰かが「お腹痛い」って倒れたら「あー、これは盲腸だな」って診察して治すぐらいのことはできる気がしている(笑)。


お仕事系の漫画でいうと、『大東京トイボックス』ってDMMさんと同じ業種じゃないですか。「クリエイター VS 経営」というか、お金の戦いがすごい良かったと思うんですよ。

そうですね。ただ、あの状況で仕様変更するってことはたぶんないと思います(笑)。『大東京トイボックス』の前作『東京トイボックス』の頃は特に「あーわかるわかる!」って共感するところが多くて面白かったですね。
 
IT系の漫画だと『王様達のヴァイキング』は、DMM社長の片桐が一部参考資料としてモデルになっている部分があるんです。若い頃に、金貸しからアパートにスプレーとか、ドアをボッコボコに蹴られるっていうのを、片桐がちゃんと作者に伝えていたらしくて、巻末に「参考にさせていただきました」って書かれていたりしますね。
 
漫画って「自分が知らない世界を知る」ためのひとつのツールではあると思うんですよ。金融や金貸しだったら『ナニワ金融道』、行政書士だったら『カバチタレ!』、スカウトだったら『新宿スワン』を読むと、「こういう世界なんだ」って思う入口になって、そこから色々と学べる。作者の思いとか登場人物それぞれの思いから、いろんな職業の世界観を覗くことができるのがめちゃくちゃ面白いと思うんです。


まとめ

実は弊社取締役づやと私は漫画の趣味がほぼ被っていないのですが、赤坂さんはどちらの話も拾ってくださって、ここには書ききれない面白い話に溢れた2時間でした。

この間読んだ野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』に関するインタビューで「(アイヌは)たしかにデリケートな題材ではありますが、トラブルは悪意からではなく、無知からくるものだと思います」という言葉がありました。

『MASTERキートン』の主人公、平賀=キートン・太一は、自分と異なる文化を持つ相手に敬意をはらうためには、相手の世界を知っていることが必要だと教えてくれました。

自分とは違う世界の入口にもなる漫画は、気づかないうちに多角的にものを見る力を養ってくれるのかもしれませんね。

漫画好きでたくさんの漫画を読んでいる2人が会社の取締役をしているのは自然なことかもな、と思った時間でした。

赤坂さん、この度は対談にご協力いただきありがとうございました!

(了)