Web無料相談会2018冬
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2016.07.05
#3
あのサービスの裏側

エバンジェリストは「楽しくて広がるコミュニティ」を作るために何をすべきか?(前編)

にっく

こんにちは! DevRelチャンネル外部ライターのにっくと申します。普段はシックス・アパートという会社で、ディベロッパーリレーションマネージャー、エバンジェリストとして、ユーザーコミュニティのサポートをおこなっています。

どういう仕事かというと、自社製品やサービスを知ってもらうために、外部のユーザーとのつながりを形成することです。その中の一つに「ユーザーコミュニティの活性化」があります。

本日は、自分が実際におこなってきた仕事の経験を元に、「楽しく、広がるコミュニティを育てていくために、どのように考え、何をしたか」、その結果どのようになったかを書いていきます。

目次

  1. Movable Type というプロダクト
  2. Movable Type が面したギャップ
  3. 1. コミュニティの再定義とコミュニティプランニング
    • 1-1. コミュニティの理想の状態は?
    • 1-2. 関係者がうれしい状態は?
  4. 2. コミュニティグループ支援のアクションプランづくり
  5. 3. コミュニティサポートのための体制づくり
  6. コミュニティサポートの方針
  7. アクションの結果、コミュニティはどのように変わっていったか
  8. おわりに

Movable Type というプロダクト

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CMSプラットフォームである「Movable Type」(ムーバブル・タイプ)は以下のような歴史があります。

2001年10月 サンフランシスコで誕生
ブログ、CMSソフトとして世界中で使われる
2004年 日本での販売を開始
「ブログ」が広がりはじめる

2003年頃から日本で広がりはじめた「ブログ」。このブログムーブメントをつくったソフトの1つが、Movable Typeなのです。2016年現在、日経平均株価の構成銘柄225社の50%以上に、また、国立大学86校の65%以上に利用いただいています。

Movable Type が面したギャップ

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もともとはブログソフトウェアとして誕生し、ブロガーの支持を集めていました。しかし、2000年代後半になると、無料のブログサービスやオープンソースのブログソフトなどが増え、そのような別サービスに移行する人も出始めました。その頃のMovable Typeは、ウェブサイトを構築するためのシステム「CMS」として使われるようになっていました。

このような変化により、Movable Type コミュニティは、Movable Typeを支持するユーザー層がブロガーからウェブ制作者に変わっていきました。一方で、新しいコミュニティの皆様とのコミュニケーションパスは未整理の状態。「コミュニティを再生、再構築する必要がある」と、強く感じました。このような経緯から、「ユーザーコミュニティに関する業務」を、会社の仕事に落としこむことを考えました。

1. コミュニティの再定義とコミュニティプランニング

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2011年から2013年までプロダクトのプロダクトマネージャー、2014年からエバンジェリストになった自分は、最初にMovable Typeのコミュニティをどのようにしていきたいのか、業務としてどんなことをするのかをまとめました。

Movable Type のコミュニティを再定義するにあたって、最初に整理したのは以下の2つの事項です。

1-1. コミュニティの理想の状態は?

まず、コミュニティの理想の状態から考えました。「誰と、どんな状態にあるのが理想的なのか」、つまりコミュニティに関わりがある人達の立場と、状況を整理していきました。

MTにお金を払って使ってくれている人たち
  • ウェブ制作者
  • エンドユーザー
  • →2者と、きちんとコミュニケーションができる状態を作る

上記が、Movable Typeに関わる人と、理想的なコミュニティの状態ではないか、と考えました。

1-2. 関係者がうれしい状態は?

さて、ここに二人の登場人物 「ウェブ制作会社」 と 「エンドユーザー」 がいます。この二人は立場が違いますので、当然、コミュニティから受ける恩恵も異なります。

二人の登場人物にとって、Movable Typeコミュニティがどのような状態だともっとも嬉しいのか、「AARRR分析」という手法を使って整理してみました。

ウェブ制作者

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エンドユーザー

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この2つの状態をまとると、以下のようになると考えました。

  1. ウェブ制作会社の皆さんに、 案件提案にMovable Typeを使ってもらう
  2. 制作・構築のナレッジやノウハウが、コミュニティ内で共有される
  3. 共有されたナレッジやノウハウから、新しいソリューションやサービスが生まれる
  4. 新しいソリューションやサービスが、エンドユーザーに恩恵をもたらす
  5. ウェブ制作会社、エンドユーザーのコミュニティが形成される
  6. そのコミュニティが、さらに新しいユーザーを巻き込む
  7. Movable Type コミュニティが、コミュニティとの連携で横に広がり、さらにナレッジやノウハウ、人的交流が広がる

このような状態になることが、Movable Type コミュニティの理想的な状態であり、コミュニティに参加するメンバーが嬉しい状態である、と定義したのです。これを実現するために、実際にユーザーの皆さんをサポートしていこうと考えました。

コミュニティサポートの方法はいろいろありますが、Movable Type の「ユーザーグループ」という目に見えた形があったほうが、支援がしやすく、コミュニケーションも取りやすくなります。

そこで、全国各地にちらばる Movable Type のユーザーさんや、勉強会を主催している皆様と連絡を取り、現地の「コミュニティグループ立ち上げの支援」をおこなおうとしたのです。

2. コミュニティグループ支援のアクションプランづくり

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次に、実際にコミュニティグループを立ち上げるためのアクションプランを考え、以下のようなステップを設けました。

Phase 1. 東京にユーザーグループ形成

日本の人口は東京に集中しています。そして、ウェブに関わる仕事だけでなく、Movable Type を使ってくれるウェブ制作者、エンドユーザーさんもたくさん存在しました。まずは、東京での情報共有がしやすくなるコミュニティを立ち上げる支援をしようと考えました。

Phase 2. 五大都市圏にグループ形成

その次は、大都市圏におけるユーザールグループ立ち上げの支援です。一般的に、日本の5大都市圏 は「札幌・東京・名古屋・大阪・福岡」を指します。Movable Typeを使ってくれる人たちも、東京に次いで多く存在します。

Phase 3. コミュニティ同士の横連携

三番目は、コミュニティ同士の横連携です。コミュニティ活動でもっとも楽しく意義深いのは、人と人とがつながり、互いに刺激を与え合うことです。各地のユーザーグループが立ち上がったら、互いに誰と連絡取ればよいかがわかりやすくなります。

この横連携をサポートしていき、日本中に散らばる Movable Type コミュニティをつなげていきたいと考えました。

Phase 4. 政令指定都市にグループ形成

四番目は、政令指定都市部でのユーザーグループ形成の支援です。政令指定都市と5大都市圏は重なる場所が多いですが(例:東京と政令都市である相模原・横浜など)、重ならない地域にもユーザーは存在すると考えました。具体的には仙台・新潟・広島などです。

Phase 5. 外部のコミュニティとの連携

五番目は、外部のコミュニティとの交流の支援です。ウェブ制作やインターネットは、さまざまな技術が絡みあう業種・業態ですよね。単に同じソフトを使っているというだけでなく、さまざまなコミュニティと交流することで、Movable Type のユーザーコミュニティに所属する人たちもいろいろな恩恵があるはずです。そのための橋渡しができれば良いな、と考えました。

以上5点が、実際にユーザーコミュニティを立ち上げ・支援する上での当面の目標となりました。

3. コミュニティサポートのための体制づくり

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アクションの方針が決まったら、次は社内の体制づくりです。自分がおこないたいことを関係者に説明して、仲間を増やすと、同じ労力でも何倍もの仕事ができるようになります。

ここでいう体制づくりとは、専門の部署を作るものではなく、それぞれが自分のタスクをこなし、その合間にコミュニティサポートを協力しあって進めましょう、という同意をとることです。

自分の上司にあたる人間とマーケティング担当者には、自分がおこないたいことを理解してもらいました。その後、社長に説明をおこない、正式に仕事としてコミュニティサポートをおこなっていくことになりました。関係者の間では、概ね以下のような仕事の棲み分けをしています。

営業担当者 Movable Type を利用しているユーザーやウェブ制作会社への連絡、紹介などの人的つながりの促進
マーケティング担当者 ユーザーグループの活動の告知協力やフォロー
コミュニティ担当(自分) ユーザーグループ立ち上げ時のイベントや企画の協力や、勉強会の講師

現在でも、シックス・アパート社内には、コミュニティ支援専門の部署はありません。各自が自分の仕事を担当する傍らで、コミュニティのサポートをおこなっています。

コミュニティサポートの方針

コミュニティのサポート、支援にあたって決めていることがあります。

コミュニティに対する自分のルール
  • 自主性にお任せして、運営には参加しない
  • 基本的に活動に対して口出ししない
    • 競合製品との比較イベントもOK
    • ダメ出しもOK
    • UI、UXやオウンドメディアの勉強会もOK

コミュニティの自主性に任せ、運営には参加しない」ということは常に強く意識し、守るようにしています。

一緒にコミュニティの立ち上げをおこなったり、活動したりしていくと、一体感が生まれます。だからといってコミュニティの運営や活動方針に口出しすることはできません。ユーザーコミュニティはあくまでユーザーのものであり、ベンダーのものではないのです。

ときにはサービス自体にダメ出しを受けることもありますし、厳しい声もいただきます。それは健全な関係が築けている証拠で、とてもありがたいことだと考えています。

アクションの結果、コミュニティはどのように変わっていったか

上記のように目標と方針を立て、実際にアクションを起こしていきました。その結果はどうだったのでしょうか。

2016年6月現在、Movable Type のユーザーグループは、全国に14箇所まで広がりました。

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全国にあるMTコミュニティ(2016年6月現在)
MT関西、MT広島、MT福岡、MT長野、MT ∗/ NIIGATA(新潟)、MT蝦夷、MT東北、MT東京、MTなごや、MT愛媛、MT鹿児島、MT佐賀、MT熊本、MT神戸

最初は福岡・名古屋・札幌にユーザーグループができ、その後東京のユーザーグループが立ち上がりました。当初考えていたとおり、東京を含む5大都市圏、そして政令都市を中心に、少しずつユーザーグループができ始めました。その結果、全国各地でユーザーイベントが開催されるようになりました。

 
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上記は、2015年までのユーザーが主体となっておこなっていただいたイベントの開催回数を、3ヶ月単位でまとめたものです。右肩上がりに増えていったことがお分かりいただけると思います。

また、大型のカンファレンスも、各地でおこなわれるようになりました。下記は、2013年以降に開催された、100人超の規模の大型イベント「MTDDC Meetup」の履歴です。

  • MTDDC Meetup KYUSYU 2013(福岡)
  • MTDDC Meetup TOKYO 2013(東京)
  • MTDDC Meetup HOKKAIDO 2013(札幌)
  • MTDDC Meetup NAGOYA 2014(名古屋)
  • MTDDC Meetup TOKYO 2014(東京)
  • MTDDC Meetup TOHOKU 2015(仙台)
  • MTDDC Meetup TOKYO 2015(東京)(参考
  • MTDDC Meetup TOHOKU 2016(東北)

MTDDC Meetup では、全国のMovable Type ユーザーが集まり、各地のユーザーコミュニティ同士が交流を深めました。イベントで一緒になった後は、Facebook などのSNSを通じて、互いに日常のあれこれを共有するようになり、最初に思い描いていた、「ユーザーコミュニティ同士が横につながっていく状態」が現実になっていきました。

このようなコミュニティ活動は、徐々に認知されるようになり、外部のコミュニティからも連絡がくるようになりました。

 
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写真は、2015年にアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社様によって主催された「AWS Cloud Roadshow」の一場面です。AWSは日本に大きなコミュニティ持つクラウドサービスですが、このような場所に声をかけていただき、「他コミュニティとの連携」も、徐々に形になり始めた実感があります。

また、Movable Type に対する認識も少しずつ変わってきたようです。「過去のものと思っていたMovable Typeだが、実際には盛り上がっているんだなあ」と感じていただいた方も増えているようです。

おわりに

ということで今回は、Movable Typeを例に挙げて、「楽しく、広がるコミュニティを育てていくためには、どのように考え、何をしていけば良いのか」について、コミュニティプランニングの経緯と、実際のアクションについて書いてきました。

次回は、コミュニティ担当者として考えていること、感じたことを記述していきます。