
こんにちは! Pooleの塚本です。
6月2日にDeNA Palette(※)主催のNYLON JAPAN編集長・戸川氏とノオト編集者・朽木氏が語る、「メディアと編集の未来 by Palette Party vol.3 ~Writer Nite~」というイベントが、渋谷のヒカリエで開催されました。
Webと紙の論争が巻きおこる今日、ライターや編集者に求められるのは、書き方やインタビューのスキルだけではなく、業界の時流をつかむスキル。
本イベントでは移り変わる業界の流れをつかむべく、「紙からWeb」の流れが主流なメディア業界で、「Webから紙」の流れを生み出した雑誌「MERY」の仕掛け人である戸川貴詞氏と、Web・紙媒体の執筆、編集を手がける朽木誠一郎氏が「今後、編集者及びライターのキャリアはどうなるのか」を主題にトークセッションを実施しました。
トークセッションの中から、今後ライターと編集者が意識すべきポイントをご紹介します。
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登壇者:戸川貴詞 カエルム代表。NYLON JAPAN編集長。 雑誌・MERYクリエイティブ・ディレクター |
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登壇者:朽木誠一郎 コンテンツメーカー・ノオト ライター編集者 |
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ファシリテーター:石原龍太郎 DeNA2016年新卒入社。JOOYの編集、企画マーケター |
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現役編集者が考える「メディアと編集の未来」とは
必要な素質は「自分の理想の文章の軸をもつこと」
DeNA石原(以下、石原):早速ですが、お二人がなぜ編集者・ライターになったのかの経緯を教えてください。
戸川:そもそも、編集者になりたいという気持ちはそんなにありませんでした。結果的に消去法で残ったみたいな感じです(笑)
大学時代いろんなバイトを体験してみたくて、TV局からピザ屋さんまで30種類くらいやったんです。そのなかで、車の専門誌(モーターマガジン)の編集のバイトをしたことが、編集者になるきっかけでしたね。
朽木:ぼくは、昔から作家になりたいと思っていて。「ものを書いて生きる」ことに憧れていたんですね。ライターとしての最初の仕事は、大手出版社のニュースサイトでしたが、ライターとか編集者とかの区別もあんまり付いてなかったし、「ライターが書きたいことを書けるわけじゃない」ということも、当時はわかっていませんでしたね。
石原:お二方が考える編集者とライターに必要な素質とはなんでしょう?
朽木:最近よく「美学」なのかなと思います。「こっちのほうがいいよね」と、自分の中で理想とする文章を軸に考えられることが重要なのではないでしょうか。そのためには自分のレベルも高くなければいけませんが。
最近、僕はウェブの仕事が6〜7割、紙の仕事が3〜4割になっていますが、例えば、紙媒体には長い歴史のなかで培われてきた理想の文章というのが暗黙的にあると思います。当然、そこから外れたらクオリティの低い文章ということになりますよね。同じように、Webでもおもしろいとされる文章があって、それはどちらが良いとか悪いとかの問題ではないと思います。
だからこそ、このメディアにはこれ、という軸が、編集者にあるかどうかが大事なんじゃないかな、と。そうしないと、そもそも議論が成り立ちません。
石原:記事コンテンツの「おもしろい」って漠然としていると思うのですが、具体的に言語化するとしたら?
朽木:なるべく言語化していきたいと思っていますが、難しいですよね。個人的に思うのは、ライターの教育というのは、本当に教える側のレベルが高くないとできない、と痛感しています。
だから、まず、キャリア3年目の僕にでもできるのが、発掘すること。そして、その人材を伸ばしていくのがこれからの自分の仕事だと思っています。
石原: 戸川さんは、雑誌『MERY』のライターさんをどうやって集めたんですか?
戸川:やることが決まってある程度雑誌の方向性が決まったときに、ハマる方を何人かピックアップして声をかけました。
特に、ライティングと編集が両方できる方を集めました。雑誌『MERY』では、専門性の高いカテゴリではその分野のライターさんを起用しているんですが、基本的に編集者がライティングから全てやっています。
石原:やはり、編集とライティング両方できる人が強いんでしょうか?
戸川:両方の作業を理解していないとできないと思うし、出版系の話を理解してないと書けないと思いますね。作家だったら好きなように書けるけど、編集はそうじゃないので。
朽木:出版社や編集プロダクションは、編集をメインですることが多いと思います。僕も名前は出ませんが、仕事はほとんど編集業です。ただ、僕はライター気質なので、自分で書いちゃうこともありますが。
ものづくりを一緒にしている感覚を持っている人と働きたい
石原: 一緒に仕事をしたいと思う編集者・ライターってどんな人ですか?
戸川:求めているものに対してロジカルに返してくれる人、ですね。人それぞれの良さがあって仕事をしていると思うし、感覚的なことも必要だと思うけど、それは一言ではわからないし、まずコミュニケーションが取れないと仕事ができない。
とはいえ、プロとして仕事をするなら、締め切りを守るといったベースがしっかりしていることが最低条件ですけどね。
朽木:僕としては、どんな仕事相手であれ学ぶことはあると思うので、仕事を真剣にやっている人であってほしいです。
戸川:あと、言葉の使い方にオリジナリティを持っていてほしい。
でも、編集者としてライターに仕事をお願いしたいとき、納期を守らない人と、納期を守るけどオリジナリティのない人であれば後者を選ぶ。自分1人で完結できるものじゃないので、みんなで足並み揃えて作っている感覚を持ってほしいです。
朽木:「一緒に取り組んでいる」という感覚は共有したいですよね。
読まなくなったから売れないわけじゃない。読者の買いたいものを作る
石原: Web発で雑誌を作った手応えはいかがでしたか?
戸川:Webから雑誌を作ったと言ってはいますが、実際そういう感覚がなくて。ユーザーに対して何を提供できるかを考えたとき、手法のひとつとしてあったのが雑誌でした。もともと、雑誌を作ろうと思ったのは、Webメディアではできないリッチなコンテンツを作りたいのが理由。今後、動画だったり、イベントだったり、もっともっとWebと繋げて、おもしろいことをたくさん仕掛けていきたいですね。
石原:雑誌部数が淘汰されてWeb時代とされていますが、それについてはどう考えていますか?
戸川:発行部数が減っているから雑誌がダメっていうのは、安直な考えだと思っています。
『MERY』は、キュレーションプラットフォームという意味ではコンテンツを切り売りしているもの。でも雑誌は1冊を1つの商品として捉えるから、全然違う体験になりますよね。
つまり、スマホのサイズ感と雑誌のサイズ感が違うことを考えると、価値自体も全然違うわけです。その価値をどうやって作るかという発想で考えると、「読まなくなったから売れないわけじゃない。買いたいものを作ればいい」と思いました。雑誌に限らず全てのビジネスでそうだと思います。価値のないものはユーザーから淘汰されていくので。
石原: そもそも、「雑誌 vs Web」って考え方が疑問ですよね。
戸川:雑誌『MERY』は500円で価格設定したんですが、同じ500円でも、友達と話して過ごす2時間より雑誌に価値があれば買ってくれると思うんです。
ライター・編集者が歩むべきキャリアとは
石原:今後、紙とWebをできる人が必要になるのかなと思いますが、いかがでしょう?
朽木:なんでもできなきゃいけないっていうのは、きっと前提なんだろうなと思います。例えばWebなら「いい文章が書けます」「写真が撮れます」「動画も撮れます」という人のほうが仕事をやりやすい。なんでもできるに越したことはありませんよね。
ただ、横だけでなく、縦に広げることも大切だと思っていて。ひとつ尖った強みを持って、横方向も一通りできる、というスキルセットがいいのではないかな、と。
戸川:日本のファッション誌の出版社は、ジェネラリストを育てるっていうのが昔からありますが、海外ではスペシャリストを集団化させて、ファッションならファッションしかやらない編集のスペシャリストがいるんです。
それに強い衝撃を受けましたね。そもそも、編集者っていう言葉がすごい嫌いで、偉そうだし、その割にスペシャルなスキルが必要ない。でも海外ではみんなビジネスの話しかしないし、クリエイティブな仕事をしてるしで衝撃を受けたし、楽しかった覚えがあります。
いろんなことができるようになるし、自分から新たなことを発信できるし、その人にしかない個性を形にして実行することが重要だと思います。
質疑応答
Q1:戸川さんにお伺いしたいのですが、『MERY』を雑誌化するときにWebでのおもしろさの醍醐味が失われてしまうのではと懸念されましたか?
戸川:雑誌版では22個のトピックワードを立てているんですが、それはキュレーションプラットフォームの中で人気のあるワードをコンテンツ化したものなんです。
今後どうするかはまだ明確じゃないですが、雑誌用にブランディング的な要素とコミニュティを作ろうと思っているので、総合的にネガティブなほうに行くことはないかな、と。ユーザーとコミニュケーションをとりながらやっていこうと思っています。
Q2:なぜ、雑誌は500円に設定したんですか?
戸川:「ワンコインがいいよね」からスタートして、Webだと20代前半のユーザーが多いですが、雑誌はもうちょっと上の年齢層を狙おうと思っていました。いろいろ雑誌を見て、結果的に500円がシンプルで綺麗かなと思って(笑)
Q3:『MERY』を雑誌にして商業的に成功していると思うのですが、どういうWebメディアが雑誌化に適していると思いますか。
戸川:どのWebメディアも可能性があると思っています。何をもって紙媒体を作るのかという意図があればいいんじゃないでしょうか。
Q4:雑誌をつくる上で、クリエイティブなところで意図はありましたか?
戸川:『MERY』のプラットフォームのなかでガーリーなテイストのほうがよく見られていたので、トンマナをそうしました。
イベントを終えて
ライター・編集者の方が多く集まった本イベント。今後どんなキャリアを歩んでいきたいのか、ライター・編集者の世界がどう移り変わろうとしているのか、関心の強さがうかがえました。
Webライター、編集者が増えている今、この職業にいろいろな可能性を見ているも多いはず。
今ライター・編集者を目指されている方も、ぜひ参考にしてみてください!
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