6ヶ月でwebデザイナーになれる|デジタルハリウッド
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2016.05.19
LIG PR
#46
働き方インタビュー(経営者編)

社会はすべて、あらゆる“つくる”という行為の集合体。デザインで社会は変えられる。|カニカピラ

新川 五月

こんにちは、LIGライターズの新川です。

TBSのバラエティー番組「あらびき団」やNHK Eテレの「バリバラ」などのアートディレクションを手がけた、カニカピラ。カニカピラの仕事は、メジャーなものが多く、そのユニークで遊びのあるデザインは、誰もが一度は見たことがあると思います。

そのワクワクするようなデザインは、その根底に常に“伝えるべきことをいかに物語るか”という真摯なモノつくりの想いが支えていました。ユニークなデザイン、そして真摯なモノつくりの姿勢など、カニカピラがどんなクリエーター集団であるか、代表を務める姉川たくさんに徹底的にお話を伺いました。

K 人物紹介:姉川たく
1970年生まれ。アートディレクター、アーティスト。フリーランスで3年間活動をした後、2002年にKANIKAPIRA DESIGN Inc.を設立。ポンキッキーズの「なぞのやさい星人あらわる」や「あらびき団」がお茶の間で話題に。NHK Eテレの「バリバラ」のアートディレクションを2012年から担当。Webを中心に、コーポレートや企業ブランディングを実現するためのクリエイティブディレクションをおこなっている。

チームでつくることは、「不自由」があるからこそ楽しい

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― もともとはフリーランスで活動されていましたが、その後会社を立ち上げたきっかけを教えてください

フリーランスではSo-netのチャットソフトをつくる仕事をしていました。仕事が大きくなり金額もそれに伴い大きくなりまして、源泉税もシャレにならないので起業しました。きっかけは税金対策ですね(笑) それから5年くらい仕事をしていたら、僕の持ってないスキルが必要になったので、メンバーを集めて“チーム”を意識して社内環境を整え始めました。もともと経営をしたかったわけではなく、チームで影響力のあるモノをつくりたいと思ったら、必然的に経営というものが入ってきた形です。

 
― 姉川さん自身の“つくりたい”という欲求や、“つくることの楽しさ”はいつ頃から出てきたのでしょうか?

つくることは、子どもの頃から好きでした。チームでつくる楽しさを知ったのは、大学生の頃ですね。山海塾という舞踏のワークショップに参加したら、とても面白かったんですね。自分もやりたいなと思って、早速仲間と一緒にチームを結成しました。当時僕たちのチーム自体は、モダンアート寄りで、今でいうプロジェクトマッピングのように、等身大で自分たちの動きを自分たちの体に投影したり。演じている僕らは普通の顔だけど、笑っている表情が投影されるとか。面白い格好で、ドカンと受けるような笑えるパフォーマンスを皆で作っていきながら、つくる面白さを体験しました。

 
― フリーランスの活動とチームの活動の違いは、どんな風に捉えていらっしゃいますか?

個人なら感情も含めて自分次第なので自由なんですけど、チームの方が一人ではないので不自由ではあります。会社は個人ともチームとも違って少し難しくて、社是をつくって“会社はこうだよ”とみんなの方向性を合わせないといけない。でも、それができたときは、大変な分ずっと楽しいですね。

難しいのはコミュニケーションです。会社を立ち上げて随分になりますが、未だに苦労しています。チームでやるとなると、僕が持っていない技術も必要なので、ディレクターさん、コーダーさんも必要になる。そういう人とは、対等だったり逆に教えてもらわないといけないこともあるので気を遣いすぎたりして……でも社長としての自分もいるし、そのさじ加減が未だに難しいです。

コミュニケーションは”細かく小さく”取ることが大事だと思い知った

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― では、失敗だったなと思っているコミュニケーションはありますか?

不意の一言が思っていなかったほうに転がったり、向こうはそのつもりではなかったのに、こちらの受け止め方が重かったりということはありましたね。大抵は、その後フォローして大丈夫ですが、それが仇となって退職しちゃったということも。僕自身、普段の印象がソフトだから、そういうときに感情が言葉に乗ってしまうと、余計に強く感じるようで、その落差が大きいみたいです。

実は、小学6年のとき生徒会長だったのですが、生徒会長って偉い役職なのに誰も全然話を聞いてくれなくて、20〜30人の前で泣き出してしまったことがあります。それ以来、まとめるということに対してトラウマがあります(笑) 人をまとめるということについては、それだけ苦手意識があったので本もたくさん読み漁りましたし勉強もしました。

 
― 会社を設立して、いちばん大変だったのは何でしょうか?

体調を崩した時期です。当時、仕事のストレスや、プライベートの方でも生活パターンがガラリと変わったり、いろいろ重なって、あるとき夜中に救急車で運ばれたんです。十二指腸潰瘍でした。その後すぐ仕事に復帰したのですが、体も思うように動かないし、社内でもうまくコミュニケーションが取れず、人がパタパタと辞める流れになってしまって。その半年くらいはきつかったですね。でも、幸い何人か残ってくれる人たちがいて、その人たちに報いなければいけないというか、そこに励まされたというか。逆境のときに味方になってくれるというのは大きいですね。

その経験もあって、最近実践しているのは“細かく小さく”コミュニケーションをとることです。だいたいうまくいかないときは、お互い溜めていることが多いときです。こちらも向こうも溜めていると、あらぬ方向に行ってしまうんです。普段から細かく小さくコミュニケーションを取っておくと、合わせやすいですね。

“つくったモノが社会にとってどう機能するか”が、自分にとってつくる意味になる

― 現在の姉川さんのモノづくりの考え方やビジョンは、どのように築かれたのですか?

これまでいろんなモノをつくってきましたが、ビジョンは後からついてきたような気がします。クライアントからダメ出しされたり、いいなと思ったものが全然役に立たなかったり、人気が出るはずだと思ったら出なかったり。そんな経験の中で、モノづくりのスタンスや考え方は“こうあるべき” “こうありたい”というのが固まってきました。

初めの頃は悔しいことが多かったですよ。いくら企画を考え出しても採用されない時期もありました。あるとき、今でいう文科省のクリエイター育成事業というのがあって、企画が通って助成金がおりたんです。企画の内容は、位置情報で遊ぶ「ヒッチハイクゲーム」。佐藤雅彦さんが監修をしてくださってプロトタイプまでつくりました。ところが、市場のタイミングを完全に見誤ってその技術は当時ある携帯会社のキャリアでしか使えなくて広まりようがありませんでした。チームをつくって一生懸命やったのですが、技術と環境の見極めが甘かったんです。そういうことを繰り返すと考え始めるんですね。“どうやったら使ってもらえるか” “役に立つか”。一生懸命つくって使われないって結構辛いですよ。

 
― お話の中で“社会に役立つ”という言葉をよく使われていますが、デザインと社会の関わりについてどんな風に考えておられますか?

僕は、“社会は全部あらゆる「つくる」という行為の集合体”だと思っています。基本的に、僕たちは人工物の中に住んでいます。あらゆるものや仕組みを自分たちでつくって、その中に暮らしているという感覚があります。つくり手と思っていない人も、実はつくり手なんです。目には見えないモノづくりのほうが、ビジネスとして成功した場合、社会を変化させることも多くて、むしろ影響力があります。そう考えると“つくる”という概念が広がっていきます。社会全部がそれで回っているし、社会はつくられているものの集合体。言い換えると、つくるという行為をするために、社会がつくられているとも言えますよね。

一人でつくっていても楽しくないのは、そういうところなんだと思います。結局、“つくったモノが社会にとってどう機能するか”が、自分にとってつくる意味になります。だから一人でつくって完結するのは違うと思うんです。

クライアントの背丈にあった表現で、ちゃんと伝わるモノをつくりたい

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― 現在のカニカピラは、どんなチームですか?

みんながフラットで、割とワイワイしています。何かで盛り上がると情報交換したり、ああだこうだ言い合ったり。モノをつくる会社なので、残業はありますね。ただ、無駄に長時間労働はしたくないので、土日は休むし、なるべく早く帰ってほしいとも思っています。どうしてもクオリティ=時間となってくるので、労働時間は長いと思いますね。

 
― やはり皆さん、モノづくりが好きな方たちなのですか?

そうですね。もらっているお金以上にやりたい人が多いので、どこで線引きするかが大事です。つくり手としては“もっとつくれ”と思うけれど、経営者としては“もう赤字や”とかね。でも、僕ももっとつくりたいタイプです(笑) だから、案件ごとに“これは赤字でも思い切ってやろう”とか最初に決めます。そういう仕事は、僕らが目指しているものや、社会貢献になるものです。

派手な表現をつくりたい人が社内には多いので、その点において自由度が高い仕事のときは多少赤字になってもやろうと思います。ただし、クライアントの背丈を越えるといけないので、そこはきちんと合わせていきます。もちろん表現として地味になったとしても、等身大の姿を見せてあげて、そこにクライアントが行きたい方向をプラスすることを心がけています。

 
― カニカピラさんが大事にしていることは何ですか?

カニカピラのクリエイティブキーワードに「デザインでものがたる」という言葉があります。これは自分でも結構腑に落ちています。テレビの仕事など過去の派手な仕事だけが目立ってしまうと、アーティスティックで好きなものだけをつくっている組織だと勘違いされることも多いんです。でもそれは違って、あくまでクライアント=相手のしたいことや表現したいモノがあって、それをどう伝えるかということを考えるのがカニカピラ。それが「デザインでものがたる」ということです。社是を含め、こうした考えを掲げて、説明し始めてから、共感してくれる人が集まってくるようになりました。

もう一つ「長くつくり続けるチーム」が大事です。僕にとって、生きることイコールつくることなので、チームとしてずっとつくり続けていけるイメージですね。なんらかのルールや指針、思想を共有しているチームがあって、能力がある人が入って来ればいいものができるかもしれないけれど、個人にフォーカスされるというよりはチームでつくり上げていく。チームの軸がぶれないことが理想です。

 
― 新たなメンバーに求めることは何ですか?

社是などカニカピラの方向性に共感してくれる人が絶対条件ですね。そしてコミュニケーションが取りやすい人がいい。僕が喋りやすい人(笑) チームでやるのにコミュニケーションは重要ですよね。最近スキルはあまり重視していないんです。それより、会社の方向性とコミュニケーションが大事だなと。実績がたくさんあっても、チームに馴染まないのはよくないと思っています。

 
― カニカピラの今後の展望を教えてください

「知る人ぞ知るクリエイティブカンパニー」になっていきたいですね。コンスタントによいモノをつくっていたい。僕たちの仕事の仕方も、プロモーションというより、クライアントと膝つきあわせてやるようなブランディングやコーポレートが多いので、息が長く古くならないものや地道に役に立つものをつくりたいという気持ちが強いです。知る人ぞ知るという感じで、紹介で仕事が繋がっていくような……。実際に、一度仕事をすればお付き合いが長くなるケースが多いので、そういうやり方が向いているのかなと思います。

インタビューを終えて

「これから、入ってくる人には、モノづくりが好きで、僕らと一緒に面白いものをつくろうと思ってくれている人がいい」と最後におっしゃった姉川さん。大学1年のときに、モノづくりで食べていこうと決めて、真摯につくることと取り組んでこられたことは言葉の端々から感じられました。デザインで社会は変えられる、そんな勇気を感じさせていただいたインタビューでした。

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