ギルド開発
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2016.04.27
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#44
働き方インタビュー(経営者編)

欲しい人は「いずれ起業して辞めるつもりの人」。競争が激化する動画市場で次のステージへいきたい|ビデオマーケット

新川 五月

こんにちは。LIGライターズの新川です。普段はライター兼コピーライターをしています。

この数年、続々と新会社が立ち上がり、一気に市場が熱くなった感のある動画コンテンツ配信市場。そのなかで、フィーチャーフォン全盛期の2005年に創業したのが、株式会社ビデオマーケットです。モバイルを中心に展開し、現在配信する作品数は12万本を超えます。

実は、ビデオマーケットが最初に配信したのはモノクロ版『鉄腕アトム』。「日本のテレビアニメで一番に放映された『鉄腕アトム』を配信したいと思った」と代表取締役社長をつとめる高橋利樹氏。現在は、ハリウッド作品を配信するまでに成長を遂げ、高橋氏自身「この仕事は、世界と戦える仕事。そのための武器=作品も僕たちは素晴らしいものを持っている」というほど。でも、その道のりは決してなだらかではなかったそうです。

名称未設定 1 人物紹介:高橋 利樹氏
1973年生まれ。早稲田大学卒業後、NTT移動通信株式会社(現株式会社NTTドコモ)に入社。法人営業を経て、2001年にサービス開発部で無線LANサービスの立ち上げに従事。2002年から米国法人ドコモUSAワシントンD.Cブランチに勤務後、2003年に帰国iモードのコンテンツ部門でコンテンツ開拓業務に従事。2005年にNTTドコモを退社、2006年よりビデオマーケットでモバイルVODの市場構築を推進。2007年取締役に就任。2009年に代表取締役社長に就任

創業から3〜4年は混乱期。資金繰り、モチベーション維持がとにかく大変だった

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─ 現在、他社を圧倒するような作品数を誇っておられますが、創業当時からビジネスは順調でしたか。

高橋:創業から3〜4年は混乱期で、安定したのは2010年頃。当時は会社が存続できるかどうかという瀬戸際で、資金面や社員のモチベーション維持など大変でした。言葉は乱暴ですが、ベンチャーなので信用もくそもない。その中で続けてこられたのは、当時の幹部メンバーが信頼を築いていた取引先のおかげ。だからこそ取引先の方々に迷惑はかけられない、何とか存続しなければという思いでした。

もう1つ言うと、僕らの会社はITの世界と映像クリエイティブの世界の狭間にある会社なんです。この2つはすごく文化が違う。ITの世界では、プログラマーが何人で何カ月という数え方をする。そこに名前はでてこない。映像の世界では、誰がやるか、“バイネーム”の世界。“その人”でないとできない。お互いの信用で成り立っているんです。どちらかというと数字の契約で成り立つ世界と、信用で成り立つ世界。その差は大きい。信用の世界の方々とすでに仕事は始まっていたので、ここを崩すと我々はもうビジネスができなくなる、そういう危機感も常にありました。

─ 資金のないなか、どのように事業を立て直されたのですか。

高橋:独占配信をやめました。お客様に作品を知ってもらうために広告宣伝は欠かせない。独占配信しようとすると、売り手側は本来10社に売れるはずのものを1社に提供することになるので、10社分の使用料を要求します。もし10社が取り扱えば自社の使用料を独占配信の場合の10分の1に抑えられるし、各社が宣伝するので宣伝力は逆に10倍になります。そちらの方が断然いい。

独占配信は、他の店に流さないから自分たちの店に来てねという、こちら側の勝手な都合。お客様でも作品の都合でもない。作品は大勢の人に観てほしいのだから、囲いこんでも仕方がないです。僕たちが勝負するのはサービス。作品より、むしろ利便性で選ばれる方がいいと考えたんですね。

─ 競合他社との差別化のために、サービスに集中していくことを選ばれたのですね。

高橋:当社のサービスはモバイルから始まりました。モバイルなら、家にいなくても欲しいと思った瞬間に買ってもらえます。その距離感が勝負どころではないかと。だから、モバイルに絞ったサービスの強化を図りました。創業後の混乱期には閉じたサービスもありますが、絞り込んだのは成功だったと思います。

家族の支えや理解があってこそ、真剣に集中しないといけない時に仕事に没頭できる。

─ サービスの開発というと“徹夜が続いて……”とかそういう働き方をイメージしますが。

高橋:僕は、仕事は死ぬ程やろうぜというタイプ(笑)。でも、当社で残業している人は少ないかもしれません。誤解を恐れず言うと働きたい人は好きなだけ働いていいし、家族との時間を大事にしたいという人は大事にしていい。会社が強制さえしなければいいと思っています。

人生の長さは違っても1秒の長さはみんな同じ。それなら、良い時間の使い方の方がいい。がんばって仕事をしたら、よかったと感じるし、“やらされて嫌だ”と思ってした時間より、絶対自分にとって良い時間になると思います。そういう使い方をしてほしいですね。

─ 家族のいる社員が多いとお聞きしました。

高橋:当社では“子どもが熱出したので午前休とりたい”というのも、仕事の調整が済んでいれば問題ないし有休消化率も高い。産休制度も活用されているし、女性にとって働きやすい環境だと思います。今年からは“子ども手当”をスタートさせるなど、家族を大切にする環境づくりを意識しています。

子どものいる家庭には、僕からちょっとしたクリスマスプレゼントを贈ります。家族もそういった配慮のある会社は好きになってくれます。それで家族からのサポートも厚くなり、仕事に励もうと思えればいいですよね。もし転職を考えたときに、「そんないい会社辞めちゃだめ」と家族から言われる会社を目指しています(笑)。

隣のひとが何をやっているか知らない、それはやめましょうと。チームワークを重視しています

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─ 会社の中で、大事にしていることは何ですか?

高橋:必ず守ってもらっているのは、他メンバーの仕事への無関心はやめようと。周りがどんなことで頑張っているかがわかると、自分のモチベーション向上にもつながるし、相手が大変なときには“何か助けられることはあるか”と気づくこともできます。

人って長く一緒にいれば、コミュニケーションが多いほど、その人のために頑張りたいと思うようになっていきます。一緒に居すぎて嫌いになる場合もありますが、無関心は最悪。コミュニケーションの量と質を高めることが、確実にチームワークにつながるんですね。

─ この数カ月、社員数がどんどん増えているそうですが、その中でコミュニケーションを活性化する策などはありますか。

高橋:社員数が増えつつあるおかげで、お互いに名前を知らないケースが出てくるようになりました。入社1カ月経っても名前を知らないのはどうかと思って、机上に名札を立てることにしたんです。これだと座席表がなくても名前が一目でわかる。新しいメンバーにとっては、すごく案内になるんですね。

こうした“人とつながる仕掛け”は会社にとって大事なので、いつも何かしら考えています。それが僕の仕事。自分が社員のときは面倒だなと思っていたようなことも、今の立場になって「ああ、こういう意味があったのか」と気づくようになりました(笑)。

毎週“社長会”も開催しています。マネージャー以下のメンバーとの食事会。ふつうは社長と話す機会はあまりないですから、困ったことがあっても、いきなり社長に相談なんてまずできない。でも一度でも話したことがあれば、万一の時、話しやすいのではないかと。メンバーとの関係をできるだけ近くしたい思いで続けています。

よく言うのは、“本質的に考えよう”。その上で、人が1時間考えるところを、それ以上考えればきっと勝てる

─ 仕事のやり方などで、ご自身が大切にしていることはどんなことですか。

高橋:“本質的に”に考えること。恥ずかしい話ですが大学受験で失敗したとき、自分は勉強した気になっていたけど“本質的に”はできていなかったと気づきました。そして努力してる人はやはり強いなと。だから追いつき追い越すには、それ以上の努力をしないといけないと。それ以来、僕は自分が“頭が悪い”“努力していない”と常に感じているので、そのぶん考えなきゃと思うんです。人が1時間考えるところ、自分は2時間考える。さらに多方向から考える。

仕事においても同じ。他社と近いサービスがあるなら、勝つために“他社よりもっと考える”のが本質的な話。基本的に個々人の能力はそれほど差がないと思っているので、単純に人が倍になればそのぶん強いし、普通の人が1時間考えるところを、それ以上長く考えれば、そのぶん勝率はあがっていきます。

いきなりアメリカのGoogle本社へメールして、クロームキャストのローンチパートナーに!

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─ 創業から現在まで、もっともエキサイティングな体験といえば、何でしょうか。

高橋:Googleのクロームキャストのローンチパートナーになったことです。きっかけは2013年秋頃。アメリカでクロームキャストが発売されるという記事を見て、日本に来るときは絶対に対応したいと思ったんです。日本のGoogleにいた知人に、クロームキャストの本社の担当者名を教えてもらい、いきなり「この時期に渡米するので、会ってもらえないか」というメールをしました。そうしたら驚いたことに「いいよ」と返事が来た。もちろん行く予定なんてないので、慌ててチケットをとって(笑)。現地では、練りに練ったプレゼンをして熱意を伝えたら…、なんと日本のローンチパートナーとして契約してもらえることになったんです。

「やってみるもんだなー」と。以来、僕は何かやりたいことがあれば“どんどんやればいい”というスタンスで、向こうからくるものもあまり断りません。そこから何かが生まれる可能性があるから。もちろん思いつきはダメ。“熱意”やよく考えられた“内容”があり、そのうえでしっかり伝えるからこそ、相手もそれに応えてくれる。それを実感した体験でした。

VODの世界の新規参入はもう終わった。これからは、どう生き残っていくか。いよいよ面白くなっていく

─ VOD業界は今後どのように展開していくと思われますか?

高橋:これ以上の新規参入の可能性は少ないと思います。作品を1本増やすには、個別に契約を結びデジタル化して……ものすごく時間がかかる。新規参入しても、既存他社の作品数にとてもではないけれど追いつきがたい。だから今はこのなかで“何社残るか”という状況だと思います。また今は大変換期で、レンタルビデオ市場がどんどんオンラインに流れていくと我々は想定しています。それなりに時間がかかりますが、その先には、もっとすごい世界が待っていると思っています。

人事に怒られそうだけど(笑)、あえて言うと「これから起業したい」という気概のある人に来てほしい

─ ビデオマーケットの求める人材像について教えてください。

高橋:会社としては、「わかりやすく言うと大企業志向ではない人。決まったルールで作業をやるより、自ら仕事を生み出せるくらいの気概のある人」ですね。

個人的に一緒に働きたいのは、“これから起業したい”と思っている人。そういう人は当社できっといろんな勉強ができる。本当に起業したいなら、やはり苦労しないといけないと思うんです。起業に必要なお金や人、経理のことなどたくさんありますが、それをまったく知らないまま起業するときっと後悔すると思うんですね。当社なら、それを勉強できるし、僕も教えてあげたい。そのかわり、ここで頑張らないと次の信用も作れません。実際に起業すれば良い協力関係を結べると思うし、我々も応援していきたいですね。

インタビューを終えて

「いずれ起業して辞めるつもりの人を採用したい」という言葉に実は驚いたのですが、そこにこそ一組織の枠にとらわれず、“チームワーク”“人とのつながり”“信頼関係”ということを大切にしてきた高橋氏の考え方の真髄があるのではと思いました。


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