「+αの価値と驚きを提案」現代のデザイナーに求められること| dig

久松 知博


「+αの価値と驚きを提案」現代のデザイナーに求められること| dig

こんにちは、LIGライターズの久松です。

ブランドコンサルティングを主軸に、Webサイト構築、各種ツールのデザインなど幅広い業務を手掛ける株式会社dig。企業の魅力を引き出し、視覚化することをミッションに、伊勢丹のECサイト構築、講談社の採用サイト制作、雑誌「宣伝会議」のアートディレクションまで、その業務範囲は多岐に渡ります。


社員はもちろん、「スタッフの家族も会社も顧客も、仕事を通して幸せになってほしい」と話す代表取締役の松本さん。今年、創業20年目を迎えるdigに、創業の経緯を振り返りながら、“ ものづくりの先にある働き方”についてお話を伺いました。

Poole:アイコン_dig様記事0001 人物紹介:松本 知彦氏
1963年に漫画家・松本正彦の長男として東京に生まれる。1982年、武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業後、大日本印刷株式会社に入社。CDC事業部(現C&I事業部)に配属。番組の企画制作、大手企業のWebサイトの構築、コンサルティング業務に携わる。10年間勤務した大日本印刷を退社。1997年に株式会社digを設立。現在は企業のブランドコンサルティングを中心に、Webサイトの構築およびシステム開発、紙媒体のグラフィックデザインなどを手掛ける。

もっと正面からクリエイティブに向き合いたかった

− 10年も勤めた大企業を辞めて、digを設立したきっかけは何だったのでしょうか?

理由は色々ありますが、一番の理由はもっとクリエイティブに向き合いたかったということですね。クリエイティブの部署に所属していましたが、それ以外にやらなければいけないこともたくさんあって、もっと正面からどっぷりクリエイティブに漬かりたかった。大企業で得られることもたくさんあって、それはそれで大いに勉強にはなりましたけど。

 

- 大企業を辞めて独立することに、不安やリスクはなかったのでしょうか?

それはありましたよ。退社する時、上司からは「安定した大企業を辞めるなんてお前はバカだ」と言われました。でも安定と自分のやりたいことと、どっちを取るのか?という選択で、当然リスクを取らないと、自分の成長もない。人生にはどちらかを選ばなきゃならない時が必ず訪れます。

今考えれば、それがその時だったと思いますね。その頃、朝日新聞が主催する朝日デジタル広告賞というコンペで運良く入賞したというのも大きなきっかけだったと思います。

ブランド構築で大切なポイントは、今の時代に合った“ 最適なチューニング”

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− 創業20年を迎えるdigさんは、最近はどのような案件が多いのでしょうか。

最近ではブランド開発やコンテンツ企画をする案件が増えています。ブランド開発では、たとえばヨガスタジオのリブランディング。立ち上げから数年が経過し、競合の中で優位性が失われてしまったブランドを今の市場ニーズに合わせて再構築する仕事ですね。コンセプトの見直し、スローガンの開発、Web制作、撮影、紙の販促物全般などトータルにやらせていただきました。

コンテンツ企画では、さまざまなBtoCの会社に対して主にライフスタイル系のコンテンツを企画して、取材、編集から制作までをワンストップでおこなっています。

 

− ヨガスタジオの案件で特にこだわった点はどこでしょうか?

立ち上げ当初から持っているブランド特性を、今の時代にあった最適なものにいかにチューニングできるかというのが最大のポイントでした。そのためには、ブランド立ち上げ当初の理念やビジョン、ブランドが顧客に提供できる価値などを紐解き、現在数多く存在する他のスタジオとどこで差別化していくのかをクライアントと共有していくことが何より重要です。

今までのブランドの歴史や現在置かれている状況をヒアリングによって理解することからはじめますが、結局のところ、ブランドの強みはそのブランドのDNAの中にしかない。それを調査やデータによって掘り起こし、最終的に可視化するのが僕たちの仕事だと思っています。その作業は同時になぜそのデザインなのか? という理由を裏付けるためのプロセスでもあります。

案件を増やすための営業ではなく、“ エモーショナルになる提案”を意識する

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- 創業20年を振り返って、印象に残っている仕事はありますか?

最初に依頼された大きなコンペがHMVのECサイト構築でした。プレゼンが通過して受注したのですが、以降6年間にわたってサイトから紙のグラフィックデザイン、イベントの取材撮影や店舗フロアのCG制作まで、さまざまな業務に携わりました。ここで得たノウハウがその後のコカ・コーラ、DHC、日比谷花壇、チケットぴあ、ショップチャンネル、伊勢丹など日本を代表するような大規模ECサイト構築の制作実績につながりました。

 

- 創立当初から大事にしていることは何でしょうか?

案件を増やす営業に力を入れるのではなく、コンペで仕事を獲得することです。クライアントが持つ悩みや課題に対して、持っている技術力とノウハウを最大限に活用してプレゼンをする。提案そのものが必ずエモーショナルなものになることを意識しています。

弊社は”make difference”をスローガンに掲げています。それは、他社と提案内容、アウトプットに差をつくる、クライアントの現状と未来に差を作るために今やるべきことを行うという想いを込めたものです。アウトプットの差というのは、すなわち驚きや価値のことです。常に+αの価値を提案し続けることこそが自分たちの仕事だと思っています。

 

- その考え方は社名の由来とも関係があるのでしょうか。

そうですね。digという社名は掘り下げるという意味なんです。クライアントの持つ課題を深く掘り下げることによってそこに差が生まれるんです。スタッフにもそれを意識して働いてほしいと常に思っています。

繰り返し考えることこそがアウトプットの差につながる。+αの価値をつくる仕事術


- “ 驚きを与え、+αの価値を提案し続ける”ために、普段から心がけていることはありますか?

「Re(アールイー)」と社内では言っているのですが、何度も繰り返し熟考することです。クライアントの課題を掘り下げて、関連情報を可能な限り集め、自分たちのフィルターを通して、最適な回答を導くことです。考えて考えて必要な要素を導き出す。相手の要望に応えることはマストですが、僕たちはいつもその先の提案をしたいと考えています。言うなれば期待以上の、102%で応えたいんです。

 

- “ デザインをする”ことについてはどうでしょうか?

当然ながらクライアントにデザインを提案する際には、コンセプトからデザインのディテールに関して説明できなければいけません。例えばフォントの選択やカラー設計についても、その理由を論理的に説明できなければいけない。デザインには、必ず説明可能な理由があるはずです。

もちろんその前に、アウトプット自体がクライアントの求める品質に達していることが大前提です。デジタルクリエイティブは、トレンドの移り変わりが激しいので、質の高いアウトプットを続けるためには努力が必要です。時代にマッチしたデザインを作り出し続けられるように、日々感性を磨いていくことを意識させています。つまり論理的思考=左脳と、感性的思考=右脳をつかって繰り返し考え検証し、作り上げていくことが大事だと考えています。

“ 情報収集能力とアウトプットする力のバランス” こそ、現在のデザイナーに求められている資質

- digが求めるデザイナーの資質は何でしょうか?

デザイナーに必要なのはバランス感覚です。昔はかっこいいものが作れたらそれでいいという時代もありましたけど、今はそれだけでは足りないと思います。今のデザイナーに求められるものはクライアントからの要望や時代のトレンドなど関連情報を収集する情報分析能力。いろんなものが複雑に絡みあったものを一つにまとめて視覚的なものに落とすことが仕事です。デザインの力に加え、デザインを論理的に説明できる資質をあわせ持つバランス感覚が必要だと思います。

それと、弊社は案件のジャンルが幅広く、コーポレートサイトやキャンペーンサイトの仕事ばかりというようなことがないんですよね。それは楽しい反面、デザイナーはデザインの引き出しが多いことをすごく求められます。ラグジュアリーなアパレルのブランドサイトや子ども向けの可愛らしいデザイン、UI設計を重視したECサイトなど、求められるものはバラバラですから、それに応えるためにはデザインの引き出しを多く持ち、クライアントに満足してもらえる内容をいかに提案することができるか? ということに重きを置いています。

 

- 提案の能力も求められるということですね。

先ほど会社で大事にしているものは何ですか? という質問に対してクライアントの要望を掘り下げて+αの価値で返すと言いましたが、それはまさにデザイナーに必要なスキルだと思っています。

提案がなければ、デザイナーではなく、オペレーターと呼ぶべきでしょう。同時にデザイナーには外注をコントロールしたり、手掛けたデザインをプレゼンするスキルが求められます。提案する力とそれを言語化できる力の両方が必要のように思います。

 

- スタッフに持ってほしい目標は何ですか?

常に自由な発想ができて、かつ、多くの経験を持ったプロフェッショナルであってほしいです。クリエイターである以上「あの人に任せたい」「あなたがいてくれたから実現できた、ありがとう!」と言われるようにならないといけないです。クライアントからも社内からも信頼されて求められる人になっていこう、ということですね。

社員も家族も幸せになるモデルを作りたい

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- では、最後にこれからのdigの展望や目標を教えてください。

「何か、新しいことを始めます」と言いたいんだけど、やっぱり弊社はモノを作る会社なんです。その根底にあるのは、提案とデザインによってクライアントに、そして世の中に貢献したいという常に変わらない想い。その気持ちには終わりがない。だから今後もモノを作るということには変わりはないと思います。ただ目標として、世の中に貢献すると同時に、社員もその家族もすべてが幸せになれるモデルを作りたいと強く思っています。

世の中必ずしも自分のやりたいことをやれている人ばかりじゃない。中にはやりたいことがわからない人もいるでしょう。でも冒頭で述べたように自分の好きなことをやりたい人たちが、うちの会社に入ってきてると思います。好きなことをして、かつ人のためになって、自分もその周りも幸せになれるなんてこんな素晴らしいことはない。僕たちはそれを目指さないといけないんです。好きなことをして。

だから、弊社はものづくりの姿勢を変えず、どこまで幸福な社員のロールモデルを作ることができるかが、今後の最大のテーマです。人に求められることは幸せにつながります。仕事を通して得られることはたくさんありますが、小さな成功の積み重ねによる達成感、自己実現、誰かに必要だと思われること。これらを通して自分が成長できることの喜びを感じてほしい。そして自分の成長によって、周りの人や家族も幸せに導いてほしいと思っています。


今は「1人1人自分がやりたいことを通してプロになる=それぞれの成長が会社全体の成長につながり、関係者全員が幸せになること」を常に考えています。

インタビューを終えて

クライアントの期待に応えるものづくりを追求して、その期待をさらに超えるものをつくる仕事をしてきた松本さん。ものづくりを真剣に考えてきたからこそ高いクオリティと関係するすべての人たちの幸せを望むセンスと優しさにあふれていました。

ものづくりのクオリティだけではなく、社員の幸せと仕事が両立する究極のバランスを追い求める会社だからこそ、企業や消費者の目線に立ってブランドの魅力を最大限に引き出せることができるのだろうと感じました。

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久松 知博
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