第67話

絶望的な“非日常”の中で“日常”を暮らす学園モノ『がっこうぐらし!』

けいろー


絶望的な“非日常”の中で“日常”を暮らす学園モノ『がっこうぐらし!』

どもっす。外部ライターのけいろーです。

数多くの漫画やライトノベルがアニメ化されることが当たり前となっている現在、映像化されたことで原作人気に火が付く作品も少なくありません。2010年以降だと、『進撃の巨人』などでしょうか。過去にコミックジャンルの大賞で名前が挙げられるなど、もともと話題になっていた印象もありますが、今もなお続く爆発的な人気の背景に「アニメ」の存在があったことは否めませぬ。

さて、そんな中でも2015年に「アニメ化されて大きな話題になったコミック」と言えば、まず思い浮かぶ作品がひとつございます。そう、ときに「難民キャンプ」と呼ばれ、ときに「ぞんぞんびより」とネタにされたあの作品『がっこうぐらし!』です。

累計1,200万再生!アニメ放送によって原作の売上が10倍に

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がっこうぐらし! 1 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

漫画『がっこうぐらし!』は、2012年から『まんがタイムきららフォワード』で連載されている作品。『まんがタイムきらら』系列のコミックと言えば、『ひだまりスケッチ』『きんいろモザイク』『ご注文はうさぎですか?』などが過去にアニメ化されていますね。

これらのマンガに共通するのは、かわいい女の子たちの日常を切り取った、いわゆる「日常系」の作品だということ。
『がっこうぐらし!』は、そのような雰囲気の漫画を数多く排出してきた系列雑誌での連載ということもあり、アニメ放映前には、自然と「日常系」が好きな視聴者層が集まっているように思えました。

ところがどっこい。1話が放送されるや否や、ネット上は大多数のアニメファンの悲鳴と絶叫で埋め尽くされることになります。これが俗に言う、「がっこうぐらし! ショック」であります。

まんがタイムきららフォワード連載の『がっこうぐらし!』が上に記載した作品よりも早く、ニコニコ生放送&配信開始され「きらら系列のかわいい日常アニメ」だと思い込んで視聴した多くの難民達に衝撃を与えた。そのあまりの衝撃と恐怖にごちうさ1羽に逃げ帰る者も多く見られ、「がっこうがえり!」「帰省ラッシュ」「登校拒否」「被害者の会」等と称された。
引用元:難民とは (ナンミンとは) – ニコニコ大百科

ひらがなタイトルに「!」マーク、てっきり表紙に描かれた女の子が楽しく学校生活を過ごす物語と思いきや、ふたを開けてみれば生きるか死ぬかの「サバイバル」作品であり、『ゾンビ・アポカリプス』的なやつだった。世界にゾンビのバイオがハザードしちゃってマジやべえ感じ。

そういった視聴前の印象とのギャップが衝撃的だったのか、ニコニコ動画で配信された第1話の再生数は1週間で140万以上に及び、放映後には原作コミックの売上が約10倍に跳ね上がったそうです。アニメパワーすげえ。

“非日常”を生きる“日常系”の学園モノ

さて、そんな『がっこうぐらし!』を一口で説明するならば、「非日常を生きる日常系の学園モノ」とでも申しましょうか。「日常系じゃないじゃん!」などと視聴者と読者に絶望を知らしめる一方、物語の構造としては、なんでもない日々を過ごす「日常」が核にあるように読めるのです。

物語のメインとなるのは、周囲をゾンビが徘徊する校舎にバリケードを築き上げ、なんとか食いつないでいる4人の女の子たち。その中心にいるのが、幼児退行を起こしてしまっている主人公・丈槍由紀です。彼女の視点から見れば、普通に学校生活を楽しんでいる「日常モノ」として捉えられなくもないんですよね。

もちろん現実は非情であり、外は地獄のような光景。それでもまだ「日常を生きている」と幻視している彼女の存在によって、他の3人も絶望しきらず、前向きに生活している様子が描かれています。非日常の渦中にあって、それでも日常を必死に過ごす4人の、日常系学園モノ。

けれどそれは、むしろ失われてしまった「日常」の輝かしさをより際立たせているようにも見え、どこか切なく感じられるのも事実です。平和な学校生活や日常を想いながらも、非日常の変化を受け入れ前へと進む少女4人の、王道作品。
読めば興奮、衝撃、絶望、悲痛、感動などなどの諸々の感情を一気に味わうことができ、非常に心がぴょんぴょんする作品です(揺さぶられまくるという意味で)。

アニメを見たら、ぜひコミックも!

本作は「アニメは観た」という方も多いと思いますが、原作コミックもぜひ読んでみることをおすすめしまする。アニメ版は、演出面ですんごい惹きこまれる一方で、コミックは一コマ一コマが丁寧に描かれており、じっくり読みたくなる魅力があるのです。

個人的に、特に好きなのが、キャラクターそれぞれの「目」の作画。楽しい学校生活に目をまあるく見開くゆきに、その様子を優しげな視線で見守るりーさん。元気よく活発に瞳を光らせるくるみと、周囲に振り回されながらも穏やかで温かな目を向けるみーくん。

そして場面が非日常へと反転すれば、彼女らの表情も激変。絶望、狂乱、悲嘆、安堵、決意など、多種多彩な方向に感情が振りきられることでストーリー展開の落差をはっきりと示し、物語にもキャラクターにも魅力を付与する“華”となっているように読めました。(……別にサドなわけじゃないですよ!)

そして、アニメでは断片的にしか描かれていなかった「設定資料」の存在なども、原作コミックの魅力としてあげられます。各巻末に「おまけ」っぽく、さらっと掲載されている数ページに過ぎないけれど、明らかに世界観の根っこの部分を構成しているのではないかと考えさせられる内容となっています。
世界設定や本編中の謎など、あれこれと推理・想像することができる資料のため、先の展開を想像しながら物語を追いかけたい人なら必読でしょう。こちらを読んでから本編を読み返してみると、何気ない一言やコマにも意味がありそうで、妄想をかき立てられます。楽しい。

最後に

現在はアニメ版の先の物語、「大学編」が進行中の原作コミック。まだまだ謎も多いなか、新キャラも登場し、先の読めない展開が続いております。個人的には、胡桃の行く末が気になってならない今日この頃ですが……詳しくは、本編で! それでは!

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