第69話

残虐な「いじめ」描写に圧倒される衝撃作『校舎のうらには天使が埋められている』

けいろー


残虐な「いじめ」描写に圧倒される衝撃作『校舎のうらには天使が埋められている』

どもども。外部ライターのけいろーです。

古今東西、人気物語作品といえば「王道」。勧善懲悪がはっきりしており、最後にはすっきり終わるものが大半なのではないでしょうか。一方で『バクマン。』の中で語られていたように、“邪道な王道”こそが話題になりやすいという事実もあると思います。

そんなわけで今回は、どちらかというと「邪道」に属するであろう作品、小山鹿梨子さんの『校舎のうらには天使が埋められている』をご紹介します。

読者の心を徹底的に挫きにくる“少女漫画”

51mZoK6fhmL._SX317_BO1,204,203,200_

校舎のうらには天使が埋められている 1(講談社コミックス別冊フレンド)

『校舎のうらには天使が埋められている』は、中学・高校の女の子向けの漫画雑誌『別冊フレンド』で連載された、れっきとした少女漫画でございます。全7巻の表紙を見ると、いずれもかわいらしい女の子のイラストが目に入ります。

しかしこちらの1巻の表紙、よく見るとオレンジ色に染まる夕暮れ空を背景に立つ女の子の姿は儚げです。大きく書かれたタイトルの文字も節々が欠けており、何より足元に見える木組みの十字架と、彼岸花が意味深過ぎる。そもそも漫画タイトルだって、「天使が埋められている」ですよ……?

それもそのはず。本作のテーマは、「いじめ」です。リアルに根ざした教育問題である「いじめ」を取りあげながら、それをサスペンス的な物語として落としこみつつ、小学生とは思えない残虐性と共に描かれている衝撃作なのです。

救いのない1巻と、対峙する白い悪魔と黒い天使

本作は、とある小学校に転校してきた女の子の視点から物語が始まります。

内気な性格で友達ができず悩んでいた彼女にある日、クラスの中でも目立つ存在でお人形さんのような女の子・蜂屋あいが話しかけてきます。2人は仲良くなり、ようやくクラスにもなじめるようになってきた転校生。しかしそこで渡された「プレゼント」を見て、クラスの「闇」を知ることになります。

そんな第1話の“上げて落とす”構成も相当なものですが、その後に続く話にもことごとく救いがありません。いじめを快く思っていなかったクラスメイトは渦中に巻き込まれ、その問題に気づいた別クラスの男性教師も、策謀によって休職に追い込まれてしまうのです。

とんでもなく「胸くそ悪い」展開は、2巻の途中までずーっと続きます。クラスにはびこる「いじめ」の異常性と残虐性、それをどうすることもできない大人の無力さと愚かさ、そしてその中心ですべてを操る「白い悪魔」の存在が、徹底して描かれています。

こんなにも救いのない漫画の第1巻は、他に知りません。

しかし、だからこそ2巻にしてようやく登場する「黒い天使」と評される主人公の存在が際立っており、はじめて読んだときには震えました。小学生の女の子なのに超イケメン。孤高のヒーロー。これは惚れますよ。

「無邪気」という言葉の重さを知る

冒頭で本作を「邪道」と紹介しましたが、それはあくまでも「少女漫画雑誌でサスペンス色の強い展開の物語を、“いじめ”のテーマと共に描き出している」という点から感じたもので、全体の構成そのものは極めて「王道」であるように思えます。

過去に屋上から身を投げた生徒の謎を核として、いじめの中心にいる「白い悪魔」を倒すべく、「黒い天使」が奮闘する物語。最後は若干のモヤモヤも残るかもしれませんが、終わり方としてはきれいにまとまっておりスッキリしました。
(……と、思っていたのですが、新刊を書店で見かけてびっくりしました。まさか、中学生編があったなんて!)

なお、“いじめ”を取り上げた作品は多々ある中で「現実味」という要素に関してだけ言えば、ぶっちゃけ本作はファンタジー感はわりとあります。
「こんな頭の回る小学生がいてたまるか!」とか、「そこでその展開は普通ないだろ!」とか、「いくらなんでもそこは大人が不自然に感じろよ!」とか。でもまあその辺は、フィクションにツッコミを入れること自体が野暮な気もしますし、「サスペンス」というジャンルの特性でもあるのかな、と。

けれど、そのように「ねーよwww」と感じられる物語展開がある一方で、狂気じみているようにも見える作中の「いじめ」の描写、それ自体は一概に「ありえない」と切って捨てられるものではないようにも感じます。いじめの行為そのものではなく、心持ちとでも言いましょうか。

小学校の教室という日常空間で行われる、非日常的な残虐行為。でもそれは、子供たちの「無邪気さ」の向かう方向が間違ってしまったら、現実でも自然な行為として発生しかねないものであるようにも見えます。特にその空間内に、周囲を導く「カリスマ」の存在があるのなら。

まとめ

学校や先生から問題視されるようなものでなくとも、捉え方によっては「いじめ」と受け取ることもできる行為に関わったことがある人、見たことがある人は、決して少数派ではないはずです。

それがどこかで悪いことだとは思いながらも、何となく流されるままに加担してしまったり、見て見ぬふりをしたり、被害者となってしまったり。……そんな経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

この『校舎のうらには天使が埋められている』は、そういった「無邪気ゆえの残虐性」や、「閉鎖的なコミュニティにおける人間関係の問題」を断片的に切り取った作品としても読むことができ、なんだか身につまされました。小学生こわい、マジこわい。でも多分、他人事じゃない。

最後に救いというか個人的にこの漫画の好きなところを。
主人公と、彼女の行動理念ともなっている、いじめの対象になってしまった女の子、その2人の信頼関係がすんごい好きです。「中学生編は蛇足だ!」との声もあるようですが、2人のイチャイチャを見れただけでおなかいっぱいです。いいぞ、もっとやれ。

けいろー
この記事を書いた人
けいろー

外部ライター

おすすめ記事

Recommended by