開発コストを削減「ラボ開発」って?
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2016.02.01
第4回
ファッション × テクノロジー

ビームスハッカソンから学ぶ!ハードウェア電子回路設計の基本のキ【vol.1】

うこ

みなさまはじめまして。外部ライターのうこ(@harmoniko)と申します。ふだんは理系の大学に通いながら、都内の研究機関にてWebアプリ開発から組み込み機器の設計まで関わる、雑食系なエンジニアをやっています。

さてそんな自分が先日、業界初(であろう)ファッション×テクノロジーがテーマのハッカソン「ビームスハッカソン」に参加してきました。セレクトショップ「BEAMS」とジーズアカデミーが主催した、「ビームスの商材をハックして競う」一風変わったハッカソンです(全体の様子はこちらの記事をどうぞ)。

そこで、拙作「Happy Outside Effector」が最優秀賞をいただきましたので、今回から連載としてそのプロトタイプをご紹介します。

さらに、簡単な電子回路の仕組み、特にセンサとアナログ信号処理についての基礎知識も解説できればと思っております。連載初回は、この作品の構造や仕組みを紹介します。

「Happy Outside Effector」のコンセプト

slide1

“服にDJミキサーの機能を持たせちゃえ!”というコンセプトで制作した「Happy Outside Effector」。服のなかの可動部(ジッパーやフードのひも)をミキサーのフェーダーにしようと考えました。

外見を損なわず、服そのものがもっている機能的な特性をうまく利用することができたのではないかと個人的には思っております。

 
slide2

「Effector」の名を冠する作品ですから、DJミキサーだけではなく「ディレイパーカー」や「エコーパーカー」など、音にエフェクトをかけることのできる服も考えました。

「複数人でそれぞれが異なる機能をもった服を着て、みんなでエフェクトをかけたりミックスしたりすることで簡単にセッションを楽しんでしまおう!」というのがこの作品の大まかなコンセプトです。山でキャンプをしているときや野外フェスの空き時間などに、音楽は聴き専!という人でもノリノリで遊べるかと思います。

 
flow

「音楽は手持ちのスマホに入っているものを使うことができれば……」「最近流行りの防水アウトドアBluetoothスピーカーをつなぐことができるとなお良し……」など、出てきたさまざまなアイデアをまとめたのが上の図です。これが作品の全体構成となっています。

補足
・Bluetooth SPPは、Bluetoothによるシリアル通信用プロファイルです。
・Multipointは、複数のBluetooth機器を同時に接続して待ち受けできる機能です。
・クラウドで共有する上図は一例で、ほかにも手持ちの音楽をその人が着ている服に直接入力し、ミキサー担当にBluetooth送信するという案もありました。

以上までが「Happy Outside Effector」のコンセプトです。
コンセプトがほぼ固まったのが1日目のお昼過ぎだったので、発表まで丸一日ないくらいのところで実際にハックした”モノ”を作らなければいけませんでした。時間の制約がある中で、試作品として実現可能な範囲を考えるとこのようになりました。

proto-flow

電子部品類は会場に近い秋葉原で入手し、オーディオ端子は100円ショップに売っているイヤホンのケーブルをちょんぎって利用しました。FM送信は、Bluetoothよりもっと手軽な無線伝送の代用として使ってみました。

そして、完成したのがこちらです。

prototype

パーカーの左右のひもを引っ張ることで、2台のスマホから出力される音楽をミックスできるというとてもシンプルなものです。

構造

volume

最初は、音楽を流した状態のスマートフォン2台を接続しておきます。可変抵抗はCDデッキなどについている音量ツマミ、いわゆるボリュームそのものです。これをフードのひもで回すことができるようにしました。この可変抵抗を操作することでそれぞれのスマホで再生される音楽の信号量を調整し、そのあとミキサー本体の回路に入力します。

最後にミキサー回路からFMトランスミッタに出力し、FMラジオをチューニングして音楽を受信できるようにします。デモンストレーションではこれらの回路基板やスマホをポケットに収納し、実際に山登りやフェスに着ていくような状態で簡単なミックスを披露できました

ミキサー本体の中身

ここで、さらにミキサー本体の中身をみてみましょう。

mixer-internal

スマートフォンからのオーディオ入力をそれぞれ2つの可変抵抗で受け取り、オペアンプ回路に入力し、それを出力しておしまいです。とても簡単な回路ではありますが、「可変抵抗」と「オペアンプ回路」のどちらか一方のみではこのプロトタイプは成立しません。

補足
このような回路は、ハッカソンのような短時間・即席の開発では可変抵抗のみでもできなくはないですが、焼き切れる可能性が非常に高いため回路設計として一般的とはいえません。

この「可変抵抗」と「オペアンプ回路」のふたつについては、場合によってはこれらで1冊の本が書けてしまうほど掘り下げることもできますが、当連載では最低限の知識をハードウェア初心者にもわかりやすく書くことを目標にしようと考えています。

第2回は電子回路の基本と抵抗・センサ素子について、さらに第3回はオペアンプ回路についての解説を予定しています。

おわりに

ビームスハッカソンでは、多くのチームがWebサービスを含めたソフトウェア的な実装をしっかりされている中、シンプルなハードウェアの「Happy Outside Effector」が賞をいただいたときは驚きました。自分も基本的にはソフトウェア寄りのエンジニアではあるのですが、ハードウェアについて簡単な知識があるだけでもモノづくりの幅は大きく広がります

ちなみに、”優秀作品は商品化されるかもしれない”のがこのハッカソンの楽しみなところではありましたが、「洗濯のときに電子回路部分は取り外せるのか?」などの問題点がいくつかあり、仮に商品化するとしても「もっと詰めが必要」との言葉を頂きました。衣類を直接的にハックしたウェアラブル製品があまり出てこないのは、そういった課題が多いからかもしれないなと思いました。

それでは、また次回をお楽しみに。