プライドの背負い方は一つじゃない
べしゃり暮らし 6 しあわせのしるし (ヤングジャンプコミックス)
そして物語は、現在と過去を錯綜しながらNMC準決勝へと向かいます。この巻のメインは「デジタルきんぎょ」です。
かつて金本の引き立て役に徹しようとした藤川。そんな藤川に遠慮と気遣いを見せた金本。相方に情けをかけられた悔しさから奮起した藤川は、その後めきめきと頭角を現し、やがて2人はコンビとして飛躍を遂げます。
出世街道を歩むためには大きなプライドを背負って進んでいく必要がありましたが、2人は互いに憎しみ合うことでしか、そのプライドを背負い続けることができませんでした。
しかしコンビはぶつかり合うことで、憎しみ合う以外の形で、プライドを胸に歩んでいくことができる。そのことに二人が気付いた時、「デジタルきんぎょ」の漫才は新たなステージへと到達します。
シンプルな問いにこそすべての答えがある
私たちは日々悩み、面倒事に追われクタクタになり、それでも駆けずり回りながら毎日を生きています。そんな私たちが向かい合うべき「問い」とは、一体なんなのでしょうか。
それは雑多に溢れた人生からは想像もできないほどにシンプルで、だからこそ答えが見つかりにくく、でも一度見つけてしまえばすべての悩みへの答えにもなる。そんな問いだったりするのではないでしょうか。
例えば、「相方って何なんだ?」、という問い。その答えを探し続けて紆余曲折の年月を共に歩き続けた二人の行く末やいかに? その続きは、是非ご自身の目でご確認ください。
欠点だらけの主人公・上妻圭右
ところでこの漫画、読み始めたもののどうも苦手……なんて人も少なくないようです。その理由として大きいのが主人公・上妻の精神的幼さ。
自信過剰ですぐ調子に乗り、親父譲りの頑固さで思い込みも激しく、殴り合いの喧嘩もしょっちゅう、とまさにやりたい放題。以降の巻でも上妻の人間的未熟さは事あるごとに露見し、相方・辻本はしっかり者であるがゆえ、一層の苦労を背負います。
しかし『べしゃり暮らし』は捨てる物語であり背負い続ける物語。良いも悪いも両手いっぱいに抱え込んで歩き始めた上妻が、先人の背中を見ながら、何を捨て何を背負い続けるのかを選択していく成長譚なのです。
あれもこれも捨てたくない、と駄々を捏ねる困ったやつには違いないのですが、どうぞ読者であるあなた自身が今も背負っているもの、そして捨ててきたものを数えながら見守ってやってください。上妻の旅はまだ始まったばかりです。
引き続きどうぞよろしくお願い致します。以上です。
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ライター紹介:ズイショ 貴方の寿司に僕の寿司をぶつけたい憎らしい白い犬。白い。 ブログ:「←ズイショ→」 |
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