
こんにちは、外部ライターのズイショです。
『べしゃり暮らし』について気が済むまで語るこの連載、今回のテーマは“重くても降ろしてはいけない荷物がある”です。
前回の“「捨てる」ところから世界は拡がる”とパッと見では真逆のテーマですが、人間とはそもそもが矛盾の塊のような生き物。風呂に入りたいけど服を脱ぐのが面倒、モテる努力をしないでモテたい、ドーナツは毎日食べたいけれど下手に100円セールをやられると逆に普段買いにくい。みなさんもそんな何かしらの矛盾を抱えながら毎日を過ごしているのではないでしょうか。
さて第3巻までで学校という狭い世界を飛び出し、お笑いという大海原に旅立つことを決意した上妻。ここでようやくマサラタウンにさよならバイバイ、アリアハンの外へと遂にその一歩を踏み出します。ここから上妻の長い長い冒険が始まるのです。
(以下、ネタバレを含みます)
学園の爆笑王、めちゃめちゃ滑る
べしゃり暮らし 4 裸の爆笑王 (ヤングジャンプコミックス)
上妻・辻本によるお笑いコンビ「きそばAT」が次に挑む舞台はNMC(ニッポン漫才クラシック)。その一回戦、上妻は学校では経験したことのないアウェーの空気に耐えかね、舞台を投げ出してしまいます。
ウケなかったのは客のせいか? 自分のせいか? 自分には才能がないのではないか? 早くも自信を失いかける上妻に、先輩コンビである「デジタルきんぎょ」の金本は、ヒントとして一枚のDVDを託します。
背負うものがなければどこにも行けない
自信とプライドがなければ舞台になんか立てやしない。しかし自信とプライドがあればこそ、舞台に立って現実を思い知るのは恐ろしい。それがなければどこにも歩いていくことなんかできず、一方でその重さゆえ次の一歩を踏み出せない枷にもなる。
そんな大きな荷物を、誰しもが背負っていかなくてはならないのかもしれません。
かつて「デジタルきんぎょ」もその重さに一度は膝を折り、歩みを止めてしまいました。しかし、その後二人は決意を新たに再び荷を背負い歩み始め、今に至りました。
上妻もまたそんな二人の道程を知ることで、荷を降ろしてラクになってしまいたいという最初の悩みを乗り越え、また次の一歩を踏み出さんとすることに。
エセ関西弁はわざとらしい?
辻本が内心気にかけていたのが、上妻のエセ関西弁。生まれも育ちも関東の上妻ですが、意識的にボケようとするとなぜか関西弁になってしまう。そしてそれは、わざとらしくてサブい……。
これまたしょーもない悩みに見えますが、上妻にとってはやはり前へ進むために必要な「捨てる」作業の1つ。辻本も上妻のこだわりを尊重するべきかどうか、思い悩みます。
そんな二人の様子をよそに、物語は「デジタルきんぎょ」の過去を辿る展開に……。
ちなみに私は関西に移り住んで10年近くが経ち、すっかり関西弁にも馴染んだつもりでいるのですが、未だに「ワレの関西弁、作ってるのバレバレやっちゅーねん」とお叱りの言葉をいただくことがあります。
「日本人は恥ずかしがらず、下手糞でもいいのでどんどん英語を使いましょう」という話はよく聞きますが、関西弁に関しては少し勝手が違うようです。非関西弁ネイティブのみなさまにおかれましては普段から使い慣れた言葉を使うのが肝要でしょう。