
同じ機能を搭載していても、スマホアプリやソフトウェアのレビューや売上が大幅に左右される要素である「UI(ユーザインターフェース)」。ユーザが操作しやすい画面や見た目のことを指します。そして、キュレーションアプリ「Gunosy」が爆発的にヒットした際、そのUIデザインを担当したのが株式会社グッドパッチです。
“世界でナンバーワンのUIデザイン会社”を目指すグッドパッチは、どうしてこのUIという分野に進出し、大きな功績を収めて来たのでしょう。今回は、代表取締役の土屋尚史氏に、世界を横断するグッドパッチのこれまでの軌跡と、プロダクトへのこだわりについてお伺いしました。
お客さんに丸投げで「はい、ボーン、どや!」みたいなプロダクトの作り方はしていないんです
「採用するときも、あんまり技術で採らないんですよね」と語る土屋氏。“世界ナンバーワンのUIデザイン”を目指すグッドパッチでは、どのような人材が望まれるのでしょうか。
- 土屋
- スキルがあるだけでは採らなくて、どれだけグッドパッチがやっていることに共感できるかとか、新しい情報とか新しいサービス・技術が好きで積極的に取り入れているかを聞いているので、全くマインドが外れることはなくてですね。特に初期のほうのメンバーは、ウチが担当した初期のGunosyのデザインをいいと思って集まった人たちだから、みんな感覚が近いんです。
プロジェクトレビューも、ルールは率直に意見を言うこと。上下関係は一切関係なくて。新人だろうが、古くからいるデザイナーだろうが、全員がフラットに意見を言うことで、価値観とか感覚とかを合わせています。あとはプロジェクト間にあんまり壁がないんですよ。なので全然違うプロジェクトの人に相談ができるとか、そこに全く壁を作ってない。これも完全に文化ですね。
その姿勢は「グッドパッチが請け負う仕事、社風にも反映されている」と土屋氏。
- 土屋
- やっぱり来る仕事を何でも受けているわけじゃなくて、かなり厳選しているし、マインドの違うお客さんとは仕事をしないこともあります。デザインだけやるみたいな仕事じゃなくて、デザイナーをいい意味で大事にするというか、ちゃんと成長するように会社を作っています。
お客さんに丸投げで「はい、ボーン、どや!」みたいなプロダクトの作り方はしていないんですよね。一緒に議論しながら、一緒に作ろうって言ってやっていたりするので。クオリティに納得できない部分があったら、僕が納期を伸ばすんですよ。納期伸ばすというか、たとえ赤字になったとしてもやれ、納得できるところまでやれという考え方なんですね。
「ロゴをパワーポイントで作りました!」いやパワーポイントはデザインをするツールじゃないからね(笑)って
「Gunosyのヒットがきっかけになって、そこから仕事がすごい勢いで入ってくるようになった」と土屋氏。Gunosyというグッドパッチの大きな転換点は、実はさまざまな巡り合わせの結果でした。
- 土屋
- なんでGunosyをやることになったのかというと、僕が一番最初にシリコンバレーに行ったときに、ちょうど2011年の3月10日に日本を出ているんです。向こうに着いた日が3月11日で、初日の面接を受けた後、日本で震災が起こった。僕が向こうに行った理由の1つが、シリコンバレーカンファレンスっていうイベントに出るためで、そこで一緒になったのが当時東大の大学院生だった関くん。
この子が後にGunosyを作ることになるんですけど、そのとき、1日でも日本から出るのが遅かったら、僕シリコンバレーに行けてないんですよ。もしかしたらあの状況の中でシリコンバレーにいくっていうのは、諦めていたかもしれない。そしたらほんと今のグッドパッチもあるかどうかわからない。
初期のUIを担当したGunosyについて、土屋氏は次のように語ります。
- 土屋
- 僕が日本に帰ってきて、グッドパッチを立ち上げてしばらくして、関くんが「東大の友だちと一緒にWebサービスを作ったので見てくれませんか」って言って来た。すごいサービスが面白そうなのに、UIがちょっと。「ロゴをパワーポイントで作りました!」って言ってて、いやパワーポイントはデザインをするツールじゃないからね(笑)って。
これは変えた方がいいよっていう話をして、さすがに大学生からお金はとれないから「いいよタダで」って言って、やったのが、Gunosy。