「“ワンピース型”の働き方を追求したい」未来型不動産サービスIESHILを開発| リブセンス

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「“ワンピース型”の働き方を追求したい」未来型不動産サービスIESHILを開発| リブセンス

“あたりまえを、発明しよう。”をビジョンに掲げる、株式会社リブセンス。ビジョンは、新しい物の見方や行動の仕方が世の中の常識として定着する、そんなサービスを開発する意志を表現しています。

2006年の創業以来、アルバイト求人サイト『ジョブセンス』を皮切りに、賃貸情報サイト『door賃貸』、そして正社員転職サイト『ジョブセンスリンク』、企業の評判や噂などのクチコミ情報を集めたサイト『転職会議』など、数々のメディアを運営。そして次なる新規事業の1つが2015年8月に始動しました。この事業立ち上げの裏には、影なる立役者がいます。

その人物とは、リブセンスの多くの事業立ち上げに関わっているケンスケ氏。今回のインタビューでは、ケンスケ氏が中心となってプロジェクトを進めている未来型不動産サービス『IESHIL(イエシル)』と、エンジニアメンバーの働き方について、開発メンバーの皆さんとともにお話を伺いました。

Poole:アイコン_リブセンス様0001 人物紹介:ケンスケ氏
アプリケーション開発からデータベース・インフラ・ビジネスオペレーション作りなどを幅広く手がける影武者エンジニア。今回の不動産サービスでは分散処理や機械学習、自然言語処理などのデータマイニングのノウハウを惜しみなく活用している。
Poole:アイコン_竹馬さん 人物紹介:竹馬 力氏
技術で関心のあることはRuby on Rails / Python / TDD / BDD / Lean / Agile / 機械学習 / 人工知能など。生活で関心のあることはスモールビジネス、スタートアップ、投資、FX、酒、歌。エンジニアリングとビジネスの架け橋になってチームに貢献するのが得意技。
Poole:アイコン_劉さん 人物紹介:劉 俊峰氏
ExcelVBA / php / java / Rails / AWS / networkに興味があり、自分を変えるために新しいモノをチャレンジ中。最近はECMA6を学んでいるイクメンのプログラマー。
Poole:アイコン_前田さん 人物紹介:前田 邦織氏
リブセンスのサービス全般のデザインから、デザイン部長、室長を経て、2015年から新規事業のサービスデザインを担当。「あたりまえを、発明しよう。」という当社のビジョン実現のためビジネス・テクノロジー・クリエイティブの3軸を基盤にデザインに携わっている。

 

人生においてたった1、2度の大切な買い物だからこそ「不動産情報の透明性を高めたい」

リブセンス様_記事001

リブセンスの代表を務める村上氏と出会いは「運命でした」と語るケンスケ氏。どのような経緯でメンバーに加わることになったのでしょうか。

ケンスケ
代表の村上と出会った当時、私は自身のWebサービス運営を通じて得たスキルをさらに有効に活用できるアイデアを必要としていました。そのとき偶然、知人を介して村上を紹介してもらったことから始まります。

出会ったときに運命を感じたというのもありますが、彼の野望や情熱に感化され「自らの人生をしばらく彼に賭けてみよう」と一大決心しました。

一同
かっこいいなあ……。
ケンスケ
分からないことや不足するスキルがあれば誰かの力を借りてでも、いち早く会得しておきたいという情熱を持っていたので。新しいスキルを手に入れるための努力は欠かすことはありませんでした。

ケンスケ氏は現在、未来型不動産サービスであるIESHILの開発に携わっています。このサービスにはどのような想いが込められているのでしょうか。

竹馬
村上が個人でやっている不動産取引をするときに、不透明な情報が多いことに不満を持っていました。普通の人であれば人生で1、2度しかマイホームを売り買いしないですよね。「とても大切な買い物だからこそ、不動産情報の透明性を高めたい」という代表のアツい想いがありまして。

って、なんで俺が語ってんのかな(笑) サービス立ち上げの背景はケンスケさん、どうぞ。

ケンスケ
村上の大小さまざまなビジネス構想は、彼のアイデアノートの中で温められています。その中から選ばれたアイデアをテーマに、実現手法の議論や検証などを行います。ときには早々にスモールスタートさせてしまうこともあります。

設立当時からジョブセンスを代表とする求人情報メディアだけでなく、さまざまなサービスでトライ・アンド・エラーを繰り返した結果、転職会議やdoor賃貸といったメディアが事業化しました。

そして新たに具現化した1つのアイデアに、今回のIESHILがあります。村上はこのサービスに手応えを感じているようで、先行投資をしながら成長を期待しているサービスです。

IESHILのオープンは2015年の8月のこと。2014年暮れに「1ヶ月で、中古マンション価格推定の実現性を検証してくれないか」という村上からの打診がきっかけで、このサービスの開発が始まりました。

ケンスケ
実際に成約したか分からない売り出し価格データが多少あるだけの状況で、不動産の価格推定をするにはどうしたらいいか。村上に相談されたとき、私の頭の中ではすぐに実現する手法を探し始めていました。

そのとき「すごいエンジニアなら、1ヶ月でこれくらいできないとダメでしょ?」というニュアンスを含めて、村上はぼくに相談するのですよ(笑) 「はい、何とかやってみましょう」と返事をしたところからが、IESHILのスタートです。

このようにしてゼロからスタートした新たなサービス開発のために「猛勉強した」とケンスケ氏はいいます。

ケンスケ
データが集まり始めたら、まずは建物名や住所、部屋番号の正規化や名寄せを行います。その次に成約価格を求める。不動産広告は成約となるまで値段を度々変えながら買い手を待つため、その掲載が落ちる直前の価格を成約価格と推定して利用しているんです。こうして処理したデータから、そこに潜む特徴やその意味をあぶり出し、価格形成に作用している要因について統計データを用いて算出します。

それだけでもかなり骨の折れる仕事ですが、価格査定に機械学習をいかに活用するかの研究やアルゴリズムの適合性試験なども行っていましたね。

机上では分からないことも多いので、中古マンション売買や土地取引、新築タワーマンションの現場へ実際に足を運び、不動産の業界知識を身につけたんです。そこでは既存の査定手法や価格形成のからくり、成約に至るまでの意思決定プロセスで何を見ているか、仲介業者はどういったテクニックで成約させるかといった業界知識を学びました。

このように、不動産業界の徹底的なリサーチを始めます。

ケンスケ
不動産の価格形成がどのように行われているのか、人の感覚ではなくて計算式を以て算出できるようにするエンジンを作る準備をするために、ありとあらゆる手を使ってネット上から情報を集めました。じつは不動産のデータは表記が整っていないことが多く、建物名がPR文章のように使われていることもあります。

他には、広さが25平米で13万円の部屋があるとしたら、隣の部屋は13平米なのに家賃25万円の物件もある。建物によっては本当にそういうこともありますが、一般的なマンションであれば入力間違いによる異常値と判断できます。

ビッグデータを使えば、機械学習でいとも簡単に解決できそうな印象を持たれますが、実際にはフィルタ処理を作り込むことは欠かせません。「ああ、だからこそデータマイニングという言葉があるのだ」と体感しました。振り返ってみれば、これらの素材をビジネスで活かせるように調理することだけに、仕事の7割以上の時間を注ぐ必要があったんです。

機械学習を応用した価格推定エンジンを開発し、IESHILをローンチ「朝から晩まで筋トレをするような日々だった」

リブセンス様_記事002

ケンスケ氏のビッグデータリサーチと同時に、IESHILの開発チームが結成されたのは2015年6月のこと。お話を伺った4名を中心に、計8名で開発しているそうです。

ケンスケ
ビッグデータを活かして精度の高い計算式を算出するためには、機械学習の高い技術が不可欠です。ほとんどの場合、学習データとは異なる条件での価格推定を行うため、推定結果がいかに安定させるかのチューニングは腕の見せどころですね。機械学習の学習精度を上げていくことは、非常に困難な作業なので。

竹馬
機械学習を用いた価格推定エンジンを開発しようとしても、一般的には6割くらいしか査定の精度が出ないんですよ。で、6割から8割まで査定精度を高めるために、本当に多くのトライ・アンド・エラーが必要なんです。

さらに9割まで正確な精度を出すというと、エンジニアリングの神の世界。めちゃくちゃ大変だから、IESHILでは8割から9割の間で正しく精査できないデータをフィルタリングして排除することによって、8割までの正しいデータを算出しています。

では、データ算出における精度を6割から8割まで高めるために、どのような工夫を施したのでしょうか。

ケンスケ
まず、不動産のほぼ全ての特徴を欠損値は補完しつつ、まとめました。つまりその不動産の立地、建物の高さ、階数、方角、建物などの特徴を数値または Yes または No とマルバツをつけていくようなイメージです。これだけでも、6割だった正答率が段々高まっていきます。

しかしながら丁寧に対応し検証するだけでは、機械学習エンジンの精度は高まらないといいます。

ケンスケ
例えばある駅においては、駅から離れるほど物件の価格が下がっていくはずなのに、徒歩13分のところだけ上がるようになったりする。この例に対応して、駅から徒歩13分の場所は不動産の価格を上げようとすると、別の駅の場合はむしろどんどん価格が下がっていくんです。

原因を追求すると、駅から離れたら別の駅に近づいたとか、ちょっと離れたところに高級住宅街があることもあります。その地域だけの地理的な特徴が各項目であるので、さまざまな事象に対して細かく対応していきます。それだけでなく、単体で特徴化せずに複数の特徴を掛け合わせて、有意に働く特徴を選択するモデルへの調整も行いましたね。

より正確な不動産価格を推定するための工程は本当に大変でしたが、世に新たなサービスを送り出したい執念で努力しました。

このような根気のいる状況で開発は進行し、莫大な量のビッグデータをわずか3ヶ月で整理、その後にIESHILをローンチ。「やりきった」と開発メンバーは振り返ります。

リブセンス様_001

ぼくが開発チームに参加したのは6月中旬です。8月頭にIESHILをリリースできるのかどうか、本当に不安でした。「このスケジュールで大丈夫ですか?」と聞かれると、問題ないと言いながらもあまり自信がなかった(笑)
竹馬
本当に、このメンバーが揃わなかったらできなかったと思いますね。
ケンスケ
他社から「不動産のデータの名寄せ技術に苦しんでいる」「付加価値要素を見いだすサービスを作りたいと思っているが、それを実現できる人が非常に少ない」というお話を耳にします。ぼくらはコミュニケーションコストをかけずとも、それぞれが独走できる人が集まったチームです。カラフルなメンバーがいるから実現できたことですよね。

「時間とコストをかけている不動産取引の慣習は、もっと最適化できる」未来型不動産サービスとは

未来型不動産サービス、と打ち出しているIESHIL。同サービスが目指している姿について教えていただきました。

竹馬
もっと近未来な世界観で取引できると、消費者にとってすごくいいと思います。現在の不動産取引の慣習は、人間がかなりの時間とコストをかけているから、圧倒的に効率的じゃない。例えば不動産屋のリアル店舗が駅前に多すぎる気がします。

内覧へ行くケースにしてみても、不動産営業マンに同席してほしくないお客様もいると思います。一時的にSuicaをかざしたり、ワンタイムパスワードを入力するとドアが開いたりするようにできるはず。できる限り人を少なくして、本当に必要なところだけに人が介在するほうが未来型の不動産サービスだと思う。

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前田
IESHILだけで、不動産についての知識がなくても問題がない有益な判断材料になって、認知から購入検討までを決定できる情報を提供できるといいですね。不動産売買は一生に一度あるかないか。だからこそインターネットに親しんで生活している20代、30代の人に使ってもらえるような、幅広く受け入れられるサービスになればいいなと思います。

ケンスケ
こういった話をしながらも、じつは現状の不動産取引の仕組みを大きく変えようとは考えていません。所有されているマンションの参考推定価格や過去の価格推移を提供することで、潜在的なニーズをより掘り起こして市場取引を活性化させる事を目指しています。また、取引に関わる不透明な情報も整理して提供する計画もありますしね。

オンラインが得意とする領域とオフラインが得意とする領域をうまく棲み分けて、物件の売り出しや住み替えを促す一助となる事業にしたいと考えています。

「企業として目指す組織と、エンジニアが気持ちよく働ける環境を」IESHILチームの働き方を広めたい

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サービスよりも広い枠の、企業としての今後は、どのような展望を描いているのでしょうか。

竹馬
エンジニアの立場ではスケールするビジネスよりも、スモールビジネスのほうがおもしろいんですよね。責任を持てる範囲も広いし、エンジニアがコードの土台をわかっている状態だと、かなり自由に動ける。だから自分の好きなことにも取り組みやすく、外的要因でやりたくもない仕事をやらなくてもいい。

ケンスケ
全体としては1つの“組織体”であっても、組織の大きさをできる限り機能やサービス単位で絞って、小さめにしておけば、エンジニアの働きやすさを実現できると思います。

村上が目指している大きな組織と、エンジニアが現場で感じている小さな規模感がいいという気持ちは、組織の作り方に気をつければ両立する。IESHILチームがまさにその成功例ですね。

リブセンス様_002

チームとしてのワークスタイルについては「ワンピース型の働き方を追求したい」と竹馬氏。さらに、IESHIL開発チームでは、一人ひとりがやりたいことを突き詰めていく“信頼駆動開発”という概念があるそうです。

竹馬
ぼく自身、社外のエンジニアから受けるプロジェクトの相談なども積極的に受けています。そのおかげでエンジニアとしての成長を実感しています。外部の開発プロジェクトの情報を積極的に得ることは、デメリットよりもメリットのほうが多いと思う。あくまでも個人の成果ベースで、成果が出せる効率を追求することが、エンジニアの本当の役割です。

“何のために仕事をやるのか”、その本質を見極められる人たちで一人ひとりが自立して信頼関係で繋がっていれば、いつ、どの場所で働こうとあんまり関係ないのかなと思っていて。「成果を出すために効率を追求できる組織にしていきたいね」と、よく話はするんですよね。

マネージャーが管理する従来のヒエラルキー型ではなく、あくまでも漫画の『ワンピース』型のような、それぞれの役割があって、みんなが有機的に動いている組織です。船長はいるが、中心者存在なだけであって上下関係ではない。このフラットな関係の働き方が、IESHILのチームはできています。全社的にも広められたらいいですね。

ケンスケ
そうですね。これからも常に変化し、走り続けられる組織でありたいと思います。

「そのエリアは現在買いどきではないので、値段が落ち着くまで賃貸マンションにすることをあえて提案するような不動産営業があってもいいはずだ」と語ったケンスケ氏。IESHILが不動産売買のプロセスを変える一躍を担う可能性は大いにあります。

未来のあたりまえを発明するリブセンスだからこそ、社会の現状を刷新するサービスを仕掛けていくのでしょう。


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この記事を書いた人
タクロコマ

外部ライター 東京

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