
「言葉オタクなんです、私」大きなフィクションのためには小さなリアルが必要 | 脚本家・舘そらみ氏インタビュー #私たちのハァハァ
<金のカタマリがXへ連れて行ってくれる編>
※2015年12月1日正午までのレポートです
舘そらみといいます。だてそらみと読みます。
Xネームは、涙薔(るいしょう)と言いますが、この名前はさすがにもう10年近く使っていません。15年前には、涙薔という名前で呼ばれ、X JAPANと刺繍された旗を持って、髪をオッタテテ「てめえら気合いいれっぞー!!」と叫んでいました。人には、歴史ありです。
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舘そらみ 脚本家・俳優。劇団「ガレキの太鼓」を主宰、青年団演出部所属。現在は執筆活動のかたわら、全国の小中学校などでワークショップを行っている。脚本を手がけた映画「私たちのハァハァ」公開中。Twitter:@_sorami |
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私には、Xと共に歩んだ20年の歴史があります。そして、私とXの歴史の新たな挑戦が始まることに。まさかのX JAPAN国内ツアーが始まるのです。
いやホントなんだろうか、とてもじゃないけど信じられない。20年ぶりの国内ツアーの開催、これの信じられなさは、この信じられなさは、死んだじいちゃんが棺桶から出てきたって言われるくらい信じられない。信じられるはずがない。でも本当に始まるんだ。そう思うと、手が痺れてきます。マジか、マジなのか?
その日々を、その思いを、綴っていこうと思います。Xへの心からの感謝を込めて。ツアーが終わるまでの日々、どうかお付き合いください。
エックスエックス言っておりますが、世間には一体どこまで詳しく知られているのかな。少なくともよく聞かれる3つの質問に答えてから進もうと思います。
……1997年に解散したよ! そして2007年にまさかの再結成を果たしたよ! そして世界ツアーをしたりとかもしてるんだお! 日本でも東京では何回かライブやってるよ(そりゃ行ったぜ!)
Q2:なんか洗脳されてなかった?
…………よくご存じで! ボーカルが洗脳されて、明らかにおかしくなっててXのことを猛烈に否定したりして、その姿を見て私たちは泣き喚き、色んな亀裂や摩擦が起きたけど、もう洗脳解けて戻ってきて「ただいま」って言ってくれたから、おかえり!だよ!
心優しくて少し心弱い方なの、許して!
Q3:誰か死んでなかった?
…………………………死んだ!!2人!HIDEとTAIJI!! HIDEが死んじゃったときには社会現象みたいになってた! HIDEの死から10年くらいは、メンバーもファンもおかしな感じになってたよ! でも18回忌も過ぎたしね、最近はみんなHIDEのことを笑顔で話せるようになってるよ! 2人は今でもXのメンバーだしね!!! 私は、特にHIDEに心の底から感謝してるんだ!
ああ、あぁぁぁぁあああ。辛い、この3つの質問は辛いのです。息が上がる。ハァハァする。書いてる間、息止めてた気がする。この質問は辛い。思い出したくもない思い出たち。
そういったことがございまして、私たちとXは支えあって来たのであります。ファンが倒れそうなとき、メンバーは「死ぬな!」と言い、メンバーが大変なとき、ファンは暖かい言葉を送りまくった。今も、「一緒に頑張ろう!」と言いあっている。
彼らが居てくれるだけで嬉しいし、少しでも幸せになってほしいし、死ぬまでずっと応援し続けたいし、このままだとそうなってしまいます。
一体全体なんでここまで妄信的になってしまったんでしょうね。この旅で解き明かしていきたいと思います。私も知りたい。
不思議なもんで、自分もまさか31にもなってまだXを好きでいるとは想像していなかったものです。そのうちさすがに冷めるだろうと幼い私は思っていたし(芸能人にキャーキャー言ってる大人が居るなんて想像もしてなかった)、雲の上の人のことをキャーキャー言ってる自分に、ずっと頭の中で突っ込んではきたのです。
「本気?ねえ、本気? ちょっと面白いと思ってわざとやってんでしょ?」って。
でも、気づけばここまで来ていたよ。今も今でも、頭の中ではささやく子がちゃんと存在はしてるのです。
「本気?ねえ、本気? ちょっと面白いと思ってわざとやってんでしょ?」
「お金も無いのにツアーとか追っかけちゃうの?」
「全ステージ、たぶん演出も曲も変わらないよ?」
「なにより、途中で中止になったりするかもよ?」
「ねえ本気? 仕事断って、ねえ、本気?」
………本気なんだな。
どうしよ、己に何回問うてみても、本気なんだなあコイツが。
行かないとか、無理。出来る限り行きたい。最大限行きたい。次いつ会えるかも分からない。これが最後かもしれない。
突然の解散、突然の死、身体的不調、解散の噂……今、Xがあることが奇跡。だから、「次行こう」の次なんて、無いかもしれない。そう思ってる。だから、私は今回ツアーについていく。
日本のどこかで彼らが演奏をしているのに、そこに身を置けないなんて耐えられない! 頑張って行けるのなら、頑張るっきゃない!
冒頭の私の写真からはうかがいしれませんでしょう。X臭なんてそう簡単に醸し出しませんから大切過ぎて! 人知れず、心の中で日々Xのことを思い、「HIDEに恥じない人間でありたい」を原動力にし、X友達と語り合ってる毎日です。
現実逃避?いいえ。
私にとっての現実は、Xという土台の上に作られている。現実逃避でXに行ってるのではなくて、Xこそが、わが現実の中心に居る。ドドーーーン!
それがどんなもんか、見てもらえますでしょうか。ね。「彼らに支えられてる」とか言えちゃう三十路の行く末を見ていただきたい。始まります、始まりますよ。
新たな日々に向けて、X資金の口座からお金をおろす。やっと出番が来たこのお金たち、喜んでいるようにも感じてしまう。
うーん、でもお金が足りない。まずい。あると思った振り込みが遅れることが判明し、もう私の口座はすっからかん。
ということで、伝家の宝刀を抜いた。金のカタマリ。金のカタマリ30g。いつか、何か本当に困ったときに換金しようと思って持っていた金塊を、両手で抱きしめ質屋へ。締めて13万円。これを足して、さあ、ツアーに出かけられる。
そんなに行きたいって初めてなの?と言われた。それが、高校生以降ライブやイベントはほぼすべて行ってるし、実は先週末も、Xがゲスト出演するある音楽イベントに行った。
そういう問題じゃない! 見ても見ても、まだ見たい。満足とか、無いから。だから、さあ、行くのだ。
約2週間、すべての仕事は調整済。この2週間は、Xを追っかける毎日であると同時に、Xと共にあった20年を振り返る日々となるだろう。
このツアーが終わるころ、一体どうなっているだろう。まず帰ってきたときには一文無しなんだけど、どうするんだろう。
我がツアー開始まであと1日、残りの仕事を終わらせよう。もう何も手につかなくなってしまうから、出来るだけ気を紛らわせて、さあ仕事仕事。
脚本の直しをする。したい、しなくては! その後には、中学校に行ってワークショップをするのだから、落ち着いて、落ち着いて、ちゃんと大人な態度を取って。
メンバーが万全な体調で居られますように。
HIDEちゃん、始まるよ。
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