第14話

もはやグルメ漫画に必須の「味を伝える」ためのコメントの概念を超越した『孤独のグルメ』

ドリー


もはやグルメ漫画に必須の「味を伝える」ためのコメントの概念を超越した『孤独のグルメ』

こんにちは、外部ライターのドリーです。
本日は、いま大人気の漫画『孤独のグルメ』を紹介したいと思います。

『孤独のグルメ』は、おっさんが飯を食うだけの漫画なのか

孤独のグルメ 【新装版】

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  • 著者久住 昌之
  • 価格¥ 1,234(2015/12/02 18:20時点)
  • 出版日2008/04/22
  • 商品ランキング657位
  • コミック205ページ
  • ISBN-10459405644X
  • ISBN-139784594056445
  • 出版社扶桑社

50万部のベストセラーだと聞いてはいたが、「おっさんが飯を食うだけの漫画って、どうなんだろう」と少し思ってもいた。

……面白いのだろうか?

とはいえ読む前は、流石に「おっさんが飯を食うだけの漫画」ってこともないだろうとも思っていた。

読んでみて驚いた。ホントに、おっさんが飯を食ってるだけの漫画だったのだ。

一話目

井之頭五郎と名乗るおっさんがあらわれ「ブタ肉炒めライス」を食べる。「うん、うまい」とつぶやく。それで一話目が終わったのだ。

呆然とした。

二話目

回転寿司だ。アナゴ、エンガワ、と食べ続け、最後は「大トロ」を注文。五郎は「ちょっと食いすぎた」と満足げにつぶやき、タバコを吸う。二話目が終わった。

……ほんとうに、五郎というおっさんが飯を食ってるだけだ。

「嘘だろ。まさかホントに飯を食ってるだけで終わるのか?」と思っていたら、ほんとうに、最後まで飯を食ってるだけで終わった。

なんだろう。この衝撃的な漫画は。

『孤独のグルメ』の本当の見所

主人公・五郎は食に対して貪欲だ。グルメに対する美意識は人並み以上だ。だが、この漫画の見所はそこではない。

本当の見所は、五郎のコメント力の「低さ」だ。グルメ漫画に必須の「味を伝える」コメント能力が、五郎には致命的に欠けている。

注目すべき五郎のコメント力

たこ焼きを食べながら、はふ……もぐもぐ……と頬張り、最後に「おいしいです、ほんとに、これ」という。
このあたりのコメント力の低さなんかは見事なものだ。

豚肉炒めライスを食べながら「小学校の土曜日に家で食べるお昼のようだ」という、いまいちキレの悪い微妙な比喩を繰り出したり。ウィンナカレーを食べての感想で「辛くて、味もなにもよくわからない」と言ってみたり。

……衝撃的なコメントだ。僕はこのシーンを思わず二度見した。「味を伝える」を主軸に置くことが王道のグルメ漫画において、「味を伝えること」を放棄する五郎。衝撃的だ。恐ろしい漫画である。だが、そこが最高に面白い。

ちなみにその回、最後は親戚の子供を暑いから全裸になって応援するという、もう何がなんだかわからない状況に。もはや感動的だ。

五郎は食べ続ける。ひたすらに食べ続ける。

食べ続けながら、「うどんの汁と、味噌汁と。……汁物がかぶったな」など、すごく「どうでもいいこと」を考える五郎。
コンビニの味噌汁のカップを眺め「ほほう、生味噌仕立てか」と、「どうでもいいこと」に感心する五郎。

「どうでもいいこと」に五郎はよく感心する、そして時に口に出す。

飯を食って、「どうでもいいこと」を言って、タバコをふかし、去っていく。(しかもその本人は、どこか誇らしげ)

それが、五郎だ。

まとめ

サブカル詩人のように「食」を語るが、言ってることは全然面白くない。だって、うどんを食べたあとのコメントが「あったまる」である。そりゃ、あったまるよなーと深い感動が心から湧いてきた。「切ない」。

こういう中年オヤジの味も素っ気もないコメントがじわじわくる。と同時に、「切ない」気分にもなる。ただ、そこが面白く、クセになる。

……あなたにぴったりの漫画かも知れない。

 

dolly profile ライター紹介:ドリー
25歳。自称ライター。
「引きこもり文化人」を名乗り、大学を中退後、4年間、引きこもり、Web上に「恨み辛み」を書き続けている。
ブログ:埋没地蔵の館/Twitter
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