オウンドメディア成功の秘訣は「ロジカル×エモーショナル」。必要な戦略と事例を大公開!【PLAN-B×LIG共催セミナー】
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2015.12.01
第10話
漫画チャンネル

『ふたつのスピカ』疲れた日に空を見上げて思い出す、遠いあの日

けいろー

宇宙飛行士を目指す少年少女の群像劇『ふたつのスピカ』

[まとめ買い] ふたつのスピカ
[まとめ買い] ふたつのスピカ

『ふたつのスピカ』は、2001年から2009年にかけて『月刊コミックフラッパー』で連載された作品です。著者は、柳沼 行さん。

「宇宙」をテーマにした名作は数多くありますが、本作における「宇宙」は遥か遠く、メインとなる5人の少年少女の目指すべき高みとしての存在。実際に“宇宙空間”が登場する場面はほとんどありません。

舞台となるのは、日本初の有人宇宙探査機が墜落した海沿いの街、唯ヶ浜。その街で生まれ育ち、過去の墜落事故で母親を亡くしていながら宇宙飛行士を目指す主人公・鴨川アスミと、彼女とともに東京の宇宙学校で学ぶ友人たちの青春群像劇です。

また、本作は2003年にアニメ化、2009年にはドラマ化もされて話題となりました。アニメ版を見ていたという人も多いのではないかしら。僕自身は何度かちらっと見た程度ですが、主題歌はよく覚えております。「見上げてごらん夜の星を」を知ったのも、本作だったような……?

少女を「宇宙」という遥か遠くの夢へと導くのは、身近な人間関係

『ふたつのスピカ』の魅力はなんぞや、と問われたら、「ぜんぶ!」としか答えようがないくらいに、僕にとっては好きな作品です。

まるで絵本のように可愛らしい絵柄とか、切なく胸がきゅっとなるエピソードだとか、見開きページの背景絵の美しさとか、シリアスと日常のバランスとか。……あと、ふっちーはツンデレ幼なじみ男子として最強だと思う。異論は認める。

あれこれと語ろうとすればキリがありませんが、無理に一点に絞って挙げるとすれば、「登場人物とその関係性」でしょうか。

ぶつかり合い、励まし合い、切磋琢磨しながら成長していく仲間たち

主人公のアスミだけでなく、周囲を取り巻くキャラクターも各々がそれなりの事情を抱えており、それがストーリーにも深く関わってくる格好が魅力の本作。

ときにぶつかり合い、励まし合い、切磋琢磨しながら成長していく様子は、青春学園モノの王道としても読んでいておもしろい。

生まれも性格も好き嫌いもバラバラだけど、みんなが等しく「宇宙」という夢を目指して手を取り合い、困難に立ち向かう彼女たち。他方では、逃れようのない「別れ」を意識するようにもなり、かけがえのない「日常」を噛みしめるように過ごしていこうという変化も現れてきて……。

なんでもない「日常」の風景と、その中にも生まれつつある心境の変化、それら些細な感情の描き方が本当に丁寧で、とっても素敵な作品です。

「友人」だけじゃない。魅力的な周囲の「大人」たち

友人だけでなく、周囲の大人たちにもしっかりと焦点が当てられながら、物語は展開していきます。その背景はストーリーにも深く関わっており、最終的に収束していく全体構成も見事です。

夢破れ、大事な人を失い、それでも子供たちを温かく見守る「大人」たちの視線が、とにかく優しい。かつて夢見た「宇宙」への彼らの想いもまた、子供たちとのやり取りによって癒やされていくという点もすっきり。初登場時は悪者にも見えたけれど……自分も大人になった今、主要キャラの佐野先生がすごく好きです。

あとは、言うまでもなく「ライオンさん」ですね。父親に次いでアスミを見守り続けてきた身近な「大人」であり、本作を“ファンタジー”たらしめている存在であり……。(筆者インタビューによれば、そもそも、構想の段階では主人公よりも先に設定が決まっていたとか。)

すでに帰らぬ人でありながら、作中の多くの人間と強い関係を持っているキーキャラクター・ライオンさん。

彼について思うことはたくさんあるのですが、子供だった自分にとっては、フィクションに登場する「憧れの大人」の一人だったかもしれません。まるで、自分もアスミの隣で話を聞いているかのように感じられるくらいに彼の言葉はすんなりと入ってくる、心惹かれる存在でした。

まとめ・見上げてごらん夜の星を

当たり前に空を見上げることのできる生活って、実はすごくすごく幸運で、それだけで価値のあるものなんじゃないかと、この歳になって改めて思うのです。

僕は明確に「宇宙」を目指したことはないけれど、ふとしたとき、ぼーっと「空」を見上げるのが好きでした。部活でへとへとになった帰り道とか、友人と喧嘩をして言葉にできないモヤモヤが渦巻いているときとか、翌日の出勤が憂鬱な日曜日の夜とか。おのれ、サザエ。

別に、遠い目をして「この空の雄大さが自分の矮小さを教えてくれる(キリッ」なんてポエミーなことを考えているわけではありませんが、なんとなーく無心に空を見上げて、星を数えたり、雲が流れゆくのを眺めていたりすると、自然と冷静な気持ちになれたんですよね。空を仰いで、一呼吸。

本当に仕事や生活に必死で余裕がないときには、そんな「空を見上げる」という一動作ですらできなくなってしまう。自暴自棄になり、物に当たり散らし、酒や仮想世界に逃げてしまう。それらもひとつの落ち着くための儀式ではあるものの、どうにもすっきりしないんです。

だからこそ、当たり前に頭上に広がっている「空」の、その当たり前の美しさと、当たり前ゆえのかけがえのなさを教えてくれる作品は、たびたび読み返したくなる。自分にとってのそんな作品のひとつが、漫画『ふたつのスピカ』でした。

当たり前に過ぎ去る日々の中、これからもたまには、ライオンさんに会いに行こう。

 

keiro ライター紹介:けいろー
ライター見習い。1989年生まれ。ゆとり世代のぬるオタ。大学卒業後、入社した大手メーカーを1年半で退職。ブログで好き勝手に書き散らしていたらお仕事をいただけるようになったので、ノリで独立。インターネットらぶ。ボクっ娘が好きです。
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