
UI/UXは、ユーザビリティ上で欠かすことのできないデザインの概念です。“アプリやWebのUIデザイン会社”である株式会社オハコは、UI/UXの最新トレンドや事例を紹介するメディア『UI/UX JAPAN』を運営し、アプリやWebサービスのUX設計・UIデザインを中心に事業を展開しています。
デバイスの進化とともに変化を続けるデザインの概念において、UI/UXは「プロダクトの差別化を図る武器になる」とし、“心地よさを追求する”ことに注力する同社。そこで今回は、代表取締役の菊地氏とリードエンジニアの甲斐氏に“差別化を図る”ためのUI/UXデザインについて、そしてオハコの今後の展望についてを伺いました。
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人物紹介:菊地 涼太氏 神奈川県出身。慶應義塾大学在学中から、プログラムやUI、デザインに興味を持ち、独学で学ぶ。やがてインタラクションを重視した独自のUI・UXの実現を目指して、自ら起業することになった。趣味はスキー。幼い頃から苗場スキー場によく行っている。 |
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人物紹介:甲斐 啓真氏 高校生の時、アプリの企画開発コンテストで準優勝。フリーランスのiOSエンジニアを経て2014年4月オハコ入社。すべてのプロジェクトについて、技術面及びデザイン面両方の知見を活かし、インタラクションデザインを統括している。 |
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スマホ化でUIがさらに自由になって「より多くのプロダクトに関われるんじゃないか」
オハコの創業以前から、他社でチーフデザイナーとしてWebサービスやアプリのUI改善に携わっていたという菊地氏。独立を決めたきっかけは、プロダクトの差別化を図るデザインを学んだことだったそうです。
- 菊地
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前職はオンライン決済サービスを提供する会社で、ソーシャルメディア関連のデザインの仕事をしました。Webページが対象でしたが、売上に繋げることができる、つまりプロダクトの差別化を図るデザインをそこで学んだんです。
その後に声をかけてもらった会社で、はじめてスマートフォンアプリのデザインに携わったとき「デバイスの画面が広くなっていくことで、UIがさらに自由になっていくんじゃないかな」って感じました。
ソーシャルマーケティングやECサイトなどで“差別化を図るデザイン”を考える仕事を経験したことにより、UI/UXに関わる仕事への可能性を感じはじめた菊地氏。その直感は、菊地氏を起業へと導きます。
- 菊地
- 個人事業主として仕事をやるよりも、会社を立ち上げたほうがより多くのプロダクトに関われるんじゃないかと思ったんです。だから、起業しました。当時は個人事務所の延長線の感覚だったし、実績もそんなになかったんですけどね。
現在、リードエンジニアを務めている甲斐氏は、もともと趣味でPower Pointのアニメーションをいくつも組み合わせて「動画のように滑らかなスライドショーをつくるのが好きだった」と話します。
- 甲斐
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最初にアプリデザインに触れたのは、ブレークスルーキャンプっていうアプリ開発コンテストでした。2ヶ月ぐらいでアプリをイチから企画して完成させるもので、同級生と一緒に参加しました。今でいうApple Watchに似たUIの連絡帳ツールのアプリをつくったんです。
それで、学生のときリクルートのインターンに参加して、はじめてアプリの実装までを経験しました。そのままアプリ開発にハマっていって、結局そのまま友達のベンチャーでWebサービスの開発を手伝うようになって。
新宿の歌舞伎町にあるスタートアップが集まるコミュニティのような場所で、日夜サービスをつくり込んでいたという甲斐氏。しかし、半年も経たないうちに居場所を失ってしまいます。
- 甲斐
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いろいろあって全部なくなっちゃったんです。チャットのサービスをつくろうとしていたんですけど、メンバーの計画がそれぞれ違ってて。半年ぐらいでそのまま別のベクトルに全員が向かっていってしまって、解散になりました。仲間内で集まって好きなことやっていて楽しかったので、リリースまでうまくいかなかったのは結構つらかったです。
その後、少し経ってから知り合いを通じて菊地と出会って。去年の4月にリードエンジニアとしてオハコに入りました。
「会社をつくったのは、社長になってお金を稼ぎたいからじゃない」やれるところまでやってみるかって腹を括った
こうして現在のオハコを築き上げていった菊地氏。しかし、甲斐氏が入社する以前の起業当初の同社は、“より多くのプロダクトに関われる”環境とは程遠いものだったそうです。
- 菊地
- 会社を立ち上げたときは大学の同級生が手伝ってくれていたんですが、あるとき僕一人になってしまったんです。仕事も全然うまくいかなくなって。知り合いをつたって仕事がほしいと話をして、なんとか月20万稼ぐような状態が大体1年ぐらい続きました。
菊地氏は営業からディレクションまで全てを1人でこなしましたが、仕事を続けているうちに疑問を感じるようになります。
- 菊地
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法人にしたのに全然仕事ができなくて、なんか会社をやってる意味ないなと思うようにもなって。自分の好きなUIやデザインで、おもしろいプロダクトをたくさんつくりたかったんです。UX設計とかも考えてみたかった。
法人にすれば、そういう案件にも関わる機会が増えるだろうと思っていました。でも、実際は個人でやっているときと何も変わらなかったんです。むしろ赤字で、決算業務だけが増えていきました。
一時期は事業を畳むことも考えたそうです。しかし「デザインの仕事をやりたい」という気持ちがなくなることはありませんでした。
- 菊地
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会社をつくったのは、社長になってお金を稼ぎたいからじゃない。僕自身、UIデザイナーなのでモノづくりをしていたいです。いいUIのプロダクトを世の中に増やしたい、という想いがあった。
それで、自分のやりたい仕事をするにはどうしたらいいのか漠然としていたんですけど、とりあえず自社サイトから見直そうと思ったんです。
そして、自分のやりたいことに集中できる状況は「自分でつくるしかない」と、菊地氏は自社サイトのリニューアルに踏み出します。
- 菊地
- コーポレートサイトをリニューアルしたときにUI/UX JAPANというUI/UX専門のオウンドメディアをはじめました。そうすれば「オハコはUI/UXの会社なんだ」ってブランドができるし、クライアントへのアピールにも繋がるんじゃないかなと思って。
リニューアルを期に、UIデザインの問い合わせは徐々に増えていきました。それと同時にオハコには菊地氏と同じように「UIデザインをやりたい」と考える仲間が集まるようになったそうです。
- 菊地
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やれるところまでやってみるかって腹を括って、UIデザインの仕事の割合を増やしていったんです。それまではロゴもつくる、アプリもデザインする、デザインのマルチプレイヤーだったんですが、やっぱり1つ軸になるものがないと仕事もメンバーも方向がバラバラになってしまうなと思って。
それでUIに振り切ったら、会社に集まる人の意識がガラッと変わったんですね。今思えばオハコの転機でした。だから、ここまで来れているんだと思います。