【移住者インタビューVol.2】長野の大人気フェス「ALPS BOOK CAMP」の仕掛人を訪ねてみた


こんにちは! 長野チームののっち(@nocci_84)です。
今回は、長野県松本市に移住しセレクトブックショップ栞日を営みながら、長野の湖畔で本を楽しむフェスALPS BOOK CAMPを運営する菊地さんにお話をうかがってきました。
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人物紹介:菊地 徹 静岡県出身。接客業を学ぶため、学生時代を過ごした茨城県から長野県へ移住。2年前に「栞日」を松本市内にOPEN。現在栞日の運営をしながら、年に1度「ALPS BOOK CAMP」というフェスを木崎湖の湖畔にて開催。柔らかい人あたりと丁寧な接客で、地元の方から愛されている。 |
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セレクトブックショップ「栞日」へ
菊地さんにお会いするため「栞日」へ向かいます。松本駅を降りて徒歩で10分ほど。
ガラス張りのこぢんまりとした外観と、白に映える青いドア枠が目印です。
一歩足を踏み入れると、菊地さんが大切に選ばれた本たちがお出迎え。オシャレな装丁に目移りします。旅本・料理本・ライフスタイル本……個性的な写真集など、ジャンルはさまざま。
カウンターの前には手作りドーナツの姿が。ほろほろと優しい口溶けのこちらは奥様のお手製だそうです。
お店は4階建て。2Fは事務所、3Fがギャラリースペース、4Fがカフェスペースになっていました。階段からは優しい木の匂いがします。
2Fに向かう階段にはさまざまなショップカードが並びます。お店に似合った、きちんとデザインしたオシャレなものばかり! かわいすぎていくつかいただいて帰りました。
カフェスペースには、アンティーク家具とたくさんの本。詩の朗読会やワークショップなど、さまざまなイベントが行われているんだとか。この日は夜から詩の朗読会が行われるそうで、アーティストの方がご挨拶にきていました。素敵! 仕事がなかったら参加したかった……。
お店全体を包む、あたたかい空気にすっかりリラックス。大事に選ばれた一つひとつの本やアイテムを通じて、菊地さんのこだわりに触れることができました。
お話をうかがってみました
お店を一通り堪能してから、カウンターの菊地さんにお話をうかがってみました。
─ 松本に移住を決めたのはいつですか?
移住を決めたのは4年前です。キッカケは就職でした。大学生だった当時は茨城県に住んでいて、卒業してからは半年間はフリーター。その後松本にある温泉旅館に就職が決まり、こちらに移ってきました。そこから軽井沢に転職して、また松本に戻ってきて今に至ります。栞日はオープンして今年で3年目になりますね。
移住当時は「絶対本屋をやるぞ!」とは決めていませんでした。ただ将来的に何屋さんかは分からないけど、お店を持ちたいとは思っていて。そのためにまずはサービス業をきっちり学びたいなと思って、就職先もサービス業で探していたんです。それも高級路線で、きっちりと基礎から学べるようなところ。その中で「いいな」と思ったのがここ松本にある温泉旅館だったんです。
ふらりと来た松本が、体にぴったりと馴染む理想の街だった
─ 松本という街は実際どうでしたか?
結論から言うと、ものすごく良かった。松本は車で移動するよりも、徒歩移動に向いているんです。徒歩圏内に面白い場所や店が点在しているので、周りのひとたちのことがよく見えます。そこを嫌うひとと好むひととはいると思うけれど、僕はそこがすごく面白かった。ひととの繋がりも作りやすいし、小さなコミュニティができやすくて、濃い関係が築きやすいんです。
─ オシャレな路面店、本当に多いですよね。
多いですね。街をみんなで支えていて、みんなも街に支えられているというか。良い意味での信頼関係が築かれています。
「この街にあったら面白そう」が栞日をはじめるキッカケ
─ 本屋をはじめたキッカケはなんだったんですか?
実は何かキッカケがあったわけではなくて。松本の旅館で働いた後に、軽井沢で少し働いていたんですけど、そっちに移り住んだあとも休日にはよく松本を訪れていたんです。そして、車の中でふと「あ、本屋やろ」って思ったんです。「じゃー本屋にしよ!」って(笑) 先ほどの話と重複するんですけど、お店をやるなら何屋さんでも良かったんです。ただひとつ決めていたのが、「その街にはまだなくて、あったら面白そうなお店をやる」ということ。それが本屋でした。
松本には本屋さんって実はいっぱいあるんですけど、セレクトブックショップがなかったんです。本がたくさん陳列されているお店はあるけど、その本とその周辺のカルチャーを紹介するためにやっていく店ってなかなかないなあと。
東京にはその手のお店って出尽くしている感があるんですが、松本にはなかったので、やったら面白いのでは、と思いました。
─ なるほど。栞日に置く本の基準ってどんなところなんでしょう?
選ぶ基準はシンプルで「まずは僕自身がお金を払って買うかどうか」です。
本の種類としてはリトルプレス。ここ最近だと「ZINE」と呼ばれるようになった出版物を主に取り扱っています。個人で制作・流通まで行っているものが多いですね。
僕は本の中でも、雑誌みたいなぱらっと気軽にめくれるものが好きなので、「松本で本屋さん」と考えたときに自分の本棚を見返してみたら、小規模出版物がいっぱいでてきました。「そういえば、僕こういうもの好きだったな」と改めて思って。自分がバックナンバーを持っていたものから、本の制作者の方に連絡をして揃えなおしました。
─ 小規模出版物の魅力って何でしょう?
制作者の方にダイレクトに「あなたの本、好きです!」と伝えられることでしょうか。相手の体温を直に感じることができるというところに魅力を感じています。相手の制作にかけた熱や想いをダイレクトに知ることができるんです。
だから僕も「このひとにこの本をすすめたい!」と思ったら、熱をこめて魅力をお伝えするようにしています。
「このひととこの本を繋げたら、相手の中でこんな化学反応が起こるのでは」と考えるときがいちばんワクワクしますね!
ふとした思いつきで始まった「ALPS BOOK CAMP」が長野を代表する大きなイベントに。
ALPS BOOK CAMP
─ ALPS BOOK CAMPってフェス? フェスですかね? あれはどういった経緯ではじまったんでしょうか?
僕はフェスと公言した覚えはないんですが、いつの間にか名前が1人歩きしてフェスとして認識されています(笑)
─ 私もフェスと認識していました(笑)
あとから考えなおしてみると、時期・屋外・音楽要素あり・フードあり……と、確かにフェスとして認識される要素は多いのかなあと。「この夏おすすめのフェス10選」としてまとめられていたり、びっくりしています(笑) なのでテンションはフェスでいいのかなと思っています。
最初はそんなに大きなイベントにするつもりはなくて、「なにか、長野にとってこれ!って本のイベントがあったらいいなあ」とふと思ったのがキッカケでした。
松本で本屋をやると決めたのと同じときに、そのイベントも絶対にやりたいと思っていたんです。なので、店のリズムがなんとなくわかりはじめたタイミングで「よし、やろう!」と。
店を開けたのが2013年の8月で、ALPS BOOK CAMPをやろうとおもったのはその2ヶ月後の10月でした。
─ はやい!
ですね。開業する前から繋がりはじめた、松本で本屋を営む先輩たちとも事前に相談はしていたので、開催を決めるまでははやかったですね。
やるなら分かりやすさが大切だなあと思っていて。「あ、長野っぽいね」って長野のひとに思ってほしかったので、それなら「湖畔」と「山」だなと。
写真提供:ALPS BOOK CAMP
都内の既存イベントの二番煎じではつまらないので、店を開ける前に本のイベントをいくつか見て回りました。蓋を開けてみたら、湖畔の会場にはたくさんの方が駆けつけてくださって。ありがたいですね。
─ 最後に菊地さんの今後の展望を教えてください
当面はお店と、大きくなったALPS BOOK CAMPを見守りながら……という感じですね。やりたいことはたくさんあるのですが、それは今後のお楽しみということで。
まとめ
いかがでしたか。
お店の雰囲気も菊地さんの雰囲気もすごく柔らかくて居心地がよく、ついつい長居してしまいました。本を通じ、ひとの縁を繋いでいく菊地さん。これからも松本という街に、新しいカルチャーの風を吹かせ続けてほしいと思います。
ぜひ松本にお越しの際は、栞日でとっておきの一冊との出会いを楽しんでみてください。
最後に、ALPS BOOK CAMPのかわいいフライヤーをいただいて帰りました。来年こそいくぞ!
それでは、また♩
今回の地方移住インタビュー
心地よい暮らしのヒントを集めた本屋「栞日」