CREATIVE X 第2弾
CREATIVE X 第2弾
2015.10.18

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第11回)

菊池良

24.地球がえぐれて放り出されて

 

aerosmith_11_1

 

スポットライトがスティーブンに当たります。

 

巨大なライブ会場で一人ぼっちでした。

 

ステージの上にはマイク一本。

 

コンピュータ制御されたカメラが四方八方から向けられています。

 

その映像は全世界に中継され、視聴率は98%を超えていました。

 

 

 

 

 

(残りの2%は衛星チャンネルでやっている『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見ていました)

 

 

 

 

 

ある者はポップコーンとコーラを片手に、ある者は妻の肩を抱きながら、ある者は人類の破滅を期待して中継を見ています。

 

イヤホンから数学者の声が聞こえてきます。

 

「そろそろ歌ってくれ。隕石が見えてきた」

 

空を見上げると、大量の隕石が降ってくるのが見えます。

 

スティーブンは歌い出しました。

 

静かにしっとりと、バラードナンバーを。

 

きみに会いたいけど会えない、それって切ないよね的なバラードを。

 

素直な気持ちが一番大事、的なバラードを。

 

aerosmith_11_2

 

隕石は次々と粉々になっていきます。

 

そのたびに世界中で喝采が起きました。

 

ワールドカップみたいです。

 

 

 

 

 

しかし、そのときです。

 

 

 

 

 

歌が間奏に入ってしまいました。

 

スティーブンは手持ち無沙汰に身体を揺らしています。

 

歌わないと隕石は粉砕できません。

 

 

 

 

 

ズゴンッ!

 

 

 

 

 

隕石がライブ会場に直撃し、そのままステージをえぐって、宇宙空間へとスティーブンを持っていきました。

 

「し、しまっ・・・!」

 

呼吸ができません。

 

宇宙空間では何らかの作用によって人間の血液は沸騰してしまいます。

 

 

 

 

 

ゴボゴボゴボ・・・。

 

 

 

 

 

スティーブンは血液の温度が上がっていくのがわかりました。

 

しかし、息を吸えないので歌うことができません。

 

今までの思い出が走馬灯となって流れてきました。

 

 

 

 

 

母親のピアノに合わせて歌っていたこと。

 

 

 

 

 

父親に殴られて歯が取れたこと。

 

 

 

 

 

その歯を指輪ケースに入れてプレゼントされたこと。

 

 

 

 

 

・・・。

 

 

 

 

 

そういえば、あの歯はどこに行ったんだろう?

 

 

 

 

 

確かポケットにいれたはずだ。

 

 

 

 

 

・・・ポケット?

 

 

 

 

確か僕は、数十年ズボンを履き替えていないはずだ。

 

 

 

 

 

スティーブンがズボンのポケットをまさぐると、そこには指輪ケースが入っていました。

 

開くと中には取れた乳歯が入っています。

 

懐かしさに涙がこぼれてきました。

 

スティーブンは最後に力を振り絞り、乳歯を手に取ります。

 

そして、それを・・・。

 

隕石に叩きつけました。

 

その瞬間、隕石は粉々に砕け散りました。

 

スティーブンは身体は自由となり、宇宙空間に放り出されました。

 

くるくると回転し、少しずつ地球に近づいていき、そうして・・・。

 

大気圏へと突入します。

 

空気の摩擦で炎に包まれながら。

 

地球へと落下していきました。

 

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(つづく)

 

【シリーズ一覧】

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第1回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第2回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第3回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第4回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第5回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第6回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第7回)

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