CREATIVE X 第2弾
CREATIVE X 第2弾
2015.10.11

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第10回)

菊池良

23.懐かしい声

 

スティーブン・タイラーはホテルで1人、苦悩していました。

 

ラジオをつけると世界最大のライブ会場が建設されたとニュースになっています。

 

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それはアメリカがスティーブンのために、約2000億ドルかけて作ったものでした。

 

「スティーブンさん、頑張って!」

 

外から声が聞こえます。

 

カーテンのすき間から窓の下を見ると、大量の高校生が見上げていました。

 

世界を救ってくれるスティーブンを応援しようと、「スティーブン・フィーバー」は最高潮に達していました。

 

毎日、トラックの荷台いっぱいに届くファンレター。

 

息子や娘に「スティーブン」と名付けることがブームに。

 

コロコロコミックでスティーブンを主人公にした漫画「かっとばせスティーブン」が連載開始。

 

そして、スティーブンが泊まっている部屋は、修学旅行のコースとして組み込まれ、連日高校生が応援の言葉を投げかけていました。

 

すべてがスティーブンに重圧としてのしかかってきます。

 

「本当に、俺にできるのだろうか・・・」

 

大統領はスティーブンに、隕石に向かって歌ってくれと言いました。

 

「歌の力で隕石を粉砕し、地球を救ってくれ」と。

 

スティーブンは隕石を粉砕したことがないので、不安になっていたのです。

 

そのとき、ラジオから音楽が流れてきました。

 

父親のビクターが好きだったジャズ・ミュージックです。

 

不意に懐かしい声が聞こえてきます。

 

「お前の信じた道を進め」

 

死に際にビクターが言った言葉です。

 

「お前の信じた道を進め」

 

言葉の意味は理解しながらも、スティーブンは頭を抱えてしまいます。

 

「お前の信じた道を進め」

 

何度も何度も、ビクターの言葉が頭の中に・・・いえ、すぐそばで聞こえてきます。

 

「お、親父ッ・・・!?」

 

振り向くとそこには死んだはずのビクターが立っていました。

 

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「安心しろ。幽霊だ」

 

ビクターが足元を指差すと、確かに透けています。

 

「わしだけじゃないぞ」

 

ビクターが指をパチンを鳴らします。

 

「スティーブン、自分の信じた道を進むのよ」

 

足が透けた母親のリンダ。

 

「スティーブン、自分の信じた道を進むんだ」

 

足が透けたクインシー・ジョーンズ。

 

 

 

 

 

(この連載では書き忘れていましたが、母親も音楽プロデューサーも悲劇的な展開で亡くなっています)

 

 

 

 

 

感激のあまり、スティーブンは涙目になりました。

 

「みんな・・・死んだはずじゃ?」

 

父親を抱きしめようとしますが、身体が通り抜けてしまいます。

 

「スティーブン、わしらに触ることはできん。何も手助けできん。死んでいるから。わしらができるのは、この言葉を言うだけだ」

 

 

 

 

 

「「「お前の信じた道を進め!」」」

 

 

 

 

 

そう言うと3人は消えてしまいました。

 

そのとき、部屋のインターホンが鳴りました。

 

「スティーブンさん、そろそろ出発してください。世界を救わないと。」

 

マネージャーの迎えが来ました。

 

(つづく)

 

【シリーズ一覧】

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第1回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第2回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第3回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第4回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第5回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第6回)

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