
新規事業の担当者必見!「スタートアップの理論と議論」セミナーレポート
こんにちは! Media Producerのたくです。
先日こんな記事を書きました。僕が前職のときに愛読していたスタートアップ向けに作られたスライド。その解説セミナーに参加したレポートです。
新規事業の担当者必見!「スタートアップの理論と議論」セミナーレポート
当日は、元Microsoft Venturesの馬田さん自身が作ったスライドをもとに、スタートアップにとって重要なことをセミナー形式で紹介していました。
使用されたスライドはこんな感じです。(ちなみに馬田さんのSlideShareのフォロワーは約1,900人もいます!)
(馬田さんの作ったスライドの一覧はこちらから)
そして、セミナーが終わった翌週に、馬田さんに直接お話を伺う機会をいただきました! スタートアップや新規事業担当者の方は、ぜひ最後までお読みください!
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人物紹介:馬田さん カナダ・トロント大学にて神経科学、哲学を学んだ後にMicrosoftに入社。以降、Microsoft Venturesにて国内スタートアップ企業の海外進出などを支援。 |
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──馬田さんのスライドはとても勉強になるものばかりです。どうやってこんなに情報が多くて、濃いスライドを作ったんですか?
読んでいただいてありがとうございます。このスライドは、私がMicrosoft Venturesで働きながら、土日とか空いている時間を使って作りました。
──土日で作ったんですか? それにしては内容が濃いですよね。
元々、Microsoft Venturesでスタートアップの海外進出の支援をしていました。海外の情報は会社の支部からも入ってきますし、Feedlyでも常に仕入れるようにしていました。
国内のメディアが取り上げるスタートアップに関するニュースは「◯◯が資金調達をした」や「◯◯が買収された」といった大きなトピックしかありません。でも、海外のメディアやVCの社員の個人ブログなんかだと、スタートアップが成功するための「プロセス」に関する情報がたくさんあります。
──確かに。ちなみに1つのスライドを作るのにどのくらい労力がかかるんですか?
1つのスライドごとに2、30冊の本や論文を読み込んだりしています。あとは普段、情報を仕入れているネットのニュースとかも活用していますね。
──だからあんなに濃いスライドになるんですね。どうしてこういったスライドを作ろうと思ったんですか?
海外の情報に触れるたびに「国内のスタートアップが海外、特にアメリカで勝つのは難しいな」という実感があったんです。アメリカの情報の質と量は本当にすごくて、Web上はもちろん、ミートアップやカンファレンスといった形のリアルなイベントもたくさん開催されています。でも、日本ではまだまだ少ない。
──今回はセミナーを実施されましたが、なぜリアルなイベントを開催したんですか?
作成しようと思っていたスライドがある程度終わったので「説明する機会を作ってもいいかな」と思って開かせていただきました。また、スライドを多くの方に読んでいただいたので、イベントをきっかけにスタートアップ同士の交流や情報交換が生まれればいいなとも思っていました。あとは、私自身がより多くのスタートアップと出会いたかったというのもありますね。
──セミナーは盛況でしたしね! アナウンスはいつ頃からされたんですか?
9月9日にFacebookでアナウンスしました(セミナー初日は9月28日)。一応、セミナー案内のスライドも作りました。
──案内もスライドにされたなんて、徹底されてますね(笑) 集客はいかがでしたか?
おかげさまで、すぐに参加者が集まってくれました。会場の提供依頼も同タイミングではじめたのですが、快く会場を貸してくださる方からご連絡をいただけ、ありがたかったですね。
──特に反響が良かったのはどの回でしたか?
うーん、どうですかね。どのテーマもスタートアップが悩むテーマなので。ただ議論の時間の際に一番盛り上がったのは「Team&Culture」の回ですね。実際、セミナー中や終了後に参加者と話してみると「バリューをどのように決めればいいのかがわからない」という声をよく聞きます。
スタートアップをはじめて、プロダクトもローンチした。すると今度は人を雇って行動量を多くしていかなければなりません。でも人が増えれば、それだけ価値観も増えます。そんなときに会社の価値観としてどのようなことにこだわっていくのかを明文化する必要があります。これがバリューです。特に10名を超えてきたスタートアップから必要だと言われますね。
でも、スタートアップの経営者のほとんどが「はじめての経営者」であるため、そもそもどんな形で明文化するのか、明文化したバリューをどのように浸透させていくのかを相談されます。
──僕も前職でスタートアップやベンチャーと言われる会社とよく仕事をしていました。事業のスピードが速くて「とにかく人をいれなきゃ」って急いで採用して、一緒に仕事してみたら「あれ、なんかこの人、熱量が違うな」ってことで困っている会社も多いですよね。
そうですよね。実際に採用してみて、「やっぱバリュー大事だな」と感じて設定するケースも多いですね。
──日本のスタートアップって馬田さんからどう見えてますか?
ある程度の共通認識ができつつあるかな、と思っています。アプリ系のゴールドラッシュは終わったかな、と。「で、その次どうする?」ってことで悩んでいるスタートアップが多いと思います。
そのなかで、日本では最近になってスタートアップに大きな資金が流れるようになっているので、社会にある大きな課題に取り組むことができる環境は整いつつあるのかな、と思います。
──例えば、どんな分野が今後は注目ですかね?
まずは「産業特化型のスタートアップ」が出てくると思います。テスラモーターズなどに代表される自動車産業をはじめ、FinTech(金融とテクノロジーの融合したビジネス)やEdTech(教育とテクノロジーが融合したビジネス)などがすでに台頭してきていますね。今後は農業、ヘルスケア、保険、オイル、ガスなど。Y Combinatorが注目しているジャンル(Requests for startup)にはエネルギー、サイエンス、ナノテク、人間拡張なども挙げられています。
次に「未来のテクノロジー(Frontier Tech)を駆使するスタートアップ」も増えると思います。日本でもドローンやAR/VRが盛り上がってきていますが、それに伴い、専門のアクセラレーターも出てきていますね。こうした分野は日本の技術力が活用できる分野でもあり、国内のスタートアップに期待しています。
そして「世界の課題を解決するスタートアップ」が嘱望されています。世界には解決を待っている課題がたくさんあります。例えば、カリフォルニアでは深刻な水不足問題が発生していますね。水不足は農作物にも影響を与え、食料不足の引き金にもなります。
他にも寿命の問題や富の格差の問題など多くの課題がありますが、それらの解決に寄与するスタートアップが生まれるのもそう遠くはないと思います。
──しがらみが少ないスタートアップだからこそ、大きな課題に取り組むことができますもんね。では、馬田さんから日本のスタートアップで働く方々にメッセージをお願いします。
日本で大きな課題を解決するためにスタートアップを起こすということは難しいことかもしれません。アメリカもそうですが、日本だとなおさら産業ごとにいろいろな障壁があります。例えば法規制。薬事の分野でいえば開発のスピードが全然違います。なのでBiotechなどの分野ではどうしてもスピードで勝てないことがあるかもしれません。
ただ、スタートアップを立ち上げる人にぜひお願いしたいのは、常にアンビションというか、大きなことを考えつづけてほしいということです。ただ単に金儲けのためだけを考えるのではなく、「どう世界を変えていきたいか」「10年後の世界はどうなっているべきか」ということを考えてほしいですね。実際、「スタートアップは自分のビジョン以上に大きくなることはない」ということもよく言われます。
これは本当に大事な言葉かな、と思います。
──10年後の世界ですか・・・。考えるだけでもすごい労力を使いそうです(笑)
そうですね。だからスタートアップは大変なんですよね(笑)
──今後、馬田さんはどのような活動をされるんですか?
スタートアップの支援をしたいと思っています。VCや投資家のような活動ではなく「業務の効率化」を支援するような活動ですね。今は本郷三丁目にベースがあるんですが、多くのスタートアップと会話をすることで「どんなことが求められているか」を検証していきたいです。
私が特にお話を伺いたいのは社員数が4名以上でプロダクトをローンチしているスタートアップですね。お悩み相談のテーマはなんでも構いませんが、作業負担の軽減や間接業務の円滑化など、業務の効率化のようなテーマだと大歓迎です。
──今後の馬田さんのご活躍を祈っております! 今日はお忙しいなか、ありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました!
馬田さんは非常に言葉遣いがきれいで「優しそうな人だな」という印象を持っていたのですが、スタートアップに関するお話を聞くと、非常に熱い気持ちが伝わってきました。
馬田さんのスライドには多くの情報や知識が詰まっていますが、スタートアップで働く方々へのメッセージでいただいた「スタートアップはビジョン以上に大きくならない」という言葉には、情報や知識以上に感情を動かすような熱量を感じました。インタビューにお答えいただいた馬田さん、本当にありがとうございました!
馬田さんが作っているスライドへのリンクも改めて貼っておきますので、勉強してみたい方はぜひ、ご熟読を。
それではまた!