枕時計から万歩計まで。江戸の最先端技術は時計にあった!谷中「大名時計博物館」

枕時計から万歩計まで。江戸の最先端技術は時計にあった!谷中「大名時計博物館」

たかち

たかち

「1日は24時間である」と日本に浸透したのはいつだかご存知ですか?

日本では室町頃から江戸が終わるまで「不定時法」というのを採用していました。
日の出と日の入の間をそれぞれ6等分する数え方で、数字と十二支を使って表現されていました。
「丑三つ時」などという言葉はこの不定時法の表現なんですね。

鎖国が終わり明治に入った頃、不定時法は正式に姿を消します。

台東区・谷中には、不定時法を採用した江戸時代の時計を展示している場所があります。
なんとまあ、ニッチの極みですね。

「大名時計博物館」。
根津駅から徒歩10分、住宅街にひっそり佇む小さな博物館です。

門をくぐり進むと、白い建物が見えてきます。
スリッパに履き替え勇気を振り絞って入ると、左手で男性が受付をしていました。

取材をお願いし、特別に撮影許可を頂きました。

「大名時計」とは、こちらの博物館をはじめた上口愚朗氏が名付けた名前。
その名の通り「江戸時代の大名しか持つことができなかった時計」という意味で、館内には立派な時計がどどんと並べられています。

とても丁寧に説明書きがしてあるので、ひとつひとつじっくり読んでいきましょう。

こちらは櫓時計(やぐら時計)という種類。

時計盤はこんな感じ。

大名時計は、正確な時間を知るための道具よりも、むしろ殿様の気品と権威を高めるための時計である。装飾を主とした鑑賞本位の美術工芸品として発達した点が、世界に類例のない大名時計の特色である。

説明書きにこうある通り、時計としての役割はそこまで果たしていなかったようです。
まあ確かに…かなりアバウトな数え方ですもんね…

これは夏至と冬至で時間の違いを図化したもの。
日の出と日の入の時刻は季節によって違うので、必然的に一刻の長さも変化するんですね。

このように装飾がとても美しく、見てるだけでほれぼれするものがたくさんあります。
金メッキは剥がれ、かなり古びたものがほとんどですが、アンティーク好きにはたまらないはず。

江戸時代の時刻と現代時刻の比較表。
制作者の並々ならぬ情熱をひしひしと感じます。

「枕時計」は大奥御座の専用品として考えられているとのこと。
末期になるに連れ小型化が進み、アラーム機能もついていたんだとか(!)

当時、時計は高級品。 手が出ない庶民が時刻を知る方法は2つあったそうです。
1つはお寺が鳴らす鐘の音=時の鐘。
もう1つはこちらの日時計。
ぶら下がった鉛を太陽に向けてできた影の長さで時間を調べていたとのこと。

江戸時代の万歩計です。
仕組みが書いてないので詳しくはわからないのですが、かなり小型化できていたみたいですね。

外国製かと思えるほど精巧に作られているという置時計。
指針ではなく文字盤が回転し時刻を表すそうです。

まさかの印籠時計まで!
水戸黄門も実はアレで時間調べていたのかしら…
根付には磁石と日時計もついているそうです。とっても機能的ですね。

こちらは外国製の置時計を時計師が改造したという和前時計。
文字盤をわざわざ不定時法することで、西洋デザインと夢のコラボレーションを果たしています。
めちゃくちゃオシャレです。

ほかにもいろんな種類の大名時計がたくさん展示してあります。
ここまで来るとかなり専門的な説明がしてあるので全部はなかなか理解できませんが、デザインや雰囲気だけで十分楽しめます。

平日のせいか人気のなさがまた、えも言われぬ雰囲気を…

こちらは香盤時計。
線香の燃える速度で時刻を知るそうです。 当時使われていたのは機械時計だけではなかったみたい。

余談ですがここに来る途中に男性のフランス人に道を聞かれ一緒に宿までついていったんですが、 彼の持っていたガイドブックに「Daimyo clock museum」としっかり紹介されていました。びっくり。
説明書きは日本語のみなので、外国人の観光には向いてないかもしれませんが…

ひとりでふらりと立ち寄ってみることをおすすめします!
江戸時代の精巧なものづくりに触れたいあなたはぜひ。
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大名時計博物館
台東区谷中2-1-27
開館時間 10:00-16:00(毎月曜日は休館)

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LIGインターン生のたかちです。LIGの自社メディア『温泉JAPAN』にて日本一周湯巡り旅を連載、現在はメディアディレクターです。お酒と温泉と写真が好き。

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