スポットライトのうらがわ

「創作活動で大切なのは初期衝動」劇団ゴジゲン・松居大悟と目次立樹が劇をしている理由


「創作活動で大切なのは初期衝動」劇団ゴジゲン・松居大悟と目次立樹が劇をしている理由

こんにちは、エディターのmisakiです。

先日、縁あってある方々にインタビューをしたのですが、興奮が冷めやらず、なかなか寝つけなくなる事態に。

その方々とは、2015年秋に公開し、新しい青春映画として注目を浴びた『私たちのハァハァ』の監督・松居大悟さん率いる劇団「ゴジゲン」さん。

テレビや映画と違い、観客に生で演技を魅せる舞台の人々。そんな彼らは、どのように表現を磨かれているのか。また、どんな想いでものづくりをされているのか。
編集者・ライター視点でも、「どうすれば人のこころを動かせるのか」というのは、常に意識すべきポイントです。

そこで今回、ゴジゲン第13回公演『劇をしている』の稽古がはじまったばかりの1月下旬、主宰の松居さんと、役者である目次さんにお話をうかがいました。

人物紹介:松居大悟さん
福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。慶應義塾大学入学とともに演劇サークル「創像工房in front of.」に入団。2006年に劇団ゴジゲンを結成。現在は脚本家、映画監督、ミュージックビデオの演出など幅広く活躍する。
人物紹介:目次立樹さん
島根県出身。慶應義塾大学入学とともに、演劇サークル「創像工房in front of.」に入団し、代表や役者を務める。ゴジゲンの全作品に出演している唯一の人物。

「漫画家と芸人を目指していた」消去法で唯一残った演劇の道


 
― 学生時代から演劇に携わっているおふたりですが、演劇をはじめた・続けている原動力はどこからきているんですか?

松居:まさに今のテーマですね。稽古場でも「なんで劇してるんだっけ?」って話しているんですけど、まだ答えが出ていなくて……。

ミュージシャンの甲本ヒロトさんが、「学生が教室で、ほうきをギターに見立ててかき鳴らしたその瞬間に、ロックンロールはすべて詰まっている」と言っていて、表現をしたいっていうのは、衝動的なところからはじまるのかな、って思います。昔は「描きたいものを視覚化したいんです」と、キレイな言葉でおさめていたんですけど、少し違ってきているような気がしますね。

 
― 松居さんが他のインタビュー記事で「不器用さを表現したい」と言っていたのを何度か拝見したことがありますが、それとは違ってきていると?

松居:最近になって、本当はそんな表層なところで答えていちゃダメだなと。

「何かを表現したい」っていうのは衝動から始まるけれど、きっとそれだけじゃ、ものづくりは続けられないなぁと感じていて。自分の実力とか、社会とかいろいろなことが見えていって、「この衝動は続かないな」「この衝動はカタチにできたときに興行として成立するな」って考えていくと、選択肢がどんどん減っていったんです。

 
― 自分のなかで、どんどん選択肢を消していったってことですか?

松居:そうですね。昔は漫画家と芸人を目指していたんですけど、だめだった。演劇をやってみたら続けられて。こっちのベクトルがだめだったら、別なベクトルを伸ばす。いま劇をしているのも、そうやって消去法をして残ったからだと思います。

そもそも演劇をやろうと思ったのが、「ヨーロッパ企画」という劇団の『サマータイムマシン・ブルース』という舞台を観に行ったのがきっかけなんです。それまで、演劇って何がおもしろいのかわからなかったんですが、そのときはゲラゲラ笑って、「演劇ってこんなにおもしろいことを描けるんだ!」ってうれしくなって。自分も描いてみたいって気持ちが芽生えたんですよ。

この「ゴジゲン」って名前も、ヨーロッパ企画の人に名づけてもらったものなんです。ヨーロッパ企画がなかったら、ぼくは演劇をやっていなかったと思います。


 
― 目次さんの原動力はなんですか?

目次:学生時代のいわゆる「もう少しモラトリアムをたのしみたいな」からはじまった気がします。そんなときに松居がゴジゲンに誘ってくれて。でも根っこの部分には、舞台に出ることで自分が負い目に感じていることやコンプレックスが少しでも消化できるような気がしていたっていう部分があると思いますね。

松居:目次はすごく飽き性で、すぐいろんなことやめちゃうんですけど、「演劇だけはやめていないから」と言って、誘いました(笑)

目次:そう考えると、それも消去法からきているのかもしれないなぁ。

松居:ゴジゲンは2011年から3年間、活動を休止して、「もう1回やってみよう」と言って、再始動したんです。だから、劇をはじめた当初とは原動力っていうのは変わってきているような気もします。

「また劇やろうぜ」深夜3時の電話でゴジゲンは再出発した


 
― 休まれていた3年間は、演劇に対してどんな想いで過ごされていたのでしょうか?

松居:ぼくは、ネガティブな印象しかわかなかったですね。

演劇って時間もお金もくうだけだし、カタチに残らないし、人の嫌なところばかり見えてくる。心もやさぐれて誰も幸せにならないし、人の人生を振り回すし。何もやる理由がないと思いました。

一方で、映像は残るし、見てもらえるし、褒めてもらえるし。「映像のほうがいいじゃん!」って思っていたんですが、気づいたら目次に電話して、「またやろうぜ」って言っていました。なんでやろうって思ったかは忘れてしまいましたけどね……。

目次:電話がきたのが、夜中の3時くらいですよ(笑)

松居:まぁ目次も目次で、そんな時間に戯曲を読んでいたみたいですけど(笑) 何年も会っていなかったんですが、「なんだ、目次も劇やりたいんじゃねぇか」って思いましたね。

ぼくらが劇をやる原動力っていうのは、もしかしたら理屈やコトバにならない、何かがあるのかもしれないです。


 
― 解散後、目次さんは地元の島根に戻られていたそうですが、どう過ごされていたんですか?

目次:きっぱり演劇はやめず、地元の演劇のひとたちと月1回集まって、戯曲を読む会を開いていましたね。

 
― 島根と東京では、演劇をやるのにもいろいろ違いがありそうですね。

目次:ぼくは、ヨーロッパ企画さんや松居の劇に慣れ親しんできたので、島根では自分にとってはまた新しい劇と触れ合うことになりましたね。

東京で役者をやるときは、演技のことだけを考えていればいいんですけど、地方では制作など創作以外のところでやらなくてはならないことが多々ありますね。今回は作品だけに没頭できるので、恵まれた環境にいるなって実感しています。

演劇のよさは、長い時間一緒に過ごして表現を磨けること


 
― 普段、作品の企画やアイディアはどのように出されているんでしょうか?

松居:メンバーが6人いるんですけど、まずは「何しようか?」からはじまって、「会っていない間、何してたの?」って近況を聞くんです。それを聞きながら、全員で作っていく感じですね。

 
― 松居さんが具体的なイメージを持ってきて、作られるんじゃないんですね!?

松居:ぼくが明確なイメージを稽古場に持ってくると、結局自分の頭の中のイメージを押しつけることにしかならなくて。そうじゃなくて、なんならイメージもなく、キーワードぐらいしか持っていかずに、話す。その人たちにしかできないものがカタチになる瞬間に、演劇の可能性を感じるんです。

 
― 演劇の可能性という言葉が出てきたので、ずばり演劇の魅力をお聞きしたいです。

松居:演劇なら1ヶ月間同じ時間・同じ場所に集まって、稽古をするんですが、映画の場合だと、絶対的に共有する時間が少ないんですよ。演劇の魅力は、1ヶ月間一緒に時間をともにして、表現を磨いていくことだと思います。

 
― 松居さんは、ドラマや映画、ミュージックビデオでの創作をされていますよね。それらの経験を経て、演劇との向き合い方は変わりましたか?

松居:そういうところで得た経験を、あえて何も持ち込まないようにしています。
この立場から自分が発言すると、結局どう具現化するかっていう話になるので。発注を受けている時点で、そうあるべきだとは思うんですけど。

自分が無理やり取り繕って提案したことに対して、スタッフが一生懸命がんばっていると、みんなに対して失礼じゃないですか。だから、あえて、“ボヤッ” として、「こいつまじか? 考えてないのかな?」と思わせるんです。そうすると、みんなが自然と意思を持ち始めるんですよ。「わたし、こんなの考えてきたんですけど、どうですか」って。

目次:そうやって松居は各々の力を引き出すんですよね。
稽古初日の段階で、「おれの頭のなかは、今おまえたちの頭のなかとだいたい同じだ。なんも考えてきていないからな」って平気で言いますからね。

 
― 中心人物が企画などを持ってきて、劇をつくっていくイメージとだいぶ違いました。

松居:ぼくは一人で作りたくなくて、集団でものをつくりたいんです。効率を考えたら、事前に脚本を書いた方がそれは動きやすいし、具体的な美術セットを伝えた方が、みんな動きが早くなるでしょう。実際そうやってくれって言われるんですけど、そうすればするほど、結果的に作品が豊かにならないと思うんですよ。頭でっかちの裸の王様にならないよう意識しています。

自分がつくるものを信じているから、こころは折れない


 
― これまで何度も挫折を味わってきたかと思うんですが、そういった壁にはどう立ち向かっていますか?

目次:ぼくの場合、一番は無理のない生活をしたいっていうのが頭にありましたね。演劇っていうものは苦しんでやるものではなく、たのしんでやるものっていうのが頭のなかであったので、壁にぶちあたる度に「もっといい演劇との付き合い方を見つけてやる」って言い聞かせていました。

 
― たのしさを忘れたら、いいものがつくれないというのは、何事も共通しそうですね。

目次:はい。演劇とは全く関係ないんですが、福岡正信さんの『わら一本の革命』 って本には助けられましたね。自然農法という農法を発見した方なんですが、この本と出会った当時、心身ともにすり減って、もうこんな生活は続けられないって状態でした。なので、この本の福岡さんの生き方に希望を見ましたね。


 
― 松居さんは、どう乗り越えられてきましたか?

松居:ぼくは、自主映画もうまくいかず、脚本もいろいろ書いてはだめだったり、ゴーストで書いたり、名前が出るまでにも相当時間がかかりました。

なんでしょう、自分のつくるものをおもしろいと思っているから、信じているから、折れない、のかな……。

これが根本にあるんですけど、立ち向かい方は3パターンほどありますね。

 
― 全部教えてください!

松居:1つは、たとえば 漫画家になりたいっていう最終的な目標があるから、2番目3番目にある演劇や映画ってところで評価されなくても痛くもかゆくもないって思うことですね。だって、漫画あるし、漫画という存在があるから、どんなに評価されなくても傷つかずにいけるっていう肩の力を抜いたパターン。

2つめは、自分は何者でもないって思いたくないから、とにかく何者かになるまではしがみつく、強気のパターン。

最後は、映画や演劇に関わった方の何かを背負いたいなっていう思いがあるんですけど、自分が評価されなかったとき、お金や気持ち、いろいろなものを貸していただいた方に失礼だと思うんです。だから、その人たちが少しでも胸を張れるように、なんとかしなきゃって思うパターンですね。

 
― どれも、違うアプローチですね。

松居:3つそれぞれ違うんですが、とにかくその壁に食らいついていくぞ!という気持ちで立ち向かっています。

観客の95%が笑って、5%が号泣するような表現をしたい


 
― 今回の『劇をしている』は前回と同じメンバー6人でやられるとのことですが、「ゴジゲン」はずばり、どんな劇団でしょうか?

松居:だいたい男たちが群れていて、たのしそうにしている。男6人が、生きる、一生懸命生きている劇団……でしょうか。

昔にテーマとして掲げていたのが、「明日自殺をしようと思った人が『自殺は来週にしようかな』って思う劇にしよう」でした。95%が笑って、5%が号泣するような表現ができたらいいよねって。

前回の『ごきげんさマイポレンド』と、今回の『劇をしている』でようやく、この6人の「ゴジゲン」という名前を冠したものじゃなければできないものが作れそうな気がします。『劇をしている』に関していえば、まだカタチになっていないんで何も言えないんですけど(笑) コメディの枠におさまらず、コメディの、その先をいきたいですね。

 
― さいごに、『劇をしている』への意気込みをおねがいします!

松居:演劇にかぎらず、どんな創作活動においても、初期衝動をつかまえることができれば、その衝動の名の下に踊り出すことができると思います。

だから、ぼくらも「なんで劇をしているんだっけ?」てことがわかれば、中学生がほうきでギターをかき鳴らすように、子どもが砂場でままごとをするように、この先何十年も楽しみながら演劇ができるんじゃないかなと。

『劇をしている』を見た方が、仕事場や社会生活におけるストレスのはけ口がないとしたら、吐き出す場所を見つけるヒントを与えられれば幸いです。

目次:今、「なんで俺たち演劇をしているんだっけ?」ってところで行き詰まっているんですが、きっと本番のときには思いついてカタチになっているんだろうなって思います。

多くの人にぼくらの劇をたのしんでいただきたいですね。

 
― 公演のご成功お祈りしています! 本日はありがとうございました!

おわりに


▲「ゴジゲン」出演者の6名

ものづくりに携わっていると、型にはまった企画やアイディア出し、制作から抜けられない方も多いはず。真新しいものを探していくことはもちろんですが、「どうして、はじめたんだっけ?」と、忘れかけた初期衝動を見つけることが大事なのかもしれません。

そんな表現を磨くヒントを得たインタビュー後、稽古場には出演者6人が集まり、今にも世間話がはじまりそうな、向こうの方では真面目な人生相談が起こるような、学校の放課後に似た空気が漂っていました。男6人の物語は、2月13日から下北沢で見ることができます! 

追加公演も決定!『劇をしている』は2月13日(土)より公演開始!

今回お話をうかがった松居さん・目次さんが所属する「ゴジゲン」第13回公演『劇をしている』は、2月13日(土)から下北沢OFF・OFFシアターで公演開始!

物語をやろうと思ったけど、とっくに僕らは物語の上に生きていました。
どれぐらい距離が離れたらクソみたいな人生が最強の物語になるんだよ。
小さい頃から大人になっても僕らはずっと

出演者によるアフターイベントを開催される日もあります! また、2月21日19時に追加公演も決定! 松居さん、目次さんのお話に興味を持たれた方はぜひ遊びに行ってみてください!

■公演期間 2016年2月13日(土)〜2月22日(月)
★追加公演:2月21日(日)19時〜
■場所 下北沢OFF・OFFシアター
■料金 当日/3,500円全席自由席(整理番号付き)
未就学児童入場不可

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この記事を書いた人

misaki
misaki ライター 2015年入社
地域活性の仕事にたずさわった後、LIGへジョイン。
主に外部メディアの運用を担当しています。

映画と旅とエビが大好物です。