第66話

社会での位置情報を知るって怖いから、「駄サイクル」しちゃうんだ『ネムルバカ』


社会での位置情報を知るって怖いから、「駄サイクル」しちゃうんだ『ネムルバカ』

こんにちは、外部ライターの三沢文也です。
大人になるにつれて、人間はわかり合えないものだと感じ、他人が宇宙人に見えることが増えました。

今回紹介する漫画は、普通の人からは宇宙人に見られてしまうほど、強く自分の目標を持って生きる「先輩」が失踪するまでの日々を綴った漫画『ネムルバカ』です。

本日紹介する漫画:『ネムルバカ』

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ネムルバカ(リュウコミックス)

作者は『木曜日のフルット』『それでも町は廻っている』で知られる石黒正数。

パンクでロックなのにリアル

インディーズバンドのヴォーカルとしてそこそこの人気がある鯨井ルカと、入巣さんの寮生活を描いた作品。貧乏バンドマンと大学生の日常というありふれたストーリーですが、だからこそ胸に刺さる名言、概念が数多く詰まった作品でもあります。モラトリアムで完全に社会に溶け込みきれていない人間や、今ある社会と別の社会でも何かを成したい人には特に刺さるのではないでしょうか。

例えば、「駄サイクル」という言葉。褒めてくれる人以外の前では決して勝負しようとせず、ダメな人同士が内輪でお互いを褒め合うことで、自己顕示欲を満たし合うことを指しています。この漫画上ではじめて世に出たこの言葉が誕生した1ページは、ネット上で広く共有されています。

また、今ブログをがんばっている自分が見ると、特に胸に刺さるのがこのくだり。

本当のところ先輩も自分ではわかってるでしょ。自分の音楽のレベルとか、どこまで通用してどこで限界が来るかとか、目標に達するまでの壁の暑さも壁を掘りきれるかどうかも。なんとなくわかってて自分で努力するのがシンドイじゃないですか

はい、努力するのがシンドイです。平均したレベルや、必要とされるスキルに対して、自分に欠けているものがある。そのことに気づいてしまったときの、疎外感や孤独感と、何よりも好きなことで認められるために努力するってことが、とてつもなくシンドイです。

目まぐるしくうつりゆく時代のなかで、もがいてもいいですか?

僕はオタク系ブログ界では名が知られた存在だという自信はありますが、ナウでヤングなリア充ブロガーの時代です。恋愛かお金儲けの話ができない人には、ライターの仕事がきづらいと思える時代です。

この作品にも同じようなシーンがあります。先輩はパンクロックをしているけど、事務所の筋書きを遂行するためにアイドルに転身することで、成功を掴み……そして疾走します。

久しぶりに本棚から取り出して読み返したときに、僕が悩んでることがそのまま書いてありゾッとしました。パンクロックを続けて、楽しく面白く、周りに盛り上げられるままに「駄サイクル」に見えなくない時間を過ごすのか、本当はデブで貧乏なのに、勉強してお金の話を書いてキラキラな自分を演じてでも、自分の好きな書き物を続けるのか悩んで、もがいてる自分に、とても刺さりました。

僕は文章でお金をもらって生きていけることを理想としています。だからこそ、文章で人に褒められたり、ときには誰かを救ったりできた(そう言ってくれた)ことが僕の救いになっています。

さいごに

僕がいる六畳間は『ネムルバカ』の貧乏な寮生活に重なるところがあります。
誰しも感じる、「もっと伸びたい……でも壁を感じる」という葛藤を描きだしているのが『ネムルバカ』だと思います。

だから、パンクにロックに、いつもよりも踏み込んだことを書いて、人にすすめたいんです。


この記事を書いた人

三沢 文也
1989年生まれのブロガー。はてなブログにて「かくいう私も青二才でね」(http://tm2501.hatenablog.com/)を運営中。タイトルで「青二才」とつけたことから青二才と呼ぶ人も多い。

トレードマークの金髪の少女はぱらがす(@parags112)さんのイラストを許可を頂いて使用中。
イラストと、個性的な“キャラ”から一部では「はてなアイドル」と呼ばれることも…。