働き方インタビュー(エンジニア編)

「コンピュータと冗談を言って笑い合いたい」データを取り引きできる市場をつくる|オークファン


「コンピュータと冗談を言って笑い合いたい」データを取り引きできる市場をつくる|オークファン

こんにちは、LIGライターズの久松知博です。普段は放送作家&ライターをやっています。

今回お話を伺ったのは、国内で唯一のネットオークション価格比較・相場検索サイト『aucfan.com(オークファンドットコム)』を運営する株式会社オークファン

aucfan.comは、2016年現在の商品及び価格情報のデータの保有数が300億件以上、月間訪問者数は約1500万人以上を誇り、商品の取引相場を知ることができるサービスとして、オークション利用者などから注目を集めています。今回は同社の執行役員・技術統括部部長を務める得上竜一氏に、求める人材や会社が考えるビジョンについて伺いました。

Poole:アイコン_オークファン様 人物紹介:得上 竜一氏
東京電力株式会社にて、電子通信グループに配属。ネットワークエンジニアを担当。2005年7月に株式会社アベルネット(PCボンバー)にて、家電製品・パソコンの自動価格収集・分析・自動価格算出システムの開発を担当。完成後は米国法人MiningBrownie,Inc.を設立し、代表取締役に就任。2006年10月に日本法人株式会社を設立して代表取締役に就任。2015年1月に株式会社オークファンに入社。

コンピュータと冗談を言って笑い合えるような関係になりたい

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執行役員で技術統括部部長という重要なポストを務める得上氏は、技術開発チームの人事やマネージメントから技術開発までを担当しています。しかし、「この会社では、まだ新人です」と語る得上氏。入社の経緯は、どのようなものだったのでしょうか。

得上
オークファンに入社したのは2015年1月です。ここに入社する前はビッグデータを取り扱う会社を経営していたのですが、業績が傾いたので株式を手放しました。そのため、改めて株主を探さないといけなくなって。証券会社の方と打ち合わせをした帰り道に、以前から付き合いのあった弊社の代表である武永から「データ収集ができる人を探している」という電話をもらったんです。

そのとき、まったく予期せぬところから別の道が突然現れたということに、運命を感じたんですよ。

じつは電話があった時期、ほかの会社からもいくつか誘いがあったという得上氏でしたが、自分のやりたい環境が整っていることも、入社を後押しした要因だったそうです。

得上
もともと種類を問わずいろいろなデータを扱うのが大好きだったんです。変な言い方ですけど、「コンピュータとお話がしたいな」と思うくらい思い入れがあるんです。たとえば自分が悩んでいるときに、そっとアドバイスをくれるようなバーのマスター的な関係だとか、ふざけて冗談を言って笑えるような関係になりたかった。

以前に自分で会社を起業したのも、“データやコンピュータが自分の経験や足りない部分を補ってくれる存在になる世界をつくりたい”と思ったからなんです。電話をもらった後日、武永から話を聞くとオークファンはデータを使って事業をするための予算も用意してくれていたので、「自分のやりたいことができるな」と思って入社を決めました。

しかし、自分で会社を起こして仕事をしていた得上氏にとって、社長というポジションにこだわりはなかったのでしょうか。

得上
それはなかったです。物事全般に対する考えにあてはまりますけど、徹底的なこだわりとかって特にないんです。強いて言うなら、1つのものに執着するよりも、最適解を探すことに“こだわり”があるかもしれません。だから、このときはたまたま自分の会社をやり続けるより、オークファンに入社することが最良の答えだったというだけなんです。

また、得上氏はこだわりを持ってしまうことで、「ときに自分の視野を狭くしてしまう」とも考えているそうです。

得上
マリーアントワネットの「パンがなければお菓子を食べればいいのよ」という有名な言葉がありますよね。一般的には身分の高い貴族が庶民に対して発した世間知らずの言葉と受け取られている場合が多いと思います。

しかし諸説は多数あり、パンの原料となる小麦の価格が高騰しているから、安い小麦を使った菓子パンに切り替えを薦めたという見方もある言葉です。

「豪勢な暮らしをしていた王妃」というマリーアントワネットへの固定観念に縛られると、原料コストを踏まえてそうした発言をしたという発想には、なかなかたどり着けないのではないでしょうか。常識や既成概念にとらわれすぎると最適解を逃してしまうという考え方は、データの取り扱いにも通じるところがあると思うんです。

aucfan.comでは、玩具から不動産までさまざまな価格情報を手軽に入手できます。サイト上では、誰もが簡単にほしいデータにアクセスできるよう環境は整理されていますが、得上氏は「開発者として、“情報を整理する”ことに魅力はあまり感じない」と話します。

得上
利用者の立場からすると、データは整然と並べられているほうが使いやすいのは当然です。ただ、データは綺麗に整列されると、その見方しかできなくなっちゃうんですよ。

たとえば、最も使用頻度が高い単語の統計をエクセルで用意して、それをもとに単語を配列して小説を書いたところで、どこかで読んだような文章が並んでいるだけでおもしろくないと思うんです。でも実際の小説は、著者がつくり出した一連の文章の渦の中でいろいろな単語がぐちゃぐちゃになっていくからおもしろくて、娯楽になっているわけです。

つまり、データも整列しているよりかは乱雑な状態で要素だけがあるほうが想像力をかきたてられると思うんです。それこそまさに開発者の醍醐味だと感じていますね。

「プログラマーは0から100の価値を生み出す錬金術士」再構築の作業におもしろさがある

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現在オークファンの社員数は90人ほどで、技術部門の正社員は15人前後だそうです。今、会社が求める理想の人物とはどんなスキルを持った人なのでしょうか。

得上
今はPHPとかjavaのエンジニアがほしいけど、一時的なものですね。それ以上に大切なことは、こだわりをいつでも捨てられる人だと思っているので。業界は変わっていきますし、「同じ言語でしか作れませんし、作りません」っていう時代ではないと思います。

では、エンジニアに向いている人材とは具体的にどの能力に長けている人なのでしょうか。

得上
再構築する力に長けた人ですね。プログラミングって何もないところから莫大なものを生み出す作業なんですよ。時間を対価にはしているのですが、その使った時間以上のものが返ってくる。

ぼくのバイブルは『鋼の錬金術士』なのですが、例えば、実際の作業は目の前にあるものがどういう動きをしているのかを理解したうえで、バラバラにして落としこんで、それをプログラムとして再構築する。分解のとき物質の場合は等価交換になりますが、プログラムは物質ではない。

再構築することで価値は何倍にもなる可能性がある。そこにエンジニアのおもしろさがあるんです。

プログラマーは「0から1も100も生み出せる錬金術士のようなもの」と語る得上氏。しかし、高いゴールを掲げて作業に取り組むことは、並大抵のモチベーションでは難しいでしょう。エンジニアが常にパフォーマンスを発揮するための制度はあるのでしょうか。

得上
今期から始まったのですが、“フリー戦略”というお金になるとか関係ない、採算度外視でそれぞれがおもしろいと思う機能をサイトに追加しよう、という取組が始まりました。フリー戦略という言葉通り、メディア運営に携わっているエンジニアは、現在の仕事とはあまり関係ないスマホのゲームを作り始めたくらいで。

“枠にとらわれず、何でもおもしろいことができる”ということが、モチベーションにつながればいいなと思っています。収益が上がる機能ばかり付けてもユーザーは離れますし、自由な発想から生まれたサービスがサイトの価値にもつながると思います。

ウチの会社はあらゆるサイトのデータを大量に保有しているとこですかね。それを使ってどう遊んでいくか考えることができるのも魅力だと思いますね。

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aucfan.comを運用するとともに、2016年1月に融資事業にも乗り出したオークファン。今後の事業展開について得上氏は「データの市場をつくる」と語ります。

得上
データの市場をつくります。いろんなデータが世の中にはあるけど、それを取り引きできる市場はないと思うので。「天候データがほしい」と思ったら、気象庁で買う。鉄道のデータの場合は鉄道関係から買うっていうのが面倒くさいですよね?

だから、必要だと思ったときに気軽にデータの取引に参加できる市場があって、誰もが簡単に取引できるようにしたい。さらに、このデータはどういう見方をすればいいかの読み取り基準も販売して、分析メソッドのガイダンスを売るところまで発展させていきたいです。

いろいろな人が興味のあるデータの売買を通じて、みんなが入手できる。そのデータをどう活用するかによって、新たなサービスや価値観、文化が形成されるかもしれません。データは使い方によって世界を変えられるポテンシャルがあるんです。

ITの進化により大量の情報が生み出され、その取捨選択の妙がビジネス成功のカギを握る現代。「データをどう扱うかで、世界はいくらでも変えられる」と得上氏は語りました。ビッグデータを通じてオークファンが描く未来には、私たちの想像を超えた世界があるのかもしれません。


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この記事を書いた人

久松 知博
久松 知博 2015年入社
1981年9月12日生まれ。出身は大阪。マスコミの専門学校を卒業後、大阪でADの仕事を経験。25歳で上京、株式会社スリーカーズに就職して雑誌の編集に携わりながら、放送作家への道を歩む。現在は放送作家兼ライターとして株式会社ペロンパワークスに所属。ライター、アニメのシナリオ「ゾンビ猫」、テレビの構成「とくダネ!」、舞台の脚本など幅広く活動。