働き方インタビュー(経営者編)

「やりきれるか、自己否定できるか、目を輝かせているか」新卒3年目でも新規事業を任せる| リブセンス・村上太一


「やりきれるか、自己否定できるか、目を輝かせているか」新卒3年目でも新規事業を任せる| リブセンス・村上太一

こんにちは、社長の岩上です。

“あたりまえを、発明しよう。”をビジョンに掲げる、株式会社リブセンス。2006年の創業以来、アルバイト求人サイト「ジョブセンス」を皮切りに、賃貸情報サイト「door 賃貸」、転職希望者向けに企業の評判や噂などのクチコミ情報を集めたサイト「転職会議」など、数々のメディアを運営している企業です。

そして「世の中の常識となるものを創りたい」「働くモチベーションはユーザーの幸せから生まれる幸せ」と語るのは、史上最年少で東証一部上場企業経営者となった代表取締役社長の村上太一氏。今回のインタビューは、リブセンスのサービス開発と経営者としてのマネジメントについて伺いました。

リブセンス様_PF0001 人物紹介:村上 太一氏
1986年生まれ2006年早稲田大学在学中に株式会社リブセンスを設立、代表取締役社長に就任。

「“人を分解する”のが好き」良いサービスには、必ずフックが仕掛けられている

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— 単刀直入ですが、村上さんがサービスを創るにあたって、一番大切にしていることを教えてください。

やっぱり、今までにない価値を提供して世の中にインパクトを与えたい。リブセンスのサービスによって世の中が変わって「やっぱりこっちの世界のほうが楽しいよね」ってなるのが、好きですね。

 
— 良いサービスを創るためには何が必要でしょうか?

「なぜ人が動くのか」を知り、どうやって目的を達成させるか常に考える必要があります。私は学生のときから「人を分解する」のが好きでした。それはつまり「人がなぜ動かされるのか」とか「人の脳の構造」への関心が強くて、好きな本は『影響力の武器』とか。

 
— 創業が2006年……となると、村上さんが大学1年生のときですよね。今年で会社は10周年になりますが、当時から手掛けたいと思うサービスは変わりませんか?

ずっと変わらないですね。「◯◯と言えば、リブセンスのサービスだ」という代名詞になり、文化になるものを創りたいと思ってサービスを開発しています。ただサービスを創るだけではなく、普及させ、一般化させる。私は圧倒的に使ってもらえるサービスが好きです。

 
— 「人を動かす」「文化になる」「あたりまえになる」ものを創ろうと思ったとき、何を軸に注力する事業を決めるのですか?

身近な生活の不便や社会の問題を入り口に、サービスの発想を得ることが多いです。そして良いサービスを創るためには、ユーザーに対して何かフックを用意し、かつその仕掛けに引っかかってしまうような刺激を与え続けることが大切だと思います。

 
— リブセンスでは、若手にも積極的に新規事業立ち上げを任せるそうですね。

はい。例えば以前、商品の最安値を紹介する「cospa(コスパ)」というサービスを開発していました。クローズしてしまった今でもすばらしいサービスだと思っています。既存サービスでは解決しきれていない問題点をユーザー視点で徹底的に考え、完全にマネタイズを無視した構想でcospaを立ち上げました。で、私はその責任者を新卒の社員に任せた。

 
— それは勇気のいる仕事の任せ方だったと思います。

すごく優秀な社員でスタンスも良かったのですが、かなりハードルの高い立ち上げだったこともあり、もう少しフォローが必要だったかもしれません。私自身が仕事の任せ方を見直す機会にもなった。新規事業の立ち上げにおいてスキルとスタンスのバランス感は大事だなとは思いましたね。

やりきれるか、自己否定できるか、目を輝かせているか

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— なるほど。その経験はリブセンスさんの採用の考え方にも通じそうですね。

採用においてはサービスに対する思いだけではなく、一定のスキルがあることが大前提です。スキルが一定以上あれば、あとはパッション軸が重要になってきますね。新規事業を立ち上げるときなど、何かやろうと思ったときに“やりきれる人なのか”というところを見ます。そして常に自己否定して、改善し続けられる人なのかどうかも大事。その人が若ければスタンス面の比重が高いです。

例えば、医療情報サイト「治療ノート」は新卒3年目の社員が立ち上げました。その社員自身が子供の頃アトピーに悩んでいて、母親が治療方法を調べるのに苦労したこと、友人の病気について自ら調べた際に感じた不便といった原体験があります。

「自分自身、こういうサービスがほしい」「このサービスは世の中に必要だ」っていう、彼の目の輝きに期待するところが大きいですね。

 
— 仕事の任せ方で村上さんのやり方はありますか? 僕はそれで悩むことが多いのですが。

私自身、Webマーケティングが得意だから、その領域においては細部までしっかり見られるように、チームのメンバーと一緒にやっていくスタンスを取ります。そこは自分が最大限のエネルギーを注入していくような仕事の任せ方かもしれないです。

でも、それ以外の事業を成長させるために必要な仕事は、「餅は餅屋」で強みがある人にお願いしています。逆にその仕事を自分でできるのであれば、自分でやってしまうこともありますし。

 
— なるほど。

マネジメントで意識していることは、個々の強みを活かし合おうとすること。もし、今の社員が環境でうまくいかなかったとしても、その人の強みを活かせるところは必ずあります。それぞれ芸風がありますから、上手に個々を活かし合うべき。適材適所ですね。

いわゆる個人の業務内容の適正を測るためのビッグデータは、まだまだ貯まりきっていませんが。

 
— 人事系の仕事に携わった人とは、どう連携していますか?

こればっかりは場数ですね。大企業でずっと人事をやっていた50代の社員がいるのですが、社員の仕事の適正を測るビッグデータの量が圧倒的に多くて。「この人はこういう人だから、こんな環境でこういう仕事をすると活きる」「この人の発言の背景には、こんな思想がある」とか、全て把握しています。

社員に最大限の力を発揮してもらうためには、小説をもっと読んだりするといいのでしょうね。小説には人の感情の動きや、物語の背景がちゃんと描かれていますから。私は相手の言葉をストレートに捉えがちなので、人の感情や思想をもっと勉強しようと思っています。

 
— 仕事は任せ方次第で、相手のモチベーションに与える影響が大きいからこそ?

そうです。「私はサービスを創るのが好き!」と前のめりになってずっと仕事をしてきたので、良いサービスを開発するための仕事をするのであれば、みんな幸せだと思っていました。ところがそうではないということを、会社を10年ほど経営してやっと気づけた(笑)

仕事やサービス開発にかけるモチベーションの源泉は、人それぞれです。だからこそ逆に社員のモチベーションを意識しすぎないことが、リブセンスの経営理念「幸せから生まれる幸せ」の実現に繋がるのかなと。つまり多くの人に喜んでもらえて感じる幸せを、幸せにしようということです。

 
— そうおっしゃる村上さんが、ここぞというときにがんばれるモチベーションの源泉はどのようなものですか?

サービスを創ったらそれを使ってくれる人に「どう思われるか」を想像します。現在は中古不動産売買サービス「IESHIL(イエシル)」の開発に注力しているのですが、サービスを使って「これ、いいなあ」と心の中で思ってくれている人の気持ちを妄想していると、がんばれますね。

ただ、妄想しているだけだと「それが何になるの?」とか、小さい世界で収まってしまうので数字も大事にします。

 
— なるほど。そこまでして取り組む理由は何でしょうか?

IESHILに関していうと、取り組むべき大きな理由が2つあります。

1つ目の理由は、国内の不動産の流通を活性化させるべきだから。日本はこれから人口が減っていくのに、中古の不動産を壊して新築をバンバン建てています。使えるものを無駄に壊している状態なので「新築が建つと国力も落ちるのではないか?」と考えていますね。

 
— だからこそ“国内の不動産の流通を活性化させるべき”だと。

でも、そこで2つ目の理由であり問題にぶつかります。中古不動産は手の出しづらさがありませんか? 「万が一、買ったあとに問題があったら……」「本当に正しい買物だったの?」とか。

 
— たしかに、よく聞きますね。

人生で不動産を買うなんて1度か2度かもしれません。そんな大事な買い物だからこそ、不動産の透明性の向上と流通を活性化したい。

そのためにまず、IEHSILでは不動産の市場価格を可視化し、透明性を向上しています。自治体や官公庁が公開している不動産価格指数や地価、再開発計画をはじめ、過去の売買履歴や賃貸情報まで、不動産に関するさまざまなビッグデータがありますよね。その中から中古マンションの市場価格を部屋単位でリアルタイム査定するほか、売買の参考になる物件周辺地域の利便性、治安、地盤強度、医療、交通、教育などのレイティングも公開していきます。

 
— 実際にIESHILの開発を進めてみて、新しくわかったことはありますか?

わかったことは、すごくいい情報がたくさんあること。けれどもそれらの情報は消費者に使ってもらえるような形ではないこともわかりました。

わかりやすい例でいうと、JRや東京メトロが各駅の乗降車数などの情報を開示しています。しかし情報が散らばっているから探すのも非常に大変だし、情報が要素のままでは意味をなさない。私たちがそれらの情報を集め、誰でもわかる不動産情報に加工して伝えていきます。

 
— なるほど。村上さんの熱い思いが伝わってきました。

ありがとうございます(笑)まだ掲載物件数も少ないですし、スタートできていないサービスもあります。1人でも多くの方々にIESHILを使っていただき、ベストなマイホームを心から納得して購入いただけるよう取り組んでいきます。まだまだ始まったばかりなんです。

とにかく走り切る。でも「この先に光はないかもしれない」という冷静さも必要

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— では、仮に社員のモチベーションが下がってしまったときに村上さんはどんなアドバイスをしますか?

モチベーションの下がり方によりますけど、例えばその社員が担当している仕事がうまくいかないときだったら「いやあ、俺もこういうときにグンと成長したんだよね」みたいな(笑)

 
— 村上さんにも、大きく成長した時期というのがあったのですね。

リブセンスの創業1年目は、全然うまくいっていませんでした。だからビジネスマインドやスキルを少しでもキャッチアップできるよう、猛烈に本を読んだ。

それこそSEOの知識やWebサイトの作り方、営業の方法、ExcelやPowerPoint、Illustratorの使い方とか……社会に出てすぐに、全業務をやる必要がありました。

 
— 創業1年目は大変ですよね。

当時は大きな失敗がなかったから生き延びられているわけですけど、苦しかったですね(笑) なぜなら事業を成長させるためにがんばっても、先が見えないことは往々にしてありますから。

どんなにビジネスモデルが良くても、がんばって成果が出なければ徐々にやる気はなくなりますよね。とはいえ、自分たちが信念かけてやっていることを信じてやらなきゃいけない。成果が出ないかもしれないビジネスの世界って、厳しいですよね。

 
— 受験勉強だとリミットも決まっているし、がんばれば成果が出る。でも、サービスを創るのはそうではないと。

そうです。ゴールが見えない真っ暗闇のトンネルを全力で走り続けている世界。息切れしそうになるけど、とにかく走る。「きっとそこに光がある」って言い聞かせてね。

 
— 走り続けた先に光があるかの判断はどうしていますか?

社員に「暗闇を全力で走る気持ちはすごく大事だけど、何も考えずに走り続けてはダメ。ときには “光はないかもしれない”って可能性を受け入れる冷静さを持つのも大事だよ」とよく伝えています。冷静とはつまり、ビジネスの構造や仕事のやり方が正しいのかどうか確認することを忘れるな、という意味です。それである程度自信を持てるなら、とにかく余計なことは考えずに走る。走り切るんです。

 
— 光があるかどうかはいつ確認するのですか?

適切なのは3ヶ月に1回くらいの光チェックです。毎日「光はあるかな?」ってチェックするタイプの人は、ただ迷いながら走る状態なので、走るスピードは遅くなります。というのも私が光チェックを日々やっていたときは、やっぱりモヤモヤしながら仕事に向かっていた。その分仕事をするスピードが遅くなっていたなと。

 
— ご自身で経験されているのですね。そのモヤモヤを排除するためには何をしましたか?

アファメーションってわかりますか? 「私は◯◯です」って自分に向けて短い前向きな言葉を繰り返し、潜在意識をコントロールするテクニックの1つです。

例えば「私は成功報酬型のビジネスモデルで上場します」と毎日言っていると、それが脳に刷り込まれて身体に染み込んでくる。モヤモヤしたときは、僕自身の場合、潜在意識を変えにいきますね。

 
— そんなことを……!

潜在意識が人生に与える影響は大きいですよ。意識の引き出しを増やしたり、取りに行ったりできるのが私の強みと言っていいほど(笑)
自信の種を植えるアファメーションって、かっこよく言うとイメージトレーニングですから。イメトレをたくさんしていると、目標に向かってどんどん突っ走れるようになりますよ。

 
— アファメーションによって、「できる」というイメージが湧いてくると脇目を振りにくくなる。光チェックの話と合わせて、社員にも聞かせてあげたいです。

社員に新規事業や責任ある仕事を任せることがありますよね。彼らは暗いトンネルを先頭切って走らなきゃならない。だから社員たちへの助言はもちろん、全速力で駆け抜けられるように「俺には光が見えているから、100%うまくいく」って、背中を押します。それが経営者として私にできる、大切な仕事ですから。

インタビューを終えて

リブセンス(Livesense)という社名は「生きる意味」という言葉に由来しています。「生きる意味」=「幸せになること」であるという考えのもと、同社では、ユーザーの「幸せから生まれる幸せ」が働くモチベーションになるといいます。

LIGも社名に「Life is Good」という理念を掲げています。これからもわくわくを世に送り出し、ユーザーも、クライアントも、私たちも「人生は素晴らしい」と思えるようにする会社にしたいと、より一層感じるインタビューでした。


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この記事を書いた人

たか
たか Founder and LIG Int'l CEO 2007年入社
Founder and LIG International CEOの岩上です。主に制作、人事、その他諸々を担当しています。
経歴:学生時代にモバイルマーケティング、ITベンチャー企業数社に参加する。在学中からアーリーステージを対象とした独立系投資会社にて、投資業務、コンサルティング業務に従事。2007年、株式会社LIG創業。