働き方インタビュー(デザイナー編)

「オフィスソフトの会社から、スマホ事業のNo.1を目指す」スマートフォン×広告の未来をつくる|キングソフト


「オフィスソフトの会社から、スマホ事業のNo.1を目指す」スマートフォン×広告の未来をつくる|キングソフト
(編集部注*2015年8月7日に公開されたインタビュー記事を再編集したものです。)

『KINGSOFT Office』は、Microsoft Officeとの高い互換性をもちながらも、同製品よりも低価格で販売することに成功したオフィスソフトです。そして、中国のKingsoft Corporation Limitedのジョイントベンチャーとして設立されたキングソフト株式会社は、KINGSOFT Officeの開発と運営を担い、PCを軸としたオフィスソフトやセキュリティソフトの開発事業で大きな成長を遂げました。

また、今年で創業10周年という節目と共に第二創業期を迎えた同社は、アプリの広告事業やスマートフォン(以下、スマホ)のソリューション事業も展開しています。特に現在は時代の流れを見据えて「スマホ×広告」という事業に注力していますが、今後どのようにして市場に大きなインパクトを与えていくのでしょうか。今回は参入の鍵となるモバイル広告配信プラットフォーム『Cheetah Ad Platform』と今後の展望について、デザイナーの田口氏と広報の尾崎氏にお話を伺いました。

※ジョイントベンチャー:共同企業体といわれる。複数の企業が相互の利益のために共同で事業を行うこと。

引用元:ジョイントベンチャー

a3467d3bb53ada247d3df0c4f6250575 人物紹介:田口 勝之氏
マーケティング事業部/部長代行。1980年生まれ、長崎出身。2007年にキングソフト株式会社に入社。Webサイト、アプリUIデザイン、パッケージ、映像など社内全般の制作の他に、マーケティング事業部の部長代行として全社的なプロモーションの統括も担当している。
7c8f5cbd70e16053539668aff67b72c1 人物紹介:尾崎 真弓氏
マーケティング事業部/マネージャー、広報・PR。1979年生まれ、大分県別府市出身。数社で広報業務の経験の後、2014年にキングソフト株式会社に入社。オフィスソフト、セキュリティソフト、スマホ向けアプリなどコンシューマー向け製品の広報PRとして、公式SNSでの情報発信、プレスリリースの作成、配信など担当。

キングソフトは「セキュリティソフトやオフィスソフトの会社」というイメージを払拭していきたい

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キングソフトの主力事業であるビジネスに関連したソフトの開発事業は、同社の知名度を上げることに貢献した成果物です。しかし、成功の背景には大きな課題が残っていました。

尾崎
今までは外部に対するブランディングがあまりできていませんでした。メディアの運営や広告事業も展開しているのですが、社外では「セキュリティソフトやオフィスソフトの会社」という印象をもつ方が多くて。
田口
あと、“セキュリティソフトやオフィスソフトの会社”というイメージが強いせいか「すごい堅い会社」と思われていたり。中国のKingsoft Corporation Limitedのジョイントベンチャーで成り立った会社が弊社なのですが、Kingsoft Corporation Limitedが5000人規模の組織なので「日本法人だけで1000人以上いますよね?」と言われることもあるんです。でも、うちは今でやっと83人くらいで(笑)その中で、デザイナーは僕を含めて3人しかいません。

本当にベンチャー企業なので、社内の人たちは「ベンチャーで働いてる」という意識は常にもっているんです。だから、企画から実行までPDCAを回すスピードは結構早いですし。

尾崎
こういった従来のイメージを払拭することが、課題の1つになっています。

このように“従来のイメージを払拭する”ことを共通の課題としてもつ田口氏と尾崎氏。しかし、今まで従来のイメージを払拭するようなコンテンツはなかったのでしょうか。そのことについて尋ねると、尾崎氏は2015年2月にリリースされたセキュリティソフトの名前を挙げます。

尾崎
「セキュリティソフトのもつ固いイメージを払拭したい。そして、関心のない層へもアプローチしたい」ということで、“パソコンは猫と守る”がコンセプトの『猫セキュリティ』というセキュリティソフトを2月にリリースしたんです。基本的なところは変えず、スキンなどに使用する画像を猫にしたり、機能のアイコンを猫にまつわるイラストにしました。それがTwitterでものすごくバズり、Yahoo!の急上昇ワードにも載ったりして。

そういう企画が通る、遊び心がある、というのがキングソフトなんです。

スマホと広告で「日本の企業が海外に発信する力になりたい」

従来のセキュリティソフトとは異なる“遊び心”を取り入れたコンテンツのリリースにより、キングソフトの評価は高まります。しかし、これほどまでに従来の“イメージを払拭する”ことに注力する背景には、今までのPCを中心とした事業とは異なるスマホ事業へ方向転換がありました。

田口
今までの10年はPCがメインだったので、今後スマホにシフトしていくことは、キングソフトにとって大きな方針転換です。

事業自体も「スマホ×広告」とか、新しい分野で上を目指せるようにがんばっていきたい。そして、商品名と社名がイコールでつながるような自社ブランディングもやっていきたい、という時期なんです。

そして「スマホ×広告」事業の第一手となるアクションは、すでにはじまっていました。

田口
『Clean Master』という“タスクキラーアプリ”をきっかけに、2014年にニューヨーク市場に上場したCheetah Mobile Inc.という企業があります。

実は、もともと中国のKingsoft Corporation Limitedから独立した企業なんです。なので、今でもつながりがあって。2015年の6月には、全世界の広告主に高精度な広告配信を提供することができるCheetah Ad Platformという、モバイル広告配信プラットフォームをCheetah Mobileと一緒にリリースしました。

このように新しい事業展開へと一歩足を進めたキングソフトですが、この事業の魅力はどこにあるのでしょうか。

田口
Cheetah Ad Platformには、ターゲティング広告ができる『Facemark』というビックデータ分析システムを組み込んでいます。これは個人情報を一切取得することなく、ユーザーの利用習慣をデータ分析できる画期的な手法なんですよ。
尾崎
ターゲティングできる仕組みを簡単に説明すると、いつもユーザーが使っているスマホアプリからデータを解析します。性別や年代によって使っているアプリは少しずつ違ってきますから、それでターゲットの区分わけができるんです。

広告の表示方法にもこだわっています。例えばアプリの使用後に広告が出てくるというような、ユーザーのストレスにならないユーザビリティを心掛けてつくられています。

Cheetah Ad Platformは海外向けの広告配信にも強みをもっています。この理由を「各国の専任デザイナーがクリエイティブを担当しているため」と田口氏は説明します。

田口
例えば、フランス向けに広告をつくりたいときにフランス人のデザイナーが文言を考えたりして制作します。細かいニュアンスまでバナーに落とし込めるのがメリットですね。

そして、広告を軸としたスマホ事業の展開は、日本企業が海外へ進出するための窓口となります。

尾崎
現時点で56ヶ国13、4億のユーザーにモバイル広告が配信できるので、日本の企業が海外に進出する際の情報発信の起点になりたいと考えています。

「会社の求めるスピードと、どう折り合いをつけるか」多様性を認める会社だからこそ挑戦できること

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今までの事業とは異なる新しい分野での事業展開に注力するキングソフトですが、今までの業務内容にギャップを感じることはないのでしょうか。そこで、現在のお仕事の魅力について質問をすると「幅の広さと早さ」と答える田口氏。

田口
僕はWebデザイナーとして入社したんですけど、今でも量販店に置いている製品のパッケージやチラシ、アプリの説明動画をつくったりします。キングソフトは、デザインについて何でもできる会社なんです。これは僕が入社した9年前から変わっていません。

そのため、入社当初は「会社が求める仕事のスピード感に対して、折り合いのつけ方に苦労した」と、田口氏は話します。

田口
デザイナーは、時間をかけて「こだわりたい部分」があると思うんです。そういった部分で、会社が求めるスピードと兼ね合いをつけるのには苦労しました。特にスマホのアプリは、1日でもリリースに遅れをとってしまったら、ランキングの上位に入ることはかなりむずかしくなります。

そういったスピードを重視することで、ちゃんと「結果が出る」と実感できるようになって。そういう経験をすると「1日でも早く完成させなければ」となります。

このようなスピード感を実現できる要因についてお尋ねすると、田口氏と尾崎氏は口をそろえて「風通しがいい文化」によるものだと答えます。

尾崎
ポジショントークに聞こえるかもしれないですけど、正直すごく働きやすいです。自分がやりたいこと、身に付けたいことを伝えると「やってみなさい」と上長が言ってくれるので。やりがいがありますし、楽しいですね。
田口
ここ数年で会社の事業内容がすごく広くなってきました。常に新しいことに取り組んでいるので、会社を使って自分がやりたいことができるし、会社の中で自分がやりたいことをどんどん増やしていくことができるんです。そんな感じで9年間ずっと同じ企業にいたら、いつのまにか社内で2番目の古株になってしまったんですけれど(笑)

だから、5年後は何をやっているのか全くわかりません。でも、それが楽しみでもあります。

このような風通しのよい企業文化は、どのようにして築き上げられたのでしょうか。その問にお二人は、“多様性”をキーワードに説明をします。

尾崎
親会社が中国にあるということもあり、中国人の方もたくさん働いています。

国が違えば環境や文化が異なるので、日本人でも同じことが言えると思うのですが、想いや考え方は人それぞれです。ですから、働き方や個人の考えを尊重します。だからこそ、会社でやりたいことを実現することができるんです。「多様性を認めて受け入れることが、とても大事だな」と入社して実感しました。<

田口
僕は最近になってはじめて中国のキングソフトへ出張に行ったんですけど、やりとりが基本的に英語なんです。僕以外には、元Googleとか、元Skypeとか、いろんな企業で働いていた方が来ていて。そういう人たちと一緒に会議する場にいること自体が、単純におもしろかった。

あと、中国企業の営業さんはがんばった人をきちんと評価する制度が確立されていて。その中でみんなすごい熱意をもってがんばっているんです。そういうことを感じとることができたので、行って本当によかったなと思いました。

そういう体験をした後に日本に戻ってくると「これは、日本のキングソフトも変えていかないとな」って思います。

“永遠のベンチャー精神”というスローガンのもと「スマホ事業で業界トップを目指したい」

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「スマホ×広告」という分野への進出をはじめたキングソフトが目指すクリエイティブについて、田口氏は「効果がないなら、いい広告ではない」と語ります。

田口
僕らデザイナーが目指すべきところは、最後の成果まで達成できるクリエイティブです。実際クリック率だけを指標とするなら、目立たせたりGIFアニメにしたりするとある程度はクリックしてもらえるようになります。

でも、それが最後のコンバージョンにつながるかというと、たぶんそうじゃない。目指すべきは成果が出るクリエイティブで、さらにクリック率が高くなること。そのために僕らは24時間365日、改善点がないかどうかチェックし続けています。

そして、“成果が出るクリエイティブ”を目指すには、自分の仕事の範囲に囚われずに仕事を進める努力が必要となります。

尾崎
弊社が“永遠のベンチャー精神”というスローガンとして掲げているのは、多くのIT企業に当てはまるように「動きが鈍くなることは、致命的だ」と考えているからなんです。

では、キングソフトに合う人物像とは、どのようなものなのでしょうか。

田口
仕事以外に何か熱中してる趣味がある人とかは、キングソフトに合うと思います。趣味がある人って、いろんな視点をもっているので。なので、僕が採用面接に同席するときは「何か趣味はありますか?」って必ず聞いています。

弊社の代表も趣味を重んじていますね。株式会社バルスの代表をされている髙島さんが書いた『遊ばない社員はいらない』という本があるんですけど「これは、読んだほうがいい」って、社内のみんなに勧めるほどです。

最後に“第二創業期”と銘打つ同社が目指す、今後の展望を教えていただきました。

尾崎
「スマホの事業をやっている会社」ということをもっと知ってもらいたいと考えています。Cheetah Ad Platform以外にも、今はコンシューマー向けの『Clean Master』『CAMCARD』といったアプリに注力していて、日本でも1000万ユーザーを超えています。

「このサービスを展開している会社=キングソフト」であると、ユーザーの認識へと結び付けていきたいですね。

田口
これまでの10年はPCを主軸とした事業方針でしたが、今後はスマホ事業を主軸にしていくことが大きな方針転換です。それを踏まえて、会社のブランディングやスマホの広告事業などの新しい分野で、業界のトップを目指していきます。

今回の取材をするまで、私自身キングソフトといえば「セキュリティとオフィスソフトの会社」というイメージをもっていました。そして、同社は派手さよりも「実直」「信頼」という言葉が似合うようなサービスを運営しているため「そこで働いている人たちは、堅い雰囲気かもしれないな」と思ったのです。

しかし、予想は見事に裏切られました。物腰の柔らかい、気さくな佇まいをもった人たちです。これからスマホ事業を加速させる同社に、今後より一層目が離せません。


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この記事を書いた人

タクロコマ
タクロコマ 外部ライター 東京
『灯台もと暮らし』編集者