
「みんなで狂ったことをしよう」STORES.jpをつくる模索を止めないチーム | ブラケット
2004年に株式会社サイバーエージェントから提供が開始された『アメーバ』は、ブログを中心に現在国内でも有数のインターネットメディアへと成長を遂げ、同社を象徴するサービスとなりました。
サイバーエージェントではインターネットを軸に広告事業や投資育成事業など多数の事業を展開しており、ゲーム事業に関しては10社の子会社が所属するSGE(Smartphone Games & Entertainment) By CyberAgent(以下、SGE)という組織が存在し、『戦国炎舞 -KIZNA-(株式会社サムザップ)』や『夢王国と眠れる100人の王子様(株式会社ジークレスト)』など、App StoreやGoogle Playの売上ランキングにおいて、上位にランクインするタイトルを提供しています。
そして、SGEの中にはSGE統括室という、“サイバーエージェントグループのゲーム事業が1つのチームになれるような環境を整えるため”のグループ横断組織が存在しています。グループ会社の多さで他社を凌駕するサイバーエージェントですが、親会社と子会社という垣根を超えた“チームの結束力”はどこから生み出されるのでしょうか。今後の展望と合わせて、サイバーエージェントでSGE統括室に所属している小柳津氏と、同社の子会社でありゲームの開発と運営を行う株式会社グレンジでエンジニアリーダーを務める飯田氏にお話をお伺いしました。
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人物紹介:小柳津 林太郎氏 株式会社サイバーエージェントSGE(Smartphone Games & Entertainment)統括室室長。1981年生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、2006年サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部を経て、 2008年に株式会社CyberXを設立、代表取締役社長に就任。 2014年サイバーエージェントSGE統括室の設立とともに室長に就任。 |
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人物紹介:飯田 卓也氏 株式会社グレンジ クライアントエンジニアリーダー。1990年生まれ。同志社大学を卒業後2013年サイバーエージェントに入社し、グレンジへ出向。現在はグレンジのクライアントエンジニアのリーダーとして人材最適化、プログラムなどを担当する傍ら、SGE管轄におけるハッカソンや若手エンジニアの活性化などを行う。 |
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サイバーエージェントのゲーム事業横断組織であるSGEでグループ会社の連携戦略を推進する小柳津氏。グレンジにはアドバイザーのような役割で携わっているそうですが、以前はグレンジと同様、グループ会社で代表取締役を務めていた経験がありました。
サイバーエージェントに入社する前は「企業に就職するかどうか悩んでいた」という小柳津氏。入社したきっかけを尋ねると「今でも鮮明に覚えている」という最終面接でのエピソードをお話してくれました。
最終面接には弊社の代表である藤田がいまして。最後なので正直に言おうと思い「私は表現者として大成したいんです」と話をしたら、藤田に「経営者になればいい」と言われました。
つまり「会社を通して、社会に自分を表現していけばいい」と教えてもらったんです。このセリフが私の心に残り、この会社でやっていこうと決めました。
IT業界にも経営にも関心がなかった小柳津氏ですが、藤田氏の言葉に導かれるようにして、入社3年目の若さでグループ会社の代表に選ばれます。
ソーシャルプラットフォームを提供する会社との提携や事業転換で時代の波を乗り切ることに成功したCyberX。さらなる巻き返しを図った小柳津氏は、グローバル市場への挑戦を決意します。
努力は実ることなく、CyberXの社運を賭けた海外プロジェクトは撤退が決まります。そして6年半続いた小柳津氏の経営人生も、終わりを告げることになります。
責任の取り方を考えるとき、辞職を選択する人も多くいます。しかし「このまま終わったら、自分から逃げたことになる」と小柳津氏は踏みとどまることを選びました。
それならサイバーエージェントの成長のために自分ができることをやり続けよう。会社全体に対して、自分が一番貢献できることをやるのが借りを返す近道だと思いました。
では、“会社を清算する”ほどの失敗を経験した小柳津氏が考える「サイバーエージェント全体に貢献できる仕事」とは何だったのでしょうか。
成熟化が進むスマートフォンゲームのマーケットで生き残っていくためには、掛け算の経営で戦っていかないと厳しい。そのためにはサイバーエージェントグループが1つのチームになれるような環境を整えるための専門組織が必要だったんです。
グループ内の連携戦略を担う仕事に正解はありません。可能性を最大限に引き出す使命をもった組織は、何をゴールにして進んでいくのでしょうか。
ナレッジマネジメントは、ドキュメントに落としてもうまくいきません。結局は個々人に蓄積されるからです。ノウハウをもった人を育てて、そうしたメンバー同士を交流させていくことが大切です。その形はさまざまで、過去にはアイデアコンペや各社のエンジニアが集まる勉強会などを行いました。SGE統括室にはSGEのCTOである白井をはじめ、各担当のプロフェッショナルなエンジニアも属しています。効率化のためのツールをつくったり、各社の現場に行き技術サポートをすることもあるんですよ。
こういったことを含めて、開発の主役である現場社員のために「どうしたらもっとノウハウが共有できるか」「もっと効率化できるか」などを集中して考えるのが、SGE統括室の仕事です。「この人たちがいてくれてよかった」と思ってもらうことで、はじめて私たちの部署は存在意義を見い出せる。信頼できる仲間と大きな目標を目指して、戦って超えていく過程は、私にとっての青春です。
ゲームをつくるグループ会社は複数ありますが、横断型組織であるSGE統括室は、グループ会社と共にどのような組織文化を築いているのでしょうか。
なので、他社のエンジニアには見せることのないソースコードもSGE内では見せられる範囲で共有していますし、ノウハウの共有も積極的に行われています。私も自分が書いたソースコードを共有したり、他の方のソースコードを参考にさせてもらったりしています。
また、SGEは「エンジニアのキャリアアップもできる」と小柳津氏は語ります。
SGEでは、エンジニアのスキルアップができる独自の施策も多数設けているんです。エンジニアが自分の興味のある外部の勉強会に参加して、勉強会で得た知識をLT大会でエンジニア間で共有する「SGEEK(スギーク)」や、習得したい技術を持ち寄り同一の目標をもってグループで勉強する場を提供する「マッチングスタディ」以外に、ハッカソンなども行っています。費用はもちろん、会社で負担しています。
「みんなでいいものつくろうというオープンな文化がある」。そして「今いる会社以外でも活躍できる場所をつくれる」という小柳津氏と飯田氏。では、グレンジのエンジニアリーダーを務める飯田氏が考える「モノづくりのおもしろさ」とは、何なのでしょうか。
このような経緯のもとグレンジにジョインした飯田氏。右も左もわからないままゲームプログラミングの勉強をはじめますが、道のりは険しかったそうです。
それなりに動くようになってきたタイミングでグレンジの代表の木下に見せましたが「おもしろくない」とはっきり言われて(笑)心にぐさっと刺さる感覚がありましたね。
ストレートな意見に心を砕かれながらも、あきらめずにヒアリングを続けた飯田氏。改善策を探していくうちに、何度も遊びたくなるゲームの“おもしろさ”は緻密な計算で成り立っていると学びます。
つまり、ゲームをやっていて「おもしろい」と感じる動作をヒアリングするときに言語化して、プログラミングに落としていくんです。率直に伝えてもらうと効率よく直せます。地道な作業ではありますが、それがおもしろさへの一番の近道です。
開発をしていて一番楽しい瞬間について尋ねると「一番つらいときでもありますが、ゲームをプレイしたユーザーの反応を見るとき」と飯田氏は答えます。
エンジニアがいくら一生懸命つくっても、ユーザーは最後のアウトプットであるゲームの出来を率直に評価します。そして一度離れたユーザーは二度と帰ってきません。そのレビューを見たときは、ミスをカバーしきれていなかった自分に後悔しました。
本当につらいときでもありますが、ユーザーに楽しく遊んでもらいたい一心でつくるからこそ、アプリのレビューに寄せられるユーザーのリアルな声は自分の目で確かめます。
「もっといいものをつくりたい」と話す飯田氏と同じように、グレンジの開発エンジニアにはものづくりの情熱に燃える人が多いそうです。そして、社内で最もユーザーの声に目を光らせているのは、グレンジの代表である木下氏でした。
グレンジのエンジニアには「三度の飯よりもプログラミング」というくらいコードを書くことが好きな人が多いですが、木下のストイックさにはつくっている僕たちが圧倒されてしまうくらい。誰よりもゲームのことを考えていて、一番熱狂的なユーザーは木下だと思います。
サイバーエージェントはSGEを中心としたプロジェクトで、ゲーム事業部内における連携を強めています。では、確固たる結束力を築いたその先にあるものとは、何なのでしょうか。
突き抜けるサービスを生み出すために、チーム全体の士気を高めていく専門組織であるSGEをもったサイバーエージェント。日本を代表するインターネット企業の生存戦略の舞台は、やはりグローバルだと小柳津氏は話します。
ヒットチャートが目まぐるしく激動するスマートフォンゲーム業界。サバイバルな市場で生き残っていくためには、まさにサイバーエージェントのシンボルであるAmeba(アメーバ)のごとく環境条件に応じて外形を変えられる変化対応能力が必要でした。
全く異なる時を過ごしてきた2人がもつ「信頼できる仲間と挑戦したい」という想いの核は、私たちが予想だにしない化学反応を起こすのかもしれません。